「テレビ」と「平和」と「憲法」のblog

元ワイドショープロデューサー仲築間 卓蔵(なかつくま・たくぞう)のブログ

ロス「疑惑」の疑惑

2008-02-29 14:15:12 | Weblog
 ロス市警の未解決事件捜査班が動いて、かつて大騒ぎしたロス「疑惑」が再びメディアに登場してきた。
 あのときぼくは現役のワイドショープロデューサーだった。三浦和義という人物は、「俳優も顔負けの演技派だ」と思ったことを思い出している。足を撃たれてロスの病院に入院中の彼を在ロスのテレビクルーに取材してもらったのだが、そのときのディレクターの後日談では、「クルーが行くまでは 彼は友人と雑談していたが、インタビューとなったら毛布をはがして包帯を巻いた足を出し、傍に娘さんの写真を置いて 何度も妻の名を口にしながら泣き続けながら答えていた」という。「映像の効果を知っている人なんだろうな」と思ったものだ。

 久しぶりに、当時 ロス「疑惑」取材のチーフをしていたH氏と電話で話し合った。彼の分析はこうだ。「三浦某がロスを訪れていたという報道があるが、夫人によれば”行っていない””パスポートを見ればわかる”といっていた」「共謀とすれば 1 知人に頼むか 2 (彼は酒を飲まないから、食事にでも行ったとき)行きずりの人物に(彼はジョークを好むタイプだから)「カネになる話があるが」ともちかけたことも考えられる」「ライフルが見つかったか、その人物が何かの事件で司法取引に応じたか。ロス市警はあたらしい証拠をもっているとしか思えない」「それにしてもメディアは騒ぎすぎだ。ほかに報道することは山ほどあるのに。日本では無罪になっている。静観するのがスジだろう」という。

 今回の逮捕が、今後どのような展開を見せるかは、わからない。
 だが、考えてみた。このことで「得をするのは誰か」と。共謀が立証できれば未解決事件捜査班の名は上がるだろう。もう一つ。政治的スキャンダル以外のスキャンダルを待ち望んでいたものがいたとしたら・・・・。言い古された言葉だが「フレームアップ」効果だ。
 思い出すのは1999年。「サッチー・ミッチー騒動」だ。熟年女性のバトルをワイドショーは延々と追跡した。その陰で、「日の丸・君が代」法案が、「盗聴法」があっという間に通過した。
 2003年。アザラシの「タマちゃん」騒動があった。「白装束集団」を追いかけ回した。その陰で「有事立法」が強行採決された。途端に「タマちゃん」はいなくなった。「白装束集団」の追跡は終わった。おもしろおかしいことを「やるな」とは言わないが、ほかにも伝えなければならいことがあったのだが、それをしなかった。

 もしかして、今回の「逮捕事件」を密かに喜んだ向きはないか。
 なにせ20年前の逮捕状である。三浦某がサイパンに行ったのは今回が4度目である。その気があれば逮捕できたのではないか。なぜ「今」なのか。
 でも 今回は1999年、2003年のときとはちょっと違う。ロス「疑惑」事件の再燃に、たしかにメディアは飛びついたし、これからも追跡するだろうが、イージス艦衝突事件や道路問題もちゃんと報道し続けている。手を緩める気配はなさそうだ。そこが違う。
 2月25日の(あまり好きではないが)テレビ朝日の『TVタックル』を見た。最終のコーナーは「沖縄の中三少女暴行事件」だった。政治評論家の三宅久之氏が「これは安保問題でもある」といった。ビートたけし氏も「安保について国民投票でもやったらどうか」といっていた。安保廃棄後のことについては、「日本の独立と併せて軍事大国に」という意見もあったりして議論が分かれるところだが、少なくとも「安保」という言葉がバラエティー番組の中で飛び出したのだ。「安保」という言葉が身近になってきたことを伺わせる場面だった。

ロス「疑惑」再燃で喜んでいる向きにとっては、もしかして思惑はずれかもしれない。
 メディア状況が少しづつ変わりはじめた と思ったりしているが、評価のし過ぎだろうか。

「住民を蹴散らす」のが軍隊

2008-02-24 17:07:09 | Weblog
 戦時中。といっても「ベトナム戦争のときですか?」「イラク戦争のときですか?」と聞く若者がいるといいます。一般に「戦時中」といえば、日中戦争、太平洋戦争とつづいた15年戦争のことです。よろしく。
 その頃、戦車隊の兵隊が「行く手に住民がいたらどうすればいいのですか」と質問したところ、上官は「蹴散らせ」と答えたといいます。
 千葉県・房総沖で海上自衛隊のイージス艦「あたご」が漁船「清徳丸」に衝突。親子船は真っ二つ。吉清治夫さん、哲大さんはいまだに行方不明です。

 イージス艦が「清徳丸」を発見したのは「2分前だった」とか「12分前だった」とか発表も二転三転。漁師さんの証言では衝突30分前から「あたご」の姿を確認。15分後にはレーダーの精度を切り替え、「あたご」の接近を警戒していたといいます。
 海上での航行ルールは、二つの船が接近したら、相手船を右側に見る方に回避する義務があるそうです。回避していた「清徳丸」をみて後進(ブレーキですね)をかけたのは1分前。船は車のように急停車できるわけがない。
 イージス艦は自動操舵のままだったそうです。その時間は要員の交替の時間だったとか。石波という防衛大臣によればイージス艦の「航跡記録」はあるともないとも。よくわからない。どこかの大学教授が「海上保安庁に持っていかれているのではないか」と助っ人発言していましたよ。テレビ朝日の『サンデープロジェクト』だったかな。

 この事件についての報道の多くは、「あたご」側の”怠慢”を指摘しています。「そこのけ そこのけの体質だ」というコメンテーターもいましたね。冒頭の戦車隊長ではないけれど、「邪魔なものは蹴散らす」のです。沖縄戦でも、手足まといになる同胞に「自決」を強いたじゃないですか。”軍隊”とはそういうものなのです。
 そこで、もう一歩踏み込んでほしいのです。日本国憲法・九条です。
 「日本国民は 正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し 国権の発動た  る戦争と 武力による威嚇又は武力の行使は 国際紛争を解決する手段として  は 永久にこれを放棄する。
  前項の目的を達するため 陸海空軍その他の戦力は これを保持しない。国の
  交戦権は これを認めない。」
 自民党は「党是」に憲法「改正」をうたい。とりわけ「九条」の「改正」を急いでいます。自衛隊を軍隊に変えて 海外で戦争ができるようにするというのです。しかし 残念ながら 今回の事件を伝えるにあたっての報道の姿勢は、「九条」論義を避けているとしか思えないのです。「改憲」と「軍隊」、そして その「軍隊」は いったい誰のために 何をするのか・・・・・。考えるいいチャンスじゃないですかね。

 ジャーナリズムの基本は 「いま言わなければならないことを いま言う」ことです。こんなに多くのアメリカの基地を持たされている国は 他にあるのでしょうかね。しかも 沖縄・辺野古に永久基地をつくるという。海兵隊のグアム移転に3兆円使うという。暴行事件が続発しているのに 「基地を縮小してくれ」とも言わない。国民のことはほったらかしで、アメリカのためならエンヤコラです。
 もうそろそろアメリカから自立しなきゃいかんのじゃないですかね。
「日米安保条約」問題をとりあげて発言する人も出はじめています。25日の『TVタックル』(テレビ朝日系)ではビートたけしさんが(沖縄の中3生暴行事件をとりあげたとき)「安保問題を考えなきゃならないね 国民投票でもやって」とつぶやいていましたね。政治評論家の三宅某も「安保と無関係ではない」と言っていた。
 条約の10条には「この条約が10年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行われた後1年で終了する」となっているのです。

 安保条約は、あの大闘争のあった1960年締結です。もうすぐ50年ですよ。「破棄することにします」といえば、1年後には無くなることになっているのです。いままでだと「安保」といえば「左翼」と単純に捉えられていましたが、最近は、「安保」も身近なものになってきているんじゃないですかね。
 アメリカのために これまで費った金はどのくらいなんですかね。膨大な額ですよ。これから費う金は? その金を 国民生活に回したら・・・。いい国になると思うのですよ。ときには そんなことも考えてみるのもいいのではないでしょうか。
 もう春。お元気でお過ごしください。