マディと愛犬ユーリ、親友のクリスティ、それにハワイのこと

ハワイに住んでいたころ、マディという女の子が近所に住んでいて、犬のユーリを連れて遊びに来ていた。

" Homework " ( 宿題 )

2011-08-06 08:16:00 | 日記

 

 マディは、時々学校から課題を持って帰ってくる。
 作文だったり、計算問題のドリルだったり、ちょっとした工作だったりする。
 そんな時は、マディとクリスティは、
 「トシのところに行っているから!」と申し合わせて、二人でトシの家にやって来る。ユーリも一緒だ。
 ユーリは、学校から帰ってきたマディを迎えて、うれしさいっぱいである。
 片時も、マディから離れようとはしない。べたべたまとわりついている。
 興奮して、口からは涎を垂らしながら、衣服をかんだりするので、さすがマディも怒って、「Stay!」とか「Sit down!」とか大声で、なんとかユーリをいさめようとしている。

 二人ともカギっ子で、放課後家に帰って、自分の家でひとり過ごすより、トシの家に集まってガヤガヤやる方が心地いいのか、宿題をしたり遊んだりするのに便利もいいのだろう。
 トマソン先生も、二人が、トシの家で遊んだり勉強したりするのを知っている。
 「ミスター・ヤマダは、お元気?」とか、マディに尋ねるようだ。
 マディも意地悪く、その時「元気です!」とか言えばいいのに、わざわざ帰って来てから、「ねえ、トシ!トマソン先生から、ミスター・ヤマダは、お元気?と聞かれたんだけど、何て答えたらいい?」と言ってくる。
 「元気だよ!」というと、「じゃあ、”元気だよ!”と先生に伝えておくよ」
 2年生になってから、受け持ちはトマソン先生になったが、1年の時は、パオロ先生だった。
 ノースショア近くのシュガープランテーションで、はじめて、マディ、クリスティ、それにアンに会った。
 パオロ先生は、その時のクラス担任で、子供たちを引率してフィールドトリップに来ていたのである。
 「あそこにいる人が、クラス担任のパオロ先生よ!」とマディが言ったのを覚えている。
 「美人だね」
 「それを聞いたら、先生喜ぶと思うよ!」
 その後、パオロ先生に会ったことはなかったが、講演を頼まれてマウナウイリ小学校に行ったとき、どういうわけか、パオロ先生が握手を求めてきたのである。
 ちょっと、色ぐろの、目元がぱっちりした美人で、ハワイのネイティブとポルトガルの混血かなあと思った。
 

 たまに、ホームワークを持ち帰っても、鉛筆を咥えながら、ガサガサ音を立て何とかやっているようだ。
 リビングで、大声で議論したり、言い合ったり、二人は元気いっぱいである。
 「これはまずいのじゃない。こうした方がいいと思うよ」とか、にぎやかである。
 そうこうしていると、トシのところに「ねえ、ハサミ貸して!」と言いながらやってきたりする。何か工作をしているのだろうか。
 ひと段落したと思えるころ、今度はキッチンの方で声がする。
 ティータイムである。
 マディは、アイスクリームの、どぎつい色をしたナパグレイプスが好きである。クリスティは、ブルーの、バニラ風味のサーザンパシフィックが好きだ。この二種類は、切らさないようにいつもフリーザーに入っている。
 「ねえ、トシはないがいい?」
 「僕は、コーヒーがいいんだけど」
 「じゃあ、作ってあげる!」
 と言っても、子供に火を使わせるのは怖い。
 「トシが、自分でコーヒーをつくるから」と、仕事を中座してキッチンに行く。
 おっかない手つきで、マディとクリスティが、どこからか、コーヒー缶を出してきて、熱湯でコーヒーを点てていた。
 美味しそうな香りだ。

 ユーリは、アイスクリームが好きである。
 皿に装ってやると、貪るように舐めるというより、食べる。
 ほかの誰より早く、食べ終えて、きょろきょろしながら、マディやクリスティの分まで、おねだりするのである。
 折角礼儀正しいユーリでも、アイスクリームを食べた後の口の周りは見られたものでない。
 こればかりは、マディも、しつけが出来ないようだ。

 大概のホームワークは、自分たちで、何とかやっているようだが、時々助けを求めてくるときがある。
 そっと、顔をのぞかせて、何か言いたそうにしているので、
 " You wanna any help from me?" ( どうかしたの?)
 " Yes, I'm just thinking if you have any good idea, Toshi ." ( トシだったら、何かいい考えがあるかと思って! )

 宿題は、自分ですることが大切で、むやみに誰かが助けるのはよくない。
 それでも、ほんとうに困っている時があって、そんなときは、何らかの手助けをするようにしている。
 彼女たちも、そのようなとき、トマソン先生に、トシが手伝ってくれたと、はっきり言っているようである。