レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

アイスランド的天然アミューズメント

2021-03-28 00:00:00 | 日記
こんにちは/こんばんは。

三月下旬となりました。新年度間近ということになりますね。ネットで見るNスタなどで、コロナ下での卒業式のニュースなどを目にしてはいるのですが、何か、自分自身の季節感というか実感が伴わなくなっていることを、毎年感じる時期です。

こちらでは、今年は4月4日が復活祭(パウスカー)となりますが、そのパウスカーがこの時期の季節感の中心となります。なるはずです、普通は。ですが、今年はパウスカーまであと二週間という時に、ふたつの出来事が相次いで生じて、パウスカー感を押しのけてしまっています。

それがレイキャネス半島でのマグマの噴出とコロナの英国型変異株のアイスランド侵入です。今日はアイスランド語についてのお話しを一時中断し、これらについてお知らせしておきたいと思います。

まずはマグマから。

え〜と、普通はこういうことを書くときは「火山の噴火」という表現をつかうのでしょうが、今回はそういうのはあまり事実を描写していないように思われます。隣りに小さいながらも火山があるにもかかわらず、マグマはそこではなく原野の真ん中に裂け目を作り、「溢れ出て」きたのです。

なぜ、火山から噴火しなかったのか、専門家に訊いてみたいところです。まあ「噴火」なのかなあ?ちょっと微妙なところですね。ワタシ的には「噴出」といいたいところです。




今ではすっかり火山ぽくなった噴出口(後述)
Myndin er ur Visir.is/VILHELM


この「噴出」があったのが、一週間ほど前の金曜日の夜。そして、翌日の土曜日には百人ほどの一般市民がさっそく見学に出かけました。かなり、マグマの流れている近くにまで寄っていき、マグマをバックにしたセルフィーを撮っていました。当然、当局は「危ないから近寄らないように」と警告を発していたのですが。

その日の夕方のニュースで、この件が報じられ、当然私は警察の防災担当からお叱りの言葉が出るものだろう、と予想していました。

ところがです。「別に特別に周囲に警備員を置いたり、囲いをしたりすることはしません」とだけ述べて、あとは「常識に従ってくれ」と言わんばかりの顔。

ついで登場した、レスキュー隊かなんかのおじさんは「途中までは楽な道だけど、そこから溶岩だらけになり歩くのが難しくなります。しっかりした靴を履いて、かつ十分に暖かい登山用の服装が望ましいですね。あと、ガスを吸わないように、かならず風上にいるように」まるで、見学の指導のようなことをのたまわっていました。

案の定、翌日の日曜日には千人を越す見学者の来訪。付近まで車で行ける舗装した道路には、ずらりと車が並べられにわかパーキングエリア。そして噴出口を中心として、流れ出す溶岩の川と池の周囲には、うじゃじゃけたハイカーの人たち。天然の「サンダーマウンテン」的アミューズメント・パークとなりました。




アミューメント・パークと化したマグマ地帯
Myndin er ur Visir.is/VILHELM


溶岩というと、どうも日本人的には「地獄絵」みたいな不吉なイメージがくっついているように思われるのですが、今回のマグマの流れは実際にきれいでそういう不吉な印象はまったくありません。今のところは、ですが。

そういう風なので、面白い出来事もいくつかあったようです。オウロフさんという若い女性は、六歳の娘さんを連れて劇場へ行くつもりでした。ところが、同棲相手のシーグルビョルンさんが「予定が変わったから」と、ふたりを車に乗せて目的地を知らせぬままに出発。

来たのはこの溶岩のニュー・アミューズメント。しかも、徒歩でのハイキングではなくヘリコプターでの空からの遊覧。ヘリにはカメラマン/フォトグラファーの女性も同乗していましたが、オウロフさんは、火山の写真を撮るのだろうと思ったそうです。

ところがその女性フォトグラファーは、眼下に拡がるマグマの光景よりも、オウロフさんらの方をパチパチ撮り始めたそうです。「とても不自然な気がしたんだけど...」

ふたりは地上にも降りたのですが、そこで秘密暴露。なんと、そのマグマを背景にシーグルビョルンさんはオウロフさんに隠し持ってきた指輪を差し出してプロポーズ。




という、おめでたい逸話も誕生したマグマ・パーク
Myndin er eftir Eva_Bjorg_Aegisdottir


「六年も同棲しているので、この辺で結婚するのは別に不思議ではないし、これまでにそういう雰囲気になったことも何度もあります。でも、生まれて初めてのヘリの旅だったし、嬉しい!」とオウロフさんはメディアのVisir.isの取材に答えていました。

その他にも、マグマでできた熱々の岩でソーセージを焼いてホットドッグを作ったり、焼肉をしたり、いろいろな方があるようです。

マグマ焼きホットドッグの様子はこちら


ところで、噴出時には裂け目しかなかった原野でしたが、マグマ流出につれて、火口のような岩の形が形成されてきました。そして、周辺のマグマが冷えて固まった岩の上に、新たにマグマが流れていきます。

これがまた冷えて固まり、その上にまた新たな熱々のマグマが流れる。という具合にして、だんだんと山のようなものが形成されることがあるのだそうです。

詳しくは読まなかったのですが、火星にある高さ42キロ?とかいうどでかいクレーターはそのようにしてできたものだとか。

今回のレイキャネス半島でのマグマ噴出。正確にはGeldingardalurゲルディンガーダールルという場所なのですが、この噴出は専門家によると「何年も続く長い噴出になることが予想される」

と、なると、何年か後には、かなり大きな山になってるかも。




地図中、赤い線の下をマグマが滞留中
Myndin er ur Visir.is


そうなると、コロナで冷え切ったアイスランド観光業界には、まさに「天からの贈り物」ですね。なんせ、アイスランドへ着く国際線の窓から噴火が見えるわけです。

そして、空港からレイキャビクへ向かう途中でマグマ・アミューズメントに寄ることもできるし、隣りのブルーラグーン野外スパと抱き合わせにして、一日のデイツアーも組めるでしょう。

まあ、すべて「コロナが収まったら」という条件が付きますけど。




レイキャビクの隣町、ハフナフョルズルからの夜景
Myndin er eftir Sigfus_Steindorsson via Visir.is


そして、そのコロナですが、こちらの小学校を中心にしてふたつのクラスターが発生。どちらでも英国型変異株が検出されました。

政府はこれを深刻に受け止め、急にですが、また集会を十人にまで制限。(教会は三十人まで) 幼稚園を除く学校は全面休校。音楽会や芝居もクローズ。スポーツ活動やフィットネスも、屋内外を通じて禁止となりました。

かなり徹底した制限ですが、これは「絶対、英国型変異株をこれ以上ばら撒かない」という意思であり、私は正しい措置だと考えています。

教会が三十人までの集会を許されているのは、フェルミング(若者の献信礼)という大切な行事の最中であること、また復活祭の時期にぶつかるからと思われます。

フェルミングについてはこちらも


またまた、私自身も仕事の計画を立て直さなければならず、あたふたしていますが、それでも春が近づいていることは確かですし、まあ、なるべく良いことにも目を配るようにして過ごしたいですね。

皆様もコロナにもかかわらず、それなりに良い新年度を迎えてくださいますよう。


*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。


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アイスランドではアイスランド語を話す「原則」

2021-03-21 00:00:00 | 日記
こんにちは/こんばんは。

今、これを書いているのは、20日の土曜日の朝なのですが、昨晩から未明にかけてはいろいろあったようです。

アイスランドでは、これまでも書いてきましたように、マグマ活動が続いていましたが、昨晩の9時頃についに溶岩が地表に噴出しました。火山の噴火のような噴煙を伴うものではなく、どろどろの溶岩が溢れ出したような感じです。






噴出した溶岩 当日夜と翌朝
Myndir eru eftir Landhelgisgaeslan


ここ三日ほど、目立った地震も少なくなっていましたし、昨晩の七時のニュースでは「どうやら、今回のマグマ活動はこれで収束したようで、溶岩の噴出はないだろう」と専門家が言っていたのですが、その直後の出来事でした。

その専門家の方の名誉のために言っておきますが、その方は「とは言っても、いつマグマが噴出するかは100%予想できるものではなく、前触れなく噴出することもある」とも注釈していましたので。

当局は、この噴出が周辺の交通事情等に影響を与えることはないだろう、と伝えています。念を入れて「絶対に見に行ったりしないように」という注意も忘れていません。

(*ところが、後のニュースを見ると、この半日だけで約百人の「一般人」がすぐ近くまで来て写真やセルフィーを撮っていたとのこと。やれやれ。ちなみに、周辺には警備員もレスキュー隊もいないそうな。アイスランド的だなあ。自己責任でお願いいたします)

溶岩の量は「過去にないほどの最小規模」だそうで、この半島でのマグマ噴出は八百年ぶりだそうです。ということは、多分、私たちが日常見慣れている溶岩地帯の、あの溶岩が出てきた時以来ということでしょう。

そして、今日の朝起きてみると、東北地方でまた大きな地震があったようですね。こちらの時間では未明の3時過ぎということになりますね。

ネットで、ライブのニュースを時間遅れで見ていますが、津波の警報も出ているし、当地の方々は心配されたことでしょう。今現在は地震発生から六時間を経過していますが、もう大丈夫なのでしょうか?

これ以上、大きな地震の来ないこと、そして今回の揺れで被害がなかったことを願います。




溶岩噴出の場所はここ
Myndin er ur Visir.is/Hjalti


さて、今回はアイスランド語についての続編です。

前回は、「アイスランド語の能力」を盾にして、外国人の住民が仕事を得られない事態が起きている。その事態に対抗して、移民女性たちが就職活動を助ける会社を立ち上げ、そのことがニュースで紹介された際に、英国籍女性が「英語で」インタビューに応じていた、というようなことを紹介しました。

このニュースから二日ほど経って、ネット・メディアのVisir.isにオピニオン投稿がありました。

書いたのはアイスランド人女性のマルタさんという方で、アイスランド語の教師をされているそうです。オピニオンのタイトルは「私はデンマークではデンマーク語を話す」

読む前から内容が想像できたのですが、案の定でした。「私はかつてデンマークに住んでいましたが、当然デンマーク語で生活していました。その後、ノルウェーに移りましたが、そこでもノルウェー語を話しました。

そこでは、私は『客人』であり、私に英語で接することはノルウェー人の務めではなかったと思います」

まあ、大体そんなような内容のことを陳述し、それから:

「私たちはアイスランドに住んでいるのであり、ここではアイスランド語が国民の言語。国民の言語の習得は、あなたが住んでいる社会へのより良い適応のための鍵です。

あなたが、もし(アイスランド人の)もの考え方とか何かを変えたいのなら、あなた自身をアイスランド社会に適応させることが第一であって、ここの社会を自分に適応させようとすることではないでしょう。誰でもまずもって自分自身を証明する必要があります」

明らかに、マルタさんは前回のニュースを見て刺激され、このオピニオンを投稿したようです。




Visirへのマルタさんのオピニオン投稿
Myndin er ur Visir.is


この投稿は、かなり注目を集め、二千くらいの「いいね」を集めました。まあ、そのうちどれほどが「賛成」の意味で「いいね」を押したのかはわかりません。「議論の価値がある」という向きもあったことでしょう。

Visir.isには、個々のオピニオンに対してのコメントを残す欄もあります。

ちなみに、私はこのシステムにはチョー反対の人です。こんなシステム、ない方がいい。意見があるなら、人の意見にしったかぶった評価をするのではなく、自分で意見を投稿すべきです。

という私の個人的な嗜好にもかかわらず、このマルタさんのオピニオンに関しては、むしろコメント欄の議論の方が面白いくらいでした。三十くらいのメインのコメントが寄せられましたが、それがまた応答するコメントを呼んだりして、かなりのスレッドが出来上がっていました。

全部を読んだわけではないのですが、当然のことながら、マルタさんに賛成する人と、反対する人がいます。

賛成する側には、特にマルタさんが言っていること以上のものはなかったように見受けられました。目についたのは「そうだ、そうだ。私もスペインに住んでいた時はスペイン語を話した」とか「イタリアではイタリア語を話した」という「実体験型」の陳述。

ワタシも言われたなあ、二十七年くらい前に: 「アイスランドではアイスランド語を話すんです。あなたも話しなさい」移ってきて、まだ二年だったんだけど。

反対する側で、まず目についたのは「言語ファシスト!」みたいなレッテル貼り。それから「デンマーク語を話したとか、ノルウェー語を話したとか自慢してるけど、あなたの年齢だったらデンマーク語は義務教育だったろ?

デンマーク語も、ノルウェー語もアイスランド語の兄弟言語であり、それを世界各地から来ている移民がアイスランド語を学ぶことと同等と思っているなら、とんでみない勘違いだ」

このコメントにもかなりの「いいね」が付けられました。




活発な議論の場となったコメント欄
Myndir er ur Visir.is


私自身がどう思うかはさておいて、前回のブログで「アイスランド人はアイスランド語について話すのが好きだ」と書きましたのは、このようなことなのです。アイスランド語についてのオピニオンは、かなりの高い確率で注目を集めます。

皆さんの中で「アイスランド人の注目を集めてみたい」という方がありましたら、ぜひアイスランド語について書いて、投稿してみてください。

あるいは、日本でアイスランド語でのYoutube動画を作ったりしたら、きっとここではウケると思いますよ。

今回の、マルタさんのオピニオン。ワタシ的には「原則はそうだろうし、その部分は賛成するけど、どれだけ移民の切実な現実、現状をわかってモノを言っているのかなあ?」と思いました。

全般的に見て、この人のものの言い方は上から目線の典型であって、気に入らないのですが、一番気に入らない点は、ニュースに登場した英国人女性を取り上げて、あたかも「移民全体」をこの女性にシンボライズしているかのように見える点です。

別にあの女性は一個人以上のなにものでもないのだよ。私も、あのインタビューを見て引っかかったクチです。でも、その人のことは、個人的にも知らないし、他のインタビューを見たわけでもないので、それ以上の事は何も言えません。

その反面で、私は多くの移民の人たちが、アイスランド語を学ぶ機会がなかったり、学んでも十分な結果を見るまでには至っていない現実の中にいることを知っています。

そして、それらの人々すべてに今日の生活という、「実際の必要」があるのです。

原理原則だけを振り回すことは、ものごとを良い方向に変えられないばかりではなく、逆により悪い方向へ押しやることさえあるでしょう。トランプの「America First」なんていうのは、そのことのでっかい証明であると思います。

え〜と、ちょっとまだ言い足りないことがありますので、この議論はまだ続けたいと思います。今回の議論の内容そのものは、古典的というか、二十年前の議論からさして変わっていません。

もう少し、周辺社会の変化というものも、議論に加わってこないといけないと考えているのですが、それはまた次の機会に。


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アイスランド語についてもう一度考える - 就活の必須事項?

2021-03-14 00:00:00 | 日記
こんにちは。レイキャビクでは相変わらずの雪なしの日々です。さすがに三月も中旬になると、「もしかして、このまま冬が終わるんじゃないか?」という期待が生まれてきます。このままで終わってくれて困ることは何もありません、ワタシは。




今日の清涼感アップピックはキタキツネちゃん!
Myndin er eftir Jonatan_Pie@Unsplash


そして、もうひとつ相変わらずなのが –これはレイキャビクからケフラビクの国際空港のある地帯にかけての「レイキャネス半島」と呼ばれる地域に関してですが– 毎日揺れています。それでもマグマは地表には現れていません。

専門家の話しでは「マグマはケイリル(という火山)とグリンダビクの近くのファーグラダルス山の間の地帯に広がっており、浅いところでは地表下1キロ程度まで上がってきている」

「別に大きな前触れがなくても、いつでもマグマは噴出し得ます」ということです。これだけ地震が続いているなら、前触れは十分だと思うのですが。(*^^*) 

先日の毎日新聞のネットニュースでも、こちらの地震について扱われていました。

あと、忘れないうちに触れておきますが、11日に「バイキングMore」の始まりの時間で、アイスランドのジェンダーイコールティ政策について紹介されていました。興味ある方は、削除される前に是非とも。

さて、今回はアイスランド語についてです。これは、これまでも何回も扱ってきましたし、まだまだいくらでも「いじりようのある」トピックです。

活発な議論が湧く「その時々の話題」があるのは、どの社会でも共通でしょうが、ここではそういう時事談義を別にして、恒常的に人気?があって、議論のタネとなるトピックがあります。

例えば「自然保護」「女性の権利」等がそういうものの範疇に入ると思いますが、「アイスランド語」もそのようなトピックのひとつです。アイスランド人はアイスランド語について話すのが好きなのです。

ちょいと付け加えると、世代の相違はありましょうが、「難しい言葉だろう」という上から目線にそっての話しが好きなのです。

時折り何かのきっかけがあって、アイスランド語についての話題が世に出てくると、こぞってその議論に参加したがる節(ふし)があります。




アイスランド語で書かれた小説
Myndin er ur ,,Snertingu" eftir Olafur Johann Olafsson


さて、「アイスランド語」を改まってトピックにする場合、そこに「外国人」が関わっていることが多いことは容易に理解していただけるだろうと思います。アイスランド人の中での「アイスランド語」の問題、ということも多くあるのですが、外国人、それも移民が関係していることの方が普通でしょう。今回、ご紹介する議論も、移民が関わっています。

この議論がヒートアップしたのは、実はもう、ちょっと前のことで、二月の始めです。その頃、あるニュースがRUV国営放送のテレビで流れました。移民の女性グループが、移民の就職活動を助ける会社を立ち上げた、というものでした。

景気が悪くなると、移民が職を得るのが難しくなるのは何処も同じです。コロナの影響でごそっと失業者が増えてしまった、昨今の状況下では、外国人が仕事を得るのは本当に難しくなっています。

これはこれで、真面目な議論をしなくてはいけないのですが、仕事に応募しても何の返事もない、というのがフツーになっています。

そういう中で「応募者の名前が外国名だと、それだけではねられてしまう」という都市伝説も生まれてきています。私はこれは「ありそうなことだ」と思いますが、それでも確認はされていないことだ、という条件は付けたいです。

もうひとつありそうなこと、というか、これは確認できる事実ですが、「アイスランド語ができる」ことが採用の条件になることです。これも扱うのが難しい面があり、正論から言うと「そりゃあ、そうだろう。言葉が通じなかったら、仕事するのは難しいじゃん」となります。

病院や介護施設がスタッフを新規募集したとして、新スタッフが患者さんや介護施設の利用者の方々と十分にコミュニケーションが取れなかったら、不都合以上の問題が生じることも考えられます。

その反面で、「言葉の能力」を大義名分にして外国人を「はねる」ことも容易くできます。法律上は「雇用に際して、(EU市民に関しては)国籍を優先条件にしてはいけない」という旨の規定があるのです。

ですが、「アイスランド語が十分にできること」という曖昧模糊とした条件を付けることは合法ですし、何が「十分」かは雇用者サイドが判断することなのです。

というわけで、この点で雇用者側と、応募者である移民/外国人側の間には限りなくクロに近いグレーのエリアが存在することになります。




移民の女性たちが立ち上げた会社Geko
Myndin er ur RUV.is


毎回はねられ、返事さえもらえない移民の側からしてみれば「外国人だから、始めから相手にされない」と感じてしまうことは無理からぬことですし、根拠のないことではありません。

そこで、この移民女性たちが    ( *freezeここで注釈です。「移民」という言葉も曖昧な面があります。私や、あるいはペルーから来た人などは周囲から見ても、自分自身の理解からしても「移民」でしょう。

しかし、イギリスやドイツから来ている人たちは、自分たちが「移民」であるとは思っていないことが多いのです。「EU市民」–まあイギリスは抜けちゃいましたが− とかヨーロッパ人である意識の方が強いようです freeze解消)     自分たちの会社を立ち上げ、移民をサポートしようというのは、理解できることですし、良いことだろうと思います。

そのニュースの中で、イギリス人女性カトリーンさんが「英語で」インタビューに答え、「アイスランドの会社の経営者には、外国人に対する偏見が強いように思われます。私たちは、ここの会社を訪問し、そのような偏見を克服するためのセミナーのようなものも持ちたいと計画しています」

滞在歴五年というカトリーンさんの言っていることも、わかります。確かにその通りの面もあるでしょう、100パーではないにしても。ただ、このくだりを聞いて、不愉快に思ったアイスランド人は大勢いただろうと思います。100パーで。

「なんで英語で喋ってるお前が、偉そうに偏見だとか言うんだよー。この国はアイスランドなんだよ。せめて、アイスランド語を喋る努力をしねーのかよー」みたいな。

私自身、この発言には多少?なものを感じました。英語で喋ったということだけではなくて、その女性がイギリス人だったことがその一因ではないかと思います。

私もアイスランド語ができなくて英語で話をしたことは何度もありますし、「アイスランド語ができないから言わない」というよりは、「英語でもいいから、言うべきことは言う」方が正しいと、普段より考えています。

ですが、それがイギリス人とかアメリカ人だったりすると、何というか、どこでもいつでも英語が通じる「べきだ」みたいな「大国風」を吹かせているかのように思えるのも事実なのです。




設立者の一人カトリーンさん
Myndin er ur RUV.is


カトリーンさんの場合は、「私は五年もここに滞在しいていますが ...」と言っていたのですが、それでいて予定されたインタビューでまったくアイスランド語で話す態度を見せなかったことはマイナスに働いてしまったと思います。準備できた「はず」なのですが。

細かいこというと、そこにさらにその発言をした時の表情とか、ジェスチャーとかも加わるでしょうね。そういうのを引っくるめて「お高く止まりやがって」感情は出てくるのだと思います。

もちろん、これこそ偏見かもしれません。本人は全然そのような気持ちはなく、普通に考えていることを述べただけかもしれません。アイスランド語で受け答えする準備ができなかっただけかもしれません。言っていること自体は、正しいものを含んでいると私は考えます。

そして、このニュースから二、三日して、あるアイスランド人女性がVisirヴィーシルというネットのメディアに意見投稿をしました。「移民とアイスランド語」についてです。

長くなりましたので、今回はここで切ります。これ、結構いうべきことがたくさんありますので、焦らずに続けたいと思います。多少、議論のあり方が、メーガン・ヘンリー組と英国王室の喧嘩のようなところがあるにはあるのですけどね。

でもまあ、どのみち、コロナとマグマ以外には、多くのことは依然として周囲で起こっていませんので。


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地震、火山、マグマ そこにいる人いない人

2021-03-07 00:00:00 | 日記
小さな地震がまだまだ続いているレイキャビクより、こんにちは/こんばんは。前回のブログから一週間経ちましたが、状況は相変わらずです。

地震計で計測される地震は、一日に何百回もあるようですが、ここレイキャビクにいて身体で感じられるような揺れは、そうですね、震度3くらいのものが、それでも毎日四、五回はあるようです。




清涼感アップ用Pic 氷の洞窟
Myndin er eftir Davide_Cantelli@Unsplash


マグニチュードでいうと4程度のもので、時折り5に至るのかな?こちらの時間で金曜日の朝にはニュージーランド沖で、マグニチュード8を越える地震が三回もあったとかで、そういう規模にはとても及んでいません。

そういえば、インドネシアの大きな火山も噴火したそうですね。アイスランドで火山が噴火したりすると、必ず日本や、アジアのどこかの火山も噴火します。これは私が経験的に発見した法則。

地球の中心を通して、こちら側とあちら側は繋がっていることの証だと、勝手に信じ込んでいます。

今回のこちらの地震も、もとを質せばマグマ活動ですから、火山活動の一形態でしょう。

先週の水曜日には、観測チームから「明日のうちには、(指摘されているマグマ活動地帯で)マグマが噴出すると思いますが、規模は大きくならないでしょうし、人家への影響もないと予想しています。だから、パニックにならないように」とニュースを通して発表していました。

それで、テレビ局はそのマグマ地帯に向けて、定点カメラを設置。ライブフィードを始めたりしたのですが、それからまる二日を経た金曜日(これを書いている今です)には、まだなにも起きていません。

それにしても、このライブフィード、レイキャネス半島という国際空港の町ケフラビクや、観光名所の野外スパのブルーラグーン、震源地近くの町グリンダビクごっそり含む地域の中の、それなりに広大な原野に向けられています。

今回は特定の火山の活動ではなく、火山を含むマグマ地帯が活発化していますので、専門家も「この地帯のどこかからマグマが噴出する」以上のポイント特定ができていないのです

いくらなんでも当てずっぽうの範囲が広すぎるだろ?と思えます。これでカメラが万が一、マグマ噴出現場を捉えたら拍手喝采ものです。やっぱり、アイスランドのテレビだな、やれやれ。




RUV国営放送でも見れる定点カメラのライブ・フィード
Myndin er ur Ruv.is


ところで、世界は広く、地震というものをまったく経験したことのない人もかなり存在するようです。昔、昔読んだある日本人数学者の面白いエッセイがありました。「若き数学者のアメリカ」という題だったように記憶しています。著者はどなただったか、すみません、覚えていません。m(_ _)m

ミシガン大学に教えに行った時、校舎があまりにも薄いウエハースのような建物だったので、中に入るなり受付の女性に「この建物は、ちゃんと耐震構造になっているのか?」と尋ねたんだそうです。

すると受付の女性。にっこりして「この地では、建国以前よりこれまで、地震というものは計測されていません」

実は先週、リビアからの難民申請者の青年と会う機会がありました。会うのは初めてで、難民申請の件についての相談でした。

ところが、その青年は開口一番、「地震が怖くて夜も眠れません」聞けば、これまでの生涯で一度も地震を経験したことがなかったのだそうです。

それで「火山が爆発したら、岩石とが降ってこないのか?」「溶岩は町まで流れてこないのか?」「ツナミは大丈夫だろうか?」等々、難民申請の件よりは、防災相談のようになってしまいました。




十年前 レイキャビク大学で邦人主体で催された震災後チャリティー活動


アイスランドの家屋は強風とかもあるので造りがしっかりしているから、揺れで倒壊することは考えられない」「岩石が降ってくることはこの地域ではあり得ない」「溶岩が噴出しても、町からは遠いところだから」「地質学者は、アイスランド近海で地震によるツナミの発生はまずないと言っていた」等々、説明したのですが、不安は払拭はできなかったようです。

イタリアやトルコの大地震による、石造りの建物の崩壊や、3.11の津波の様子をニュースで見たことのある彼にとっては、悪いところを抜粋したワースト映像が脳裏に焼き付いてしまっているようでした。

でも考えてみれば、これは笑い事ではありません。難民申請者の中には、地震を経験したことない人は他にもあるでしょうし、こちらでのニュースも理解できないし、普通に入ってくるはずの情報が流れてこない環境にあることも多々あります。




レイキャビク大学での催しからのスナップ


という指摘を、教会の難民問題取り組みチームSeekers Ministry の女性牧師から受け、私たちの連絡域にいる人たちに向けて、簡単な情報と「心配しなくて大丈夫」というメッセージをSMSで送りました。

とはいえ、アイスランドの人たちがのんきに構えているわけではありません。とりわけマグマ地帯の近隣の町々では、マグマ噴出に備えての、避難のための手順、避難ルート、携行品の準備等々の詳細を住民に周知徹底する努力をしています。

自然が相手にして、すべてを「想定」することはできないことは、私たちが過去の経験から学んでいる(はずの)こと。不安を煽るようなことはすべきでないですが、万が一に備えるのは必要なことです。

で、こういうことを書きながら、もちろんあと一週間で(3月5日現在)、東日本大震災から十周年になることが、いつも頭の中にあります。

震災で、家族や友人を亡くされた方々、財産を失った方々、故郷の町を失った方々、人生の設計がまったく狂ってしまった方々、その他様々な形で被害を受けた方々にお見舞いを申し上げます。

このブログを始めて、初めての3.11(二周年)に書いたことがあるのですが、あの震災は私たち海外在住の日本人にも大きなショックでした。私などはなんにも直接の被害は受けていないのですが、あのような日々はもう過ごしたくないと感じます。

アイスランド発 ガンバレNippon!




同じ催しからのスナップ


その一方で、アイスランド人の心の暖かさを感じる機会でもありました。いつもアイスランドを馬鹿にするようなことを書いていますが、それがすべてでは決してありません。感謝していることもたくさんあります。

そのようなことを、十周年を機会にまたこちらのメディアに書いてみようと思っていたのですが、何というか、タイミングが悪くなってしまった感があります。不用意に3.11を持ち出して、こちらの現状での不安感を増加させてしまっては、意図とはかけ離れたところにいってしまいますし。

地震を生んでいる、今回のマグマ活動。今の時点ではどのような結末に至るのかはわかりません。私個人としては、「このまま収まってくれますように」と願うだけです。

何というか、この小さな島国の、限定された地域の、特定の活動だけを取ってみても、自然の力はすごいということでしょうね。その起こっている事柄自体に関しては、「なーんもできねえ」ということをひしひしと感じます。

与えられたこの時期、人間もまた自然の一部である、ということを改めて考えつつ過ごさせていただきます。


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