「テレビ」と「平和」と「憲法」のblog

元ワイドショープロデューサー仲築間 卓蔵(なかつくま・たくぞう)のブログ

行列ができなくなった橋下徹(維新の会代表)

2013-05-25 19:59:44 | Weblog
 大阪よみうりテレビ発(日本テレビ系)『ウエークアップ』(土曜 8時~)。
 『ウエークアップ』といえば、なぜか橋下徹氏の出演回数が多い番組でした。彼の人目を惹く?キャラクターが視聴率に影響していたのかもしれません。

 5月25日放送は「緊急告白!”維新・橋下氏”出演 なぜ発言」というタイトルで生出演です。
 辛坊治郎キャスターの、「きょうは大阪市のバス・地下鉄の民営化問題で話を聞く予定だったが、そうはいかなくなった」という発言からはじまりました。旧日本軍の「慰安婦」の制度を正当化する橋下氏(日本維新の会共同代表)の暴言に、国内外から強い怒りと批判が沸き起こっているときだけに、さすがの『ウエークアップ』も取り上げざるを得なくなったのでしょう。
 いつもなら橋下氏に同調的だったコメンテーター橋本五郎氏(読売新聞)、岩田公雄氏(よみうりテレビ)も、今回は「あの発言に大きな影響が出ると考えなかったのか」と質問していました。

 しかし、橋下氏の答えは「(批判に対して)違うことは違うといいたかった」「軍は女性を必要としていたではないですか」「なぜ、日本だけが批難されなければならないのか」と。
 そして、「批判は承知していた」「米軍やアメリカ国民には謝罪しなければならないと思っている」といいながら、「女性蔑視している気はないが、戦場の”性”の問題をタブー視してはならない」と。そこには人権感覚は皆無です。「これが弁護士なのか」と呆れて見ていた人もいたでしょう。「過去を直視して未来につなげましょう 」という言葉を発するにいたっては、「呆れる」を通り越して情けなくなってしまいましたねえ。彼の一連の暴言は「過去を直視していない」ことからはじまっていることに、まるで気づいていないのです。それが情けない。

 西ドイツのヴァイツゼッカー大統領が「過去に目を向けないものは未来が見えなくなる」(終戦40年の演説)は有名です。西ドイツはナチス政権時代を反省し、謝罪し、賠償し、いまなおナチスの犯罪を追及しつづけています。ドイツが、欧州で信頼される地位を築いているのは、真摯な反省があったればこそなのです。韓国大統領も「過去に起きたことを誠実に認めなければ、明日はありません」と演説しています。橋下氏の「過去を直視し」は、そのまま自身に跳ね返ってくる言葉です。維新の会は「歴史認識については、党として(考え方を)統一しない」そうです。維新の会は「歴史認識」について今後も右往左往するに違いありません。憲法「改正」について歩調を合わせてきたみんなの党の渡辺代表からも「口でのし上がった人は、口で失敗する」と酷評されていましたね。

 問題は番組の結末です。キャスターもいくつか強面で質問していましたが、結果は橋本氏の一方的な発言で終わったといっていいでしょう。最後にコメンテーター諸氏の感想ぐらいはあると思っていましたが、それもなしの尻切れで終わってしまいました。なんのことはない、橋下氏にしゃべらせる場を提供しただけの結末なのです。

 そもそも、橋下氏を弁護士の肩書で使ったのは『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系・日曜夜9時~)でした。番組HPによれば「(彼の出演時には)弁護士軍団の中では、最も若い弁護士であった。橋下の主張が他の3人と異なるケースが多く、”皆さんの意見は古い”などと言って新しさを求めるような形で流すことが多い。また、明らかにウケ狙いの意見を言って人を笑わせようとすることがよくある」と紹介されている。その頃(2003年4月~)を思い出してみると、「おかしな弁護士もいるものだな」程度で見ていたものだが、その「おかしな弁護士ぶり」が注目されるようになったのだから、テレビの影響力の「怖さ」をあらためて知ることになってしまいます。
 日本テレビ系列では、その彼を使い続けましたね。名が知れるようになると「色気」が出てきます。この「異色」の弁護士は思いがけない「人気」に乗ってしまったのですね。橋本「人気」をつくり上げたのはまぎれもなくテレビです。だから、面と向かって批判するとなると「矛先が鈍る」ことになるでしょうね。そこがまた怖い。

 番組終了後、出演者と短時間でも話をするものですが、この番組ではどうなのでしょうか。まさか「きょうの出演で、一山越えましたね」(ひと山どころか、二山三山と続くでしょうが)などと笑い合ったりなんかしていないでしょうねぇ。ワイドショー経験者としたら、そんなことまで想像してしまうのですよ。

みのもんたさんは言った。「審判はチームのユニホームは着ない」と

2013-05-06 09:27:53 | Weblog
5月5日。東京ドーム。球場内46000人。外にも人があふれていたという。
松井秀喜さんの引退セレモニーと、長嶋茂雄さんと松井秀喜さんの国民栄誉賞w授賞式です。
「笑顔があふれた”こどもの日”のダブル受賞。野球の神様が二人にくれたご褒美のような気がしてならない」(東京新聞)は、プロ野球ファンの共通の感想でしょう。

「こんなことありか」と驚いたのが安倍首相のこの日のパフォーマンス。
授賞式の後の巨人・広島戦の始球式。
バッターボックスに立ったのは背番号3のユニホームを着た長嶋さん。ピッチャーは背番号55の松井さん。キャッチャーは巨人軍監督の原さん。
長嶋さんは「いい球がきたら打とうとおもっていたが、インハイだった」と。それでも打つ気満々で、空振り。
球場内は盛り上がるだけ盛り上がっていたようです。
セレモニーだけを観にきた人もいたといいますから、長嶋・松井人気は衰えていないのですね。

「こんな演出も用意されていた夢のような始球式」(テレビ朝日系『モーニングバード』)でしたが、
なんともしらけたのは、安倍首相です。
96の背番号が書かれた巨人軍のユニホームを着て、審判役で登場したのです。
「首相は始球式後、背番号と96条の関係を記者団に問われ”ふふふ”と笑みを浮かべた上で”ユニホームは私が96代(首相)だから『96』なんです”と答えた」(東京新聞)といいます。

「96」という数字は、ある程度世の中の事情を知っている人なら96代目の首相の「96」だなんて思いませんよ。
憲法を変えるためのハードルを下げるための96条改悪であることぐらいは知っている。その先に「九条」改悪、国防軍創設が見えていることぐらいは知っていますよ。

TBS系の『朝ずばッ』(6日)でもこのセレモニーをとり上げていました。「背番号は96代首相ということでしょう」という(ぼくから見ればピント外れな)経済評論家もいましたが、みのもんたさんは「私はちょっと意見が違う」といい、「審判は(チームの)ユニホームは着ない」「野球の珍プレー・好プレーをとり上げるのは得意だが、こんな珍プレーはあり得ない」とズバリ。

各局ともスポーツ番組やワイドショーでとり上げていましたが、ぼくの知る範囲では長嶋・松井の授賞式がメインで、「96」を着けた政治的な思惑は「空振り」に終わってしまったといえるでしょう。
しかし、甘く見るわけにはいきません。「96」を着けて得意げにはしゃぐ姿は視聴者のイメージに擦り込まれた面があります。
「馬鹿な安倍首相だ」と見過ごしてはダメでしょう。「96」を着けた意図を話し合いましょう。「そのうち機会があればね」でなく、「今でしょう」。