レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

一般人民は強かった – 「揺―れ」ビジョン

2019-05-26 00:00:00 | 日記
レイキャビク、ようやく「夏」がやってきました。先々週、先週とかなり気温が上がったものの(それでも12、13度ですが)、雲が多く「夏」っぽくなかったのですが、先の水曜日からようやく太陽がすっきりくっきりと現れてくれました。すると実際の気温というよりは、体感気温が一気に上昇し街中に夏ムードが蔓延しました。

木曜日の午後は、市内のハウテイグス教会というところで「難民の人たちとする祈りの会Seekers」があったのですが、事前から「天気が良かったらソーセージを焼いてホットドッグパーティーにしよう」と同僚の女性牧師ふたりと申し合わせてありました。

これ以上はない、というほどの好天になってくれ、祈りの会そのものも教会の中庭で持ち、そのあとホットドッグのバーベキュー?となりました。「好天時には庭でグリル」というのはこちらでの定番の夏のレジャーです。




夏日 祈りの会も中庭で


一般家庭なら、ちゃんと肉を焼いて食べるのですが、教会とかになりますと、やはり予算の問題などがあるので、ソーセージとパンでホットドッグが普通です。人数が多い時は時間の問題もありますね。ソーセージは楽です。

加えて「何を食べるか」よりは「外でワイワイ食べる」ということに楽しみがあるというのも事実でしょう。木曜日には普段の二倍の二十六人が集まり、楽しい時となりました。

強制送還待ちという厳しい環境にある人もいたのですが、皆笑顔を見せてくれホットしました。天気がいい、というだけで癒されるものはありますね。アイスランドだからかな?ハワイでは別にそんなことないのかも。

さて、今回は前回に引き続いてユーロビジョンコンテストについてもう少しだけ。

優勝したのはオランダ代表のダンカン・ローレンスの「アルケード」という歌でした。そのくらいは日本でもニュースになるのかな?アイスランド代表のハータリは第10位。なかなか健闘したということでしょう。

一週間前の土曜日の夜はやはり路上から人影が消えました。国民中が期待していたのがひしひしと伝わってくる、一種独特な雰囲気がありましたね。サッカー男子のワールドカップでの試合の前のような。

前回書きましたように、私はユーロビジョンにはまったく関心がない人ですので、今回も見ませんでした。優勝したオランダの曲も一度も聴いたことがありません、いまだに。

ですが、ハータリがどのくらいの点を得るか?というのはちょっと興味があったので、採点のパートだけは見てみました。ユーロビジョンの中継というのは、午後7時から始まり、前半の二時間くらいが歌の部分。二十分くらいハーフタイムショウがあり(ゲストはなんとマドンナだったそうな)、後半の二時間くらいが採点の部になります。結構長いんですよ。

決勝に進出した26カ国に、それぞれ審判団が設けられ、自分の国をはずした25カ国に点を入れていくことになります。

加えて、一般の人たちが電話を通じてどの国が一番であったかを投票します。以前は始めからこの電話投票を加味して、ジュアリーが最終得点を伝えていたと記憶していますが、今では少しシステムが変わったらしく、初めにジュアリーの得点の発表をすませてしまい、そのあと一般人の人たちの点が発表されていきます。

アイスランドのハータリ、ジュアリーの得点は全部で46点のみ。その時点での順位は16、17位くらいだったでしょう。「そんなもんだろうな」と私は思いましたが、おそらくアイスランド国民は悔しかったのではないかと想像します。

ジュアリーの得点が出揃った時点でのトップは北マケドニアで246ポイント。2位がスウェーデンの241ポイント。ちなみに隣国のノルウェーは冴えなく僅か40ポイント。あれま。




パレスチナ旗を携えるハータリの面々


続いて一般人民からの得点。私はユーロビジョン通ではないので、どれくらいの人が電話での投票に参加するものなのか、まったく知識がありません。ですが、結構面白い結果でした。

例えば、ジュアリー審査ではまったく冴えなかったノルウェー。一般人民はなんと291ポイントをノルウェーにあげ、トータル331ポイントとなり、一挙に上位に食い込みました。

対してジュアリー審査でトップの北マケドニア。一般人民の「判決」では僅か58ポイント。トータル305ポイントで優勝の夢は消えました。

オランダは一般人民裁判でも261ポイントと頑張りトップへ。

そしてオーラス。ジュアリー審査でも上位だったスウェーデンがオランダを超えるることができるか?というドキドキとなりました。そして... たったの93ポイント。合計334ポイントで5位。

ノルウェー、オランダと250ポイント超えが出ていたため、スウェーデンも期待していたのでしょう。93点が宣告された時のスウェーデン代表、ジョン・ルンドビークさんの落胆ぶりは、ちょっと可哀想なくらいでした。

翌日のニュース等では、「ジュアリーなんか必要ない。全部一般人民の投票で採点すべきだ」「数人のジュアリーが自分の好みで採点するなんておかしい」というような「ジュアリー不要論」が多々聞かれたようです。「揺れる」ユーロビジョン。

私もそう思いますね。ジュアリーの採点というのは、なんというか「民族音楽調」の曲に甘い気がします。私がユーロビジョンを嫌になった理由のひとつですが。

六年前の感想 ユーロビジョン デンマーク優勝


そこで私はもう観るのをやめてしまいましたが、そのあとにまた話題があったようです。ラストの部分でハータリのメンバーがパレスチナの旗をカメラに向かって広げたのでした。

これは明らかに政治的メッセージで、視聴者の中には激昂した人も多かったようです。後日、ユーロビジョンの何とか委員会がこの行為を審査し、結果によっては次回アイスランドはユーロビジョンから締め出されるとか。

翻ってアイスランドではハータリは英雄の座を獲得しました。前回書きましたように、こちらではパレスチナへの同情心がものすごく強く、イスラエルは「悪の化身」です。「ハータリ、よくやった」というのがこちらのメディア、そして一般人の評価のようです。




こちらはマドンナさんのハーフタイムショウでの演出


実はハーフタイムショウのマドンナさんも、同じような演出をしていたようです。ただマドンナさんの場合は、ステージダンサーふたりが背中にひとりはイスラエル国旗、もうひとりはパレスチナ国旗をあしらっていたとかで、「平和共存」のメッセージだったようです。

まだ余波があります。ハータリの帰国の便。イスラエルの航空会社のエルアルのフライだったそうなのですが、ハータリのメンバー三人は一緒の席すら取れず、前後に三人が「直列」する形で、しかも全員五人席の真ん中。

これをわざわざエルアルの地上職員がFacebookか何かで発表したようで、話題になりました。「イスラエルのハータリへの仕返しだ」と。そんな子供っぽいことするかなあ、と思えてしまうのですが、エルアルの方針ではなくて、特定の地上職員が自分の裁量でやった、ということはあるかもですね。

マドンナさんはさすがにそのレベルは超えてるな。歌やステージはもちろんでしょうが、いろいろな形できちんとしたメッセージを出してきますよね。ああいう人を「一流」というのでしょう。あやかりたいものです。


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com

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2 コメント

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Unknown (たけぞう)
2019-05-27 14:17:32
アイスランド 10位おめでとうございます! 一般電話投票で大きく順位が変わって、面白かったです。
ジュアリーの採点が一番国同士の関係が思いっきり出て良くないと思うのですが…。 来年もアイスランド参加できる事を祈ってます。
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ブログ当事者 (Toshiki Toma)
2019-05-31 05:40:08
たけぞうさん、

コメントと祝辞、ありがとうございます。
確かにお隣の国どうしが互いに良い点を与えるのは面白くないですね。背景文化が似ていると、音楽の好みも似てしまうのはわかりますが。
アイスランドは、10位だったので、来年は多分の参加権を得たのではないかと思います。
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