包丁のトギノン ブログ

トギノン販売有限会社 包丁の製造販売店のブログです

製造現場から...のつぶやき?

2013-08-28 | 包丁・刃物の鋼材について
製造現場から...のつぶやき?

私ども「包丁のトギノン」は親会社である「(株)清水刃物工業所」と共に包丁や刃物を刃物のまち岐阜県関市で永年作り続けています。
その生業により、全国各地の刃物会社、問屋、商社などのお客様へ自社製品はもとよりOEM(オーイーエム)Original Equipment Manufacturerの製品を収めています。
(OEMとは「相手先ブランド名製造」、「納入先商標による受託製造」のことを指します。)

もう時効かな?何十年か前のことで、当時の担当者とは今では笑い話になっていることなのでここに記したいと思います。
付き合いの長い某有名刃物屋さんからの依頼で、ある刃物の製作依頼を受けました。
「図面とスペック送ったから確認して。」
と連絡を受けたのですが図面に記されていたのは...。
刃を付ける刃物鋼材なのに「SUS304」と鋼材指定されていました。
先方に「SUS304」で間違いないですか?」と問い合わせると
「SUS304です。錆びにくい材料で高価なステンレス鋼材で刃物に最適でしょ。」と。

正直、私は返答に困りました。
SUS304は別名18-8と呼ばれる18%クロム+8%ニッケル+残りは鉄で構成されるステンレス鋼材なのです。
ここに含まれる鉄はいわゆる軟鉄でカーボン含有率が極めて低く、熱処理をしても硬化しません。
ハガネ成分(カーボン)をふんだんに含んだ鋼鉄とは異なります。
非常に錆びにくい鋼材なのは間違いないですが、SUS304は刃物(刃先部に使用する)には適さない材質で、仮に製作してもアルミダイキャストの日本刀のようにしかなりません。いわゆる鈍ら刃物以前の問題です。
私は先方に「これはスプーンやフォーク、食器などには適すが刃物には適しませんよ。」と伝えた。
先方は何のことだかわからない様子でしたが、順をおってご説明するとご理解いただけました。
情報だけが錯綜する昨今、間違った情報も多いのでどこかで誤ってしまったのでしょう。
それからはこの担当者とは逐一、打ち合わせをすることで互いに知識を共有することが出来、この様な問題が起こらなくなりました。

この経験から私は売り手と作り手と製品の情報を共有できたなら良いな~というか、するべきだと思う。
意外とこれが出来ていない販売店や製品の違いを判らず、お客様に売りっぱなしの業者が多いものです。
ホント一番、イカンな~と思うのは製作依頼者や販売店の方々。
商品特性を理解せずどのように販売するんだろ...。
何十年も販売してきて何でそんな基本的なこと解んないの?情けない。
昔の取り扱い業者は商品知識が豊富で逆にこちらが教えていただくことが多かったと思います。
販社には製品説明してるのに最近特にこのような問い合わせが多いので作り手は嘆いてしまいます。

まあ、こんな話はごくごく一部でもっととんでもない話も多々あります。
ただが刃物、されど刃物。
ご購入を検討のお客様は知識ある取り扱い業者でのご購入をオススメします。
後々からの対応やお客様の求める最適な刃物を提示してくれてトラブルも減ると思いますから。

参考までに前述の鋼材について下に成分比較を載せておきます。
およその平均値で申し訳ありませんが、鋼材会社によって微妙に数値が異なりますので私的に平均値として計上してあります。



今回はつぶやきと言うか、嘆きになってしまって申し訳ありませんでした。
それではまた。

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