マディは、時々学校から課題を持って帰ってくる。
作文だったり、計算問題のドリルだったり、ちょっとした工作だったりする。
そんな時は、マディとクリスティは、
「トシのところに行っているから!」と申し合わせて、二人でトシの家にやって来る。ユーリも一緒だ。
ユーリは、学校から帰ってきたマディを迎えて、うれしさいっぱいである。
片時も、マディから離れようとはしない。べたべたまとわりついている。
興奮して、口からは涎を垂らしながら、衣服をかんだりするので、さすがマディも怒って、「Stay!」とか「Sit down!」とか大声で、なんとかユーリをいさめようとしている。
二人ともカギっ子で、放課後家に帰って、自分の家でひとり過ごすより、トシの家に集まってガヤガヤやる方が心地いいのか、宿題をしたり遊んだりするのに便利もいいのだろう。
トマソン先生も、二人が、トシの家で遊んだり勉強したりするのを知っている。
「ミスター・ヤマダは、お元気?」とか、マディに尋ねるようだ。
マディも意地悪く、その時「元気です!」とか言えばいいのに、わざわざ帰って来てから、「ねえ、トシ!トマソン先生から、ミスター・ヤマダは、お元気?と聞かれたんだけど、何て答えたらいい?」と言ってくる。
「元気だよ!」というと、「じゃあ、”元気だよ!”と先生に伝えておくよ」
2年生になってから、受け持ちはトマソン先生になったが、1年の時は、パオロ先生だった。
ノースショア近くのシュガープランテーションで、はじめて、マディ、クリスティ、それにアンに会った。
パオロ先生は、その時のクラス担任で、子供たちを引率してフィールドトリップに来ていたのである。
「あそこにいる人が、クラス担任のパオロ先生よ!」とマディが言ったのを覚えている。
「美人だね」
「それを聞いたら、先生喜ぶと思うよ!」
その後、パオロ先生に会ったことはなかったが、講演を頼まれてマウナウイリ小学校に行ったとき、どういうわけか、パオロ先生が握手を求めてきたのである。
ちょっと、色ぐろの、目元がぱっちりした美人で、ハワイのネイティブとポルトガルの混血かなあと思った。
たまに、ホームワークを持ち帰っても、鉛筆を咥えながら、ガサガサ音を立て何とかやっているようだ。
リビングで、大声で議論したり、言い合ったり、二人は元気いっぱいである。
「これはまずいのじゃない。こうした方がいいと思うよ」とか、にぎやかである。
そうこうしていると、トシのところに「ねえ、ハサミ貸して!」と言いながらやってきたりする。何か工作をしているのだろうか。
ひと段落したと思えるころ、今度はキッチンの方で声がする。
ティータイムである。
マディは、アイスクリームの、どぎつい色をしたナパグレイプスが好きである。クリスティは、ブルーの、バニラ風味のサーザンパシフィックが好きだ。この二種類は、切らさないようにいつもフリーザーに入っている。
「ねえ、トシはないがいい?」
「僕は、コーヒーがいいんだけど」
「じゃあ、作ってあげる!」
と言っても、子供に火を使わせるのは怖い。
「トシが、自分でコーヒーをつくるから」と、仕事を中座してキッチンに行く。
おっかない手つきで、マディとクリスティが、どこからか、コーヒー缶を出してきて、熱湯でコーヒーを点てていた。
美味しそうな香りだ。
ユーリは、アイスクリームが好きである。
皿に装ってやると、貪るように舐めるというより、食べる。
ほかの誰より早く、食べ終えて、きょろきょろしながら、マディやクリスティの分まで、おねだりするのである。
折角礼儀正しいユーリでも、アイスクリームを食べた後の口の周りは見られたものでない。
こればかりは、マディも、しつけが出来ないようだ。
大概のホームワークは、自分たちで、何とかやっているようだが、時々助けを求めてくるときがある。
そっと、顔をのぞかせて、何か言いたそうにしているので、
" You wanna any help from me?" ( どうかしたの?)
" Yes, I'm just thinking if you have any good idea, Toshi ." ( トシだったら、何かいい考えがあるかと思って! )
宿題は、自分ですることが大切で、むやみに誰かが助けるのはよくない。
それでも、ほんとうに困っている時があって、そんなときは、何らかの手助けをするようにしている。
彼女たちも、そのようなとき、トマソン先生に、トシが手伝ってくれたと、はっきり言っているようである。
仲良く まるで自分の家でやってるように宿題をして
くつろいでいる部屋の様子が目に浮かびます。
そばには それを見守る優しいトシさんがいて。
優しくて頼もしいトシさんが大好きだったんでしょうね。
もう、素敵な美人で奥様だったりするのかしら。
懐かしい心温まるページは、いつでも幸せな気分ににしてくれますね。
そんな、良い思い出をたくさん持ちたかったです。
今からでも作れるかもしれないですね。
おおらかで、頭がよく、品があります。
言いつけをよく守ります。
クリスティは、マディに比べると、ちょっとおっとりした性格です。
マディは、今シカゴにいます。
クリスティは、お父さんの仕事の関係で、ハワイ島のヒロに移り住んでいます。
昨年、クリスティには、会いました。
机上の勉強だけでなく、生活面においても。
ユーリを囲んで三人の微笑ましい光景が目に浮かびます。
シカゴとハワイと日本 離れてしまっても一生交友は続く事でしょうね。
アメリカでは、結構対等な人間として付き合えるし、子どもたちも、ある意味、堂々と自分を主張しています。
だから友達になれると思うのです。
ユーリは、動物だから成長が早いです。
日本語で話しかけられたり、英語で話しかけられたりで、混乱するようです。