包丁のトギノン ブログ

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切れ味考察(パン切編)

2012-05-30 | 包丁の切れ味考察
パン切などの波刃タイプは明らかに直刃の刃物より刃角が鈍角であっても良く切れる。
なぜだろう?
そんなパン切などの波刃(ウェーブ刃)の切れ味の秘密に迫ってみたいと思います。

パン切等は波刃の刃形状をしているものが多く見られます。
それはなぜか?
パンなどは柔らかいスポンジ状で表面が滑りやすい為、刃を食材に当てたときの食い込みが切れ味を左右する。
そのため、パン切は波型となっているものが多い。
なぜ、波型が良いのか?
一般的な直刃タイプの刃では面圧が大きいため食い込みにくい。(波刃は直刃に比べ面圧が少ない)
また、「ひかかり」が少なく滑りやすいため、引き切りしにくい。
下図をご覧ください。

実際に食材に刃を押し当てただけだと見づらく解りにくいと思いますので、ここでは粘土を食材に見立て波刃、直刃の刃を押し当てたとイメージして下さい。
図のような赤い線の「刃型」が付くと思います。
波刃は「点線」
直刃は「直線」となっていますね。
同じ力をかけた場合点線と直線とではどちらが深く入っていくでしょうか?
そうです、点線のほうが直線より深く入ります。それは圧力のかかり方が違うから。
当たる面積が少ないほど力が集中します。これは刃が薄い、厚い包丁でも同じことが言えます。
例えが悪いかも知れませんが、もっと解りやすくすると冬の雪山。ブーツだけだと足は雪の中に埋もれてしまいます。しかし、かんじきなどの雪面歩行用の道具をブーツにつけると埋もれにくくなりますよね。

また、点線のほうが引ききりした場合にひかかるのは想像に難しくないですね。
「ひかかる」のがなぜ良いかというと滑りやすい食材でも刃が滑りにくく「ひかかり」を活かした引ききりが容易に出来る点です。
下図をご覧ください。

刃先が滑らないことが波刃の切れ味の秘密といえます。
また、波形状にすることで刃渡りを長くなる効果の点も切れ味に貢献しています。

そういえば昔、この「ひかかり」の原理を活かした包丁がTV通販で売れていました。
その包丁は直刃だったので、ひかかりを得るため「サランラップ」を食材にまいたまま切っていました。
TV通販的にはパックごと切れるという謳い文句出したが、実はトマトなどの滑りやすい食材はラップで巻いたままのほうが切りやすいんですよ。
海苔巻きなどもそうですね。海苔はすべりやすいのでラップで巻くと切りやすかったりします。
うそではないがより良く魅せる演出なんですね。TV通販はお客様の心をつかむのが上手いなと当時の私は感心させられました。

そうそう、あと一部のお客様で牛刀などの刃渡りのある包丁で食パンを切る際、火で包丁を炙って使われる方もいらっしゃいます。
このほうが切れるというのですが原理としては、包丁を炙ったことによりパンに刃先が食い込む。この時、包丁の熱がパンの水分を呼びますのでひかかりやすくなる。だから滑りにくくなって切れるのです。
間違った方法ではありませんが、あまり何回も炙りすぎると包丁が「なまくら」になりますのでご注意ください。
包丁は硬度を上げるのに1000度前後の熱が必要となりますが、落とすためには200~600度もあれば鈍らになってゆきますので。

パン切などの波刃ならラップ、炙りなしでも滑らずよく切れると思います。焼き豚やローストビーフなどもね。
私ども「包丁のトギノン」にもこだわりのプロの道具「パン・ケーキ用包丁用具」がございます。様々なサイズや形状がありますので参考までにご覧ください。


・・・・実はこの「ひかかり」は包丁、刃物にとって切れ味を左右する非常に大切なな要素なのです。
よく切れる刃物はここがすごいんです。
直刃の刃物もひかかりがすごいのが切れるんです。
よく切れる刃物は「吸い付くように」とか「ぴたっとする」などと表現されるのも「ひかかり」が係ってきています。
この内容は深いのでまた後ほどお伝えしますが、ヒントは「ジセイハッパ」です。
それでは、また。


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