レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

外国人居住者とアイスランド語 じゃあ、Siriは?

2021-04-25 00:00:00 | 日記
Gledilegt sumar! グレージィレクト・スーマル!




夏だ〜!!


「楽しい(喜びのある)夏を!」という夏の始まりに交わす挨拶言葉です。先の木曜日から、アイスランドは「夏」となりました。毎年、四月の第四木曜日が「夏の第一日目」と定められており、国民の祝日にもなっています。

実際には日中気温がまだ10℃に届かないような日々ですので、気温的には東京とかの半分にも至っていません。それでもとにかく、たとえ冷え込もうが、雪が降ろうが、四月の第四木曜日からは「夏」なのです。

凍てつく夏 古の知恵では想定内


前々回にも触れましたが、アイスランドで季節を測るメジャーは、日の光であり気温ではありません。このことに慣れる、というか学ぶまでには何年もかかりましたよ。(*^^*)

さて、アイスランド語について、もう少し付け加えておきたいと思います。前回は、アイスランド語と移民をめぐる議論に関して、アイスランド語を学び使う「はず」の移民・外国人居住者の意識の変化が十分に考慮されていないのではないか?というようなことを述べました。

今回は、もう少し枠を広げて、必ずしも移民・外国人居住者だけではなく、アイスランド人自身にも関わる変化についても考えてみたいと思います。

まず、現在のアイスランドで、アイスランド語の地位というか「ありよう」にいの一番の影響を与えているのは、今やこの国の基幹産業となった観光業です。

2008年秋のリーマンショックに続いた経済破綻からアイスランドを救ったのは、下落したアイスランド・クローネと、それを逆手に取った攻めの観光政策 –安くあがるアイスランド観光– でした。




経済破綻のアイスランドの救世主となった観光業 国主導のキャンペーン
Myndin er ur old.inspiredbyiceland.com


以来、あれよあれよという間に観光業は大きく膨らみ、毎年記録を更新する観光客ラッシュとなり、同時にお金をこの国にもたらしてくれました。

それに伴い、外国人観光客を「おもてなし」する側のアイスランド人も、多少国際的センスを身につけ?英語等で受け答えすることへのアレルギーを克服していったようです。っていうか、「結局、金がものを言うか?」みたいな。

この点については、四年くらい前に書いていますので、そちらも読んでいただけると幸いです。

今はこっちが案じている アイスランド語の将来


観光業のように、直接外国人を相手にするビジネスの場合、どうしてもアイスランド語以外の言語が、そこに入いり混んでくるのは避け得ません。入り込んでくるだけではなく、支配的になってきます。日本でも、この十年くらいで、やたらに中国語が見に入るようになってますよね。こういう事実が、アイスランド語の地位を押しやり始めているように思われます。

これと並行して、さらに大きな生活の分野で生じている変化も考える必要があります。それはIT技術のおそろしく早い進歩です。

旅行関連でいうならば、例えばスマホの翻訳アプリ。出た当初は使い物にはならなかったのですが、今や、メジャーな言語ならこれもかなり使えるものになっていますよね。観光客の人には重宝するツールでしょう。

私自身が使うもので、さらに出来が良くなっていると思われるのは、Google translation のような、書いたものの翻訳ソフトです。つい数年前までは、例えばアイスランド語を日本語に変換すると、ものすごい「テンネン」訳が出てきて笑わせてくれました。

ところが今では、例えばアイスランド語で書いたものを英語にした場合、かなり完成度の高い訳文が出てきます。ところどころチェックして、直せばそのまま英文として使えるような。(もっとも私レベルの英語ではありましょうが) これは、かなりありがたい進歩です。




試験的に前回のブログをGoogleで英訳 


ちなみに、この西街ブログのある回を、英語に訳してみたのですが、きちんとした英語にはまだまだ先があるようですが、それでも大方の意味はきちんと伝わる英文が出てきました。

それを見てちょっとヤバッと思いましたよ。このブログ、どうせアイスランド人にはわからないから、とかなり気楽に悪口も書いています。どこかのヒマ人が英語に訳して読んだりするかもしれません。気をつけないと。

Facebookでの翻訳機能も含めて、日常生活の中での通訳・翻訳関連のお助けアプリや機能はかなり進化してきています。これも、ここで生活する外国人に強い影響を与えるものです。

良くいえば「お助け」ですが、悪くいえば「わざわざ勉強しなくたっていーや」という気にさせる「誘惑」でもあります。

さらにITが進化して、本当に「翻訳こんにゃく」のようなものができるなら、確かに外国語の学習は無用になるのかもしれません。が、まだそこまではいってないですから、例えば、アイスランドでこちらの人と会話をしたいのなら、言葉の勉強は必要だと思います。

そのようなIT技術の進化の中で、アイスランド語の将来を本当に心配している人たちがいます。以前に見たニュースだったので、ちょっとどこのどいう人たちであった正確なタイトルとかを覚えていないのですが、IT関連の人たちでした。

彼らの言うには、「アイスランド語を将来的に維持していくためには、日々新しく開発され、世界に広まっていくアプリ・ソフトの波に、アイスランド語が付いていくようにしなければなりません」

例えばお馴染みのSiriですが、日本でも答えてくれますし、英語でも何種類か選べますよね。でもアイスランド語はありません、まだ。となると、例えばアイスランド人の若者がSiriを使うときには、英語かなにかを使うことになります。

そういうことが、すべてのソフトやアプリについて当てはまっていくわけです。若い世代のITとの密着度は「切っても切れない」域に達していますので、当然若者たちが「アイスランド語を使う」部分が、「日常生活」から減っていってしまっていることになります。




Siriはまだアイスランド語ができませ〜ん!


確かこの点に関しては、アイスランドの教育関係者も承知をしていて、ITソフトへのアイスランド語のアクセスを可能にする努力を、特別に助成しているはずです。これはちょっと未確認情報、確かではありません。m(_ _)m

ちなみに、アップルユーザーの私ですが、iPhoneやiPadではアイスランド語が選べます。キーボードなどでも、始めからアイスランド語のものが用意されています。

これらも、考えてみれば大した努力だと思うんですよね。目一杯勘定しても、三十万強の需要しかないマーケット用に仕様しているわけですから。こういうの、アップルが率先してやっているわけがないから、こちらの省庁からお願いするか、お金を出しているのではないかと想像するのですが... これも未確認です。

と、いうわけで、現在は「アイスランドではアイスランド語を話しなさい」と言っているだけでは話しは終わらないのでした。

試しに、Siriに“Speak Icelandic” と言ってみたら、“I can’t speak Icelandic yet” と可愛いBritish Englishの女の子Siriは答えてくれましたよ。Yetというからには、将来はその気があるのかしら?


*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。

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アイスランド人と移民、ヨーロッパ市民

2021-04-18 00:00:00 | 日記
こんにちは/こんばんは。




これはNOTマグマ 清涼感アップ用ピック
Myndin er eftir Alexander_Milo@Unsplash


まず、書く方も飽きてきたマグマの続報を一言。先週、新たに四カ所かそれ以上の噴出口ができました。写真で見ると、もう、そこら中からマグマが噴き出している様相となりました。

噴出以前より「この地域がマグマが地表近くまで上昇しているエリア」というものが示されていたのですが、その中のいたるところでマグマが噴き出している、ということのようです。

観光に来る人たちが多かったことから、レスキュー隊が常時駐在するようになっていたのですが、さすがに24/7というのは難しいので、有毒ガスの濃淡や風向きによっての規制とは別に、レスキュー隊らの休息のために「今日は入山禁止」という日が設けられていました。

ですが、この週末前にルールとして「午前零時から正午まではレスキュー隊は駐在しない」ということになったようです。つまり、この間の時間に行く人はすべて自己責任となります。

毒ガスの燻製になっても、マグマに落ちて溶けてしまっても、誰も助けには来ないよ、ということですね。まあ、マグマの流れに落ちたら、どのみち助かる可能性はないでしょうが。

このマグマ活動、「年単位の活動となる可能性が高い」ということですので、焦らずとも、皆さんも直にご覧になれる可能性はあると思います。コロナ次第ですね。




最近のマグマ地帯 多少「地獄」感アップ?
Myndin er ur Visir.is/VILHELM


さて、この辺でマグマは切り上げ、中途半端になってしまっていたアイスランド語と移民のお話しを再開したいと思います。

アイスランド語についてもう一度考える - 就活の必須事項?

アイスランドではアイスランド語を話す「原則」


今回は自分の考えを少し書いてみたいと思います。私自身、この国での生活が来年で満三十年になる「外国人」ですので、アイスランド語というものを考える機会は嫌というほど与えられてきました。

読み書きはわりと得意になっていたのですが、苦手だった会話も、今ではそんなに構えなくともアイスランド語でできるようになりました。それでもペラペラからは程遠いですね。おそらく「ペラペラ」になることは一生ないだろう、と感じています。

で、このトピックに関しましては何度も触れてきましたので、ある程度、前に書いたことと重複する部分は出てきますがご容赦ください。

アイスランドは「超」小国ですので、非常に強い自意識を持っています。それは逆にいうとコンプレックスでもあります。アイスランド語という言語は、その自意識を保つためのキーポイントになっています。

アイスランド語というものが、この国から消えてしまえば、ここは単に「ヨーロッパにいくつもある島の中の、やや大き目のヤツ」になってしまいます。デンマークの属国となった1814年以降も、アイスランド語は維持され、1918年の主権回復、さらに44年の独立に向けては、アイスランド語への執着がアイスランド人の士気を鼓舞したと聞いています。

ですから、アイスランド人がアイスランド語に特別の愛着を持ち、「アイスランドがこの言語を維持していける社会」であることを強く望んでいることは理解できますし、私自身、特に反する気持ちがないどころか、むしろ賛同しています。

問題は、それが他者に対してのアイスランド語の強制や、アイスランド語が人の価値を測るメジャーと化してしまうことが多々あることなのです。

これはクラッシックな現象。この現象がスローガン化したのが「アイスランドではアイスランド語を話しなさい」というものといって良いと思います。このスローガンはアイスランドの移民に対するスローガンです。

実際には、英語で仕事をするアイスランド人や、英語で授業をする大学などもあるのですが、ここにはそういった状況は含まれていません。このスローガンは移民に対してだけのものなのです。




アイスランド語とは...? このように見えます
Efni myndarinnar er ur bok ,,Helkold sol" eftir Lilju Sigurdardottur


「あなたがこの国で暮らしたいのであれば、この国の言葉と文化を学びなさい。それがこの国と国民に対する尊敬の念ですよ」というようなことが、このスローガンに続くことが多いです。

「アイスランドではアイスランド語を話す『原則』」の回にご紹介した、アイスランド語教師の方の意見もこの線に沿っています。

私も、原則的はこの意見にも同調します。「原則的には」というのは、それが強制や差別の基にならないという限りで、ということです。

ですが、ここで顕著な時代の変化というものが存在しています。それは「移民とは誰か?」ということです。

私は移民です。きた当初から日本へ戻る予定はありませんでした。同じような理由で、ペルーや、あるいは南アフリカから移ってきた人も、自分自身を「移民」として自覚していることでしょう。

私のようなものは、古典的な意味での「移民」であり、そのような移民に対しては「アイスランド語を学んだほうがいいよ」というのは正しいアドバイスだと思います。

「皆が」というつもりはありませんが、古典的な意味での移民の意識のある人の多くは、成果はともかくとして、アイスランド語の学習には取り組んでいると推察しています。移住するからには、ここに住むつもりできているのですから。

ところがです。2005年くらいだったと思うのですが、ヨーロッパ経済領域の「加盟国間での労働者の往来の自由」のルールが、アイスランドでも発効しました。多くの労働者が欧州の他の国々からやってくるようになり、移民労働者数が急増したのです。

その直後の2008年に経済恐慌があり混乱したのですが、経済が持ち直し始めた2012年くらい以降、また欧州からの労働者の流れが加速します。

問題はですねえ、これらの欧州からの労働者は古典的な意味での「移民」ではないということなのです。彼らは仕事をして、お金を稼ぐために来ているのであり、仕事がなくなれば他の場所へ移っていかなければなりません。アイスランドに住むことが目的ではないのです。




ヨーロッパ経済領域 アイスランドとノルウェーはEU外からの加盟国
Myndin er ur en.wikipedia.org


ホワイトカラーの人たちについても同じことがいえます。彼らの中には「欧州人」としての意識が高い人が多く、アイスランドも、譬えていうなら、欧州鉄道沿線の中の単なるひとつの「駅」のように考えています。(譬えですよ。アイスランドには鉄道はありません) 面白いものがあれば滞在するし、嫌になれば移っていく。

もともと、EU自体が「欧州共同国家」の方針を持っていますので、これは当然のことといえば、当然のことです。

これらの、古典的な移民ではない外国人居住者の存在は、移民・外国人居住者とアイスランド語の関係についても変化をもたらしました。いつまで滞在するのかはっきりしない労働者の人に、時間を割いてアイスランド語の勉強をする気にならない人が多くなるのは当然でしょう。

また、アイスランドという国より、ヨーロッパという地域(共同体)への意識が強い人に、「アイスランド語なんて必要ないじゃない。英語やフランス語で十分。EUには公用語がありますから」という人が多くても不思議ではありません。さらに、ちょっと言い過ぎであることを承知して付け加えますと、アイスランドへの尊敬よりは「(ヨーロッパ)大陸の水準はもっと高いのよ」的な上から目線もあるように思われます。

こういう変化の中で、「アイスランドではアイスランド語を話しなさい」というスローガンそのものが「時代にそぐわなくなった」と言うつもりはありませんが、現在アイスランドで生活する外国籍者全員に一律に適用されうる原則ではなくなっていると考えます。

これは、この国に暮らしている「人間」という、言語の利用者にスポットを当てた際に指摘できることなのですが、最近のアイスランド語についての議論を見ても、(私の見た範囲では)ほとんど触れられていません。現地人であるアイスランド人一般は、いまだに昔の概念でしか外国人居住者を見ていないように、私には思われます。

ツーリズムやPCやスマホのアプリなど、まだまだアイスランド語の将来に影響を与えている他の要因もあります。が、長くなり過ぎますので、今回はこの辺でオシマイです。m(_ _)m


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春の寒い日々と熱いマグマ、さらに熱い商魂

2021-04-11 00:00:00 | 日記
こんにちは/こんばんは。

この冬は温暖でほとんど雪もなく過ぎていきました。ただ四月に入ってから急に気温が下がり、レイキャビクではほぼ毎日氷点下になっています。雪も降り、久しぶりに、出かける前の車の除雪が必要となりました。

「パースカー(復活祭)には雪が降る」というアイスランドの都市伝説は今年も生きていたことになります。

アイスランドでは、気温や天候で季節を測ることはできません。一年中冬のような日があり得るという意味ですが。八月に雪が舞い、セーターが必要になることもあります。




アイスランドの春は「陽光」だより
Myndin er eftir Norris_Niman@Unsplash


ここでは、季節を測る決め手は「日の光の強さ」「長さ」です。これは絶対に裏切らないテッパンの自然現象ですね。

例えば、今これを書いているのは九日の金曜日なのですが、明け方はマイナス6度まで冷え込み、朝8時半でもマイナス3度でした。

ところが日の出は6時16分で、8時半にはもうきらめく朝日が辺りを覆っています。日の光がもう元気になっていますので、家の中にいると暑いくらいの熱をあたえてくれます。

冬の間の朝8時半。真っ暗で、風の音がゴーゴーと耳に付く毎日。気温は同じようなものでも、四月の8時半はまったく違ったものなのです。太陽光はなんとかホルモンの分泌に関係するとかですが、自然と人間の不思議な関係を感じます。ちなみにこの日の日没は夜の8時43分。

さて、もうひとつの自然現象、マグマ噴出の続報です。




噴出した直後の新たなマグマ流出箇所
Myndin er ur Visir.is/VILHELM


レイキャネス半島を中心とする二月末からの地震の連発。三月中旬のマグマ噴出。これらについてはお知らせしてきました。本当に不思議なのですが、マグマが出てきてからは、地震はぴたりと止まりました。そういうもんなんすかね?

その流出するマグマ噴出地帯が観光スポット化しているのですが、この一週間で展開がありました。まだ復活祭中の五日の午前中に、今、マグマを噴出している箇所とは別のところで、新たにマグマが流れ出したのです。

ふたつめの噴出口というものは、実は始めのものすぐ横にできていましたので、正確にはこれはみっつめの噴出口となります。

面白いのは、これも始めの噴出の時と同じく、なんでもない普通の原野の一部が裂けて、そこから溶岩が流れ出始めたのです。何の前触れもなし。

始めの時と違うのは、今回はマグマ見物にやってきた観光客がうじゃじゃけて周囲にいることでした。コワッ! 新たな噴出口が人の群れに重ならなくてよかった。

始めの噴出口があるゲルディンガダーリルには、その南方から観光登山客/ハイカーが接近するのですが、新たな噴出口はゲルディンガダーリルの北東約七百メートルのところに出現しましたので、マグマ流出による人的な危険はありませんでした。

新たな噴出口からの溶岩は、真っ赤な –というか、オレンジ色?– の一筋の川となってさらに東にあるMeradalirメーラダーリルという低地に溜まっているようです。

(* さらにこちらの時間で土曜日の未明に、さらに別の場所から噴出が始まったと報道されました。場所は下のマップの斜線部分の中にあるようです)




左側の紫部分が始めからの溶岩流出 中央右の薄紫が今回 間の斜線部分はマグマ地帯の上
Myndin er ur Visir.is



今の様子 マグマが溜池化?してます
Myndin er ur RUV.is


Geldingadalurゲルディンガダーリル、Meradalurメーラダーリルという地名のDalirダーリル(単数はdalur ダールル)とは「谷」を意味します。新たな噴出口からの溶岩は、山というか丘の合間の低地地帯を川となって、さらに低い土地へ流れ込んだのです。

普通、火山とか溶岩とかって、人里離れたところにあるもの、というイメージがありますよね。まあ、桜島は別です。阿蘇山、浅間山だって、そんなに遠くじゃない。富士山だって、そこに見えるではないか、という方もありましょうが、「見える」ということと「近くにある」とは別もんです。

Visir.isとうネットメディアに、ちょうど良いイラストが載っていましたので、ちょっと無断拝借して掲載します。





マグマ地帯と周辺のマップ
Myndin er ur Visir.is


左側に青で囲んだところがケフラビク国際空港です。右側で囲んだところがハフナーフョルズルというレイキャビクの隣りの港町です。空港からハフナーフョルズルまでが、普通に車で走って20分ほどの距離になります。

中央の赤とオレンジ色で示されたところが、今回噴出しているマグマ地帯です。ゲルディンガダールは線の左下方、新しい噴出口は右上方に位置します。こうしてみると、そう遠いところで起こっているわけではない、と納得いただけるかと思います。

さて、当初より、マグマの流出に伴う有害なガスについて心配されていました。始めの噴出の場合は、それほどの濃度はなかったようで、「いつも風上にいるように」と観光客に注意がなされただけで、特に立ち入り禁止とかにはなりませんでした。

ついでに、毒ガスマスクが売り切れになったそうです。毒ガスマスクなんて、そこらで売っていることすら知らなかったですよ、ワタシは。

それが、この一週間くらい、有毒ガスの濃度が濃くなってきており、当局もようやく本気で心配し始めたようで、「入山禁止もあり得る」と報じられています。金曜夜のニュースでは「有毒ガスの濃度は初期に比べて二倍以上になっており、喘息等の持病がある人は近づかないように」という注意がなされていました。

木曜日のニュースでは、ガスに巻かれて倒れた十六歳の女の子がインタビューを受けていました。その子はそんなに溶岩自体には近づかなかったものの、気分が急にに悪くなり動けなくなりました。

レスキュー隊が、非常に迅速に少女を担ぎ出し、救急車でケフラビクの病院に搬送。大事には至らず幸いでしたが、ガス対策はこれ以降はより重要になってくることでしょう。

というのは、コロナで冷え切ったアイスランド観光業界は、早くも真剣にこのマグマ観光をマーケッティングに乗せ始めているからです。いろいろな観光案内サイトに、宣伝を載せ始めたとか。

「まさしく天からの贈り物。宣伝しなくても、世界中のメディアにこのマグマの前で撮ったセルフィーとか、航空写真が溢れています」とツーリストビジネスの関係者。

世界中に写真が溢れていたとしても、コロナが収束してくれないうちは「捕らぬ狸の... 」という感じがしないでもありませんが。それに有毒ガス。

多分、旅行業者がガスマスクも準備することになるのでしょうね。テレビでハワイとかインドネシアの火山の「マグマを見に行く!」とかいうのを時々見かけますが、大体ガスマスクが用意されていますからね。

Ertu buin/n ad fara og skoda eldgos? 「マグマ、見に行った?」というのが、最近のアイスランド社会の挨拶言葉になってきています。私自身は、今すぐに行くつもりはありません。

なんせ、寒いし。雪降ってるし。歩くの嫌いだし... マグマが足元から出て来ない保障はないし。もう少し暖かくなってからなら、考えてもいいかもしれません。

いずれにせよ、ひとりじゃ絶対に行かないから、ワタシは。ということは、多分、絶対に行けない、か?


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オレンジ色の復活祭

2021-04-04 00:00:00 | 日記
Gledilega paska!! グレージィレーガ・パウスカ!!

復活祭の喜びのご挨拶をレイキャビクの西街よりお送りいたします。復活祭はあまり定着していない日本でも、新年度の始まりの時期ということで同じような「春気分」が広がっていることと想像します。




グレージィレーガ・パウスカ 復活祭おめでとうございます


いやあ、先週はまた忙しい日々となりました。「『忙しい』とは『心を亡くす』と書く」とか、よく聞くところですが、これって当たってますよね。日本の知恵だな。

よく考えるのですが、別に物理的な意味で膨大な事務を処理しなければならないとか、何箇所も訪問しなくてはならない、とかいうのではなくとも、どう対処すべきか判断が難しい案件や、とっかかりがない問題があると「忙しく」なりますね。

先週、ちょっと書きましたが、アイスランドでのコロナ事情に変化がありました。EUと協力国間ではコロナ感染の度合いを色分けした地図が作られています。

この間まで、アイスランドは唯一の「グリーン国」でコロナフリーにランクされていました。今は一段階落ちてオレンジ。その下には「暗いオレンジ」と、さらに最悪の「どす黒い赤」があります。ヨーロッパの大半は、この「暗いオレンジ」と「どす黒い赤」で塗りつぶされています。

三月の中旬まで、アイスランドは新規感染者ゼロ、という日が続くようになっていました。ところが、レイキャビクのふたつの小中学校を含む三箇所でクラスターが起きてしまい、これが英国型の変異株であることが判明し、大慌てになったわけです。




今現在のヨーロッパコロナ地図
Myndin er ur www.ecdc.europa.eu/en/covid-19/


このクラスターが判明したのが、確か3月22日の月曜か翌日の火曜日くらいだったと思うのですが、政府はかなり迅速に対応し、水曜日に新たな対応策を公にしました。

それで、幼稚園を除く学校はすべて翌日から休校。子供や青少年を含むスポーツ活動は野外屋外を問わず禁止。スイミングプール、ジム、ゲームセンター等もクローズとなりました。

それまでは二百人までの観客が許されていた音楽会や芝居等の公演も禁止。教会だけは例外で、三十人枠で集会を持つことが許されました。ただ、これは「教会としての集会」に狭い意味で限定されており、集会後のお茶とかは含まれません。

お茶の時間等は、普通の集会に分類され「十人まで」と制限されています。

教会が例外的措置を得られたのは、フェルミングという十四歳をめどにした若者たちの献信礼が、すでに国内全域で始まろうとしている、あるいは教会によってはすでに始まっている時期だったので、これを全面禁止にすることが難しかったのだろうと思われます。

私は、今回の政府の対応は「迅速かつ明瞭」だったと評価しています。今回の政府の意図は明瞭で、「とにかく英国型変異株を『ここまで』で止める。小中学校が現在のクラスターの中心なので、ここを重点的に扱う。

その学校は、もうすぐ復活祭休暇に入ることになっているし、だったら前倒しにしてすぐに休校にしよう。

フェルミングはタイミングが悪いが、三十人を限度として認め、同時に延期できる人は延期するように教会に呼びかけてもらおう」




本来ならパウスカーの風物詩 フェルミングの一風景
Myndin er ur is.Wikipedia.org


もちろん、また営業時短を強いられる飲食店や、フェルミング・パーティーで予約を受けていたケーキ屋さんその他からは失望や怒りの声が上がったのは、日本と同じです。

が、この対策は実を結んでいると思います。その後、クラスターは発生していませんし、新規感染者数は多い時で十人くらい。その大半は隔離状態にある人ですので、市中感染は防げているようです。

そういう状況なのですが、この対応策、迅速だったということは、われわれ一般時から見れば、急にやってきたということ。それにいかに対応するかで「忙しく」なったわけです。

周囲の教会を見回すと、大半は通常の日曜礼拝はオンライン形式にする。フェルミングは、式を小分けにして回数を増やすと共に、一回の式を三人までに限り、家族等の同伴者も制限する。また同時にフェルミング予定者全体に延期を進める、というような感じです。

これらを、きちんと段取りをつけるのは、かなりの労働だろうと思います。私は幸か不幸か、フェルミングには関係していませんので、嬉しい意味での「蚊帳の外」でした。

それでも、私がいる教会でも復活祭礼拝はビデオのストリームでする、という風になりましたので、また礼拝を収録しなければなりません。そういうのが三回分くらい入ってきたので、この点は私が物理的に忙しくなった部分です。




フェルミングのパーティー会場の例 今年はこれも十人という制限付き
Myndin er ur Nautholl.is


でも、それよりも私が「心を亡くした」ように悩んだのは、集会を持つか持たないか?ということでした。私は難民の人たちの集会をお世話しています。彼らの中の半数以上はすでに滞在許可を受けています。ですが、教会生活に入って間もない人が多いため、集会がないと散り散りになってしまう傾向があるのです。

そういう風にしてこの一年間の大半を費やしてきたのは、ある意味、町の商売をやっている皆さんとかと同じ「苦しい日々」であったわけです。

それがやっと通常に戻ってきたと思ったら、またこの制限。それは、まあ仕方ないです。困ったのは、今回は「三十人までの集会」が許されていること。三十人、だったら、私の場合は二回に分けて、集会を持てば大丈夫な数なのです。

問題はです。「すべきか、すべきでないか?」これがクリスマス時のように、状況が良い方向へ向かっている中であったら、躊躇なく集会を小分けにしてでも継続するところです。

しかし、今回は「英国方変異株の侵入を防ぐ」という水際での攻防なので、事情がまったく違います。

で、結論としては、私も教会での「物理的な」集会は自粛することにしました。決め手は、やはり周囲の「暗いオレンジ」や「どす黒い赤」に塗られている国々の状況です。イタリアやフランス、オランダ。

ああいう風にならない余地があるのなら、それをきちんと追求すべきと思います。政府は政府で対応しているのですが、今、自分の手元にある案件は、自分で判断しなければなりません。

普通、教会の牧師さんは「吹雪が来ようが、大嵐が来ようが、礼拝は続ける」という気概を持っており、礼拝を休むことに、なんというか「罪悪感」さえ持つものなのですが、このコロナ下では、その辺の考え方も変える必要があります。まれなことでしょうが、「集会を控える」ことが正しい選択であり得る状況なのだと思います。

え〜と、最後になってしまいましたが、アイスランドへの入国も制限が厳しくなています。すべての入国者は到着後の二回のPCR検査と、二回目の検査までの五~六日間を、指定されたホテルで「隔離状態」で過ごすことを義務付けられました。四月一日より実施されています。

こちらに向かう予定の方が、もしありましたら、事前に十分な情報を集めることをお勧めします。

では、とにかく良い春、新年度始めでありますよう。


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