英語の歌詞が日本語のように聞こえることがしばしばある。洋楽の「空耳」というやつで、英ロックのクイーンのファンなら思いつくのは「キラー・クイーン」の歌詞にある「ガンパウダー ゼラチン(gunpowder gelatine)」。火薬とゼラチンという意味だが、「がんばれ、タブチ」と聞こえる▼「アライさんとこの、ゴムホース」。これも古い「空耳」で、歌った方もいるか。曲は「バナナ・ボート」(一九五六年)▼同曲などで知られる米国の歌手のハリー・ベラフォンテさんが亡くなった。九十六歳。滑らかで力強い歌声を思い出す日本のファンも多いだろう▼最も成功したアフリカ系米国人歌手と呼ばれる一方、六〇年代の公民権運動に取り組み、キング牧師を資金面でも支えた。八〇年代にはアフリカ貧困救済のチャリティーソング「ウィ・アー・ザ・ワールド」の提唱者にもなった▼「アーティストがいつ社会運動家になったのか」としばしば問われた。「アーティストになる前から社会運動家だった」と胸を張る人だった▼「バナナ・ボート」はバナナの荷役を嘆く労働歌である。「アライさんとこの、ゴムホース」と聞こえる部分は「daylight come and I want go home」(日が昇る。オレは帰りたい)−。米国を歌声と行動で輝かせた大きな日が沈んでいく。
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