TMAが富山大学経済学部に対し、「経営学の現場」というテーマの寄付講義は、単発のイベントではない。15回の講義時間を要する正式の授業である。昨日、7/19は、第14回目、朝日印刷の社長、濱 尚氏が講師を勤められた。基本、富山人による富山の企業といえるのが朝日印刷である。
歴史的には、江戸時代の木版の印刷に代わり、洋式の活版印刷を県内に普及された先駆的な企業、145年の歴史がある。その社史は、富山人の必読書である。朝日印刷さんの特色は、医薬品のパッケージ製作と薬品の説明文の印刷である。薬事のかんする国の法律に適合する印刷品質の管理は、細心の注意、品質管理が求められる。それを富山に限らず、全国の製薬の拠点の対して展開されている。
製作の拠点は、婦中町にある。本社は富山の中心、一番町一番一号、大和デパートの西隣。日本経済は、1990年より20年間、「失われた20年」といわれる停滞を経験した。朝日印刷は、不況でも需要が下がらない製薬業界のトレンドとともに歩んできたので、業績は右肩上がりの成長が続いている。
ただ、BtoBなので、一般消費者は、朝日印刷の製品を手にしていても、印刷企業の製造物の生産者としての社名が表記されない。そのため、一般には知られにくい企業名である。今後、高齢人口が増えるので、国内需要はまだ続く。問題は、その先をいかに見据えるかである。また、基本、受注生産であるから、自社製品を消費者に送り届けるメーカーとしての企業体力は、これから更に磨いていかねばならない。
S字型の成長曲線は、15年後くらいには、急速な下降をたどる。それで、化粧品など非医薬のパッケージ、プラケースへの印刷などに手を広げ、この分野でも全国2位の市場占有率を達成している。いわゆる「包む」文化の総合性を目標に、15年後には、新たな伸びしろのための種まきに務められている。それが、人材獲得、人材養成・・・産学協同に可能性がもとめられる理由でもある。
ここまで書いてきて、今しがた富山湾を震源とする震度1の地震がおきた。講義で、富山には地震はない、というのは神話である。だから、京都にバックアップするための生産拠点を稼働させた、という濱社長の備えは、杞憂ではないことが証明された。