「テレビ」と「平和」と「憲法」のblog

元ワイドショープロデューサー仲築間 卓蔵(なかつくま・たくぞう)のブログ

“VS”構図の中身

2005-02-28 23:33:57 | Weblog
 日本のメディアは相変わらず“VS”の構図が好きなようです。記憶に新しいところでは、「サッチーVSミッチー」「田中真紀子VS鈴木宗男」といったところでしょうか。

 しばらく目にしないと思っていたら、現れました。政治家によるNHKのテレビ番組への介入です。放送局の独立・自立が問われる事件ですが、あっという間に「NHK VS 朝日新聞」という構図にすり替わってしまいました。各地でNHKに対する申し入れ行動や受信料支払い停止の取り組みが続いていますが、その情報はインターネットで飛び交ってはいても、主要メディアは無関心です。

 NHK問題は、放送局の独立・自立が問われると同時に、歴史認識について「決着」をつけることが問われていると思うのですが、そのことには触れようとしません。かつて、ワイツゼッカー西ドイツ大統領は、終戦40周年記念演説で、「過去に目を閉ざす者は、現在に盲目となる」という名文句を残しました。韓国の盧武鉉大統領は、就任2周年国会演説で、「歴史問題を扱うドイツと日本の異なる態度は、私たちに多くの教訓を示している。両国の異なる態度の結果、隣国から得る信頼に差がある。(日本は)過去に対し率直になるべきだ」と。

 日本は、総理大臣が替わるたびに歴史認識が問われています。主要メディアの歴史認識もあやふやです。もうそろそろ「決着」しなければなりませんが、ことは簡単ではありません。
 NHK会長のクビをすげ替えても、その本質が変わらないとすれば、NHKの成り立つ基盤(受信料)を揺るがすのも、選択肢の一つとなります。同時に、政治介入した政治家には、政治の舞台から降りてもらうことでしょう。

 いま望まれる“VS”の構図は、「日本を戦争ができる国にしたい」という勢力 VS 「平和国家を維持し発展させたい」と願う国民 という構図ですが、その発想はないようです。

 2月25日、横浜で5000人を超える「『九条の会』をきく県民のつどい」がありましたが、主要メディアは見向きもしませんでした。

 いまの関心事は「ライブドア VS フジテレビ」。それも『どちらが勝つか』という興味だけで、国民の共有財産である電波がどうなっていくかについての指摘はありません。

 “VS”の構図を続けるのであれば、視聴者の喝采を浴びる中身にしてほしいものです。

受信料拒否も 選択肢のひとつ

2005-02-12 23:58:53 | Weblog
友人からの誘いで 川崎市の『くらしの相談センターセミナー』で話をしてきました。
与えられたテーマは「報道・放送のいま」です。

その日は サッカーの日朝戦当日でした。ぼくだってテレビ観戦したかったから 参加者も少ないだろうと思っていましたが なんと 予想に反して会議室は満席 50人の参加でした。
イラク戦争報道や憲法に対するメディアの姿勢に 「言いたいことが山ほどある」のです。
同時進行で 政治家による番組介入に対する批判が高まっている時期でもあります。
「サッカーも氣になるが メディアについても話し合いたい」という人たちです。

JCJ(日本ジャーナリスト会議)の機関紙「ジャーナリスト」編集部のH君が購読申込書を持ってきてくれたこともあって 6名の購読者が増えました。

JCJ入会や機関紙購読の依頼をすると かなりのひとが メディアの現場にいる連中でも「おれはジャーナリストじゃないから」と 入会や購読に躊躇する人がいます。
そんなとき こう申し上げているのです 「経理職場なら経理の仕事を通じて 放送に意見を言えるはずだ。総務職場だって関連企業で働くひとだって同じだ」。「まして 視聴者 市民は放送によって影響をうけ 時には被害さえうける JCJは記者やカメラマンだけの集まりではない」「ジャーナリズムに関心のある人の集まる場なのだ」「JCJに関心をもってほしい」と。
そんな説明に賛同してくださった結果の6名だったと思います。
6名の方々の 率直な意見をお待ちしています。

◆ 今回のセミナー参加者の中にも NHK受信料不払いの人がかなりいました。まだまだ増えるのではないでしょうか。NHKの地方局にも抗議や要請の取り組みが続けられています。
インターネットを通じて集まった東大の教授や日本航空機長 出版社編集長など27人が呼びかけ人となって発足した会が 政治家への事前説明を禁じる規定を「NHK倫理・行動憲章」に明記することを求め 要望が満たされるまでは受信料の支払停止を全国の視聴者に呼びかけることにしたといいます。(一方で 「要望がすべて満たされた場合は 支払停止期間中の受信料をさかのぼって支払う」としているところが特徴です)

◆ NHK新会長は就任時の会見で 「一般論として 個々の番組について事前に説明することが当然とは思っていない」と言明していました。
しかし その後 「説明自体が悪いことではないが お伺いを立てるようなやり方は問題だと言う意味だ」と 自民党総務会に釈明したそうです。あっという間の転換です。半歩前進して 二歩後退です。会長が替わっても同じなのです。

◆ あらためて思うのですが

 1 受信料で成り立っているNHKなのに 受信料を支払っている方を向いていないことがはっきりしまし
   た。
   NHKに 放送局としての独立・自立を決断してもらうためには その基盤(受信料)を揺るがすしか
   ないようです。
   NHKが決断し 独立・自立の姿が見えれば 民間放送だってうかうかしていられませんよ。
   受信料の一時支払停止は NHKを「本気」にさせるための選択肢の一つだと あらためて思うように
   なりましたよ。

 2 それだけではだめでしょうね
   NHK問題は 歴史認識について決着をつける取り組みでもあります。首相が替わるたびに 歴史認識
   がころころ変る。いいかげんにしてほしいですよ。
   とりあえず 番組介入した政治家は 政治の舞台から降りてもらいましょうよ。
   この際 政治の「土壌」を思いきって替えれば よりましな国になるとおもいますよ。
 3 進行中の裁判も このような流れと無関係というわけにはいかなくなるでしょう。

戦後60年 日本ジャーナリスト会議の発足から50年
NHK問題をきっかけに 「地鳴り」のようなものを感じますが いかがですか。

続・「指定公共機関」のこと

2005-02-02 11:37:55 | Weblog
NHKの特別番組で新会長のあいさつを聞きましたが 予想どおりの内容でしたね。
視聴者・国民が知りたかったのは 政治介入問題をきっかけに「公共放送としての独立性をどのように確保していく覚悟なのか」でしたが 一言も触れられませんでした。

放送局の独立性との関わりでは 有事関連法の一つである「国民保護法」で 電気・ガス・交通・放送などの事業者160社が「指定公共機関」に指定されたことですが このことは一般には知られていません。
放送局で指定を受けたのはNHKと東京・名古屋・大阪の広域圏民放19社。地方民放局は「指定地方公共機関」として 都道府県知事から指定を受けることになります。
災害など緊急事態を報道するのは 放送局のそもそもの役割です。政府からあれこれ指図されるものではありません。
わざわざ「指定公共機関」とするのは 有事の際の放送の監視と かつての「大本営発表」を望んでいるとしか考えられません。
そうでなくても イラクへの自衛隊派兵の際 報道協定という名でメディアは規制されました。その結果 サマワからの情報を得る手段はなくなりました。

「指定公共機関」について NHKが異議を申し立てたということは耳にしていません。
日本民間放送連盟(民放連,放送局の経営者団体)も 当初は「手続きに瑕疵がある」と批判的でしたが 最近では「戦前のような大本営発表にはならない」と方針転換してきています。

そんなとき 日本民間放送労働組合連合会(民放労連)は1月29,30日 臨時大会を開催し 「指定公共機関」についても議論しています。
その席で『放送局を「指定公共機関」(指定地方公共機関)とすることに反対し 報道機関としての独立・自立を守る措置を講ずること』という要求にもとずいた統一スト権を確立したそうです。
民放労連本部のある友人は 「ことしは戦後60年 春闘がはじまってから50年目 労連大会としては100回目という区切りのいい年。頑張らなければ」と決意をあらたにしていました。

個別に頑張っている局もあります。
広域U局のテレビ神奈川労働組合は 「指定地方公共機関」の打診があったことをいち早く察知し 勝手に受諾しないように」と ストライキも辞さない決意で会社と交渉したといいます。
その結果 会社は 県知事への回答を留保しています。
地方局は 「年度末にむけて これからが攻防戦」ということになります。
機会があれば 放送局で頑張っている人たちを励ましてください。