ザンビア事務所 瀬戸口です。
最近ふと、2014年4月から実施している
母子保健プロジェクトについて
このブログで報告していなかった!と気づきました。。。
※プロジェクトの概要は
こちらをご参照ください。
この母子保健プロジェクトの目的はずばり!
総合的な母子保健サービスを支える地域保健システムが持続的かつ有効に機能するための基盤が強化されること
・・・ですが、文字が多すぎて何のことだか分からないですよね。
ざっくり言うと、母子保健サービスを支えるシステムを強化します、ということです。
システム強化
それは関わる人々の能力を向上させることです。
ただし、あくまでも「システム」ですので、特定の個人に過度に依存するのではなく、
関わる人間が入れ替わっても、組織として機能し続けることが重要です。
「人づくり」のち「組織づくり」と言い換えられるかもしれません。
ザンビアで、母子保健サービスを支えている、「組織」とは具体的に何か?
いろんなレベルでいろんなアクターが関わってはいますが、
このプロジェクトで焦点を当てているのは次の3者。
- 郡保健局
- ヘルスポスト
- 住民保健委員会(Neighbourhood Health Committee: NHC)
です。
郡保健局とは、チサンバ「郡」で保健医療サービスに関わるお役所。
ヘルスポストとは、実際に住民に保健医療サービスを提供している公立診療所。
郡保健局の管理のもと、ヘルスポストは運営されています。
ただ、ヘルスポストだけでは予算も人でも限られていて、
地域に十分なサービスを提供することはできません。
そこで大事になってくるのが
NHCと呼ばれる住民保健委員会の存在です。
例えば、このブログで何度も取り上げている出張健診(体重測定)。
2/7 ザンビアの子どもたちが健康に育つために
5/1 ザンビアの子どもたちが健康に育つために 2
8/23 カウンセリングってなんだろう?
1/15 カウンセリングってなんだろう part2
これは、ヘルスポストが地域に「出張」し、母子の「健診」を行うのですが、
地域での受け皿がNHCであり、NHCの協力なしにはこの出張健診もままなりません。
※他の記事で「ボランティア」と書かれることもありますが、それは「NHCの一員」とイコールです。
出張健診の内容はヘルスポストによって異なるようですが、
モンボシ地域では、
<こども(5歳未満児)向け
>
体重測定から体重増加不良児・低体重児へのカウンセリング、予防接種、健康教育
<おかあさん向け
>
妊婦健診、家族計画(避妊)、健康教育
と盛りだくさん。
子だくさんのザンビアでは、この1回に健診に来る子供の数は30人から130人。
でも、ヘルスポストから出張してくるスタッフはたった一人
。
NHCメンバーが、これらサービスの実施を手伝うことでようやく成り立っているわけです。
NHCの出番は出張健診だけではありません。
地域の健康を守るため、さまざまな機会で健康に関する知識向上
(健康教育)活動を行っています。
・妊娠が分かったら、すみやかに健診へ。
・お産に向けて事前に準備をして、施設で安全に産もう。
・蚊帳の下で寝よう(マラリア予防)
・水は煮沸して飲もう。
・トイレの後や食事の前は手を洗おう。 などなど。
上の二つのメッセージは、ヘルスポストが提供するサービスへの需要喚起(受診促進)とも言えますね。
必要な人たちに必要なサービスを届ける
ためには、これも大事な活動。
でも、これほど大切な役割を担っているにもかかわらず、これらの活動に報酬はありません。
すべてが
無償の活動です。
いまだに私自身、不思議に思うのですが、
自分の生活だって大変なはずなのに、地域のために無償で働く人々がそこにはいるのです。
だからこその問題があります。
・人の入れ替わりが激しい(無償ですから)
・なのに、新人教育(サービス提供に必要な知識と方法の伝達)が確立されていない
・よって、よくできる或いは経験豊富な人間の個人プレーによって支えられており、その人間が抜けると一気に崩れる。
・NHCの活動範囲は、ある程度固定化しているのに、やり方が定まっておらず無駄が多い。
・ルーチンをルーチンで回せない。
そもそも国がNHCの役割や機能を具体的に定義していない、という根本的な問題もありますが、
実際にNHCは活動をしているわけで、現実的なところからNHCが個人依存から抜け出し
組織として機能するように手助けをすることが、地域での母子保健サービスを提供するシステムの強化であり、
それは必要なサービスが必要な人たちに届くために不可欠な働きかけであると考えます。
ということで、このNHCを組織として強化していくこと、それが本プロジェクトの大きな柱です。
このプロジェクトにはあと2つ、大きな柱がありますがそれはまた後日。
ちなみに、NHCは国の保健医療制度に組み込まれた末端組織でモンボシに特異な組織ではありません。
(なのに国はNHCの役割や機能を具体的に定義していないのですね)
でもNHCのメンバーはヘルスポストや郡保健局が任命するのではなく、地域住民が選ぶ、ということになっています。
現実的に、広大なエリアをカバーするヘルスポストや郡保健局には選びようがないですし、
近所の人がどんな人かは、地域の人が一番知っているので、それは納得でしょうか。
ただ、地域住民がNHCの活動というものをきちんと理解していないと、とんちんかんな人事になってしまうのも事実。
例えば、文字の読み書きが出来ない人や、無償活動ということを理解していない人が選ばれてしまって、
NHCの活動が十分に行えないという話はよく聞きます。
なので、上で、
- 郡保健局
- ヘルスポスト
- 住民保健委員会(NHC)
の3者にこのプロジェクトの焦点は当たっている、と言いましたが、
「地域住民」のNHC理解度を上げていくことも、NHCの強化には不可欠な要素と言えます。
最後に、、、
このプロジェクトで謳っている
「地域力」とは何か、についてお伝えして、今回の記事を締めくくりたいと思います。
英語ではCommunity Enpowerment:コミュニティ・エンパワーメント、と表現しています。
日本語でうまく解説しているウェブページを見つけられなかったのですが、
私が好きな定義は;
process of enabling communities to increase control over their lives
”コミュニティが自分たち自身の生活をよりコントロールできるようになっていくプロセス”
というものです。
自分たちの生活に影響を与える要素や決定を自分たちでコントロールできる度合いが増えていくこと、それがエンパワーメント。
これって、ザンビアとか途上国とかに限った話ではなくて、
自分たちの生活を、自分たちの手の中に取り戻していくこと
これは、今の日本でも大切なんじゃないかな、、
私たちは自分の人生にとっての大事な決断を、あまりに他人に預けすぎではないかしら。。。。なんてね。
このプロジェクトはNHCという地域に根付いた組織(人の集まり)を強くしていくことを通して、
地域住民が自らの健康を、自らの手で守っていけるようになることを最終的には目指しています。
それは決して、診療所に頼らない、ということではありません。
診療所が提供するサービスをただ疑問も持たず受けるだけ、という状態を抜け出すということです。
例えば、日本ではインフォームドコンセントとか、セカンドオピニオンがかなり当たり前の概念になってきましたね。
自分たちが生活を送る上で必要な知識と意識をもち、
変化が必要な場合は、その必要な変化を自ら起こせる自信と行動力を持つこと。
ちょっと野望的すぎるかなー
と思いつつ、
でもそこが草の根で活動するNGOが目指す先だと私は信じています。
文責:ザンビア事務所(瀬戸口)