「テレビ」と「平和」と「憲法」のblog

元ワイドショープロデューサー仲築間 卓蔵(なかつくま・たくぞう)のブログ

他人事でない 映画「大いなる陰謀」

2008-04-29 13:51:43 | Weblog
 ロバート・レッドフォードが7年ぶりにメガホンをとったという『大いなる陰謀』。彼は、たしかイラク戦争反対を表明している俳優の一人だったと思う。
 メリル・ストリ-プ演じるテレビの報道記者が、共和党の次期大統領候補と取り沙汰されている気鋭の上院議員(トム・クルーズ)に、ご指名で呼ばれます。
 アフガンの行き詰まりを打開する「新規作戦をやるから、報道してくれ」という。「新規とは”アメリカ軍の撤退”か」と彼女は問う。議員が進めている作戦は、雪山の頂上に精鋭部隊を運び、雪解けを待って現れるアフガン軍を頂上から殲滅するというものだ。
 局の上司は「特ダネだ」と、直ぐに報道しろという。彼女は反対するが、上司から返ってきた言葉は、「君も57歳。介護の母親も抱えている。職を失うようなことがあっていいのか」である。
 新規作戦は、速報でながされることになる。
 これが一つの縦糸のストーリー。

 もう一つの縦糸は、ロバート・レッドフォード演じる大学教授と学生のやりとりです。
 折しも成績発表の時期。
 成績はABCDのランクがある。教授は、ランク別に表現を変えながら今後のことを話しかけます。教授の持論は「現政権は当てにならない」「自分たちで決断するしかない」です。
 Aランクの学生2人は志願してアフガンにいきます。
 長期欠席の学生が呼ばれます。志願すれば成積はよくなりそうです。しかし彼は納得できません。教授は、「決めるのは君だ」「(あの2人について)ぼくは止めたんだが、自発的に志願した」といいます。その学生は、教授の意図を見抜きます。政権批判と「愛国心」。そして「自発的」決断を誘導しているのです。(なにしろディスカッション風で、字幕が多かったものだから途中で眠気におそわれたりして、きちんと見てはいないのだけれど、あの教授は「自発性」を誘導する役割をしていると ぼくには思えたのですが・・・どうでしょうかね。ご覧になった方の感想を聞きたい)

 上院議員の「机上の新規作戦」は、最初からつまずきます。輸送ヘリの事故で、あの2人の学生は厳寒の山腹に投げ出されます。アフガン軍に発見されます。救援機がアフガン軍を攻撃しますが、2人も命を落とします。

 やり場のない悔しさを噛みしめながら運転するするメリル・ストリープ演じる報道記者の目に、アーリントン墓地の夥しい墓石がひろがります。

 まるでゲームを楽しんでいるかのような作戦計画。若者の命なんてどうでもいいのです。
 政権批判とセットの「愛国心」の植え付け。「自発的志願」を誘導する教授。
 
 そして、マスコミの「特ダネ主義」。まさに「大いなる陰謀」なのです。

 アメリカ映画も 捨てたものではありません。
 同じことがこの国でも進行しているのです。
 お暇なとき ぜひ。

ドキュメンタリー映画『靖国 YASUKUNI』を 観たい

2008-04-05 17:40:53 | Weblog
 驚いていますよ。
 靖国神社をテーマにしたドキュメンタリー映画『靖国 YASUKUNI』の一般公開が中止になったんだって。

 これは、19年間日本に住む中国人の李監督が、終戦の日に靖国神社を訪れる参拝者や遺族、「靖国刀」を造る刀匠の姿などを10年間にわたって記録した日中合作のドキュメンタリー映画で、釜山やベルリンなどの映画祭でも上映され、香港映画祭では最優秀ドキュメンタリー賞を受賞しているというではないか。銀座・三原橋の地下の映画館(小さな映画館ですが、よく利用しているのです。先日も「ヒトラーの贋札」を観たところです)で上映されるというから楽しみにしていた矢先のことですよ。

 いったい何があったのですか。
 報道によれば、発端は稲田朋美という自民党の衆院議員が試写会を強要し、国会でも繰り返し公的助成をめぐって質問したことがあるそうです。
 「監督が中国人、スタッフにも中国人が多い」「YASUKUNIと英語表記がある」から助成対象にふさわしくないんだそうです。だって、日中合作なんだから中国人がいてあたりまえでしょう。英語表記なんて、いまや日常茶飯にやられていることをしらないのですかね。「武士 SAMURAI」というタイトルだってあったではないか。
 「芸術文化振興基金から製作助成を受けたことが問題だ」ともいっているようなのです。だって、文化庁は「助成手続きは適正」と説明してるんですよ。難癖としか思えないのですが、みなさんどう思われます?

 稲田議員は 「政治的意図の作品」といっているようですが、ドラマであれドキュメンタリーであれ、創る人のポリシーがでるのは当然ですよ。それがない作品なんて 作品とは言えませんよね。まがりなりにも国会議員なのですから、もう少し「文化度」を上げてほしい。でなければ恥ずかしいですよ。

 4日の『NEWS23』を見ていたら、この上映中止問題に触れて「上映したいという映画館が増えてきたそうです」といっていましたよ。映画館関係者は「言論 表現の自由」で踏み止まろうとしているのです。教職員組合の教育研究集会を断ったホテルがありましたよね。「映画館を そんなホテルにしたくない」という映画館主のみなさんの決意を大事にしたい。東京で上映会を大々的にやろうよ。全国一斉上映にでもなれば、稲田議員の質問は「藪蛇」になったといえるでしょう。宣伝役を買ってでてもらった というと失礼ですかね。

追伸

◇ この作品 「靖国」に反対でもなければ賛成でもない内容だという

  6日(日)の『サンデープロジェクト』(テレビ朝日)が「緊急討論・映画『靖国』上映中止問題」をやっていました。出演者は自民党の加藤紘一衆院議員、配給会社アルゴの岡田 裕さん、ジャーナリストの大谷昭宏さん。問題の稲田朋美議員たちにも出演を依頼したが断られたといいます。
 加藤さんはDVDを借りて観たそうです。「反日でも反中でもない。靖国反対でも賛成でもない。すごい作品だと思う。かなり政治性を抑えながらつくった深い映画だ」「映画館が”自主的”に上映中止するような社会になったらいかんと思う」と。
 大谷さんは、「8月15日の靖国について日本人は知らなかった。この作品はそれを淡々と描いている。観てから議論しよう」と。
 岡田さんは、稲田議員の試写にいたる経過を話していました。稲田議員が出演を断ったのもうなずけます。
 岡田さんによれば、5月から東京で上映できることになる。地方でも20館上映できるそうです。映画館の(あたりまえの)決断に敬意を表しましょう。
 「この国とはなんだろう を問うている映画」(大谷さん)のようです。
 早く観たいものです。