『偶然の旅行者』(88)(1992.7.6.)
旅行ガイドブックのライターのメーコン(ウィリアム・ハート)は、一人息子の死以来、妻(キャスリン・ターナー)との関係もうまくいかず、やがて彼女にも去られてしまう。そんな彼の前に、ちょっと奇妙な女性ミュリエル(ジーナ・デイビス)が現れた。彼女と行動を共にするうちに、メーコンはその魅力に引かれていく。
最近、続けて見ているローレンス・カスダンの監督作の中で、唯一未見だった映画。これもいつものカスダンらしく、分かったような分からないような、支離滅裂なところもあるのだが、見終わった後は、何ともいえない不思議な味わいが心に残るから不思議だ。それを体現するハートもユニークな俳優だ。
ただ、個人的には、今回は、わが贔屓のターナーが損な役割を受け持たされ、デービスに走るハートに感情移入し切れなかったというマイナスがあったのだが、それも、ラストの死んだ息子のそっくりさんの登場で、何となくごまかされてしまった。
結局、カスダンのずるいところは、家族や友情を皮肉りながら、最後はある程度のところで抑えて、トータルとしてはいい映画を見たような気分にさせるところだろう。いずれにせよ、自分の中では、もはや無視できない監督の一人となった。