「テレビ」と「平和」と「憲法」のblog

元ワイドショープロデューサー仲築間 卓蔵(なかつくま・たくぞう)のブログ

井上ひさしさんと日比谷公会堂

2010-06-23 13:36:36 | Weblog
 6月19日(土)、日比谷公会堂。
 恒例の「九条の会」講演会。
 今回は、4月9日に急逝された井上ひさしさんを偲んで『井上ひさしさんの志を受けついで・九条の会講演会・日米安保の50年と憲法九条』という名の集会になりました。
 「九条の会」のイベントは、毎回マスコミ九条の会に任されているのです。
 今回も、舞台下手に大きな「ひまわり」のイラストを下げました。有明コロシアムで第一回「九条の会講演会」をやったときの舞台の両端に「ひまわり」をセットしたのがはじまりで、「九条の会」といえば「ひまわり」が定着したといっていいでしょう。

 井上ひさしさんといえば名だたる愛煙家でした。日比谷公会堂で喫煙できるのは楽屋入り口にある喫煙所だけ。そこに引き寄せられるのは、必ずと言っていい井上さんと、(九条の会事務局長の)小森陽一さん。そして私の三人。
 19日に井上さんはいません。進行の合間にやってきた小森さんも、この日は無口。いつもなら、ここに井上さんがいたのです。

 定員いっぱいの2000人。
 開会前のBGMは、「マドンナの宝石」と「カヴァレリアルスティカーナ」。どちらもオペラの間奏曲です。きれいな曲です。
 開会前に、生前の井上さんの映像が映し出されました。僅か20分足らずのものでしたが、元NHKの桜井さんの編集は(井上流の講演と笑いのあるもので)すばらしかった。
 今回の講演は大江健三郎さんと奥平康弘さん、そして澤地久枝さんの三人だけ。三木睦子さんもお出でになりましたが、体調を気遣われて講演はなし。お出でいただいただけでも感激です。鶴見俊輔さんと梅原猛さんは(運動を続ける意思を表明した)メッセージを寄せられました。
 井上ひさし夫人のユリさんが話をしてくれました。意外に明るい表情だったのにはホッとしたものです。わずか2分の話でしたが、「粘り強く、おおらかに、楽しく運動を続けましょう」と、まさに井上ひさしさんの遺言でもあるような内容だったのです。
 ユリさんの話の後は、(ユリさんがお願いしたという)佐藤修三さんの(「吉里吉里人」の一節)朗読です。
 チョーンという拍子木で、東北訛りの朗読です。これがまたすばらしい。チョン、チョーンという拍子木で締めです。今回の演出といえば、この拍子木でしたね。この拍子木は青年劇場からお借りしたものです。ありがとうございました。

 私にとってこの日がいい思い出になったのは、井上ユリさんと、『ゲバゲバ90分』の大プロデューサーだった井原高忠さんが、私の携帯電話を通じて話をされたことです。
 井上ひさしさんは、その頃、『ゲバゲバ』の構成作家の一人でした。昨年の6月6日、赤プリで井原さんの「傘寿の会」を大々的にやられたのですが、そのとき、井上さんは元気に参加されていたのです。
 井原さんのことは、ひさしさんからことある毎に聞かされていたけれど、ユリさんは「お会いしたことがなかった」そうです。
 井原さんは、「もう日本にくることはないだろう」(いまアメリカはジョージアに住んでいるのです)と言っていたのですが、ラジオ出演などでやってきた。前日(18日)博報堂の旧友たちと銀座三笠会館で井原さんを囲む会をやった。彼は酒を飲みません。「酒飲みが嫌い」でした。が、今回は二次会までつきあってくれたのです。私は調子に乗ってのみすぎた。翌日、井原さんから「卓蔵さん、かなり酔っ払っていましたねえ」という電話をもらって、恐縮のかぎりでしたよ。その日は、東海道線で辻堂まで乗り過ごしたのです。19日は二日酔いでの日比谷公会堂だった。面目なし。
 でも、ユリさんと井原さんが話をすることができたので、ま、いいか。

 ユリさんが、別役実さんと話をする機会があったとき、別役さんが、「劇作家協会の人たちと話していたとき、”井上ひさし記念喫煙所”を、所縁の劇場につくったらどうかというはなしになった」と言われたそうです。それができれば面白いですねえ。名作はたくさん遺された井上さんですが、スペースとして、しかも、いまや「非国民」的扱いの愛煙家のために、そんなスペースがあってもいいのじゃないですかねえ。

 井上さんが綴っていた闘病日誌の最後のページには、こう書かれていたそうです。

   過去は泣きつづけている―ーーー
   たいていの日本人がきちんと振り返ってくれないので

   過去ときちんと向き合うと、未来にかかる夢が見えてくる

   いつまでも過去を軽んじていると、やがて未来から軽んじられる

   過去は訴えつづけている

   東京裁判は、不都合なものはすべて被告人に押し付けて、お上と国民が一緒になって
   無罪地帯へ逃走するための儀式だった

   先行きがわからないときは過去をうんと勉強すれば未来は見えてくる

   瑕こそ多いが、血と涙から生まれた歴史の宝石。


「歴史の宝石」・・・日本国憲法のことですね。
 この一節は忘れないようにしよう。
 井上ひさしさん。ゆっくりお休みください。どこかの空の喫煙所から、私たちを見ていてください。

「いちまいの絵」、そして続・哨戒艦「天安」沈没事件

2010-06-09 13:13:22 | Weblog
 前回、信州上田の『無言館』を訪ねたことを書きました。
 その時の感想を 詞にしてみたのです。

     いちまいの絵

   愛してやまない恋人を
   描きかけたままの いちまいの絵
   あのときのままのパレットから
   「絵筆を折らせたのは 誰か」
   あなたの声が 聞こえてくる

   父や母や妹弟たちの
   笑顔がいっぱいの いちまいの絵
   あのときのままの画布から
   「もう 戦争はやめてほしい」
   あなたの声が 聞こえてくる

     「無言館」につづく
     静かな道に
     アカシアの花が
     咲きつづけています

 思いついたが吉日かどうか、作曲を依頼しています。
 CD化できるとすれば4作目になりますが どうなりますかね。

 ところで、菅内閣が発足しました。「奇兵隊内閣」と呼んでほしいそうです。
 奇兵隊をつくった高杉晋作は、(「朝鮮はおろか、満州、支那、ルソン、インドまで切従えて・・・」と教えた吉田松陰の門下生でしたね。菅さんは、吉田松陰~高杉晋作の流れを受け継いでいるとでも言いたいのでしょうかね。
 普天間基地問題については、鳩山時代の「日米合意」を引き継ぐそうですね。就任会見で「政治の役割は、貧困や戦争など国民や世界の人が不幸になる要素をいかに少なくしていくかだ」といっていましたが、沖縄の”不幸”はそのままなのですかね。
 支持率は上がったようですが、それも時間の問題のような気がしてなりません。国民に信頼されるかどうかは、「アメリカに対して、ちゃんとモノが言えるかどうか」・・・「大企業の勝手さに ちゃんとモノが言えるかどうか」ですよ。
 沖縄の怒りは、さらに高まるでしょう。日米安保問題は遠い話だと思っていた国民も、最近では、「問題は”安保”だ」と認識するようになってきていることをご存知ないのでしようかねえ。

 まさか、「学べば学ぶほど、海兵隊の”抑止力”が大切」などと言いはじめるのではないでしょうね。
 鳩山さんは、韓国海軍哨戒艦「天安」沈没事件に関して、韓国政府の「北の攻撃」説をいち早く支持しました。
 錆びついた「魚雷の破片」なるものにはおどろきました。わずかの期間に、あれだけ錆びるものなのでしょうか。
 天安号調査のため、韓国国会によって推薦された民間調査員S.C、Shinさんは、「軍当局は”魚雷の爆発”によって天安号が二つに割れて沈んだという結論に達したが、私の意見はそれとは全く異なります。なぜなら、私は”爆発”を示すものはかけらも見つけることが出来ず、反対に、その船の座礁と離礁を示すいくつもの証拠を見つけることが出来たからです」という報告を、アメリカのクリントン国務長官に出しています。
 彼は、韓国軍当局の結論に合意しなかったということで、いま、名誉棄損で訴えられているそうです。

 沈没事件は3月26日でした。
 アメリカの原潜と「相撃ち」説もでていましたが、Shinさんの報告は理解しやすいものです。
 6月2日は韓国の統一地方選挙でした。この沈没事件を利用しようとした人たちがいたでしょう。しかし、その結果は、与党の惨敗で終わりました。韓国の人たちは、沈没事件当初から、「軍の発表はおかしい」と思っていたようです。飲み屋などで集まれば、その話題になっていたといいます。韓国の人たちは惑わされなかったのですね。

 6月1日付で、韓国運動圏(韓国内の各種団体による)は「哨戒艦沈没問題」についての声明を出しています。「・・・・・不十分な調査結果発表で国論が分裂し、国際的に自ら恥をさらしはしないか気がかりだ。したがって、われわれは軍と李明博政権による今日の調査結果発表を認めることができないという点をはっきりと明らかにする。われわれは、天安号事件の真実を知りたいと願う国民と同じように、ありのままの事実を知りたいと願う」と。

 9.11のとき、小泉さんはいち早くイラク戦争に賛成しましたね。
 哨戒艦沈没で南北朝鮮の「危機」を煽り、「だからミサイル防衛網が必要」なんて言い出す人が、また出てくるかもしれませんね。
 断っておきますが、ぼくは北朝鮮の肩をもっているわけではありませんよ。哨戒艦沈没の事実を知りたいだけなのです。歴史を遡るまでもなく、えてして、こんなことから大きな事態になっていくのです。メディアも、ぜひ、いろんな情報を知らせたらどうなのですかね。「我疑う、ゆえに我あり」ですよ。
 哨戒艦問題がうやむやになったら、こんどは、「台湾海峡で何かあったら」なんていう人も出てくるかもしれません。
 台湾海峡で何かあるとすれば、米中戦争じゃないですか。となれば、第三次世界大戦ですよ。そんなことが起きると思いますかね。どうでしょうかね。いま、世界は新しい道に進もうとしていると思う。
 ぼくたちも、日本国憲法を高く掲げて、「憲法九条こそ”抑止力”」と、世界に打って出る時期だと思うのです。メディアも、そこに踏み切ってほしい。チャップリンじゃないけれど、「ほんのちょっぴりの勇気」なのです。