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1月地球人カレッジ♪

2017年01月27日 | 地球人カレッジ

*テーマ:「イラク戦争の教訓~暴力の連鎖の中で考える平和憲法~」

*日時:2017年1月23日(月)19~21時

*場所:徳島大学医学部 青藍会館  *参加人数56名

*発表者: 高遠菜穂子さん(イラク支援ボランティア)

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今回は、徳島大学医学部の学生、関係者を中心として結成された『徳島で国際医療ざ支援を考える会A-TIMS』との共催で、場所を徳島市内に移し行われました。講師は、2003年よりイラク支援ボランティアとして活動されている高遠菜穂子さん。2004年4月にイラク・ファルージャで「自衛隊の撤退」を要求する現地武装勢力に人質にあうも、無事解放された日本人として、記憶にある方もいらっしゃると思います。

高遠さんからは、今イラクで起きていること、その背景等について、ご自身の体験に加え、写真や映像などを用いて余すことなくお話くださいました。この日も前日にイラクから帰国されたばかりという高遠さんからのお話は、日本のメディアでは取り上げられていないことが多く、自分たちが「いかに世界の現状を知らないか」ということを突きつけられた気がします。

 

<難民と国内避難民 >

家を追われた人たちの中には、国外に避難した「難民」と、国内で避難生活を送る「国内避難民」がいます。国境を超えることができるかどうかは所持金の有無が大きく影響するそうです。国連等からの難民に対する支援を受けようとすると、難民と認定される必要がありますが、隣国ヨルダンで難民申請をするにも、認定されるのに何か月もかかるとのことその間の滞在費などは自分たちで何とかしなければなりません。

また、仮に難民と認定されたとしても安泰というわけにはいきません。国際社会からの難民に対する支援を、難民の間で取り合いしているというのが現状だそうです。イラク以外にもシリア難民、ソマリア難民、南スーダンからの難民等、数多くの難民がいます。ちなみにイラクでは国内避難民が約330万人、国民の10人に1人が家を追われて避難生活を余儀なくされているということですから、その規模の大きさ、深刻さがわかります。IS(イスラム国)の危機以降、さらに難民の数が増え、国連などによる支援も全く間に合っていないそうです。

 

<イラク戦争後最悪の状態のイラク>

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イラク戦争から13年を経た今のイラクは、高遠さん曰く、地獄の中の地獄であり、戦後最悪の状況とのこと。ただ、これを食い止めるチャンスはあったと、高遠さんはいいます。それは、2012年11月から2013年にかけて、イラク政府によるイスラム教スンニ派への弾圧に対し、スンニ派市民によるデモが拡大していた時期。2005年に発足した新政府(イスラム教シーア派)は、多くのスンニ派のイラク人を拷問の上殺害し、女性たちを刑務所内でレイプする等、弾圧を繰り返していました。毎日数十体の惨殺死体が道端で発見されたそうです。政府によるこの非人道的な「スンニ派狩り」に反対したデモ参加者が、デモの最中に殺害され、それでもなおまたデモが行われ、殺害され、という悲劇が起こっていたこの時期。高遠さんはこの時、国連やメディアに現状を訴えましたが、国際社会やメディアの反応は極めて薄いものだったそうです。あの時、この事実を国際社会が真摯に取り上げ、適切な介入をしていれば、紛争はこんなにも拡大せず、ISも力をつけていなかった、本当に悔しいといいます。

この「スンニ派狩り」がまさに問題であり、これを解決しない限りISも解決しない。というのも、少数派だったISは、政府による「スンニ派狩り」の犠牲者の家族に近づき、見舞金を渡し、政府に反撃しようと言いながら、人々を取り込み、ISに巻き込んでいったそうです。ISの台頭に、日本を含む有志連合による空爆も始まり、今やイラクの人たちは、同じイラク人からも命を奪われ、また激化する戦場の中で巻き添えになり、実に多くの民間人がなくなっているそうです。高遠さんが仕事をされていた病院も次々と破壊されています。

さらにショッキングなのは、ISは空爆で廃墟と化した建物や死体にさえも、仕掛け爆弾をしているとのこと。例え負け戦となったとしても、後で入ってくる人たちに負傷を負わせるためです。この犠牲になり亡くなった病院関係者の方々もいるそうです。止まらない暴力の連鎖は、今後の課題として少年兵への再教育を含めた復興への道のりを、非常に難しくしているといいます。

 

<雇用創出と関係づくり>

こうした絶望的な状況の中で、現地では支援物資の提供や、海外から来た医師と患者とのマッチング等もされている高遠さんが、ご自身の仕事のもう一つの目的として、常に心にとめていることがとても印象的でした。その一つが雇用を生み出すこと。父親が殺された家族は稼ぎ頭を失い、少年たちは働かざるを得なくなりますが、家族を養うために兵士になる、ISに入ることが多いそうです。聞いたことがあるかもしれませんが、戦闘員の給与は桁違いに高いそうです。もし他に家族を養うことができる働き口があれば、ISに入ることを防げます。IS等の組織によるリクルートに対抗するために、雇用を生み出すことがとても大事だと、悔しい実体験を持つ高遠さんは断言します。

もう一つは、人種や民族、国籍や宗教を超えた関係づくり。その方法として、高遠さんは一緒に働くしかないのでは、といいます。高遠さんと共に働くスタッフの中にも、ふとした時に差別感情が垣間見られる瞬間があるそうです。そのような差別感情や行為を許さないことをまず態度で示す。こうした働きかけが、皆で一緒に何かを成し遂げた時に、実りだすといいます。違いがありながらも、一緒に協力して成し遂げた経験が、人の意識を変えることに繋がるというお話は、聞いていて非常に納得しました。違いを乗り越えて相手を理解し受け入れるのは決して容易ではないですが、想いや体験の共有を通じて、ご自身の身の回りから確かな変化を生み出そうとされている高遠さん。

 

自分に何ができるか。イラクの現状を知ること、それを誰かと共有すること、難民問題について調べてみること、行動を起こすこと(募金をする等)などなど、正解は一つではないと思いますが、まず知ることからと言われます。日本では殆ど報道されないイラクの現状については、英語であれば数多く報道されているそうです。英語はちょっと苦手、、、という方は、一度是非高遠さんの発信されている情報も覗いてみて下さい(1月24日付けのTICOのFBにも掲載)

私も、受け身で全くの無知であったことを反省し、今日のお話で聞いたことや感じたことを身近な人と共有し、最近サボっていた英語のニュース番組のアプリを復活させようと思います!

 

文責:事務局(国金)

 



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