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チサンバ郡総合的な農村母子保健を支える“地域力”強化事業~NHCムワプラ編

2015年06月26日 | TICO ザンビア
TICOザンビア事務所の村上です。

6月6日にチサンバ郡ムワプラ地域
6つの住民保健委員会NHC)が集まって
5歳未満の子どもの出張健診(体重測定)活動の活動計画のつくり方を学びました。

(TICOのfacebookもご覧ください。)

2014年4月から実施している母子保健プロジェクトですが、このプロジェクトはNHC(住民保健委員会)という
地域に根付いた組織(人の集まり)を強くしていくことを通して、地域住民が自らの健康を自らの手で守っていけるように
なることを目指しています(もちろん最終目標ですが
NHCについては、2月22日のブログ、チサンバ郡総合的な農村母子保健を支える“地域力”強化事業~NHC編をご覧ください。

2015年はモンボシ地域に加えてムワプラ地域(ムワプラの生活はこんな感じ)でも活動を開始することになり、
ムワプラ地域のNHC(住民保健委員会)のメンバーに集まってもらい、
5歳未満の子どもの出張健診(体重測定)の活動計画を作ってもらいました。


ムワプラ地域では、ボランティアが体重を測るとかビタミンAを配る活動をすでに実施しているのですが、
NHCという組織(人の集まり)として活動をしていません。

そこで、この日開催された活動計画会議Action Plan meetingでは、活動計画を一つずつ「手順」に落とし込 み、
それぞれの手順ごとに「責任者」「連絡を取るべき関係者」 「必要な資源」「期限」をしっかりと設定することを
心がけてもらいました。

組織として実施する活動計画は、活動を行なう前に話し合いを持つところから 
活動の実施、終了後の話し合い、結果の記録までが含まれることを学んでいました。

この「手順」を理解してもらうため、ザンビア人の主食シマを作るという活動を例に取り上げて
それぞれのNHCで(グループで)どんな「手順」が必要か確認してから
実際にこども向けの出張健診の活動計画を作っていきました。



それぞれのNHC(住民保健委員会)のメンバーで話し合いながら「手順」を一つ一つ考えました



今後TICOとしては、こどもの出張健診(体重測定)活動がNHCメンバーが一緒に考えて作った活動計画の手順に従って
行なわれているか、それぞれの活動が基準を満たしているか しっかりモニターしながら
ムワプラ地域のNHC(住民保健委員会)がモンボシ地域と同じ様に
「課題認識 →活動計画の策定→実施(進捗確認)→活動計画の修正」という過程を
繰り返していく中で、少しずつ地域住民の健康を守る力強い存在になっていくことを期待したいですね。

活動計画については、TICOの機関紙Face to Face 38, October 2014のコミュニティ活動専門家の竹村の記事をご覧ください。

これが、出来上がった活動計画です。この活動計画に、責任者の名前などを書き込んで各NHC独自の活動計画が完成します。

文責:ザンビア事務所 (村上)

モンボシのお産事情

2015年06月19日 | TICO ザンビア
TICOザンビア事務所の村上です。

今日は、TICOの保健事業地域モンボシにあるヘルスポスト(診療所)で体験した
お産の様子についてお話したいと思います。

モンボシヘルスポストは、人口約2万人の地域にある唯一の医療施設で
大小合計25の村から妊婦さんがやってきます。 
このため、ほとんど毎日のように赤ちゃんが誕生します。

まだザンビアに来て1ヶ月ちょっとしか経っていない私ですが、
モンボシに出張すると必ずといって良いくらい、赤ちゃん
生まれているのに遭遇します。
つまり、モンボシヘルスポストの看護師は、本当に頻繁に
お産に対応しているということですね。

今では、出産が終わり「お産を待つ家」で休息をとるお母さん
生まれたばかりの赤ちゃんがいるかと思えば、
分娩室では次の妊婦さんが一人分娩台の上で陣痛に耐えている
という光景がごく当たり前に感じられるようになっている私です。

でも、実際に村に滞在し、
産気づいた妊婦さんが保健ボランティアに付き添われて
家から何キロもはなれたヘルスポストに出かけていく場面に居合わせたり、
看護師が実際に赤ちゃんと取り上げる場面に立ち会う経験をしてみると
モンボシの小さな分娩室で
毎日のように元気な赤ちゃんが生まれているという事実って
本当は物凄いことなんですよね。

先日、村に泊まった時のことです。
滞在先の家の妊婦さんが夜になって急に産気づき、陣痛が始まりました。
妊婦さんのお母さんは、暗がりの中で携帯を掴み電話を始めました。
ものの10分も経たないうちに、家の前に2頭の逞しい牛が引く牛車が停まりました。
お母さんは、用意してあったお産のセットと着替えを入れたスーツケース
荷台に積み込んで、自分も陣痛に苦しむ娘と一緒に荷台にすわりました。
近所の若者が手綱をとり、2人を乗せた牛車は、月明かりの中を
ゆっくりとモンボシに向けて動き出しました。
次の日の朝、無事に女の子が生まれたとお母さんから電話がありました。
持つべきものは牛、いや「良いご近所さん」ですね。

また、出張健診のモニタリングで、私が朝9時過ぎにモンボシに着いた時のこと、
モンボシヘルスポストの助産師のアイビー看護師は診療所近くの自宅で、
収穫した落花生の天日干しの作業中。
おかしいな、と思っていると早朝5時ごろに妊婦が運ばれてきて起こされたのだそうです。
あと1時間ぐらいで生まれるから、それから出張健診に行く準備をするとのこと。
分娩室に行くと、まだあどけない顔をした妊婦さんが横になっていて、
お母さんが心配そうに付き添っていました。
しばらくして赤ちゃんはアイビー看護師に無事に取り上げられ、
お産を待つ家でほっとした様子でベッドに横になるお母さんの横には、
すやすや眠る安らかな赤ちゃんの顔がありました。

いざ出張健診に出かけようとしていると、こんどは別の妊婦さんがやってきて
アイビー看護師は、また分娩室に走ります。 
今度は、初産で陣痛が長くなることが予想されるのと、
子宮口が1cmしか開いていないということで、
アイビー看護師をTICOの車に乗せて出張健診に出発することにしましたが、
いつもならサポートに入るもう一人のスタッフも別の出張健診先に出かけることになったため、
ヘルスポストで活動する保健ボランティアたちは不安を隠せません。
早めに帰るつもりでも、多くの子どもたちが集まる出張健診では、
お母さんたちが三々五々にやってくるため、
一旦出かけるといつ戻れるかわからないからです。

出張健診から戻ってみると、幸い赤ちゃんはまだ生まれておらず、
お産が始まったのは夜の9時半ごろでした。
お産が始まった!と聞いて、私も夕食もそこそこに、
アイビー看護師の家から分娩室まで一緒に走りました!

分娩室には妊婦さんのお母さんとおばあさんとその姉妹(3姉妹)が居て、
新しい命の誕生を静かに見守っていました。
モンボシで生まれ育って75歳を超えてるとか。

妊婦さんのお母さんは、分娩台の横で娘の額の汗をタオルでぬぐったり、
アイビー看護師の指示でお産キットの準備をしたり大忙しです
手袋をはめたアイビー看護師は手馴れた手つきで無事に赤ちゃんを取り上げ、
へその緒を切り、赤ちゃんをきれいに拭いて体重をはかり、
大きな産声を上げる赤ちゃんにすばやく服を着せていきます。

そして赤ちゃんを真新しい毛布にくるむとお母さんの胎盤の処理。
会陰裂傷でしたが、あわてず手際よく縫合。 濃い色の布を裂いてT字帯を作り出血に対応。
最小限の村で手に入る資源を使っただけの超エコなお産でしたが、
ある種神々しく思わず涙がこぼれました。

この後夜中にもう一人出産があり、アイビー看護師が部屋に戻って寝息を立て始めたのは、
夜中の2時・・・

今日もまた、モンボシでは新しい命が誕生していることでしょう。



文責:ザンビア事務所 村上