レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

久しぶりの赤ちゃん洗礼と母国語教育の三十周年

2024-06-08 19:00:50 | 日記


清涼感アップ用ピック
Myndin er eftir Neil_Mark_Thomas@unsplash_com


こんにちは/こんばんは。

ちょうど一週間前の土曜日(6月2日)はアイスランド大統領選挙の投票日でした。その結果は前回ご紹介したとおりです。長らく住んではいても単に「外国人」に過ぎない私は投票権もなく、当然投票にも行かず、その意味ではフツーの土曜日でした。

ですが、この日には個人的に関わりのあるイベントが他にふたつあり、決してヒマではありませんでした。そのひとつは教会での洗礼式で、もうひとつは母国語教育に関係する団体の三十周年記念会です。

まず洗礼式ですが、これは日本人のお父さんとアイスランド人のお母さんとの間に生まれた男の子のためのもの。このご夫婦の結婚式も私が牧師をさせていただいたのですが、これが早十年前のこと。

その後十年、あまり往き来はなかったのですが、今回第一子となる男の子(六ヶ月)の洗礼を頼まれていたのです。

キリスト教国のアイスランドでは、赤ちゃんの大多数がごく自然に洗礼に与りますので、牧師さんにとっては洗礼式はごく日常的な職務のひとつです。また、当然のことながら洗礼の対象は赤ちゃんであるのが普通です。

ですが、移民や難民の人たちへのサービスをメインとする私にとっては事情が異なります。今年に入って私が洗礼式を担当したのは十回。すべて大人の人たちのためです。さらに言うとすべて難民の人たち。

そういう事情から、私が担当する洗礼式はこじんまりと関係者のみで行われるのが常なのですが、今回は久しぶりにアイスランド人の親戚、友人が参集する「フツー」の洗礼式となりました。場所も教会。




洗礼式スナップ
Pic by Unknown?


洗礼式は、教会で行われる場合と、自宅で行われる場合が半々くらいの割合になるでしょうか?赤ちゃんが生まれてすぐの場合は、やはり自宅の方が都合がいいのですが、参列する人の数なども鑑みて教会を選択する方も多くあります。

で、今回は私が常駐しているブレイズホルトゥス教会での洗礼式となりました。ついでにお祝いのパーティーも教会のホールで。

結婚式には日本からご主人(「夫」のことをなんと呼ぶのが一番良いのでしょうか、今どき?)のご両親が日本からお見えになったのですが、今回はいらっしゃれませんでした。そのことで、事前に「だったらライブで送ってあげたら?」とか言ったのですが、式直前に赤ちゃんのお父さんがスマホをセット。本当にライブしてました。私も十年ぶりにご主人のお母様と一言ご挨拶できました。

それはいいんですねどね、洗礼式が終わり、皆が階下のお祝い会へ行ってしまった後、ふと見るとスマホがまだ教会に。ライブがまだ継続中で、お母様がまだスタンバイ中。慌てて「今、皆のところへ行きますから、切らないでください」と言いながら、スマホをホールへとお連れいたしました。こらっ、お母さんを忘れるな!

この洗礼式が午後二時からだったのですが、その前に正午からModurmalモウズルマウルという母国語教育を推進する団体の三十周年記念行事が、教会のすぐ隣りのMjoddミョッドというショッピングアーケイドで開催されました。




祝辞に駆けつけてくれたグビューズニ大統領
Pic by me


ここで「母国語」というのはアイスランドに住む外国人の人たちにとっての「母国語」です。例えば私が自分の子供たちに日本語を教える、とう意味での「母国語教育」を意味します。

実は同名の団体がもうひとつあるのですが、これは海外に在住するアイスランド人の子供たちのアイスランド語教育を支援する団体です。ところ変われば立場が入れ替わるわけですが、していることは同じですね。

このModurmalはいわゆるアンブレラ団体で、この傘下に日本語教室だの英語グループだのと、個別の母国語教育グループが属しているわけです。上意下達ではなく、Modurmalはあくまでサポート組織です。

母国語教育は、1993年くらいからレイキャビク市が試験的にボランティアを支援するという形で始まりました。私はちょうどアイスランドに移った直後のことで、そのことを知ってはいましたが、詳しい経緯は理解していませんでした。

確か、英語、タイ語、ロシア語?が当初よりあったような... ここに日本語がソロソロと加わっていくのですが、こういう活動は始めはひとつふたつの家庭ベースで形成されます。だから「いつ始まった」と断言するのは難し意のですが、日本語教室みたいになったのは1996年くらいからだと思います。

日本語グループに関しては、私は始めよりドップリ浸かっています。

これらの母国語グループ、ボランティアベースでしたが、レイキャビク市の青少年局の支援を受けており、会場の提供や多少の資金援助がありました。その当時は「移民」はまだ新しい事象で、移民のきちんとした受け皿は生成途上に過ぎませんでした。

よりしっかりした「移民の受け皿」として、レイキャビクとその周辺の四市町が合同投資して「インターカルチュラル・センター」が2000年に設立されました。ですが、このセンターは母国語教育にはあまり理解がなく、これまでの母国語グループへの支援は中止される向きに。

「それは困った」と日本語グループの私や、英語やベトナム語のグループのリーダーの人たちとかが相談して、Modurmalという団体を正式に登録しました。正式に登録すると、独自に支援金の申請とかをすることが可能になるからでした。






三十周年記念会の様子
Pic by me

ですから、正確に言うならばModurmalという団体の発足は2001年となり、その通り十周年記念は2011年の12月に開かれています。

今回の三十周年は、母国語グループが活動を始めた頃を基点として勘定しているようです。まあ、事柄の本質としてはそれで問題ないですよね。同じグループが土台になっていますから。

2001年の正式発足当時でも、グループ数は六つか七つくらいだったのですが、現在はなんと21のグループがModurmalに属しています。

行ってみてびっくりしたのですが、記念式会場のアーケイドは人でいっぱい。グビューズニ現大統領も祝辞に駆けつけてくれており、まあ大賑わいの大繁盛でした。

発足当時は、とにかく公的な機関からの資金集めや、アイスランド社会の中での母国語教育の重要性の認知が主要な目的でした。聞いたとことでは、今は「子供と教育省」から1500万クローネの資金援助がなされているとか。これらの発展は、最近十年間くらいの指導者の皆さんの努力の賜物です。拍手。

ちなみに、日本語教室。私は2016年に引退しましたが、教室はその後も続き、あのコロナの難しい時期も乗り越えて、今でも元気に続いています。控え目に計算しても、再来年で三十周年。その間、休止なし。これもすごいことだと思います。今の引率者の皆さんにも拍手。

二月に開かれた、邦人の方々の新年会に行った時も、その人数の多さ –とりわけ第二世代第三世代– に驚かされたことを書きましたが、日本語教室やそれに並行するModurmal等々、アイスランド移民社会の少なくとも一部は着実の発展しているようです。アイスランドで頑張ってる移民、みんなに拍手。

レアキャラのいる二月の「新年会」


*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。


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アイスランド「シン」大統領、決まりました

2024-06-03 21:42:37 | 日記


清涼感アップ用ピック
Myndin er eftir Michael_Held@unsplash_com


こんにちは/こんばんは。

今回は、まったく速報性のない選挙速報です。

先週末の土曜日に、アイスランド大統領選挙の投票が行われ、日曜日の早朝に次期大統領が決定しました。ハットラ・トマスドティールさんです。

前回、選挙についてのあれこれを書きましたが、ハットラさんはその時点では支持率16,2%で四位。22,2%の支持でトップのカトリーンさんからは6%遅れをとっていました。

ですが、結果としては、ハットラさんが34,1%を獲得し、二位に落ちたカトリーンさんの25,2%に9%近い差をつけて当選したのです。三位のハットラ・フルンドさんは15,7%、四位のヨウン・グナールさんは10,1%、そして五位のバルドゥルさんは8,4%の得票となりました。

ハットラさんは、一週間あまりで支持率を倍以上に増やしたことになりますが、このような激しい支持率の変化の裏には、組織だった「反カトリーン」ネットーワークの働きがあったと言われています。

つまり、カトリーンさんの当選を阻止するために、当選の見込みが薄い候補者の支持者が登り調子だったハットラさんに票を投じたというのです。確かに一週間前の支持率と、実際の得票率を比べてみると明らかな傾向があります。

カトリーンさんは、ほぼ事前の支持率22,2%通りの25,2%を得ましたが、一週間前の支持率は19,7%あったハットラ・フルンドさんの得票率は15,7%と4%のダウン。18,2%だったバルドゥルさんは8,4%でなんと10%近い9,8%減。ヨウン・グナールさんは13,4%から10,1%と3,3%のマイナスでした。




選挙結果 各候補者の得票率
Myndin er ur Mbl.is


こうしてみると、確かにカトリーン当選阻止を目的/意図として、自分の支持候補からハットラさんに投票先を変えた人が相当数いたことは明らかのように見えます。

支持候補が当選の可能性薄となった場合、死に票になるのを嫌って投票先を変えることは普通にあります。それでも、例えば政党に直結した国会議員選挙の場合には、支持候補自身が当選を逃しても支持政党の得票にはなりますから、勝ち目がなくともその候補を選ぶのも一般的です。

大統領選挙や市長選挙のように、政党との関係がちょっと薄くなっている場合には、支持候補の当選が見込まれない場合には、「勝ち馬に乗る」ために当選見込みが強い候補者に乗り換えることも普通にあります。

ですから、選挙に際して、支持候補者の戦況から、直前になって有権者が別の候補者へ投票先を変更すること自体は、不思議でもありませんし、不道徳なことでもありません。選挙というのはそういうものでしょう。

ですが、ここで特筆すべきことは、この「投票乗り換え」が組織立って「アイスランド大統領選挙」で起こったということです。アイスランドの大統領は政治的権限のない、いわば「象徴」的大統領です。よって、政党からはほぼ独立したポジションになります。

ハットラさんは、アイスランド共和国誕生以降、第七代目の大統領になりますが、これまでの選挙で組織だった「投票乗り換え」の試みがあったとは聞いていません。

まあ、候補者が一(いち)ダースもあるようなことも初めてでしたから、その点では起こっても不思議ではない状況だったのでしょうが。

このような「組織的なカトリーン当選阻止戦線」が生まれた理由はいくつかあると思います。第一に先ほど書きましたように、アイスランドの大統領は「象徴」的大統領であり、フランスやアメリカのような政治的実験のあるポジションではありません。

国民は、政治色の強い人が大統領になることを嫌う傾向は元々あります。前大統領のオーラブル・ラグナル氏が政治家上がりの大統領となり、しばしば「越境」して政治に口を突っ込んできたことを「苦い思い出」として持っている人は多くいます。




次期大統領となるハットラ・トマスドティールさん
Myndin er ur Visir.is


そこから、ついこの間まで現職の首相であったカトリーンさんに対しても、懸念の声を上げる人は多くありました。カトリーンさんももちろんそれを承知で立候補したわけですが、その理由は彼女には圧倒的な個人的人気があったことであり、「超政党」的カリスマがあったことです。

ついこの間まで首相であったことは、PR的な観点から言っても、そのまま強みになるのですが、同時にマイナス作用もありました。つまり、これまでの首相在任中の期間の政治を見た場合、国民の生活上の不便や困難、改善されなかったこと等への批判というのは、最終的にはカトリーンさんへの批判となります。

まあ、この点が「カトリーン当選阻止」という積極的なアンチ精神が誕生した一番の原因だろう、と私は推測します。この反カトリーン運動は、相当感情的なものだと感じました。

私は、まあ感心できない点はあルことを認めつつも、カトリーンさんを支持しましたので、ある時点で「Vote Katrin」のスローガン入りのFacebook Profile Picを使ったのですが、(有象無象から)相当数のブーイングのコメントをもらいました。

全体的に見て、年長者にはカトリーン支持が多かったそうですが、若者たちにはアンチ・カトリーンが多かったということです。彼らが組織だったカトリーン当選阻止の首謀者で、種々のSNSを駆使して、ハットラさんへの投票を呼びかけたのだそうです。なるほどねー。

前回、支持率が高かった候補者五人の中で、唯一私が「こいつは嫌だな」と思ったのがハットラさんです。ワタシ的には最悪の目が出てしまった。まあ、何度か書きましたように、ここの大統領は政治的実権のない、アイスランド人の「お父さん」「お母さん」役ですので、アイスランド人ですらないワタシにはそんなに関係はないでしょうが。

まあ、これから大統領になるわけですから、始めから決めつけてはいけないですね。ハットラさんが名大統領になる可能性はもちろんあります。そうはならない可能性もあります。

アイスランド国民は、今回ハットラさんではなく、「反カトリーン」を新大統領として選びました。それがどのようなコンセンサスをもたらすのかは、今後の四年間に明らかになってくると思います。


*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。


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