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打ち刃物と鋼材会社の材料を使用した刃物 その3

2014-08-30 | 包丁・刃物の鋼材について
打ち刃物と鋼材会社の材料を使用した刃物 その3

前回は打ち刃物の鍛造の素晴らしい点、評価される点についてお伝えしました。
今回は欠点というか弱点についてお話したいと思います。

前回お伝えした優れたところを見てみると
1.鍛えることで鋼材が1ランクも2ランクも上質なものへ変化する。
2.複合鋼材を作るため必要になる「鍛接」ができる。

の2大要素があります。

しかし、ここに弱点?があるのです。(弱点といってよいのかわかりませんが...)
感の良い方ならもう、お解かりでしょう。

結論から言います。
打ち刃物をつくるための鍛造だからです。

・・・・・なんのことか良くわかりませんね。
順をおってご説明します。

打ち刃物の製造方法は熱した鋼材をトンカチと鍛えることでなされます。
つまり、
1.大量に出来ない
2.出来上がった鋼材にばらつきが出る
3.現在では複合鋼材を作るため必要になる「鍛接」は打たなくて良い(厳密には打つというか圧接しなくてはなりませんが)

この3つが弱点?ともいえます。


1の大量に~については、
打ち刃物はほとんどが手でトンカチとやるため一度に出来る量が限られる。

2の出来上がった~については、
打ち刃物で鍛造をおこない、まったく同じ鋼材が出来ないということ。
これは鋼材によって、金属分子の隙間や不純物などにばらつきがあるためです。
1000回トンカチとするのか?はたまた1200回トンカチとするのか?同じにするのは難しいところですね。
熟練の職人なら熱した鋼材の色や熱処理時の炎の色で判断できるでしょう。
しかしこれは不安定な要素が付きまといます。おおむね出来る、近づけるとしかいえないでしょう。
その証拠に時代をさかのぼって名匠と呼ばれた刀鍛冶の刀匠でさえ製作した日本刀が全て同じ様に出来ていないのだから。
名匠と呼ばれるには製作した刀の平均点?が高いということ。
その中でもこの一振(ひとふり:刀のこと)が優れているといわれるものは、もう理想的な金属組織となっているのです。
だから当たりがあれば、もちろんハズレもあるのです。
このあたりは陶芸家に通じる感覚があるのかもしれませんが、私は刀匠の方がより繊細ではないかと思います。
(陶芸家は実質的な容器より美を求められます。刀は美も求められますが道具として武器として機能するのかも求められるからというのが個人的な見解です。)
また、材質や環境だけでなく鍛造した人によっても違いが出るが上記の理由からお解かりになるでしょう。

3の.現在では複合鋼材を~については、
次回のテーマにかかってきますのでここでは割愛させていただきます。

だから極論として「打ち刃物」でも当たりハズレがあるということ。
前回購入した打ち刃物がとてもよく、5年たって同じものを再度購入したがなんか違うと感じた方、鋭い感覚の持ち主です。
製造者の立場から言えばなるべく差異の出ないように造る様目指しますが、こればっかりはほとんどか手作業なので仕方ありません。
もちろん名人と呼ばれる打ち刃物の製造者の物ならハズレは無くほぼ同様なものを手に入れることができるでしょうが、通常は前回購入したものと同様のものはないとお考えになった方がよいかとおもいます。

しかしご安心ください。
これら名人と呼ばれる人も上記の刀匠のように平均点が高いのはまちがいないのですから、ご購入してもきっと満足されると思いますよ。
ただね、このレベルになると価格もぐんと跳ね上がります。
だって数が出来ないから・・・仕方ありません。でも、スペシャルな1点ものならこれほど優れたものはないですよ。


また、刃物の良さは鋼材だけでなく「熱処理」「研磨」「刃付け」も重大な要素です。
これらが全て備わってよりよく切れる刃物となるのです。
奥が深いんです。

それではまた。
次回は「鋼材会社の材料」について掘り下げたいと思います。

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