秋風 作 秋月タクヤ
木製のドアを開けて牧師館に入る
懐かしい木の香り
ミゲル先生がコーヒーカップを運んでくる
笑顔でしばらくコーヒーの香りを楽しみながら一口コーヒーを口に含む
僕も一口
「トシ疲れているようだね、人生は楽しみながら生きていくものなんだよ、こっちに帰ってこないか、お父さん嬉しがるだろうにね。」
苦笑いしながら下を向く
顔を上げながら「今の仕事仲間が僕を必要としています。しばらくは東京で頑張ってみます。」
帰り際ミゲルがトシを強く抱きしめる。
「何時でもここに戻って来なさい。皆も神様もいつまでも待っているよ」
帰り際にミゲル先生に深々と一礼して振り向いて金沢駅に向かった。
どんなに帰りますと言いたかったがなぜか言い出せなかったことを噛みしめながら新幹線ホームで弁当と経済新聞、経済雑誌を抱えて車両に乗り込む
席につきながら手帳を開く「明日の10:30に横浜港で三菱物産の白木部長の見送りと会食か、お嬢さんのお誕生日だったよな」右手の親指の爪を噛みながら考え込んで車窓をどことなく見つめている。
翌日の朝9:30の山下公園
山下公園の近くのマックで軽食を摂るトシ。
港を見ながら食べている。「久しぶりの楽しい休暇だな、幸さんとはもう3年ぶりか」
ジーンズにジャケットとスニーカーでリラックスして体調も良い。
元町のイタリア料理店スミルナに向かって歩き出す。
白木家は何かあるとこの店でお祝い事をごく親しい者たちを集めて楽しむのである。
木製のドアを開けると幸が駆け寄ってきて「トシお兄様しばらくです。」といってハグを強めにする「久しぶり幸さん」と言って紙袋を渡す「え~何かしら」と言ってバックを取り出す「えーキタムラのバックだわ素敵―」と言ってまた抱き着く。
白木部長が満面の笑顔で「トシさんありがとう。ちょっと無理をさせたかなあ~、ありがとう。」
それから2時間食事とアルコールを堪能し聖公会教会、イギリス館、カトリックのお御堂で祈り、そして山下公園から出港する赤い靴号の船上で将来を誓う指輪を交わす。