「テレビ」と「平和」と「憲法」のblog

元ワイドショープロデューサー仲築間 卓蔵(なかつくま・たくぞう)のブログ

老いても青春。そして集団的自衛権。

2014-07-03 18:49:15 | 社会
(民放関東シニアの会会報に載せたものの転載です)

 集団的自衛権行使容認の閣議決定を目前にして、6月30日夕方から7月1日にかけて首相官邸前では休むことのない抗議行動が展開された。

 6月30日の行動に参加したかったが、九条の会東京連絡会の総括会議のため残念ながら不参加。残念さをとり戻すために、7月1日の「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」と「戦争をさせない1000人委員会」が呼びかけた行動に駆けつけた。

 9時半開会予定だが、官邸前は人・人・人の波。抗議行動の広がりを察知してか、歩道上に鉄柵が設置されていた。従来の行動には見られなかった光景である。集会は「鉄柵設置」に対する抗議からはじまった。怒りの強さ、道理ある抗議で警察当局はついに鉄柵を撤去した。緊急の呼びかけだったが、参加者は2000人を超えた。「解釈改憲絶対反対」「閣議決定絶対反対」のシュプレヒコールが官邸に、国会議事堂に轟き渡った。

 女子大学院生が飛び入りでマイクを握った。「先生に“官邸前行動に参加します”といったら快く送り出してくれた。学友たちも“がんばってきてね”と励ましてくれた。戦争する国、絶対反対です!」と。歯切れのいい発言に大きな拍手が湧いた。

 閣議決定が早まりそうだという情報で、予定になかった院内集会が14時から、
さらに15時からの官邸前行動が提起された。

 12時15分からは「憲法共同センター」の呼びかけによる行動。17時からも実行委員会と1000人委員会による行動が展開された。
 反対の声が渦巻く中で、閣議決定はおこなわれた。「原発ムラ」という言葉がある。政・財・官・学に報道が参加している「ムラ」である。この日、「戦争ムラ」が現出した。「平和の党」を自負していた公明党が、その冠を投げ捨てて「戦争ムラ」の一員になった。

 一連の行動に「一人参加」や「子ども連れ参加」が目立ったのも特徴的だ。60年安保とは様相が違う。この国を「戦争する国にさせてはならない!」の思いの強さをひしひしと感じた。本来なら、マスコミ関連労働組合は「統一スト権」を確立して立ち上がるはずだろうが、残念ながらそうはなっていない。であれば、われらができることをやっていこう。

アメリカの詩人、サミュエル・ウルマンに『青春の詩』というのがある。「年を重ねただけでは人は老いない。理想を失うときに、初めて老いがくる」と。青春とは、人生のある期間をいうのではなく、心の様相をいうのだと歌う。その胸中に燃え盛るものがあるかぎり、人は若さを失わないのだ。情熱を失うわけにはいかない。次世代に「平和な国」を渡すのは、われらなのだから。

さて、つぎは7月7日。七夕の日です。
孫崎さんの独り舞台。司会は 及ばずながら ぼくがやります。
お待ちしています。

日本航空「整理解雇」問題とテレビ

2011-02-16 13:36:02 | 社会
 ちょっと古い話になりますが
 昨年12月16日。日本航空のキャビンクルーユニオン(CCU)の集会に呼ばれて話をしました。内容は「日本航空とメディア」です。
 大会議室は超満員。寒い日でしたが、熱気ムンムン。高揚感を味わいましたねえ。
 日本航空労働組合とのつき合いは古いのです。1970年代 お互いに賃金昇格差別問題で共同行動をやったものです。丸の内中通りでデモをやったものです。全国に「総行動」方式が広まったのは 「千代田総行動」がはじまりなのです。そんな中で日本航空労組も日本テレビ労組も勝利的解決をみた。だから、日本航空問題となると他人事ではないのです。

 歴史は繰り返すのでしょうかねえ。いま日テレ労組は賃金体系改悪で会社と争っています。経営側の「身勝手さ」「やりすぎ」との対決は日航も日テレも同じですよ。
 日テレの賃金切り下げは、国民の”いのち”に直接関係しないが、番組の”質”に関わる問題です。日航のパイロットや客室乗務員の「整理解雇」は、利用者の”いのち”と”安全”に直接つながるのです。なにしろ 165人のベテランを解雇したのですからね。「ハドソン川の奇跡」は誰でも知っているでしょう。とっさの判断でハドソン川に緊急着水の決断をしたのは57歳のベテラン機長でした。乗客、乗員155名は全員無事でした。
 
 12月25日。日航本社前緊急抗議集会に駆けつけましたよ。
 12月31日付けで「解雇」を強行されたパイロットと客室乗務員は、1月19日 東京地裁に提訴しました。支援の輪は広がりつづけていますね。

 だが メディアの対応はどうか。
 日航問題を真正面から取り上げようとしません。
 2月1日。テレビ東京系で『ガイアの夜明け』「激動のJAL 復活の行方は」という番組が放送されました。ラジオ・テレビ欄に「独占」と書かれていたものですから 興味をそそられて見ることにしたのですが、主なスポンサーが日経新聞とキャノンだとわかって 結論は見えましたね。
 番組は、解雇通告されたベテラン客室乗務員の「涙」、機長を夢見ていた副操縦士の戸惑いなどではじまりましたが、日航か なぜ破綻したのかについての検証はゼロ。番組の力点は、稲盛和夫会長の「経営哲学」と従業員の「意識改革」「リーダー教育」でした。
 待合室の子どもに制帽をかぶらせて写真をとってやったり、カードを配ったりしてお愛想をふりまく機長。機長の(「JALは生まれ変わりました」という)「機内アナウンスに感動した」という投書の紹介、それを読みながら涙するお客様係りの女性と機長。「いままで株主のことなど考えたこともなかった」と「リーダー教育」後の感想を述べるグループ責任者・・・。いかにして利用客を呼び戻すだけに腐心する場面のつき重ねです。
 そこには 安全の「あ」の字もありません。「独占」というキャッチコピーは、稲盛会長の「意識改革」方針の「独占放送」だったのです。
 視聴率(ビデオリサーチ調べ)は6.3%。関東圏で60万人が見せられた計算になります。怖ろしささえ感じましたよ。

 しんぶん「赤旗」(2月13日付け)の記事を読んでおどろきました。
 「日本記者クラブで8日におこなった日本航空・稲盛和夫会長の講演に、耳を疑いました。昨年末のパイロットと客室乗務員165人の整理解雇は、必要ないとわかっていながら強行したものだと認めたからです」というのです。
 であれば なおさら 裁判を待たずに解雇当事者を直ちに職場に戻すべきです。

 テレビ東京『ガイアの夜明け』とは対照的な番組がありました。
 2月11日放送の日本テレビ系”金曜特別ロードショー”『沈まぬ太陽』です。
 何人かの友人から電話がかかってきました。「日テレもやるねえ」「いまのタイミングでやるなんて、プロデューサーはたいしたものだねえ」というものです。
 日テレに訊いた訳ではありませんが、日航の「整理解雇」問題にあわせて放映したのではないと思いますね。「金曜ロードショー」は年間スケジュールが決まっているのですよ。4時間に及ぶ大作映画の放送ですから 思いつきで放送できるというものではありません。たまたま2月11日が 「整理解雇」問題の最中だったということだとおもいます。
 それにしても タイムリーな企画でした。日テレ「金曜ロードショー」の株が上がったのは間違いありません。日テレ出身者としては うれしいですねえ。
 
 この2ヶ月近くの間、いろんなことがありましたが、放送する側の「見識」についてあらためて考えさせられましたね。