レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

非アイスランド的犯罪? 「湿地」

2013-02-27 05:00:00 | 日記
正直に告白しますが、二十年以上アイスランドに住んでいるにもかかわらず、私はアイスランド語の本を読みません。もちろん新聞は読みますし(目を通します)、仕事の関係の書類等も読みます。それは当然です。

しかし、仕事が引けた後の夜の少時間とか休日のプライベートな時間に読むものは全て日本語です。アイスランド語ではリラックスできないし、英語ですら嫌です。(例外は詩です。詩はアイスランド語で読むのが好きです) 日本語って視覚性が強いから、多分その分、脳を使う必要性も落ちるのではと考えています。(^-^;

さてそういう前提の上での話しです。当然こちらで話題になる本も私は読みません。話題について行くために読んだ人の感想や意見は尋ねます(安直な生き方)。それで二十年間やってきたのですが、後から気がついて「損したかなあ」と後悔するようなこともあるようです。

今を遡ること十三年。2000年にアルナルドル・イングリーザソンという作家が出した「湿地」という推理小説がありました。相当評判になり2006年には映画化もされたのですが、もちろん私は読みませんでしたし、映画も見ませんでした。

で、最近、その「湿地」が日本語に訳され相当な人気を博していることを知りました。日本語なら!と早速アマゾンで購入し先の日曜日に一気読みしました。ちょうど雨降りで風も強い日曜の午後でミステリー日和。面白かったです、相当。

ストーリーを明かすような無粋な真似はしませんが、この物語りで描写されているアイスランドというものは、かなり現実に沿っているように思われます。ひとつの殺人事件だけではなく、性犯罪の世間での受け止められ方、警察官の質、隠された家庭内の問題、事件に関わるアイスランド社会の構造、等々。

もちろん小説ですから、多少極端な描写はあると思いますがそれでも十分にリアリティは保たれています。アイスランドの社会に関心があり理解を深めたい方がありましたら、是非読んでみて下さい。私もこちらでの発行時に読んでいたら、もう少し社会理解がスムースに行ったかな?と反省しています。

面白かったのは、作中主人公のエルレンドゥル捜査官が何度となく「典型的なアイスランド的な犯罪は非計画的で勃発的なものだ」とのたまうことです。暴力を伴う事件に関して言えば、確かにそのような印象を受けますね。

ただ、経済恐慌をもたらした、壮大な国家的規模の詐欺まがいの投資事業に関しては別の印象を持っていますが。もう少し深く掘り返せば、その二者間に繋がりがあるのかもしれませんけどね。

先の刑務所事情に続いてこのクライム・ストーリー。アイスランドに夢を置く人にはつまらないブログ題材かもしれませんが、ここもバラ色天国ではありません。

大学の日本語コースに集まってくる学生さん達は、同じような夢を日本に対して持っています。非常勤講師としての私の仕事は、まずそういう「夢」にちょっかいを出し、日本の嫌な部分を紹介することにあり、と心得ていました。

別にひねくれているわけでも、意地悪なわけでもないですけど。どの国や地方であれ、本当に良いことを理解するためには、悪いことも理解しなければならないでしょうから。良いことを理解するには、悪いことの存在「にもかかわらず」そこに組せず、それを克服して理解を深める努力が不可欠だと信じます。
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氷島 プリズン・ブルース(3)

2013-02-25 05:00:00 | 日記
今回もアイスランド刑務所事情の続きです。が、今回のトピックがこの刑務所事情をお知らせしようと思ったきっかけです。それは刑務所での「空き不足」ということです。

アイスランドには六ヶ所の刑務所があり約150人の囚人を収容できます。加えて新しい刑務所の建設(56人収容)が現在進行中です。完成すれば全体で200人強の収容力ですね。

この経済難の中にも関わらず新しい刑務所の建設が進んでいるということは、それだけそのニードが大きくかつ現実的であることを示しています。それもそのはずです。本来刑務所内にいるべきなのに「空き」がないために、「シャバ」で「ムショ入り」を待っている人が456人もいるというのです。

パーセントで言えば全受刑者の75%が塀の外にいると言うことになります。456人が背負っている判決の総数は595。ひとりでふたつ以上の罪の判決を受けている人がいますからね。

このニュースにはかなりびっくりさせられました。まず考えたことは「そんなんで大丈夫なのか?」ということでした。つまり殺人犯や性犯罪者がその辺でのんびりしている?っていう心配です。

ニュースの後の方で刑務所を統括する機関の長官が説明を加えていました。彼によると、服役刑と言ってもピンからキリまである。殺人や性犯罪、麻薬の取引の元締め、再々犯などはシリアスな刑と見なされ、そのような刑を受けている者はただちに刑務所へ送られる。だから、非常に危険な予備役?囚人が通りを歩いているということはない、とのことです。

もちろん、それでも456人の刑確定者が塀の外にいることは事実ですので、当局としてもただ新しい刑務所の完成を待っているだけではありません。

対策のひとつは軽度な犯罪での服役が確定している者を、刑務所外での社会奉仕事業へ従事させ、その者の刑期の一部に換算するということだそうです。これは「服役か奉仕か」という選択が許される程度の罪の者に対しては、既に多くの国で実施されているシステムだと思いますが、アイスランドの場合はそれを服役確定者に対しても用いよう、ということのようです。

もちろんどこかへトンズラされては困りますから、足首にGPSのような所在確認用電波を発するバンドが付けられるそうで、これはうまく機能している、と刑務所統括オフィスの長官は述べていました。

さてもうひとつ気になったのは、順番待ちをしている刑確定者の人達は、ムショ入りまでの間、何をしているのか?ということでした。新聞の報道ではあまり明確に記されていませんでした。

そこで受刑者とその家族のために専門に働いている同僚の牧師さんにその点を尋ねてみました。彼によると刑確定者は順番待ちの期間、学校に行ってもいいし働いてもいい。つまり普通にしていて良いのだそうです。もちろん海外旅行とかはできないでしょうし(確認してませんが)、制限はあるのでしょうが。服役が確定しているのに、仕事をクビにならない、と言うのも沈思黙考あるいは議論の課題ですね。ビックリすべきなのか?そうあるべきなのか?

アイスランドはちいちゃな社会なので人々の間に距離がない、ということは何度もお話ししました。庶民と政治家の距離も短いですし、庶民と人気歌手や有名作家との距離も短いです。

これをプラスの方向と考えるなら、マイナスの方向にも距離が短いということは当然かもしれません。服役刑を受けている人達が、日常生活で身近にいるということもまた、アイスランド的現実の一部なのです。

服役刑を科せられる人達だって千差万別でしょう。本当に悪いヤツもいるし、たまたま誘惑に負けて罪を犯してしまったという輩もあると思います。全てを一括にして「受刑者」で済ましてしまったり、彼らの存在に一瞥も払わない態度はここではこの現実の中で行き詰まる、と言うことなのでしょうか?
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氷島 プリズン・ブルース(2)

2013-02-22 05:00:00 | 日記
前回ご紹介したように、アイスランドの刑務所は全体的に清潔で明るく、気が滅入るような刑務所のステレオタイプとは異なっています。
アイスランドでは六ヶ所の刑務所が運営されており、収容人数を増やすために新たにひとつを建設中です。

刑務所内での受刑者全体の数は約150人で、実はこれは刑務所全体での収容キャパシティそのものなのです。ここには大きな問題があり、それは追ってお話しします。この150人中の5-10人程度が女性です。なぜか毎年同じような数に納まるようです。

女性の受刑者は集められて特定の刑務所に収容されます。女性の刑務官が必要ですし、いろいろと男性とは違う待遇が必要でしょうから、それは納得できます。

女性の集められる刑務所は、ちっちゃな建物でレイキャビクと隣接するコーパヴォーグルと言う街にあります。牧師として何回か訪問したことがあります。一応施錠されていることを除けばゲストハウスみたいでしたね。ガードの人たちも親切で。



女性が収監されるちいちゃな刑務所
Myndin er úr Fangelsi.is

私が訪ねたのはアフリカ系の若い女性で、麻薬がらみの事件で検挙されました。(本人は無実を訴えていました。旅行でアイスランドに来たのだが、誰かが勝手に自分のスーツケースに麻薬を入れて運ばせたんだ、と。私には真偽はは分かりませんが、あってもおかしくない話しと思われました。皆さん、海外へ出る時は気をつけましょうね、冗談でなく)。

四年の懲役刑を受けたのですが、妊娠していて、服役してすぐに女の子の赤ちゃんが生まれたので、赤ちゃん共々生活していました。刑期が長い場合には里親が付くのが普通ですが、彼女のように外国人の場合は刑期を半分終えた時点で出国地に送還されるのが基本のルールなので、特例的に子供と一緒にいたのでした。

その刑務所の隣りが幼稚園なのですが、刑期の終わりの方では女の子も二歳くらいになっていて、その幼稚園へ通っていました。受刑者であるお母さん、毎日自分で送り迎えするんです。(つまり、外に出してくれるんです) 一度一緒にお迎えに行きました。幼稚園のスタッフとか変な目で見てるんではないか?と疑っていたのですが、スタッフも子供達も全然フツーで、にこやかに話しかけてくれていましたよ。この辺はこの国のいいところですね。

しばらくして刑期の半分を終え、それまで暮らしていたヨーロッパの国へ戻されましたが、今どうしていることか。元気でかつ面倒に巻き込まれずに暮らしてくれることを祈ります。

この女性と面談をしていた時期は、ある意味定期的に「ムショ通い」をしていたので、「こういう生活なのか」と納得したりビックリしたりできました。システムも現場のスタッフも可能な限りで人間的な接し方をしていたのは良い方向でのビックリでした。

日本の刑務所では...幸か不幸か一歩も足を踏み入れたことはありません。若い頃お世話になった宣教師の方は「教誨師」をされていて定期的に医療刑務所へ通っていらっしゃいましたが、守秘義務からか、あまりその話しはしてくれませんでした。

刑務所の問題はそんなに深く考えたことがなかったのですが、刑務所って基本的にどういう場所なんでしょうね?罰を与えて苦しめるための所か?更生を願って自分をリフォームさせるための所か?一般市民に害が及ばないように隔離するための所か?

基本的な質問と思われるでしょう。でも現在のアイスランドでの刑務所を巡る議論は、国会議員達のを見ていても、結局はこれらの質問を巡ってのものであるようですよ。
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氷島 プリズン・ブルース

2013-02-20 05:00:00 | 日記
今回はアイスランドの闇の部分を探る衝撃レポートです。大げさ。へへ)刑務所事情です。刑務所と言うのは考えてみればどこの国にもあるであろう施設ですが、もちろん刑務所がガイドブックに出て来ることは少ないでしょう。あるとしたらアメリカくらいのものなんでしょうか?

実はこのところアイスランドでは、刑務所の「空き」がなくなりパンク状態になっていることがよくメデイアで扱われます。またその管理状態などにも疑問をもつ声が聞かれます。そこで、刑務所事情の紹介を少ししようか、と思ったわけです。

ものごと順番がありますから、まずは全般的なご案内から。一回では書ききれないと思いますので、ゆっくりと腰を据えて。

現在アイスランドには六ヶ所の刑務所があります。これは国の施設です。レイキャビク近郊にふたつ。少し南に下がったところにふたつ。北の街アクレリにひとつ。西の半島のところにひとつです。

加えて現在建設中のものが、これもレイキャビク近郊にひとつあります。

これら六ヶ所でお世話になっている人たちは全部で約150人程度。その内、女性が毎年6-10人程度とのこと。

一番大きくて刑務所っぽいのは、レイキャビクから車で一時間ほど南に行った「リトラ・フレイン」という刑務所です。87人を収容することができるそうです。

レイキャビクのダウンタウンのど真ん中にも刑務所があります。これは黒の石造りでそうと聞かなければ刑務所とは分からないでしょう。1874年の建築で規模もそう大きくはありません。



レイキャビク、ダウンタウンの真ん中にある刑務所
Hegningarhus
Myndin er úr Fangelsi.is

アイスランドという国名と並べた場合、刑務所というのはとても不釣り合いなイメージがあるのではないかと想像します。それは刑務所が普通はオドロオドロしいイメージのところだからと思うのですが、アイスランドの刑務所は、どちらかというと明るい、清潔、コージー、というような感じの場所なのです。

実はワタシ、入ったことがあるんです。なんてね!受刑者としてではなく、面会人(牧師)としてですが。ちなみに刑務所、受刑者とその家族のために専門で働いている牧師さんもいます。私の方は移民関係ですので、私が訪問するのも例外なく移民か外国人が刑務所に入っている場合です。

「リトラ・フレイン」は二回くらいしか訪問したことがありませんが、確かに清潔だったし、暗ーいイメージはなかったですね。ガードの人なんかも目つきの鋭い人がいるのではないかとビビっていましたが、意外とみんな親切なおじさんたちでした。

難民申請者で、偽造パスポートを使ったために空港のチェックに引っかかる人がかなりいます。彼らは欧州経由で北米に行く途中なのですが、アイスランドで足止めです。不法出入国なので「リトラ・フレイン」に二週間ほど勾留される人が多いのですが、彼らに訊いても「ホテルみたいだった」というのをよく聞きます。

先日、この「リトラ・フレイン」から脱走した囚人がいました。一週間弱人のいないサマーハウスに潜伏した後、自ら出頭しましたが、これを期にまた観視体勢の見直し等が訴えられています。ここのところ、刑務所内で囚人間の計画殺人未遂等、映画もどきのビックリがいくつか起っていたのです。

清潔、明るい、コージーとは言っても刑務所ですからねエ。受刑者にも人権がありますし、更生の可能性も考えればきちんとした待遇がプラスに働くのでしょうが、居心地が保証されてしまうと、「また来てもいいや」なんて軽く考える輩も出て来るのではないかなあ?

罪と罰と許し。大きな問題です。
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Facial recognition system

2013-02-18 05:00:00 | 日記
「相棒8」はこのシリーズの中でも気に入っているシーズンですが、最終話でFacial recognition system:自動顔認証システムというのが出て来ました。街の防犯カメラ等で指名手配犯等の顔を検索する仕組みだそうです。実際にはまだないと思いますが。

私は人の顔を覚える、というのが昔から苦手なタチです。刑事もので証人がモンタージュを作るのを手伝う場面がよくありますが、あれは私にはあり得ません。あの立場になったら犯人の仲間と思われることでしょう。うやむやなことばかり言って。

人それぞれで人の顔を覚えるのが得意、不得意はありますよね。それは個人的な特性の違いでしょう。でもそれとは別に、大きな社会集団としての顔識別能力の違いというのもあると思います。

例えばですねえ、日本に住んでいる日本人ならお互いの顔と言うのはかなり細かく特徴を掴んでいるものなんだろうと思います。例え顔覚えが不得意でも。ところが日本人が外国へ行くと、「えっ?みんなおんなじカオ...」という危機に直面することが、個人の能力の問題ではなくてよく起るのではないかと思うのです。

学生時代にマレーシアへ行ったことがあったのですが、あの時の衝撃は忘れません。街を歩いている男性がみんな「おんなじ」なんです!

子供達がまだ小学校の頃、ふたりを連れて帰国しました。コペン経由だったのですが、コペンからの成田行きには大抵多くの日本からの旅行客の人たちも乗り込みます。待合所は日本人で溢れます。そこで娘が「みんなおばあ様に見える...」(家の子供達は祖父母のことは「おじいさま」「おばあさま」と華族の末裔のように呼びますが、私のことは「とうちゃん」です、今でも。クレヨンしんちゃんの影響)

もちろんこれは日本人に限った問題ではなくて、外国人が日本へ来たら当面は顔の見分けに苦労することでしょう。実際に私の元妻は日本にいた頃、もう何回も会ったことのある先輩牧師に「初めまして」と挨拶してましたから。

私の素人見解ですが、私たちの脳には顔識別プログラムがインプットされているのですが、それは日本人なら日本人の見分けがつかないと困る、という必要性が前提になっているのです。

だから、普通必要のないマレーシアやボリビアの人の顔の識別能力はがたんと落ちる。どこの国の人であれ、縁遠い国の人の顔は「不必要事項」に入ってしまい、その処理能力も脳から省かれてしまっているのでは?と思います。

滞在二十年経ったアイスランドでも、私の顔認証システムはあまり高性能ではありません。「四十代後半から老年にかけての短髪メガネ女性、かつズンドウ型」というのは特に難しい対象で「みんなおんなじ」化してしまいます。

最近もっとヤバくなってきました。今年は日本からの交換留学生の方が多いのですが、その内の女子学生の皆さんまで「みんなおんなじ」に見え始めているのです!ゴメン、これ全然悪気があるわけでも、軽く見ているわけでもないのだけど。ボケだと思ってご容赦!m(_ _)m

「向こうはこっちを知っている。こっちは向こうが誰だか覚えていない」状況ってバツが悪いですよねー。どうにかならないでしょうか?

で、今欲しいのはiPhone用の「顔認証システムアプリ」です。これをBluetoothで専用メガネディバイスに飛ばして、「コンタクト」に入れてある全ての顔を識別。コンタクト外の人でも「テンポラリー」に登録することができればもっと便利でしょうね。

どうですか?ディベロッパーの皆さん、できる?

そう言えば少し前、007の映画で赤外線で中を透視できるメガネがあったっけ。ボンド氏はもちろん女性の服を透視するのに使ってましたが...ホントにあれば絶対買うかな?



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