「テレビ」と「平和」と「憲法」のblog

元ワイドショープロデューサー仲築間 卓蔵(なかつくま・たくぞう)のブログ

思い出すこと

2005-01-21 18:30:22 | Weblog
NHK『ETV2001』「戦時性暴力」への政治介入事件は 2001年1月末のことでしたね。
その年の5月 雑誌『世界』に 当時はたしか東大助教授だった高橋哲哉さんが書いていたのを思い出しています。
紹介しますと
「真相究明と責任の明確化の重要をメッセージとする番組が『改竄』されて その真相が闇に葬られてしまうことほど大きな自己矛盾はない。真相究明のためには NHK内部を含む心あるメディア関係者 ジャーナリストたちのいっそうの奮起が必要である」と。

告発を決心した長井さんは 4年間悩んだといいますね。よくわかりますよ。口をつぐんでいれば「安泰」なのですから。
周囲の何人かが 「告発なんてやめろよ」と言ったそうではないですか。企業ではよくあるパターンですよね。「出世の妨げになる」というのが唯一の理由ですよ。その人達は 自分たちのつくる製品のことなんて二の次なんですよ。雪印のときがそうだったではありませんか。BSEのときもそうでしたね。鳥インフルエンザのときもね。儲けさえすれば消費者の迷惑なんて二の次なんですね。
番組という製品づくりの場でもそうです。「そんなことでいいのかな」など問題提起すれば 「なにを青いことを言っているんだ」と一蹴された経験を持つ人も少なくないでしょう。

私事ですが ぼくがテレビ局の労働組合の委員長をやっていたとき 会社は組合員の数を減らそうと 賃金昇格差別をやってきたんですね。「昇格したい」一心で(圧倒的に男でしたが)組合脱退届けをもってきましたよ。
そのとき ある男がこんなことを言いましたよ。「戦争になったら 反対するから」と だから組合脱退はみとめてくれよと。
そのときは「日本が戦争する国」になろうなんて思いもしなかったのでしょう。その人物は いまをどう見ているのでしょうかね。なにか理由をみつけて 「九条を変えるのもやむを得ないんじゃないの」ということになりそうですすよ。

「NHKはいい番組もつくっているから」と言う人もいます。たしかに 歴史ものやドキュメンタリー番組にいいものはあります。
でもね 肝心なところは すうーっと避けているのですね。つまり「天皇批判」ですね。いい番組をつくっている人に水を差すような言い方になりますが 「許容範囲のなか」でのものなのですね。

だから 長井さんの決断は なおさら輝いて見えるのですね。

番組改竄問題の法廷闘争の進行も無関係ではありませんね。
例の NHKの「不正」問題で世論の批判が高まっていることも 長井さんの決断と無関係ではありませんね。運動にまでは発展していないとはいえ 市民の批判の波が目に見えはじめてきたのです。

VAWWーNETジャパンが 安倍晋三氏に10項目の公開質問状をだしたそうです。
1月25日までに回答をもとめています。

一過性にしてはなりませんね。
持続的な取り組みがもとめられています。

まともな思考形態に立ち戻れるかーーNHK問題

2005-01-16 17:08:33 | Weblog
NHKが放送した『ETV2001』(問われる戦時性暴力)をめぐって きわめて大事な議論がおこなわれています。
ことの発端は 2000年12月8日からはじめられた「女性国際戦犯法廷」を 『ETV2001』がとりあげたところからはじまっています。
番組の企画が通ったのが10月下旬でした。一般的に企画が通るまでには数週間 長ければ半年かかることだってありますが この番組の場合「あっという間に通った」といいます。法廷ですから天皇の戦争責任に及ぶであろうことははっきりしていますが NHK側の担当者は「問題ありません」という力強い対応だったといいます。
主催者側は 『ETV2001』の誠意をうけとめて 取材に際して特別優遇しています。
識者を交えてのスタジオ収録も 和気藹々で終わったようです。

◆ 状況が変ったのは 1月になってからです。制作担当者の手の届かないところで NHK側の手で改変に改変が重ねられていきます。「右翼」団体からの抗議が影響しているのだろうと(その当時は)思われていました。NHK側の右往左往ぶりも手にとるようにわかったものです。
今回の長井暁チーフプロデューサーの勇気ある告発によって NHKはまた慌てましたが そのことで 「右翼」だけでなく政治家も動いていたのだーーということがわかりました。
◆ 16日(日)のテレビ朝日『サンデー・プロジェクト』での安倍晋三氏の受け答えで さらにはっきりしましたね。
NHKは早々と朝日新聞に抗議したようですが これは自民党に対するエクスキューズですね。
ということは NHKは今回の事態にまじめに対処する気がないということを表明したも同然です。自民党にだけ誠意が通じれば「ことは済む」と思っているのでしょう。視聴者・国民にたいする「知る権利」 そして自らの「報道の自由」を放棄したことの表明でもあります。言論機関の自殺行為じゃないですか。
イタリアの労働運動家のことばをあらためて思い起こしています。「芸術家(この場合 ジャーナリストといいかえましょう)は たとえ自由であっても偉大だとは限らないが 自由でなければ偉大になることは困難だ。自由でない場合には 自由になるためにたたかうときにこそ偉大になりうる」と。
NHKの労働組合は 長井さんを支援することを表明しているようです。わたしたちも できうるかぎりの支援をしなければなりませんね。
◆ 各局の番組もいっせいにこの番組をとりあげましたが 「予算を人質にとられているのだからしかたない」など NHK擁護の発言をする評論家 弁護士のコメンテーターもいます。
基本的には 「言論の自由」「知る権利」の立場に立つ内容になっていました。まだまだ屈しているわけではありません。評価することも忘れないようにしましょう。
◆ ところで 長井さんの勇気に拍手するとともに 長井さんが決断したのは NHKに対する批判の高まりという背景もあったのではないでしょうか。NHKにたいする運動にまではなっていないにしろ 批判の波は目にみえているからです。さらに大きなものにしなければなりませんね。そのことが長井さんを守ることになります。

いったいNHKはどこに行こうとしているのでしょう。
きっとわからなくなっているのです。
NHKの行く道を決めるのは 視聴者・国民じゃないでしょうか。

憲法九条 教育基本法 そしてジャーナリズム。大事な時期を過ぎようとしています。

相対需要層

2005-01-10 13:42:24 | Weblog
昨年末 ブログを設けましたが アクセスしてくれる人が増えてきたのです。うれしいものですね。読まれていると思うと また書きたくなる。楽しみさえ感じはじめています。でも ただ書けばいいというものではありません。無責任なものであってはなりません。

■そこで「憲法」との関連です。

いま各地で「九条の会」のアピールに賛同するとりくみがすすんでいます。「九条の会」の講演はどこも超満員です。井上ひさし 梅原 猛 大江健三郎 奥平康弘 小田 実 加藤周一 澤地久枝 鶴見俊輔 三木睦子という呼びかけ人の魅力も 人々をあつめる要因になっているのでしょう。
しかし 九氏におんぶするだけでは「九条」を守り 実行させるとりくみは十分ではありません。改憲をのぞんでいる側は国民投票法案を準備しているのですから 護憲派としては 有権者の過半数 いや日本国民の過半数を味方にする必要があります。
となると いままでのような 知り合い同士の運動では間尺が合わないことになります。
どうするか 苦労するところです。
そんなとき おもしろいものを発見しました。昨年10月号「世界」に カタログハウス社長・斎藤 駿さんが(護憲か改憲か 迷っている人々をいかに味方につけるか。憲法九条を守るためのしなやかな知恵)「ハトはハトでも伝書鳩ーー護憲運動の軌道修正」という一文を載せているのです。

■相対需要層

斎藤さんは小売業です。売りたい商品に合わせて 売りたい相手をつねに三層に分けて考えるのが「小売」の発想だといいます。
三層とは ○絶対需要層 ○相対需要層 ○絶対非需要層 というようです。
絶対需要層とは その商品について前々から強い欲望を持っている層。この層にはあまり説得の苦労はいらない。「あいよ」とこたえてすぐに買ってくれる。
絶対非需要層は その逆です。当方の売りたい商品についての欲望をまったく欠落している。あるいは嫌悪している層だから 百万言費やしたって買ってはくれない。説得するだけ時間のムダ。
したがって 絶対需要層だけでは「数」が足りない。もっと大量に売りたいと思ったら 当然 相対需要層を相手にしなければならないわけです。
相対需要層とは 絶対需要層ほどではないけれど その商品について関心をもっている人たち 買おうか買うまいか 「どうしようかな」と迷っている層。売り方の上手下手で 買ったり買わなかったりする層。
つまり 小売業とは もっぱら中間に位置する大量の相対需要層を相手にした商売だというのです。わかりやすい言葉じゃないですか。

■斎藤さんは 「九条」という商品をたくさん売りたいと思ったら 護憲派と改憲派の中間で「どっちの商品を買ったらいいの?」と迷っている層を相手にしなければなるまい。「九条」をめぐる運動とは 外国には存在しないわが国固有の「定番商品」と 外国の仕様に合わせたありふれた「新商品」の どちらが中間層に買ってもらえるかという”中間層争奪戦”だといいます。
護憲派の市民にとって いま いそがなければならない作業は 中間層を一人でも多く護憲側によびこむための具体的な戦術 具体的なスケジュールを考えることだ。
「九条の消費者から 九条の売り子へ」というのがキイワードです。
護憲派の一人ひとりは 憲法九条という「定番商品」の売り子になるべきではないのか。
消費者は中間層です。その中間層に向けて「定番商品」を販売していくのが 売り子としての護憲派ではないのか といいます。
斎藤さんはさらにつづけます 「極端に言ってしまえば (これまでの)護憲派が一つに結束しようとバラバラで存在しようと そんなの どっちだってかまわない。それだけだったら 現状における改憲派との数量関係に変化はないからね」と。
商品をよく売る売り子とは 消費者の中にあるその商品への関心の度合いや商品への疑念 不安をよく察知して対応できる売り子。消費者の関心や不安を自分の中にとりこめる売り子がいい売り子。護憲派の売り子には自分を中間層の消費者に見立ててみる想像力が必要です。他人の想像力を身につけることを「タコツボ思考からの脱却」というのだそうです。

とってもわかりやすい文章だったので あえて紹介させてもらいました。

ところで きのう(9日) たしかテレビ朝日の「サンデープロジェクト」だったか 宮沢喜一氏が憲法に触れて話していました。「海外で戦争ができるような憲法改正には反対だ」と。

ここで宣伝
2月25日(金)神奈川県民ホール(横浜にあります)で 「九条の会」をきく会をやります。
2500人収容です。先日 下見にいってきましたが いいホールですね。
「九条の会」から 大江健三郎さん
         加藤周一さん
         小田 実さん が話してくれることになっています。
18時開場です
テンポのいい集まりにします。
お誘い合わせのうえ ご参加のほど 隅から隅までー(歌舞伎調ですが)乞い願いたてまつります。

「血液型』について

2005-01-08 13:07:28 | Weblog
しんぶん赤旗の「日曜版」に「メディアをよむ」という連載がありますが 第一週の日曜日はぼくの担当です。御用とお急ぎでない方は たまには目をとおしてみてください。出身がテレビなのでテレビの話題が中心です。
9日付けのコラムは「笑いで済まない『血液型』」というものです。正月だし あまり堅苦しくないものです。

■今年もまた テレビや雑誌は「占い」ものを取り上げるでしょう。人によっては それを見て喜んだり 落ち込んだりすることもあります。
「占い」に類するものに「血液型」があります。「△型は 几帳面」「×型はいい加減」とか 「×と△は相性がいい」「△と○はうまくいかない」など 日常の会話にも登場します。話のついでに出る笑い話で済めばいいのですが まじめにうけとって”いじめ”の対象になっているとしたら問題です。
NHKと民放で設立された「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の青少年委員会は 昨年末 血液型による性格判断が増えていることに着目し 民放各社に「科学的根拠があるかのようなつくり方で放送するのは問題がある」「番組づくりにあたっては 慎重な対応を」という趣旨の要望をしました。
視聴者から「血液型でいじめを受けた」「一方的ないいかたは不愉快だ」などの抗議が多数寄せられたのがきっかけです。
たしかに 血液型を取り上げた番組は増えています。「血液型選手権」など 特別番組から 毎日レギュラーで放送している番組もあります。
「視聴者の関心が高いから」といういい方もあるでしょうが 血液型をめぐっては 笑い話では済まされない状況が起きていることを番組担当者はまず認識すべきでしょう。
そうでなくても 自民党は「青少年有害社会環境対策」と称して 番組規制をすることをあきらめてはいません。
「血液型」の話題が定着しているかのような取り上げ方から 「科学的にはなにも実証されていない」という見方に 番組づくりの舵(かじ)を切り直す必要があるようです。度を過ぎれば 「人権」にかかわることになります。■


このコラムのほかに JCJ(日本ジャーナリスト会議)の機関紙「ジャーナリスト」に毎月”仲さんのテレビの本音”を載せています。発行は毎月末です。
ブログ開設のついでに宣伝させていただきました。しんぶん赤旗「日曜版」 「ジャーナリスト」。定期購読してもらえばなお嬉しい。
ことしも おつきあいのほど 隅から隅までえーーーーよろしくお願い申し上げ奉ります。

大江健三郎さんも

2005-01-01 13:24:06 | Weblog
2005年が明けました。
新居での正月です。
晴れた日には富士を望める場所ですが 元旦の朝は写真のようにきれいなたたずまいを見ることができました。(携帯で撮ったのでわかり難いかな)

ところで 昨年の暮れから準備をはじめた「九条の会」をきく神奈川県民のつどいも 着々とすすんでいます。
2月25日(金)神奈川県民ホール
       18時開場
呼びかけ人は 内橋克人(経済評論家) 小山内美江子(脚本家) 小林直樹(東大名誉教授) 清水鳩子
       ) 高嶋伸欣(教科書裁判原告 琉球大教授) 本間 慎(フェリス女学院大学長)

「九条の会」から加藤周一さん 小田 実さん そして大江健三郎さんも話をしてくれることになりました。
賛同要請の手紙を出させてもらいましたが 間もないというのに(12月25日現在)賛同者175人 カンパが20万円をこえる状況です。
2月25日といえば まだ寒い季節だとおもいます。しかし 「憲法を変えさせない」「憲法を守らせていく」とりくみは 季節とは無関係です。寒さも吹き飛ばす内容にしたいものです。
ぼくの学生時代の友人からも「聞きにいくよ」という電話が入りました。
職場や地域に広めてくださいね。

ことしも よろしくお願いいたします。