「テレビ」と「平和」と「憲法」のblog

元ワイドショープロデューサー仲築間 卓蔵(なかつくま・たくぞう)のブログ

「納豆ダイエット」ねつ造は なぜ起きた

2007-01-31 11:58:10 | Weblog
「いつかこんなことが・・・・」と思われていたことが 起きてしまった。
フジテレビ系『発掘!あるある大辞典』(関西テレビ制作 1月20日放送)がとりあげた「納豆ダイエット」の実験効果やデータが ねつ造されたものだった。
放送後 納豆が品切れになった店もあったという。
視聴者はまんまと騙されてしまった。

「いつかこんなことが・・・・」には いくつかの背景がある。
1 視聴率競争
  この日の視聴率は14.5(ビデオリサーチ調べ)
  日曜日21時台としてはまあまあの数字ということになる。
  このところフジテレビ系列の視聴率は好調のようだ。
  視聴率が悪ければ「なんとかしなければ」と躍起になるし
  「好調」であれば その「好調」さを維持しなければということになる。
  関西テレビは 過去にも「レタスで快眠」(98年10月)で問題になったことがあるそ
  うだ。「味噌汁ダイエット」もあったという。
  まだまだ出てくるだろうが 大問題にならなければ さらにエスカレートすることに
  なる。
  「あっ!と驚いてもらわないと 次に見てくれない」とおもっているからだ。
  制作委託された日本テレワーク(フジテレビの肝いりでつくられた会社)の 「番組
  を維持したい」という思いが 結局は番組を潰すことになってしまった。
  「不二家」と似たり寄ったりである。

2 安い制作費を補いたい?
  実際に制作したのは日本テレワークの関連会社だという。孫請けである。
  当然ピンはねされた制作費だったのだろう。
  だから 実験データを検証する手間を省いたということも考えられるが この場合そ
  うでもなさそうだ。
  なぜなら 使用前 使用後の写真 学者のコメントなどウソだらけだったのだから 
  確信犯である。

  番組周辺には「タイアップを専門にする」会社がうごめいている。
  正規のCMだと相応の料金が必要だが タイアップだと安くあがる。
  番組にはタイアップ料が支払われたり 制作にあたって便宜供与もある。制作費の足
  しになる。
  そこに目をつけた商売である。ここに落とし穴がある。
  タイアップ会社は 商品に関するデータや取材場所 学者の意見などを取り揃えて企
  画を持ち込む.なんともはや 便利である。
  担当者がその気になれば その企画をウ飲みにしてつくられる。

「チェック体制を強化すればいいじゃないか」というが これがなかなか難しい。
テレビキー局の考査担当は 「データが正しいかどうか 入り込む暇もなければ 権限も無い」「相談にくる番組もあるが 視聴率のいい番組プロデューサーの多くは相談にはこない」「大丈夫?としか言いようがない」「放送基準が頭に入っているのかどうか 要は
プロデューサー”個”の問題だ」
と嘆く。

番組を見ていると 「これはタイアップだな」と思えるものがかなりある。
そう思っていても 見過ごせるものもある。
だが ウソは断じて許せない。
健康にいい 美肌効果がある 痩せるなどというと見る人が多いようだ。痩せているのに痩せたい人もいるという。
そこにつけ込んだ「ウソ」は 断じて許せない。

「どうすればいいのだ」という。
どこかにチェック機関を設けて解決することは まず無理である。
1 まず プロデューサーがしっかりすることだ。判断力と決断力である。
  プロデューサーは その役割がすべてといっていい。
2 番組内に「言論の自由」はあるのか。
  言論の府でありながら 実は職場に「言論の自由はない」といっていい。
  「これでいいのか」「ちょっとおかしいんじゃないか」と思ったら 何人かで話し合
  えばいい。
  「指摘は正しい」と思ったら 是正すればいい。それだけでいいのだ。
3 視聴する側も 「局に言っても”暖簾に腕押し”だから」と諦めている節がある。
  そんなことはない。
  視聴者サービスセンターに電話したり 番組に手紙を出したりという方法もある。
  まともなプロデューサーなら 必ずスタッフ会議などで検討するはずである。
  
『あるある・・』だけのことではない。情報番組 報道番組についても同じである。
「あんなことを放送していたが 本当なのか?」と聞くことが大切だろう。
「納豆ダイエット」のウソもけしからないが 安倍内閣のひどさと テレビ局の報道姿勢にも目を向けたい。この国を 戦争ができる国にさせてはなりません。

せんぼんよしこと『赤い鯨と白い蛇』

2007-01-21 15:28:07 | Weblog
1月19日(金)
日本テレビ出身者を中心にして
「せんぼんよしこ監督を囲む会」(岩波セミナールーム)をやりました。
彼女の第一回監督作品『赤い鯨と白い蛇』(3月9日まで岩波ホールで上映中)をネタにして 久しぶりに語り合おうという会です。
せんぼんよしこ(千本福子)といえば日本テレビのドラマシリーズ『愛の劇場』が代表作といってもいいでしょう。真面目な作風を貫いた演出家です。
スポンサーの旭硝子が「視聴率なんて気にしない いい作品を提供したい」という立場だったことも このシリーズが長く続いた背景にありましたね。
『ああ!この愛なくば』で芸術祭大賞も受賞しています。

そんな彼女に傾倒していた連中が集まった。
演出 カメラ 照明 音声 美術(大道具 小道具 衣装)制作管理部門 編成 広報など・・・・参加者だけで制作会社ができそうな感じですよ。
受付は 当時旭硝子たんとうだった営業のFさんが買って出た。

せんぼんよしこは78歳
でも 年齢を感じさせない元気さです。
テレビドラマづくりではベテランでも 映画ではルーキーです。
「制作費集めに苦労した」といいます。
映画プロデューサーの奥山和由さんが「こんな真面目な作品があってもいいんじゃないか」と乗り気になってくれたことで撮影に入れたといいます。

物語は 香川京子さん扮する「おばあちゃん」が孫娘といっしょに 戦争中に過ごしたことのある海辺の町を訪れる。
暮らしていた茅葺きの家に 世代のちがう女性たちが集まる。
その何日間かを描いています。
「おばあちゃん」は かつて海軍が使っていた防空壕で 当時淡い恋心を抱いていた海軍少尉の手紙をみつけます。
「戦争のために ぼくは正直に生きられませんでした。正直に生きてください」と書かれています。

ぼくは どんな作品にもメッセージ性を求めてしまいますが
せんぼんよしこのメッセージはこの遺言のような手紙にありますね。

画面に顔を出すのは女性ばかりです。
だからでしょうか 第十九回国際女性映画祭(昨年10月22日)のオープニング作品として上映されています。立ち見がでるほどの盛況だったといいます。
ことしは 第十六回あきた十文字映画祭(2月10日から12日まで)のクロージング上映作品に決定しているようです。

この会に特別ゲストで参加してくれた映画評論家の山田和夫さんは 「テレビ出身の演出家が映画を手がけているが 彼らに求められるのは若者向けの派手なエンターテイメント作品」だといいます。
「テレビで真面目な作風を貫いてきたせんぼんさんだからこそ撮れた作品」と評価し ことし10月7日から開催される中津川映画祭(岐阜)の出品作品に推薦したいといいます。

  
”戦争”の描き方にはいろいろあります
硫黄島「二部作」は印象的だった。
『父親たちの星条旗』では 擂鉢山に星条旗を立てた兵士が 戦時国債募集に利用され
結局は見捨てられていきます。
『硫黄島からの手紙』は 国に見捨てられた兵士の「天皇陛下バンザイ!」のやるせなさが描かれていました。
対照的に 『赤い鯨と白い蛇』は海軍少尉の書き残した手紙です。

新しい年を迎えて テレビは”戦争”をどのように描くのでしょうか。

しんぶん「赤旗」(1月14日付)の調査報道によれば イラク帰還の自衛隊員のなかで7人の自殺者がでているそうです。
“戦争“と”憲法九条”を 真正面から見据える年になればいいのですがね。

(日本ジャーナリスト会議の機関紙「ジャーナリスト」1月号に載せた”仲さんのテレビの本音”の転載です)

正月番組 随想二題

2007-01-03 20:11:11 | Weblog
謹んで新年を賀し奉ります。
いい年になるかどうか
いい年にするために努力しなければ いい年にはなりませんのです。
いい年にするために ことしもよろしくお願いいたします。

正月番組を見ましたが いずこも同じ秋の夕暮れでしたね。
でも 面白いものもありましたよ。

《その一》
テレビ朝日の『朝まで生テレビ』(1日1時30分から)「恒例元旦スペシャル 激論”北朝鮮””激変する世界”日本外交はナニができるのか?」
田原総一郎のキャラクターで いろいろな意見のある番組ですが この日は面白かった。
精華大学の教授がわざわざ出演していましたが 冷静な人でした。
議論のほとんどが”北朝鮮”問題になっていましたが ブッシュのイラク政策 日本の対応 イラクからの撤退のことなどが 関連する話題として取り上げられました。
さすがに ことここにいたってはブッシュ政策を後押しする人はいません。
ついこの間まで支持していた学者 評論家もコロッと意見がちがってきているのが面白かったですよ。
民主党 公明党も話していましたが 何を言っているのやら 「大量破壊兵器があるから」といって自衛隊派兵に賛成していたのですから もうしどろもどろ。
「いま総括している」といっていましたが どんな総括になるのでしょうかね。
北朝鮮問題も 「制裁強化」では解決できないという流れになっていきました。
終始議論の中心にいたのは姜 尚中東大教授と穀田恵二衆院議員でしたね。
いきり立つ人もいたけれど 理論性はなし。
情勢を的確に捉え 分析することの重要性をあらためて知らされることになった番組でした。
つい朝まで見てしまいましたよ。

《その二》
だから 初詣は2日にしました。
2日はぼくの誕生日。何歳になったって?それをいっちゃあおしめえよ。
初詣は大船の常楽寺。北条初代泰時の墓がある寺です。
これまでは鶴岡八幡宮でしたが 引っ越したので近くを探したら常楽寺があった。
由緒ある寺なのに参拝客はほとんどなし。知られていないのでしょうかね。

午後2時には帰宅しました。
理由はテレビ東京の長時間ドラマ『忠臣蔵 遥泉院の陰謀』(ようの字はこれしかなかったのです 本当は「王」偏です)を見るためです。2時から夜中の11頃までやるのです。
ジェームス三木さんの脚本です。
読んではいませんが湯川裕光というひとの原作があるのです。
忠臣蔵にはいろんな解釈があるけれど 浅野の当主の奥さんが吉良殺しのために密かに力を尽くしたという話です。
大石と浅野の未亡人が「関係があった」というのはちょっとやりすぎじゃないの?とは思ったけれど こらはこれで了解とします。
面白かったのは 将軍綱吉の「生類憐れみ」法は 綱吉の母親が八百屋の出で 「肉を食べさせなければ野菜が売れる」ためだったというのです。
側近の柳沢吉保も 後に「あれは悪法」といいますが 将軍におもねって悪法を続けたのです。いまに通じる話です。将軍が代わると 法も変わります。

浅野の未亡人の述懐は「赤穂の浪士が江戸の世論に火をつけた 勝ったのは世論だ」といいます。
テロが世論に火をつけたというのはいただけませんが 江戸庶民の不満や怒りが臨界点に達していたことは事実です。
綱吉は世論を気にはしていたようですが バック(この場合は母親)を気にして政策を変えません。これも いまに通じる話ですよ。
未亡人は浪士の遺族のためにも奔走します。いってみれば「戦争責任」です。

長時間でしたが 見応えがありましたね。
ジェームス三木さんは「おもしろい原作で すらすら書けました」「悪政への庶民の怒りなど現代に通じるところがありますね」と語っているといいますが 見終わってみて そのとおりだと思いますよ。

悪政だらけの世の中です。
世論に訴えるメディアの役割は大きい。
頑張らなくっちゃあ。

追伸
3日夜9時 フジテレビの新春スペシャルドラマ『明智光秀 神に愛されなかった男』をそれなりに期待して見ましたが 駄作。