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ディップタンク、ついに稼動しました!

2016年06月30日 | TICO ザンビア

家畜用薬浴槽(ディップタンク)建設プロジェクト in ンプンドゥ村


前回のディップタンク、遂に完成!?からはや半年 気になるその後の行方ですが、

 ついに稼動しました

   勢いよく飛び込む牛

バシャーン という牛が飛び込む音と、牛飼いたちの掛け声が賑やかに辺りに響いています。

前回までは、デップタンクの建物だけだったのが、今では牛と人でごった返していました

この辺りでは唯一の施設であり、今までディップタンクへ入った経験のない牛もいるため、

牛を入り口に誘導させるために牛飼いたちも必死です

 

牛と人でごった返すディップタンク周辺

5月13日に行なわれた引渡し式から、やってくる牛の数は増え、先週は、900頭を越えたとのこと

ディッピングは毎週行なわれているので、牛も牛飼い達も少しずつ慣れていくことでしょう

  盛大に行なわれた引渡し式(5月13日)地方行政局長(日本で言う県知事)(左)とザンビア畜産局主任専門官(真ん中)ディップタンク運営委員長(右)

今後は畜産局が助言やモニタリングをする立場となり、村が維持管理をしていくことになります。

 

 建物は完成しても、運営していくためにはまだまだ必要なことがあります。

水の確保と、運営方法を学ぶことです。(大竹財団から助成金をいただき、井戸の掘削と研修費用に使わせていただきました。)

 

 掘削した井戸

 

運営方法を学ぶ研修として、稼働中の他のディップタンク(チルクトゥ村)にて業務を経験し、利用料管理帳簿の記録方法や金銭管理方法など

実践的に学ぶ機会を設けました。(3月4日)

 薬浴へ参加する牛飼いを広めるための啓発活動の必要性を訴える講師。

 

前回のブログでお知らせした研修内容を定着させるために、稼働直前に畜産局獣医の指導のもと、ンプンドゥ村のディップタンクで実際に薬剤の

用意や運営シミュレーションを行いました。(4月8日)

  薬液をかくはんしている村人たち

 

そうして、ついに稼動したディップタンク

出口では、担当者が出てくる牛を数え帳簿に付け、金額を計算します。

出口の段差が高いので、このお金でセメントを購入しスロープを作る予定だと、話していました。

 

また、ディップタンク委員会として、集めたお金の管理をするため、銀行口座の開設を現在準備しているとのこと。

さらに、口座を持っていることで、政府からの助成金も活用てきるようになるんだそうです

牛を死に至らしめる感染症の媒介を防ぎ、地域の人々の生活を守る大きな役割を果たしてくこと間違いなしです

 

 ディップタンクの回りには、小さなムチを持った未来の牛飼いたちも

 

プロジェクト開始から約2年、ゆっくりとした歩みではありましたが、ついにこの日を迎えることができました

これまで、ご支援いただきました皆様に感謝申し上げます。

 

文責:事務局(近森)


5月地球人カレッジ♪

2016年06月16日 | 合宿

*テーマ:「ムィニルンガ(ザンビア)の生活と医療事情」

*日時:5月29日(日)17~19時

*場所:さくらcafé  *参加人数 8名

*発表者:鈴記好博さん (徳島大学大学院総合診療医学分野・助教)

(画像をクリックすると拡大します) 

2015年5月よりザンビアへ渡り、2016年3月まで北西部国境の町、ムィニルンガの郡病院にいらっしゃった鈴記先生。鈴記先生は、ムィニルンガ郡病院で医師として活動されながら、今後この地での支援の方向性、可能性を検討するための視察を行うことを目的とされていました。ザンビアでの生活や地域の疾患の現状、課題等を、アットホームな雰囲気の中お話しいただき、その後の質疑応答も活発に行われました

 

<ザンビアでの生活>

ムィニルンガは、アンゴラとコンゴとの国境に近い町で、首都のルサカからバスで16時間もかかる地方部です。人口は12万人、スーパーマーケットはなく買い物は屋外の市場で。ドナーと呼ばれる支援団体も入っていない地域で、鈴記先生は珍しい“外国人”だったようです。治安は概して悪くなく、電力事情も停電が頻発するルサカよりは良かったとのこと。鈴記先生のお人柄もあるのだと思いますが、いわく、それ程日々の生活にもストレスを感じられなかったようです。

 

<ムィニルンガ郡病院に見る医療事情>

この郡病院には、鈴記先生以外に医師が3人、准医師が2人、歯科医1人、看護師48人、放射線技師2人(うち1人は就学中で不在)、薬剤師6人(うち3人は就学中で不在)、理学療法士3人、臨床検査技師5人、その他事務局スタッフらがいます。一見してそれなりの人員がいそうですが、町には、この位の規模の医療機関が他にないことを考えると、ザンビアの医療人材不足が伺えます。

調べてみると、例えば人口10万人に対する医療従事者数は日本とザンビアでこんなにも差があります。

日本では医師が244 歯科医師81 薬剤師226

ザンビアでは医師がたった6 歯科医師2 薬剤師2人

(参照:厚生労働省「平成26年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」、WHO “HRH fact sheet”2010)

また気づくのは、在籍していても不在という医療従事者も少なくないことです。その間の人員の埋め合わせも徹底はされておらず、ただでさえ少ない人材の中、何とか対応するしかない現状がうかがい知れます。

 

<地域の疾患、診療状況>

興味深かったのは、10月から4月までの雨期に、入院や外来患者の数が増えること、特にマラリアに罹患した人が増えるようです。入院患者の6割は感染症によるもの。この原因として、収穫前のこの季節は食料も枯渇する時期であり、十分な栄養が取れず免疫力が低下することで感染症が増えるのではということでした。

また、HIVの陽性率も高いザンビアでは、治療と共に予防対策にも重点を置かれてきたはずですが、この地域では性感染症らに対する知識がまだまだ乏しいようです。10代の女子学生の妊娠、中絶等も非常に多いようで、コンドームなど避妊用具があまり使用されていないと考えられます。国の啓発教育では「HIVは、慢性的な疾患で怖い病気ではない」と説明をしていることから、こうした教育のあり方に疑問を持つ現地の人もいるとのこと。HIV陽性者への偏見や差別をなくし、検査を促すためのメッセージだったのだろうと思われますが、直接伝える人が、言わんとするところの狙いは何か、それが相手にどの様に受け止められるかまでしっかり認識していることが必要なのだと感じました。

 

<今後の支援の方向性>

・低年齢妊娠に対する教育的介入

・HIVを含めた性感染症に対する知識向上のための教育的介入

・マラリア、嘔吐下痢などに対する知識向上のための教育的介入

・病院職員への教育

鈴記先生が共通して挙げられたのは、子どもから青少年、両親、教師等、広く住民に正しい知識を伝え行動変容を促す教育的介入と、それを可能にする地域での教育リーダーらの育成です。また、患者さんへの対応や医療倫理、カルテやレントゲンの保管方法に対する整理整頓の徹底、薬など備品の注文方法の指導など、病院職員への教育もやはり必要と言います。技術指導のための研修の実施なども有用ですが、職業意識や患者さんへの対応等は、むしろ同じ職場で同僚として働き、日常を共にする中で、長い時間をかけてゆっくり伝わっていくことなのかもしれません

辺境の地でお一人、思いもよらない出来事や思うようにいかない環境の中でも楽しみを見つけ、前向きに活動されていた鈴記先生本当にお疲れ様でした。

 

文責:事務局(国金)


4月地球人カレッジ♪

2016年06月08日 | 地球人カレッジ

*テーマ:「栄養のお仕事 in 発展途上国 〜途上国の病院で栄養管理システムをつくりたい編〜」

*日時:4月23日(土)19時〜21時

*場所:さくらcafé  *参加人数 14名

*発表者:カトゥンドゥ麻里さん (栄養専門家)

(画像をクリックすると拡大します)

 ザンビアの保健プロジェクトのアドバイザーとしても、日頃よりTICOがお世話になっているカトゥンドゥ専門家からのお話は、専門分野である途上国の栄養についてです。

 

<ミクロネシアとザンビアの現状>

近年、注目を集める栄養ですが、ミクロネシアザンビアでの栄養問題について、ご自身の経験を踏まえた報告はとても興味深いものでした。

ミクロネシアでは、食生活と生活スタイルの変化により生活習慣病の増加が問題になっているそうで、便利な生活と運動不足は切っても切れない深い関係があるのが伺えます。

かたやザンビアでは、状況は改善してきているものの小児の死亡率も依然高く、子どもの死の40〜50%は低栄養に起因しているとさえ言われているそうです。新生児死亡の多くは早産や低体重での出生に関係していますが、それらを引き起こす要因として、母親の栄養状態や生活環境に起因するものが多いのが特徴的とのこと。母親の教育レベルと家庭の裕福さが、子どもの低体重の発生率に影響することは、なんとなく想像がつくと思います。母親の教育レベルが低い家庭の子どもが慢性的な栄養不良になりやすいと言える一方、母親がある程度教育を受けていても、ある一定の数の急性栄養不良が子どもに起こっているという研究結果は印象的でした。

このことは大切な視点を投げかけている気がします。地域における感染症の蔓延、不衛生な環境、病気にかかったときの適切な処置等、これらを改善しない限りは、子どもの急性栄養不良はなくならない。つまり、問題が表面化するのは個人のレベルだとしても(病気や低栄養などの形で現れる)、それは決して個人だけの問題ではなく、家庭や地域、更には国のシステム等に根本的な原因があるということ。そのことが、現在世界中でも広く認識されるようになってきたとのことでした。

日本でも、近年食育や子どもの貧困の問題が取り上げられるようになりました。直接接する母親や家庭の影響は当然大きいものの、学校や近隣住民、地域社会のあり方や国の社会保障の仕組みが、問題の根底にはないだろうかと改めて考えさせられます。

 

<病院での栄養管理>

話は変わり、ザンビアの最高峰であるザンビア大学の栄養学部で指導されていたこともあるカトゥンドゥ専門家から、面白い事例が共有されました。ザンビア大学病院で、出されている給食の栄養アセスメントを行った時のこと、まず入院患者が何を食べているか分からないという壁にぶつかったそうです。病院では患者さんが好きな食事を持ち込んだり、付添人と食事を共有したりしているそう。給食における栄養量の決まり事も存在せず、その日手に入った材料でメニューが変わるという柔軟ぶり日本の病院では、栄養士の方がきっちり栄養バランスを考えてメニューを作り、それに基づいて材料が揃えられ、配膳されますよね。特別食や経腸栄養も少ないと言います。病院で出される食事が、シマ(主食)と焼いたチキンとレイプという葉っぱ(=ザンビアといえばこれ!という位代表的な食事)なのには驚きでしたもっと野菜を多く使ったり、多品目にもできようものの、それをしていないのが実際のようです。

ミクロネシアの、種類の異なるバナナばかりが並ぶ病院食を見たときは、さすがのカトゥンドゥ専門家も呆れたようです。それでも、理由があるはずだからと、怒らずにまず理由を聞いてみたというエピソードに、一栄養士としてのプロフェッショナルとしての責任と、その国の現状を踏まえて寄り添い、その環境の中でベストを模索しようと葛藤される姿を感じました。

途上国の病院において栄養管理を進めていく上で、予算やリソースの不足など様々な課題があるものの、医療者による適切な指導も重要で、栄養士だけではなく特に医師の理解が必要だとも話されていました。

今、注目を集める栄養分野。文化や社会の姿がそのまま反映され、行く先々で全く違う顔を見せてくれるからこそ、面白くもあり難しい。カトゥンドゥ専門家のお話しを通じて、その醍醐味に触れられた気がします。

 

文責:事務局(国金)