「一射絶命」 ケネス・クシュナー著を読んでいる。
まだ、3分の2ほどだが、非常に感銘を受けている。
これは、アメリカの青年ケネス・クシュナーが、禅と弓道修行をした記録だが、
さすがに臨床精神分析学の哲学博士号を持つ青年らしく、哲学的洞察が非常に深い。
また、田上天心老師という禅の師匠となる人物の言葉が非常に素晴らしい。
ケネスは、禅寺での修業の1つで、肉体労働もするのだが、大きな岩が動かない。
どうしても動かないのだが、老師はこう言う・・。
「岩が行きたいと望んでいる方向へ、押すことを学びなさい」
彼は、自分の意志を岩に押し付けているから、動かないのだと言われる。
それは、「理に反して」いるのであって、すなわち「無理」だというのだ。
やがて、老師は、いくつかの方向から岩を押して、そして、ある所で無理なく動かしてみせた。
力づくで岩を動かすことは、理に反しているのであり、自然ではないのである。
それを、老師は、精神分析学を学んだケネスに判りやすいように指導する。
「精神分析療法をほどこすつもりで、岩に接してみなさい」
ケネスは、そこで、患者が最も心を開きやすい話題にそって導く療法があることを思い出し、
もっとも抵抗されない方向から、岩を押してみて、動かすことに成功するのだった・・・。
弓道、禅、肉体労働、精神分析療法・・・その基本が、実は、全て同じなのだと書いている。
「理に則る」とは、無心になり、相手と一体になることだという・・・。
まったく、久しぶりに胸がスーッとしている。感嘆した。
弓道修行をしていたときに、いろいろ考えていたことを思い起こさせてくれた。
武道や禅の教えは、日常生活や、全てのものを豊かにしてくれる素晴らしいものだと改めて思った。
この教えは、人生におけるいろいろな難問を解く鍵になる。
その前は、広岡達朗氏の「勝者の方程式」を読んでいたが、同じような事が書いてあったなあ・・。
あの人は、合気道から、「理」の教えを学んで、野球に生かしたんだよなあ・・。うん。