TIPA写真塾制作展の報告を致します。
制作展は今回で4回目。
毎年、奈良のギャラリー京終にて開催しています。
展示会場をひとまわりします。
技法、作品内容ともに
それぞれ異なる表現となりました。
一年間の取り組みの一端でしかありませんが
皆、丁寧に作り上げた作品群です。
下に展示作品とキャプションの文章を掲載します。
「 ツイノスミカにて 」
吉原祥子
技法:シルクスクリーンプリント
クジャクが扇状に大きく広げる華麗な尾羽。
朱、青、緑、金色に輝く玉虫色のその尾羽をじっと眺めていると、
それぞれの色が交錯してみえてくる。
それは、クジャクが衣装を替えながら舞台に立つ誇らしげな姿を想像させる。
彼らには終の住み処の動物園での生活も
案外、居心地が良いのかも知れない。
*
「 優しい修復 」
清田もえ子
技法:シルクスクリーンプリント
それは人の体を包むように保護されていた。
大切に、いたわるように。
・・・そしてモノはモノでなくなる時がくる。
*
「 花と瓶について 」
梶原美保
技法:古典技法サイアノタイププリントによる写真
私にとって写真の魅力は、光の作りだす、
想像を超えた光景との出会いにあります。
ある夏の真昼の強い陽の下、
公園で花瓶に飾るイメージを探していました。
すると一瞬、見事に美しい花を光りが創りだしてくれました。
*
「 geometorico 」
ヤギハシカコ
技法:ゼラチンシルバープリント
ファインダーを覗き空間を切り取る。
暗室で投影された光の中に浮かぶモノクロームの像は
抽象絵画のように別の次元に私を誘う。
現像液に浸した印画紙に再び像が現れた時、
様々な記憶はすでになく
ただ1枚の絵がそこに在るのであった。
*
「 連行する遠近法 」
滝みつる
技法:シルクスクリーンプリント
かつて遠近法の整然とした秩序は神学の世界を象徴した。
この図法の中に現実の事象を理想化して落とし込み芸術表現とした。
それは直線で構成された。
それは歪みを許さず、やがて立ち止まりを許さず、遠回りも休息も許さず、
ついには人をはね、
ひたすら合理と効率とお金に突進する遠近法神話に変質した。
そこには神さえいない。誰が成り代わったのか?
*
「 闇の中 」
下村藍
技法:ゼラチンシルバープリント
言葉で言い換えることが出来ない。
言葉を使う領域の
その先の、闇の中から出てきたもののよう。
出てきたものを見つめることは
自分の奥底の断片に気づくことのよう。
これからも、見つめることを続けていきたい。
*
「 欧州金融危機 (The EU Financial Crisis) 」
大友優希弘
技法:コンピューター上でのフォトコラージュ
テーマは、現在の「EU金融危機」です。
この解決策はいたって簡単な事だと学者は言います。
EUを「一つの国」にすれば、解決するそうです。
「一つの国」ならば、国債を発行するのも、
税金を徴収するのも、
国としての当然の権利だからです。
その国民は従うしかないのです。
現状では、通貨だけを共通にしていて
EUとして「一つの国」になっていないからできないのです。
では何故、「一つの国」に出来ないのでしょう。
EU参加各国が、「一つの国」になる決断が出来ていないからです。
各国の国民が、「一つの国」に向かって収斂する意識がないからです。
これを解決するのは
「自己を捨てて他人の為に自己を犠牲にできる日本的個人主義」が
ないとできないのではないかと思います。
そして、これがこの作品の「真のテーマ」です。
*
「 ゆらめく光 」
徳永好恵
技法:ゼラチンシルバープリント
しなやかにゆらめく炎の陰翳は周囲に動きを与える。
その動きの中で、普遍的な"ものの見え方"について観察した。
*
「 Chitty Chitty Bang Bang 」
西上かのこ
技法:シルクスクリーンプリント
便利に開発されたプロダクツは物語(生活)を素敵にしてくれるが、
複雑な仕掛けに翻弄されることもある。
なのに人はまた少しの便利のため、新しい機能をもとめ続ける。
現代人とモノとのそんな滑稽な間柄を、不恰好な家のかたちで表現した。
*
「 Laputa 」
徳永隆之
技法:ゼラチンシルバープリント
民族、宗教が異なる人種でも
考えは同じなのだと感じた時
このシリーズの制作は始まった。
様々な土地で捉えた風景を集め
架空の国を創造する試みである。
*
これからも引き続き受講生の皆さんと共に
写真表現の研究を続けてまいります。
徳永写真美術研究所をどうぞよろしくお願いします。
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徳永写真美術研究所
大阪・鶴橋にて、写真・写真表現・シルクスクリーンの研究活動をおこなっています。
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