レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

真夏の夜のミステリー

2018-07-22 03:00:00 | 日記
七月も「二十」のつく日を数えるようになっています。日本からのニュースを垣間見ると、連日四十度を超えるところもひとつふたつではないようで、熱中症で救急搬送される方があとを断たないとか。

私はお風呂の中以外では四十度という温度を体感したことはおそらくないだろうと思います。冗談ではなく、十分に健康に気をつけてお過ごしください。

翻ってアイスランドでは、これまで書いてきましたような「梅雨」っぽい夏が続いています。七月末になってこれでは、もはや「あきらめた〜」です。先週、二、三日太陽がきらめく日がありましたが、ああいうのは単にお天道様の嫌味としか思えなくなってきました。

そうではありながら、これも前に書きましたように、今年の夏は私は比較的「お手すき」です。そういう環境を利用して、自分なりに「夏」を楽しんでいます。

テレビ(ビデオ)では、大好きなNYPDものや最近はまっていたChicagoのサスペンスものを離れ、夏らしくちょっと牧歌的というか、自然を感じるサスペンスはないか?(それでもサスペンスを求めます)と、itunesのストアを物色していて、ひとつ面白そうなシリーズを見つけました。

イギリスのテレビのシリーズでGrantchesterというもの。主人公が教会の牧師さんのようで、しかも殺人事件を解決するミステリーもののようです。面白そうな設定なのですが、過去の経験から英国ものは当たり外れがあるので、取り敢えず一話だけ購入し試しに見てみましたが、結構いい線行っていたのでシリーズで購入しました。




Grantchester St. Mary & St.Andrews教会
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ミステリーと教会、とかいうとすぐに出てくるのが古典と化しているチェスタトンのブラウン神父ものですね。大衆文芸をざっくりとエンターテイメントに加えるとして、エンタメの世界での「教会」というのはほぼ「カトリック教会」と同意義です。

テレビの人気シリーズだった「ダウニング神父ミステリー」も神父さん。現代のNYPDものBlueBloodsに出てくる教会もカトリック。エクソシストから謎の古代遺跡を巡る冒険活劇に登場するバチカンのスパイたちも皆カトリックです。

私が気に入っている数少ない「プロテスタント」主役のミステリーは。少し古いのですが七十年代のチャールズ・メリルという牧師さんの筆による「ランドルフ牧師」シリーズでした。カリフォルニアの大学のキリスト教史学の先生が、シカゴの著名な教会の臨時牧師を務めながら、殺人事件を解決していくもの。会話が嫌味なく洒落ていて小気味好い。

これはかなり面白くて何度も読みました。残念ながら邦訳が第三作までで終わってしまっていたのですが、最近続きの三作の英語版をアマゾンのマーケットプレイスで購入しました。ですが、なんせ時代が少し前になってしまったので、まだ読む気になっていません。英語だし...

脱線しましたが、そういう「プロテスタントやばし」という背景がありましたので、このGrantchesterというテレビシリーズに気を引かれたのです。

Grantchesterの物語はイギリスはケンブリッジの近郊、グランチェスターの町を舞台にしたミステリーです。ですが時代は少し遡って、始まりは確か1953年という「戦後」の舞台設定です。

2016年の推定人口が580人ということですので、まあ小さな町ですね。チャールズ皇太子も訪れたことのある「オーチャード」という美味しいティーガーデンがあるとかで、日本のネットでも紹介されています。別に英国ファンでもない私には初耳の町でした。




ドラマにも登場するカム川
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主人公はその町の教会のVicar、教区牧師であるチェンバース牧師。三十代始めで独身、平凡な感じの男。それが町の警察の刑事ジョーデイとコンビを組んで事件を解決していくことになります。

チェンバース牧師を演じるのはジェームス・ノートンという役者さんでこの人も私は知りませんでした。が、刑事役のロブソン・グリーンはこれまでも他の刑事物ドラマ等で何度も見ているお馴染みの俳優さんです。ちょっと老けた...

ミステリー、刑事物とはいえ、大好きなNYPDものとは異なり派手なアクションもなく、時代も一昔前だし、ある種「隔絶された田舎」でのお話しなのです。それはそれでまたいいのです。

そのような田舎で起きる殺人事件。それを単なる謎解きではなく、なぜその事件が起きたか、その事件の時代背景などが織り混ざっており、ドラマでもあります。

例えば主人公のチェンバース牧師は、第二次大戦でスコットランド・ガードとして従軍。ナチスドイツとの戦闘で心に傷を負っています。それが次第に明らかにされていきます、と言うか、いくようです。

あるいは同性愛の問題など、現代なら半世紀前とは相当異なる理解が出てきているトピックについても、「ああ、あの時代はそうだったのか」と考えさせられるようなものもあります。

ただし、イギリスの歴史ある町でのお話しなので、歴史や教会の仕組みなど、多少理解するのに難しい点もあります。話しの流れを追うのには問題ないと思いますが。

例えば上述した「スコットランド・ガード」がどういう風に普通の英軍と違うのかとか。多分「スコットランド」というのが意味ある点なのでしょうが、私などには浅い理解しかありません。

さらに主人公の牧師が、町の人々からVicarと呼ばれます。Vicarは現代訳では「教区牧師」のようなものなのですが、英国国教会ではそれなりの歴史があります。人が普通の意味でFatherと呼ぶのと何かニュアンスの違いがあるのか、否か、など。観ていると、Vicarとう言葉にはあまり尊敬の念が付随していない気がしてしまうもので。




ジョーデイ刑事とチェンバース牧師
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ところで、このGrantchester、私にとってNYPDやFBIものを観ている時と一番異なるのは、アクションの有無や時代のズレではなく、やはり主人公が牧師さんであるということ。なんというか、やはり自分と比べてしまうのです。

ある状況での人との受け答えなどについて、「ああ、彼はそう言うか」とか「まあ、そうするのが妥当でしょうね」とか。評価するのとは違いますが、自分ならこう言う、こうする、ということを考えてしまうわけです。

このチェンバース牧師は、ジャズが好きでお酒も飲むし、他人の問題を素通りできないおせっかい、でも女性に関しては不器用でイジイジだし、相当スキだらけ。そういう点では自分の対局というよりは断然「仲間」感が強い牧師さんです。

このGrantchesterミステリーシリーズ。原作はジェームス・ランスという人の筆によるものだそうで、時代設定から見て昔のお話しなのかと思ったら、意外や書かれたのは2012年とか。テレビ化されたのが2014年で、現在まで3シーズンが放映されています。シーズン4も決定されているとか。

日本でもAXNミステリーで放映されたとネットで読みました。AXNミステリーとはなんぞや?テレビの仕組みも複雑化してきており、私はついていけていません。(^-^;

咋夏の今頃はTwin Peaksを改めて観ていましたが、今年はGrantchesterです。どちらも時間の流れがゆったりと落ち着くようで、さらに豊かな自然が癒しを与えてくれる(かの)ようです。

もし、真夏の暑い夜に、なにか「目に珍しいもの」をお探しでしたら、是非ともこのGrantchester、お試しください。


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com

Home Page: www.toma.is

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