レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

アイスランド「シン」大統領、決まりました

2024-06-03 21:42:37 | 日記


清涼感アップ用ピック
Myndin er eftir Michael_Held@unsplash_com


こんにちは/こんばんは。

今回は、まったく速報性のない選挙速報です。

先週末の土曜日に、アイスランド大統領選挙の投票が行われ、日曜日の早朝に次期大統領が決定しました。ハットラ・トマスドティールさんです。

前回、選挙についてのあれこれを書きましたが、ハットラさんはその時点では支持率16,2%で四位。22,2%の支持でトップのカトリーンさんからは6%遅れをとっていました。

ですが、結果としては、ハットラさんが34,1%を獲得し、二位に落ちたカトリーンさんの25,2%に9%近い差をつけて当選したのです。三位のハットラ・フルンドさんは15,7%、四位のヨウン・グナールさんは10,1%、そして五位のバルドゥルさんは8,4%の得票となりました。

ハットラさんは、一週間あまりで支持率を倍以上に増やしたことになりますが、このような激しい支持率の変化の裏には、組織だった「反カトリーン」ネットーワークの働きがあったと言われています。

つまり、カトリーンさんの当選を阻止するために、当選の見込みが薄い候補者の支持者が登り調子だったハットラさんに票を投じたというのです。確かに一週間前の支持率と、実際の得票率を比べてみると明らかな傾向があります。

カトリーンさんは、ほぼ事前の支持率22,2%通りの25,2%を得ましたが、一週間前の支持率は19,7%あったハットラ・フルンドさんの得票率は15,7%と4%のダウン。18,2%だったバルドゥルさんは8,4%でなんと10%近い9,8%減。ヨウン・グナールさんは13,4%から10,1%と3,3%のマイナスでした。




選挙結果 各候補者の得票率
Myndin er ur Mbl.is


こうしてみると、確かにカトリーン当選阻止を目的/意図として、自分の支持候補からハットラさんに投票先を変えた人が相当数いたことは明らかのように見えます。

支持候補が当選の可能性薄となった場合、死に票になるのを嫌って投票先を変えることは普通にあります。それでも、例えば政党に直結した国会議員選挙の場合には、支持候補自身が当選を逃しても支持政党の得票にはなりますから、勝ち目がなくともその候補を選ぶのも一般的です。

大統領選挙や市長選挙のように、政党との関係がちょっと薄くなっている場合には、支持候補の当選が見込まれない場合には、「勝ち馬に乗る」ために当選見込みが強い候補者に乗り換えることも普通にあります。

ですから、選挙に際して、支持候補者の戦況から、直前になって有権者が別の候補者へ投票先を変更すること自体は、不思議でもありませんし、不道徳なことでもありません。選挙というのはそういうものでしょう。

ですが、ここで特筆すべきことは、この「投票乗り換え」が組織立って「アイスランド大統領選挙」で起こったということです。アイスランドの大統領は政治的権限のない、いわば「象徴」的大統領です。よって、政党からはほぼ独立したポジションになります。

ハットラさんは、アイスランド共和国誕生以降、第七代目の大統領になりますが、これまでの選挙で組織だった「投票乗り換え」の試みがあったとは聞いていません。

まあ、候補者が一(いち)ダースもあるようなことも初めてでしたから、その点では起こっても不思議ではない状況だったのでしょうが。

このような「組織的なカトリーン当選阻止戦線」が生まれた理由はいくつかあると思います。第一に先ほど書きましたように、アイスランドの大統領は「象徴」的大統領であり、フランスやアメリカのような政治的実験のあるポジションではありません。

国民は、政治色の強い人が大統領になることを嫌う傾向は元々あります。前大統領のオーラブル・ラグナル氏が政治家上がりの大統領となり、しばしば「越境」して政治に口を突っ込んできたことを「苦い思い出」として持っている人は多くいます。




次期大統領となるハットラ・トマスドティールさん
Myndin er ur Visir.is


そこから、ついこの間まで現職の首相であったカトリーンさんに対しても、懸念の声を上げる人は多くありました。カトリーンさんももちろんそれを承知で立候補したわけですが、その理由は彼女には圧倒的な個人的人気があったことであり、「超政党」的カリスマがあったことです。

ついこの間まで首相であったことは、PR的な観点から言っても、そのまま強みになるのですが、同時にマイナス作用もありました。つまり、これまでの首相在任中の期間の政治を見た場合、国民の生活上の不便や困難、改善されなかったこと等への批判というのは、最終的にはカトリーンさんへの批判となります。

まあ、この点が「カトリーン当選阻止」という積極的なアンチ精神が誕生した一番の原因だろう、と私は推測します。この反カトリーン運動は、相当感情的なものだと感じました。

私は、まあ感心できない点はあルことを認めつつも、カトリーンさんを支持しましたので、ある時点で「Vote Katrin」のスローガン入りのFacebook Profile Picを使ったのですが、(有象無象から)相当数のブーイングのコメントをもらいました。

全体的に見て、年長者にはカトリーン支持が多かったそうですが、若者たちにはアンチ・カトリーンが多かったということです。彼らが組織だったカトリーン当選阻止の首謀者で、種々のSNSを駆使して、ハットラさんへの投票を呼びかけたのだそうです。なるほどねー。

前回、支持率が高かった候補者五人の中で、唯一私が「こいつは嫌だな」と思ったのがハットラさんです。ワタシ的には最悪の目が出てしまった。まあ、何度か書きましたように、ここの大統領は政治的実権のない、アイスランド人の「お父さん」「お母さん」役ですので、アイスランド人ですらないワタシにはそんなに関係はないでしょうが。

まあ、これから大統領になるわけですから、始めから決めつけてはいけないですね。ハットラさんが名大統領になる可能性はもちろんあります。そうはならない可能性もあります。

アイスランド国民は、今回ハットラさんではなく、「反カトリーン」を新大統領として選びました。それがどのようなコンセンサスをもたらすのかは、今後の四年間に明らかになってくると思います。


*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com

Church home page: Breidholtskirkja/ International Congregation
Facebook: Toma Toshiki

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