田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

東宝特撮映画の顔、宝田明

2022-03-18 11:43:43 | 映画いろいろ

 宝田明が亡くなった。4月1日から公開される主演映画『世の中にたえて桜のなかりせば』に合わせて、インタビューの話もあったので、とても残念だ。

 宝田といえば、やはり何といっても、本多猪四郎監督の『ゴジラ』(54)の主役・サルベージ会社に勤める尾形青年役だろう。そして、本多作品への出演は、『世界大戦争』(61)の航海士、『モスラ対ゴジラ』(64)の記者、『怪獣大戦争』(65)のニック・アダムスとコンビを組んだ宇宙飛行士、『キングコングの逆襲』(67)の自衛隊員、『緯度0大作戦』(69)の海洋学者と続き、東宝特撮映画の顔となる。

 一方、福田純監督の『100発100中』(65)『100発100中 黄金の眼』(68)で演じた秘密警察官を自称するアンドリュー星野役で、キザでC調な感じがするキャラクターを、嫌みなくダンディに演じる個性を見事に開花させた。『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』(66)の実は金庫破りの役も含めて、福田監督作品の方が、彼の個性は生きた感じがする。

 そのほか、鶴田浩二の弟役を演じた岡本喜八監督の『暗黒街の顔役』(59)、『シラノ・ド・ベルジュラック』を翻案した稲垣浩監督の時代劇で三船敏郎の恋敵役を演じた『或る剣豪の生涯』(59)、水茶屋の女(池内淳子)と心中し、討ち入りに加われなかった高田郡兵衛を演じた稲垣監督の『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』(62)、林芙美子(高峰秀子)と結婚する男を演じた成瀬巳喜男監督の『放浪記』(62)などが印象に残る。

 後年は、映画で使われている撮影技法を、実際の作品を例に用いながら解説する、フジテレビ深夜の「アメリカの夜」(91)のホスト役も務めた。これは随分と勉強になったことを覚えている。

 自分は、東宝映画を見ながら育ったと思っているので、その顔の一人であった人の訃報は特に寂しいものがある。

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ウィリアム・ハートの映画 その9.『スモーク」

2022-03-18 07:28:08 | 映画いろいろ

『スモーク」(95)(1996.3.20.)

 ニューヨーク、ブルックリンの小さなタバコ屋を舞台に繰り広げられる人間模様を、それぞれの真実と嘘、現在と過去を交錯させながら描く群像ドラマ。監督はウエイン・ワン。店主のオーギーをハーベイ・カイテル、常連客のポールをウィリアム・ハートが演じている。

 去年の公開時に見逃して悔いが残っていた。何しろ目にする批評はおおむね好評で、ウエルメイドな人間ドラマという触れ込みだったからである。ところが、いざ見てみると、思いのほか大きな感動は起きなかった。

 この映画を、端的に表すなら「袖すり合うも他生の縁」「嘘も方便」といったところだろうが、例えば、同じ類の映画だったローレンス・カスダンの『わが街』(91)などと比べてみても、何だかさらっとしていて、ドライな映画という印象を受けた。

 その理由として、皆が認める流行に反発したくなるへそ曲がりなわが性格や、原作・脚本のポール・オースターの小説を全く読んでいないというところが、マイナス面として作用したことは否めない。

 また、周りの情報に惑わされて、知らぬ間に、よくできたちょっといい話的なものを想像していたことへの反省もある。随分前の『一杯のかけそば』に、多くの人がだまされたようなものか。

 ただ、この映画で描かれた以上に、実際のブルックリンは物騒な所なのだろう。何しろ昔々、治安の悪さからドジャースがロスに逃げたぐらいだもの。そう考えると、この一見ドライに見える人情噺が、実は最大級の奇跡の夢物語だったのかもしれないという気もしてくるのだ。

 それにしても、ハーベイ・カイテルは、最近ますますデ・ニーロに似てきたなあ。

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『アンビュランス』

2022-03-18 07:15:21 | 新作映画を見てみた

『アンビュランス』(2022.3.10.TOHOシネマズ日本橋)

 元軍人のウィル(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)は、がんに侵された妻の手術資金を工面しようと、血のつながらない兄のダニー(ジェイク・ギレンホール)に助けを求める。ダニーが提案したのは、3200万ドル(約36億円)もの大金を強奪する銀行強盗の共犯になることだった。

 だが、強盗は計画通りにいかず、警察に追われる羽目になった2人が逃走用に乗り込んだのは、ウィルに撃たれて瀕死の重傷を負った警官を乗せた救急車だった。乗り合わせた救命士のキャム(エイザ・ゴンザレス)も巻き込み、ダニーとウィルはロサンゼルス中を猛スピードで爆走することになる。

 デンマーク映画『25ミニッツ』(05)のリメイクだというが、これは見ていないので、比べようがないのだが、監督は大げさな映画が得意のマイケル・ベイだから、恐らく相当なスケールアップをしていると思われる。

 また、カーチェイスは『フレンチ・コネクション』(71)、カージャックは『狼たちの午後』(75)、全体としては『サブウェイ・パニック』(74)『ダイ・ハード』(88)などを参考にしたというが、こちらがイメージしたのは、看護師もろとも救急トラックをジャックする『ザーレンからの脱出』(62)と、民間の救急サービス会社を描いた『走れ走れ! 救急車』(76)というコメディ映画だった。

 ただ、この映画はいろいろと盛り込み過ぎて支離滅裂になったところがあるし、瀕死の警官があんなに生きていられるものなのかという疑問が頭から離れなかった。救急車が行ったり来たりするロサンゼルスの道や地形に精通していたら、もっと楽しめたのだろうかと思った。

『ザーレンからの脱出』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e1b1e335d895c4256ee5397add3c707a

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