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地球人カレッジ 10月

2012年10月22日 | 地球人カレッジ
*とき:10月6日(土)19時~21時
*参加人数:27人(発表者、ネットでの参加者含む)
*ところ:吉野川市山川町;さくら診療所デイケア室
*講演者:渡部豪(NPO法人TICO理事)
*テーマ:カンボジア救急の現状~救命への道~

今回の地球人カレッジは、TICOの理事であり、さくら診療所の医師でもある渡部豪先生に、
TICOの事業の一つであるカンボジアの救急医療についてお話していただきました

カンボジアでは、どのような救急医療の事業が必要とされているのでしょうか。
考えるきっかけとして、渡部先生は二つの事例を話してくださいました。

一つ目の事例は、70歳くらいの男性を救急車で搬送した時のこと。
言葉が全く通じなかったため、問診ができず、バイタルサイン(脈拍や体温、血圧などのことだそうです)から
病態を推測するしかなかったそうです。
しかし、血圧などを測る機材は古く、心電図モニターは救急車に搭載されていなかったそうです。
また、病院に到着しても病院のスタッフが出てこなかったり、
搬送先の病院では十分な治療ができないことが判明したり、
仮に治療のできる別の病院に搬送したとしても患者が治療費を払えない可能性もあるなどの問題があるそうです



二つ目の事例は、自動車同士の交通事故現場を目撃した時のこと。
民間病院の救急車で運ばれていったそうですが、運び方が荒っぽく、傷が悪化してしまうような搬送の仕方だったそうです。

渡部先生が現地で体験された事例をもとに、どのような医療支援が必要か、参加者の皆さんからは次のような意見が出されました。

*救急車内の医療機材を新しくする
*緊急時の対応ができるように訓練する
*救急隊と病院の間で連絡する内容や連絡方法を確立する
*交通事故を減らすため、交通ルール指導など教育の充実化を図る


TICOは今まで、医療従事者への研修、クメール語の医療用教科書の編集、
一般の人に対するファーストエイドの講習、医療機材の供与などを行っているそうです
特に医療従事者への研修については、患者の脈、体温、血圧等を教えられたとおりに測れるようになったり、
研修が活かされて実際に救命できた例が報告されたり、少しずつ成果を上げているようです。
また、日本に招へいされたカンボジア人医療従事者が日本の医療現場を見ることで、
自身の病院をきれいにするようになったり、入院患者の間をカーテンで仕切ってプライバシーに配慮するようになったり、
研修が思わぬ相乗効果を生み出しているとのことでした。

このようなTICOの取り組みがカンボジアの医療事情改善に大きく貢献していると思いますが、
上述の事例からもわかるとおり、課題もまだ多くあるようです。
そのような医療事情を踏まえたうえで、TICOの今後の活動について以下のような説明がありました。

 救急隊員から病院スタッフへの迅速な連絡体制を強化する
 中古品の機材を新しくする
 「命は助かる」ということを、カンボジアの医療従事者に伝えていく


特に3点目について、治療方法次第では助かるチャンスが広がるにもかかわらず
、カンボジア人スタッフの経験が少ないために、何とかして助けようという姿勢が
まだ身に付いていないのが現状のようです。
適切な治療方法で助かる命があることを伝えていきたいと仰っていました。

TICOの活動がカンボジアの医療改善に貢献している反面、一団体としては及ばない、
国際協力活動の難しさもあるようです。その一つが医療保険制度。
日本と違ってカンボジアには医療保険がなく、治療費を支払えない人もいるそうです。
そのため、治療よりも先に治療費が支払えるかどうかを確認するとのこと。
お金がなければ、治療を受けられないという現状では、どんなに医療レベルが上がっても、
医療機材が良くなっても、助かる命が見過ごされてしまうのではないでしょうか。
医療制度が変わらないと、医療事情が良くならないのではないか、と指摘されていました。

病院の運営体制についても、予算の問題があるそうです。
病院の収入が少ないため、機材を購入できず、中古品を支援してもらうのを待っている状況だそうです。
また、少ない予算は救急隊の運営体制にも影響しており、
救急車のガソリン代や救急隊員の給料を捻出するのが難しいとのこと。
ある一定期間をTICOが支援することができても、将来的には現地の病院やカンボジア政府の自立が必要であり、
国の制度や体制が改善されない限り、根本的な医療改善にはつながらないのではない
かとも仰っていました。

また、カンボジアでは様々な国や支援団体が事業を行っているそうですが、
役割分担がうまく行われていない現状があるそうです。
例えば、救急車が大量に支援されているにも関わらず、活用されていないとのこと。
カンボジア政府が支援国・団体の調整を試みているそうですが利害関係もあり、
調整がうまくいっていないのが現状だそうで、必要な支援がうまく行き届いていないようです

予算が少なかったり、機材が古かったり、日本であれば助かるはずの命が助からなかったり…
このような現状が少しでも改善され、少しでも多くの命が助かるように願ってやみません。


文責:ボランティア(吉田悠)

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