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映画の王様

映画のことなら何でも書く

ウィリアム・ハートの映画 その10.『ロスト・イン・スペース』

2022-03-19 07:17:45 | 映画いろいろ

『ロスト・イン・スペース』(98)(1998.12.30.渋谷東急)

 2058年、高度に発達した文明によって、地球環境は破壊されてしまった。ジョン・ロビンソン教授(ウィリアム・ハート)とその家族は、人類生存のための新天地と目される惑星「アルファ・プライム」を調査する使命を帯び、宇宙へと飛び立つが…。

 懐かしき1960年代のテレビドラマ「宇宙家族ロビンソン」をリメークしたSF大作。とはいえ、オリジナルのテイストはほとんど見当たらず、SFXの洪水と大音響の映画に変身しており、自分のような昔のドラマを知っている観客は、折り合いの付け方に苦労したのではないか。

 特に、ロビンソン一家のバラバラな家族像、ドラマのコメディリリーフ的な存在だったドクター・スミスを完全な悪役に変えてしまったところ(ゲイリー・オールドマンが怪演)に、時の流れを感じさせられた。いまどき仲良し家族ではシャレにもならないか。

 ところで、この映画の核となるのは多元世界。つまり、現在と過去の同一人物が、同時に存在するのだが、これがOKならば、例えば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズのマーティとドクの苦労は一体何だったのだ、ということになる。つまり、これはタイムトラベルものではルール違反という気もするのだが、まあリアルな話ではないので、これはこれでいいのかな。
  
 さて、宇宙の迷子となったロビンソン一家の旅は、シリーズ化されていくようだ。

【今の一言】結局続編は製作されず、未完のままで終わっている。
 

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東宝特撮映画の顔、宝田明

2022-03-18 11:43:43 | 映画いろいろ

 宝田明が亡くなった。4月1日から公開される主演映画『世の中にたえて桜のなかりせば』に合わせて、インタビューの話もあったので、とても残念だ。

 宝田といえば、やはり何といっても、本多猪四郎監督の『ゴジラ』(54)の主役・サルベージ会社に勤める尾形青年役だろう。そして、本多作品への出演は、『世界大戦争』(61)の航海士、『モスラ対ゴジラ』(64)の記者、『怪獣大戦争』(65)のニック・アダムスとコンビを組んだ宇宙飛行士、『キングコングの逆襲』(67)の自衛隊員、『緯度0大作戦』(69)の海洋学者と続き、東宝特撮映画の顔となる。

 一方、福田純監督の『100発100中』(65)『100発100中 黄金の眼』(68)で演じた秘密警察官を自称するアンドリュー星野役で、キザでC調な感じがするキャラクターを、嫌みなくダンディに演じる個性を見事に開花させた。『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』(66)の実は金庫破りの役も含めて、福田監督作品の方が、彼の個性は生きた感じがする。

 そのほか、鶴田浩二の弟役を演じた岡本喜八監督の『暗黒街の顔役』(59)、『シラノ・ド・ベルジュラック』を翻案した稲垣浩監督の時代劇で三船敏郎の恋敵役を演じた『或る剣豪の生涯』(59)、水茶屋の女(池内淳子)と心中し、討ち入りに加われなかった高田郡兵衛を演じた稲垣監督の『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』(62)、林芙美子(高峰秀子)と結婚する男を演じた成瀬巳喜男監督の『放浪記』(62)などが印象に残る。

 後年は、映画で使われている撮影技法を、実際の作品を例に用いながら解説する、フジテレビ深夜の「アメリカの夜」(91)のホスト役も務めた。これは随分と勉強になったことを覚えている。

 自分は、東宝映画を見ながら育ったと思っているので、その顔の一人であった人の訃報は特に寂しいものがある。

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ウィリアム・ハートの映画 その9.『スモーク」

2022-03-18 07:28:08 | 映画いろいろ

『スモーク」(95)(1996.3.20.)

 ニューヨーク、ブルックリンの小さなタバコ屋を舞台に繰り広げられる人間模様を、それぞれの真実と嘘、現在と過去を交錯させながら描く群像ドラマ。監督はウエイン・ワン。店主のオーギーをハーベイ・カイテル、常連客のポールをウィリアム・ハートが演じている。

 去年の公開時に見逃して悔いが残っていた。何しろ目にする批評はおおむね好評で、ウエルメイドな人間ドラマという触れ込みだったからである。ところが、いざ見てみると、思いのほか大きな感動は起きなかった。

 この映画を、端的に表すなら「袖すり合うも他生の縁」「嘘も方便」といったところだろうが、例えば、同じ類の映画だったローレンス・カスダンの『わが街』(91)などと比べてみても、何だかさらっとしていて、ドライな映画という印象を受けた。

 その理由として、皆が認める流行に反発したくなるへそ曲がりなわが性格や、原作・脚本のポール・オースターの小説を全く読んでいないというところが、マイナス面として作用したことは否めない。

 また、周りの情報に惑わされて、知らぬ間に、よくできたちょっといい話的なものを想像していたことへの反省もある。随分前の『一杯のかけそば』に、多くの人がだまされたようなものか。

 ただ、この映画で描かれた以上に、実際のブルックリンは物騒な所なのだろう。何しろ昔々、治安の悪さからドジャースがロスに逃げたぐらいだもの。そう考えると、この一見ドライに見える人情噺が、実は最大級の奇跡の夢物語だったのかもしれないという気もしてくるのだ。

 それにしても、ハーベイ・カイテルは、最近ますますデ・ニーロに似てきたなあ。

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『アンビュランス』

2022-03-18 07:15:21 | 新作映画を見てみた

『アンビュランス』(2022.3.10.TOHOシネマズ日本橋)

 元軍人のウィル(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)は、がんに侵された妻の手術資金を工面しようと、血のつながらない兄のダニー(ジェイク・ギレンホール)に助けを求める。ダニーが提案したのは、3200万ドル(約36億円)もの大金を強奪する銀行強盗の共犯になることだった。

 だが、強盗は計画通りにいかず、警察に追われる羽目になった2人が逃走用に乗り込んだのは、ウィルに撃たれて瀕死の重傷を負った警官を乗せた救急車だった。乗り合わせた救命士のキャム(エイザ・ゴンザレス)も巻き込み、ダニーとウィルはロサンゼルス中を猛スピードで爆走することになる。

 デンマーク映画『25ミニッツ』(05)のリメイクだというが、これは見ていないので、比べようがないのだが、監督は大げさな映画が得意のマイケル・ベイだから、恐らく相当なスケールアップをしていると思われる。

 また、カーチェイスは『フレンチ・コネクション』(71)、カージャックは『狼たちの午後』(75)、全体としては『サブウェイ・パニック』(74)『ダイ・ハード』(88)などを参考にしたというが、こちらがイメージしたのは、看護師もろとも救急トラックをジャックする『ザーレンからの脱出』(62)と、民間の救急サービス会社を描いた『走れ走れ! 救急車』(76)というコメディ映画だった。

 ただ、この映画はいろいろと盛り込み過ぎて支離滅裂になったところがあるし、瀕死の警官があんなに生きていられるものなのかという疑問が頭から離れなかった。救急車が行ったり来たりするロサンゼルスの道や地形に精通していたら、もっと楽しめたのだろうかと思った。

『ザーレンからの脱出』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e1b1e335d895c4256ee5397add3c707a

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「カムカムエヴリバディ」目黒祐樹と近衛十四郎の素浪人シリーズ

2022-03-17 12:17:17 | カムカムエヴリバディ

 NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」に、目黒祐樹が3代目ヒロインひなたの大叔父・雉真勇の晩年の姿として登場した。

 その目黒の父は時代劇スターの近衛十四郎。兄は松方弘樹。父の近衛は映画で活躍した後、テレビの素浪人シリーズ「素浪人 月影兵庫」(65~68・後に松方主演でリメーク)「素浪人 花山大吉」(69~70)「素浪人 天下太平」(73)で、豪快な殺陣とコミカルな演技を披露して、品川隆二演じる相棒の焼津の半次と共に茶の間の人気者となった。自分も子どもの頃、夢中になって見ていた口だ。

 目黒は、素浪人シリーズの最終作「いただき勘兵衛 旅を行く」(73~74)で、品川の焼津の半次に代わって、旅の相棒となる旅がらすの仙太(実は監視役の与力・有賀透三)として親子共演を果たしている。

 このあたり、「カムカムエヴリバディ」の劇中に登場する時代劇スター桃山剣之介父子(尾上菊之助)の姿と微妙に重なる。脚本の藤本有紀は、1967年生まれだというから、65年生まれという設定のひなた(川栄李奈)とほぼ同世代。ということは、自身の体験や時代劇に対する思い入れも反映されていることだろう。素浪人シリーズも再放送などで見ていたのではあるまいか。しかも、今回目黒が演じた晩年の勇は兄を失くした弟の役なのだ。

 キャスティングの際に、こうしたことが加味されたのだとしたら、それはそれで、なかなか粋な感じがするのだが。ここまでくるともはや妄想の世界か…。

目黒祐樹「カムカムエヴリバディ」でひなたの大叔父・雉真勇役
「ジョーという名は、やっぱりジョー・ディマジオから取ったんか」というセリフには笑った。その後のキャッチボールのシーンもなかなかよかった。
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1320620

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ウィリアム・ハートの映画 その8.『ドクター』

2022-03-17 07:10:56 | 映画いろいろ

『ドクター』(91)(1994.4.27.)

 マッキー(ウィリアム・ハート)は成功した外科医だったが、がんを宣告され、自らが患者の立場になることで、今まで医療者の立場から見てきた医療現場に対してさまざまな疑問を感じるようになる。

 この映画、公開時は、どうせまた安直な心の回復劇なのだろう、あるいは病院や病気ものはどうも気が進まないと思って見なかった。見終わった今も、そうした思いが完全に消えたわけではないのだが、先に見た日本の『病院へ行こう』(90)などと比べると、医療制度の違いはあるものの、良くも悪くも極めて真面目な病院、病気映画だった。

 エリート医師が、自身が患者になって初めて病院や医師の本来あるべき姿を発見する。最初は嫌な奴が、映画が進むにつれて愛すべき者へと変わっていく(演じるハートが見事)。そして彼の横に、変化に困惑する妻(クリスティーン・ラーティ)や同僚、戦友となる死にゆく女性(エリザベス・パーキンス)を配置して、彼が生きる意味を再発見する様子を描いていく。

 監督のランダ・ヘインズは、この、一見、甘く嫌らしくなりかねない再生劇を、危ういバランスを取りながらたくみにまとめ上げていた。これを今はやりの女性監督故の、という言い方はしたくない。なぜなら、こうしたバランス感覚のよさが、昔ながらのアメリカ映画の真骨頂だからだ。

 そして、かつては日本にも、この映画と同種だが、それを遥かに上回る黒澤明の『生きる』(52)が存在した。こうした金の掛からない、ストーリーのうまさだけで見せる映画の時代が確かにあったのだ。

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【ほぼ週刊映画コラム】『ガンパウダー・ミルクシェイク』

2022-03-17 06:31:32 | ほぼ週刊映画コラム

共同通信エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は
女性のアンサンブルによるアクション映画の系譜に連なる
『ガンパウダー・ミルクシェイク』

詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/?p=1320780&preview=true

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ウィリアム・ハートの映画 その7.ローレンス・カスダン『偶然の旅行者』

2022-03-16 07:35:50 | 映画いろいろ

『偶然の旅行者』(88)(1992.7.6.)

 旅行ガイドブックのライターのメーコン(ウィリアム・ハート)は、一人息子の死以来、妻(キャスリン・ターナー)との関係もうまくいかず、やがて彼女にも去られてしまう。そんな彼の前に、ちょっと奇妙な女性ミュリエル(ジーナ・デイビス)が現れた。彼女と行動を共にするうちに、メーコンはその魅力に引かれていく。

 最近、続けて見ているローレンス・カスダンの監督作の中で、唯一未見だった映画。これもいつものカスダンらしく、分かったような分からないような、支離滅裂なところもあるのだが、見終わった後は、何ともいえない不思議な味わいが心に残るから不思議だ。それを体現するハートもユニークな俳優だ。

 ただ、個人的には、今回は、わが贔屓のターナーが損な役割を受け持たされ、デービスに走るハートに感情移入し切れなかったというマイナスがあったのだが、それも、ラストの死んだ息子のそっくりさんの登場で、何となくごまかされてしまった。

 結局、カスダンのずるいところは、家族や友情を皮肉りながら、最後はある程度のところで抑えて、トータルとしてはいい映画を見たような気分にさせるところだろう。いずれにせよ、自分の中では、もはや無視できない監督の一人となった。

 

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ウィリアム・ハートの映画 その6.ローレンス・カスダン『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』

2022-03-16 07:10:20 | 映画いろいろ

『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』(90)(1992.7.1.)

 イタリア人のジョーイ(ケビン・クライン)が経営するピザ屋は街で大評判。だが、ジョーイの浮気現場を目撃した妻のロザリー(トレイシー・ウルマン)は、彼女に思いを寄せる店員のディーボ(リバー・フェニックス)や母親(ジョーン・プロウライト)と共謀して夫殺しを企てる。

 『ワンダとダイヤと優しい奴ら』(88)で開花した、クラインの“うるさいコメディ演技”が、この映画では主役として遺憾なく発揮されている。

 しかも、この映画の監督は、『再会の時』(83)『わが街』(91)の“シリアス俳優”クラインの同志ともいえるローレンス・カスダンであり、ウィリアム・ハートも加えた、意外性のある仲間たちによるコメディとしてなかなか楽しめた。

 簡単に言えば、これは落語の世界のような痴話げんか話なのだが、そこにイタリア系の主人公、東欧系の妻とその母、といったアメリカならではの対立を含んでいるところがうまいし、最後は定石通りのハッピーエンドというのも、いかにもアメリカ映画らしい。これが、例えばフランス映画だと、妙にドロドロしてすっきりしない話になってしまう気がする。

 さて、カスダンの映画には、クラインやハートといった常連俳優が登場するのだから、そろそろ“カスダン一家”と呼んでもいい気がする。ハート主演の『偶然の旅行者』(88)も見てみよう。

 

 

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ウィリアム・ハートの映画 その5.ローレンス・カスダン『再会の時』

2022-03-16 06:37:32 | 映画いろいろ

『再会の時』(83)(1992.6.7.)

 友の葬儀で10数年ぶりに再会した大学時代の友人たち(ケビン・クライン、グレン・クロース、トム・ベレンジャー、メアリー・ケイ・プレイス、ジェフ・ゴールドブラム、ウィリアム・ハート、ジョベス・ウィリアムズ)。彼らが、卒業後の生活を語り合う姿を、「無情の世界」(ローリング・ストーンズ)「青い影」(プロコル・ハルム)など、1960年代のボピュラーソングを流しながら描く。

 この映画のことは、以前から気になっていたのだが、先日、同じくローレンス・カスダン監督の『わが街』(91)を見た勢いで、尻取り遊び的に見てみた。

 その結果、カスダンは、ジグソーパズルのようにバラバラのピースをはめ込んでいく群像劇が好きらしいこと、この映画を作っていなければ、『わが街』は撮れなかったであろうということがよく分かった。この2本の映画は、まるで双子のようによく似ていたからである。

 どちらも、さまざまな問題を提起しながら、結局、全てが曖昧なままで終わってしまう。また、一見『わが街』はハートウォームドラマ、この映画はノスタルジーの皮をかぶりながら、実はディスカッションムービーとも呼ぶべき代物で、立場の違うさまざまな人々に人生観を語らせながら、結論は出さず、後はわれわれ見る側の感情に委ねてしまうのだ。

 例えば、本来なら、甘いノスタルジーに終始しかねないこの題材を、回想シーンを全く入れずに、登場人物たちのセリフだけで過去の出来事を想像させたり、自殺した仲間(顔の映らない死体役はケビン・コスナー)の愛人(メグ・ティリー)を一世代下にして、彼らの感傷に一石を投じている点からも、それは明らかだ。

 それ故、お決まりの「あの頃はよかった」では終わらない苦さと奥深さを感じさせられるのである。ローレンス・カスダン、侮れない監督だ。

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