田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ダイ・ハード3』

2020-11-23 10:14:53 | ブラウン管の映画館

『ダイ・ハード3』(95)(1995.6.6.20世紀フォックス試写室)


 この「3」の製作が噂に上り始めた頃、スティーブン・セガール主演の『沈黙の戦艦』(92)が先に作られて、当初の“海のダイ・ハード”という目論見が崩れたマイナスはあったのだが、それを差し引くとしても、この映画の出来はあまりよくない。せっかくジョン・マクティアナンが監督に復帰したというのに…である。

 シルベスター・スタローン主演の「ランボー」シリーズが、主人公をどんどん超人化させ、ストーリーをパワーアップし過ぎて、おかしくなってしまったケースとよく似ている気がする。

 そして、ジェームズ・キャメロンの『トゥルーライズ』(94)同様、破壊やパニックの大げさな描写を見せる方にばかり気を取られて、肝心のストーリーがおざなりになっているのである。

 最初の『ダイ・ハード』(88)が、何故あんなに面白かったのかと言えば、アクションシーンはもとより、等身大の主人公ジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)が持つ意外性、彼を取り巻く人々との絡み、閉ざされた場所に張りめぐらされた様々な伏線などが、見事だったからだ。言わば、内面の面白さが外面の派手さを食っているところに魅力があったのだ。

 ところが、この映画の超人化したマクレーンには、もはや意外性が持つ面白さはない。そして、ニューヨークという巨大な街が舞台となったせいで、ストーリーも散漫なものになった。

 というわけで、シリーズもの故の悲哀を感じずにはいられないのだが、日本でも、最近、オウム真理教関連のさまざまな事件があっただけに、今までは他人事として見られたこうしたテロの残忍さが、現実的な怖さを持って迫ってくるところがあり、何だか、たかが映画として見られなくなったところもあった。いずれにせよ、このシリーズは、もうこの辺りで打ち止めとした方がいいと思う。


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『居酒屋兆治』

2020-11-23 07:07:36 | ブラウン管の映画館
『居酒屋兆治』(83)(1983.11.23.みゆき座)
 
 
 函館で妻(加藤登紀子)と共に小さな居酒屋「兆治」を営む藤野英治(高倉健)は、別の男(左とん平)と結婚した初恋相手のさよ(大原麗子)への思いを引きずっていた。そんな英治の前に、ある日突然、さよが現れる…。
 
 寡黙で実直だが、不器用な居酒屋の主人と、店に集う常連客(田中邦衛、山谷初男、河原さぶ、平田満、池部良、小松政夫…)のさまざまな人生を、ユーモアと哀感を交えて描く。高倉健・降旗康男監督の名コンビが山口瞳の小説を映画化。惹句は「人が心に思うことは誰も止めることができない」だった。健さんが歌う主題歌「時代遅れの酒場」が耳に残り、伊丹十三がやたらと英治にからむ、しつこくて嫌な男を演じていたのが印象に残っている。
 
 黒澤明監督が『乱』(85)の鉄(くろがね)修理役(井川比佐志)を健さんにオファーしたが、健さんは、この映画の準備と降旗監督への義理を理由に断ったという。『影武者』(80)の勝新もそうだが、健さんの鉄も見てみたかった気がする。
 
“これぞ高倉健”というイメージを作り上げた降旗康男
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/85483d84925a696f8b433dd5ed395419
 
健さんのパロディー『小惑星帯(アステロイド)遊侠伝』(横田順彌)と『居酒屋兆治』と『ブラック・レイン』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6f4a06115c4de004814e0c49d04a595a
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