*テーマ:「国内での国際協力を考える」
*日時:2月21日(土)19時~21時
*場所:さくらcafe *参加人数:17名
*発表者:多田 恒雄さん(アムネスティ・インターナショナル徳島グループ)
アフマド エルマホーミーさん(徳島大学大学院生)
※画像をクリックすると拡大します。
2015年第一回目の地球人カレッジを、先日21日にさくらcafeにて開催しました♪
今回は、アムネスティ・インターナショナル徳島グループの多田 恒雄さんとエジプト出身のアフマド エルマホーミーさんをお迎えし、『アラブの春とアムネスティのかかわり』というテーマで、開催しました。
内容に入る前に一つ、みなさまに質問です。
‘◯◯の春’と聞いて、どのような情景を思い浮かべますか?
せっかくなので、国語辞典をひいてみました。
新年、思春期、人生の中で勢いの盛んな時期etc...といった言葉が並びます。
他にも、恋
をすると、よく「私にも春
が来たのよ。」なんてことを言ったりもしますよね
(笑)
しかしながら、今回のテーマにも入っている春という言葉は、'革命’とか、’抗議運動’という意味があります。
それは、 西洋では抗議運動のことを春と呼ぶ習慣があるからです。
アラブの春は英語のArab Springを訳した言葉だったのです。
それでは本題に移ります。 アラブの春は、2010年から2012年の間にアラブ諸国で起きた、政府への大規模な抗議運動のことを指します。
発端は、チュニジアで起きた、青年の焼身自殺でした。
失業中の青年(ムハンマド・ブーアズィーズィーさん)が、路上で青果を売っていたところ(違法)、政府に取り締まりを受けてしまいました。
その後ブーアズィーズィーさんは、政府への抗議の意で、焼身自殺をはかってしまったのです。
ちなみに、違法とは言えども、その当時、食べ物を買うお金がなく、生きていくために隠れて路上販売をしている青年が沢山いたそうです。。。
ブーアズィーズィーさんが命を落とした事件の直後、彼の母親が、彼の焼死体を写した写真をフェイスブックに投稿し、政府への抗議の声が全国へと拡がりました。
イスラム教の教えでは、焼身自殺は2つの教えを破る行為にあたります。
タブー1:自殺
(自爆テロはジハードと呼ばれ、聖戦とみなされるためタブーに該当しない)
タブー2:身体を焼く
(来世に生まれ変わるか地獄へ行くかという判断がくだされる審判の日に、蘇ることができなくなる=神への侮辱)
抗議の声が拡がったのは、ブーアズィーズィーさんが、自ら上に挙げた2つのタブーを犯すことで、政府に抗議を起こしたからです。
抗議に賛同した若者たちは、インターネットを介してデモを起こすなどし、たった1ヶ月足らずでチュニジア政権が崩壊しました。
なんと、この抗議運動の参加者の約半分が30歳以下でした(今の日本では考えられません・・・)。
チュニジアの青年たちが政権を打倒したことを受け、周辺国は一気に反政府派が勢いづき、若い人を中心とした抗議運動が急激に拡大していきました。
そして、エジプト、イエメン、リビアの3国も、政変が起こったのです。
今回のスピーカー、エルマホーミーさんは、「(エジプト内で)抗議運動が起こった最初の日は、ただ驚いただけだった。2日目、3日目と爆発的に抗議運動が広がっていった。」と当時の状況を語っておられました。
23,30,33,42
みなさん、これらの数字は何を指しているでしょう?
答えは、独裁政権下に置かれていた期間です。
チュニジアは23年間、エジプト30年間、イエメン33年間、リビア42年間、それぞれ一つの政権に支配されていました。
何十年もの長い間独裁政権の下に暮らしていた市民が、政府への不満を抗議運動で示し、政権を打倒すること。これは、人として当たり前に起こす行為のようにも思えます。
しかし、重要なのは、政権が交代してからです。
ここからは、実際エジプト内でのできごとを、エルマホーミーさんのお話を中心に書かせていただきます。
エジプトでは、ムバラク元大統領が辞任した後、国民による公平な選挙により、新しくムルシ大統領が立ちました。
ムバラク政権時では、政府に対し、公に意見をすることができなかったり、抗議の声を挙げても、全く耳に入れてくれない状況でした。
エルマホーミーさんによると、「エジプトは天然資源が沢山あるのにもかかわらず、市民にはその恩恵がほとんどなかった」そうです。
さらに、沢山の市民が一週間の生活をまかなうのも大変な状況にありました。
一方、エジプト内で起きた革命(エジプト革命)後、ムルシ大統領率いるムルシ政権では、人々が自由
に発言ができるようになりました。
テレビや新聞、ラジオなどのメディアでは、政府に対する不満をも、公に批判することができるようになったのです。
また、労働者の給料を上げたり、東日本大震災が起こった時には、国民から「助けに来て欲しい」との声を受け、実際に飛行機を出し、沢山のエジプト人が帰国しました。
しかしながら、事態は少しずつ悪い方向へと進んで行きます。
調べてみると、経済面、政治面、宗教に関する文化面など、情勢が悪化した要因は多岐に渡ります。
このブログでは、エルマホーミーさんがエジプト内部から感じた変化に焦点を当てることにします。
まず、エルマホーミーさんがお話してくださったのは、政府内の力関係を示すピラミッド。
頂点には大統領、その下に官僚が来ます(そして多分、その下に法的機関や警察が来るのかと。。)。
国民が参加した、エジプトでは初めての国民選挙でしたが、ピラミッドの頂点が代わっても、その下に居る官僚は以前と変わりません。
大統領の側近や新政策担当者が異なっても、話し合いの場に参加する人々は、以前と同様です。
その為、政府で働く役人は、政権が交代してからもムバラク政権時の安定を求め始め、大統領に対する反感を抱いていきました。
残念ながら、結果として役人達はボイコット運動を起こしてしまいました。
次第に国民からも、政府に対する不満が高まりました。
また、ムバラク政権下では、警察が国民を厳しく取り締まっていたことにより、反政府運動がある程度押さえつけられていましたが、ムルシ政権下で警察の力が弱まったことで、ムバラク政権を支持する国民による反政府デモが次第に大規模になってしまいました。
そして大変残念なことに、国民が起こすデモなどを抑止するため、政府は軍隊を出動させ、国民を力で押さえつけるようになりました。
その後情勢は急速に悪化し、選挙当選からわずか一年で、遂にムルシ政権は崩壊。
後に当時次第に力をつけていた軍隊のトップであったシシさんが、大統領を後任しました。
つまり、軍事政権になってしまったのです。
新しく大統領となったシシさんは、果たして国民を守れたのでしょうか?
シシ政権下での国内の状況を、エルマホーミーさんはこう語ります。
ー正直にお話すると、ムバラク政権時よりも、国内は混乱に陥り、国民の生活は苦しくなりました。
あちこちで武力の衝突が起こり、本当に混沌としています。
ー先日、皆さんも御存知の通り、イスラム国(ISIS)が21人のエジプト人を拘束し、殺害する事件が起こりました。
この事件を受け、エジプトはヨルダンに攻撃を開始しました。
ーここにいる日本人の皆さんに質問があります。
もし、仮に日本人が21人殺害されたら、殺害した人が居る国を攻撃しても良いのでしょうか?
いけませんよね。
ーしかも、ヨルダンには200万人ものエジプト人が生活しています。
自分の国民が傷つくかもしれないのに、どうして攻撃ができますか?
ー現在エジプトでは、ヨルダンとの戦争が始まろうとしています。いや、既に始まってしまいました。
私は、とても悲しいです。
今回の地球人カレッジの参加者全員が、重いため息を吐き、国内のニュースで耳に入る情報の少なさに驚きました。
質疑応答の時間にこんな質問が出ました。
Q:革命が起きて良かったと思いますか?
エルマホーミーさんの答え:いいえ、思いません。ムルシ政権で少し人々の生活が良くなりましたが、今は政府に楯突くと、殺されるか、逮捕されるか、または怪我をするかです。海外メディアの情報は全てブロックされています。
この状況下で、どうして「良かった」と言えますか?
今、アラブの春で政権が代わった国々では、国内が混乱に包まれています。ちなみに、一番情勢が安定していると思われていたチュニジアでは、最近、革命前の政権に戻ったそうです。
ピラミッドの頂点である大統領が代わっても、その下層が代わらないと何も変える事ができない。エジプトでは、ムルシ元大統領について来る人間が居ませんでした。下層のお役人は、ムバラク政権時の方が良いと考えたのです。自分たちの生活環境を維持したかったのです。
先に、独裁政権に対する抗議運動は、人として当たり前の行為かもしれませんと、述べました。
しかし、抗議運動で政権が代わったにも関わらず、国内は混乱に陥り、その後のシシ政権では、人々は表現の自由さえも奪われてしまいました。
人権、という言葉がありますが、抗議運動も人の権利として国際的に守られるべきものと捉えられています。
このように、人権を脅かされ、海外へ逃げようとする難民が、後を絶ちません。
その人権を守る活動をされているのが、今回のもう一人のスピーカー、多田さんが所属されている、アムネスティインターナショナルです。
今回多田さんからは、表現の自由、アラブの春が起因となり発生した避難民のお話、武器の取引に関するお話がありました。
日本では、欲しい物がお金を出せば手に入ります。水も蛇口をひねったら出てきます。電気もスイッチ、トイレも水洗。
その日本に、シリアから難民がやってきました。
シリア紛争開始から2013年末までに、52名。
しかし、その52名全員に日本は受け入れを拒否しました。
シリアに帰国することで、銃弾で殺されてしまうかもしれないにもかかわらず。
その上、現在の日本政府は、武器の輸出さえも視野に入れています。
「豊かさ」とは一体何でしょうか?
また、アラブの春という抗議運動や、その後に起きた混乱はヒトゴトなのでしょうか?
日本は、選挙に行かない人が沢山居ます。
この『選挙』という多数決は、民主主義国家において、一人ひとりが国の形を決めていくお仕事ではないでしょうか。
原発にせよ、憲法改正や武器の輸出にせよ、今の国内の政治がどう動いているのかに無関心でいては、一部の上層部によってコントロールされる社会が近い将来訪れるのではないでしょうか。その時、大規模な抗議運動を起こしても、もう既に手遅れになってしまうかもしれません。
国内で何が起きているのかを見つめること、そして将来の我々の社会の形を考えること、この大切さが今回の地球人カレッジで感じられたのではないかと思います。
最後に、
自国で起きている問題を、包み隠さずにお話していただいたエルマホーミーさんに感謝を述べたいと思います。
ありがとうございました。
次回の地球人カレッジは、帰国直後のザンビア駐在員からの帰国報告です♪詳細はこちら・・・
お楽しみに
文責:事務局(柳下優美)
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