図書館から借りていた 平岩弓枝著 長編時代小説「御宿かわせみシリーズ」第31弾目の作品「江戸の精霊流し」(文藝春秋)を読み終えた。「御宿かわせみシリーズ」は 34巻が最後で 35巻からは「新御宿かわせみシリーズ」となり、現在のところ 41巻まであるようだ。とにかく長い小説。ただ 各巻共、ほぼ1話完結、連作短篇構成であるため 超長編でありながら 記憶力の無い爺さんでも 比較的読み進め易い小説だという気がしている。
平岩弓枝著 御宿かわせみ(三十一)「江戸の精霊流し」
本書には 表題の「江戸の精霊流し」の他、「夜鷹そばや五郎八」、「野老沢の肝っ玉おっ母あ」、「昼顔の咲く家」、「亥の子まつり」、「北前船から来た男」、「猫絵師勝太郎」、「梨の花の咲く頃」の連作短篇8篇が収録されている。
「夜鷹そばや五郎八」
江戸で夜鷹蕎麦と呼ばれていた夜売りの蕎麦屋の五郎八が殺された。「人は氏はなくても玉の輿に乗るというそうだが・・」、「世の中には幸せになれる者はなれるものか」、「変われば変わるものだ・・」・・五郎八が残した言葉。下手人は?、五郎八の娘おそで、夜鷹の元締仙之助、材木問屋清水屋宗兵衛、その娘おきぬ、婿の和太郎、御家人飯岡作左衛門、
「野老沢(ところざわ)の肝っ玉おっ母あ」
野老沢から出てきて「かわせみ」の女中になって3年目になるお石は 本人の努力で すっかり女中頭お吉の片腕になっている。ある日 お石の姉おてるがお石を訪ねてきたが・・・。おてるは 夫徳三と赤子を残して家出。徳三は 野老沢に向かったまま音信不通。東吾は お石とお吉のお供で お石の郷里野老沢へ。「お石のおっ母さんは 徳蔵寺の白衣観音の生れ変わりかも知れないな」
「昼顔の咲く家」
深川の老舗料理屋望潮楼の主人宇兵衛が西本願寺の近くの路上で殺された。高山仙蔵に女中奉公しているおきよ、幸吉母子とは?、宇兵衛の女房おもと、宇兵衛の倅伊之助、「東吾さんは 杖にこだわっているんですね」・・源三郎が言った。
「江戸の精霊流し(しょうりょうながし)」(表題作)
女中のおきみ、おみよが相次いで暇をとり、「かわせみ」は人手不足、女中頭お吉とお石がきりきり舞いしている。桂庵から紹介してもらったおつまはこれ以上無いという人物で 「かわせみ」の全員が喜んでいたが・・・、東吾、るい 共に 辰吉を探し、追うおつまを見てしまい・・・。東吾は神田川を流れ行く無数の精霊舟をみた。
「亥の子(いのこ)まつり」
老女おいのには 長男貞吉(25歳)、次男伊吉(20歳)がいるが 品川の願行寺の双子盤念仏の最中に急死してしまう。殺し?、病死?、薬害死?。生さぬ仲の兄弟の嫌疑に対し、長助、東吾、源三郎が 真相探索、麻生宗太郎が言ったように、わけもわからなず安易に飲んだり食べたりする方が悪いということか・・・、るいが振り向き、「旦那様も召し上がりますでしょう。おいくつお取りしましょうか」、亥のまつりにぼた餅を食うなどとは いったい誰が考えたのものか。東吾は 黙って指を1本突き出した。
「北前船から来た男」
東吾が 長助を伴い、神林麻太郎、畝源太郎、少年2人を引き連れ 釣りに出掛けた時の船頭卯之吉(20歳)は 寅吉の甥で 3年間北前船に乗っていたという。その卯之吉が 武士を尾行しているところを 麻太郎、源太郎がみてしまい、その武士を突き止める。何故?、今村勘十郎?、坪井三左衛門?、卯之助を追跡した麻太郎、源太郎、厳しく叱る源三郎に、るいが素早く間に入り、「お二人をみていると むかしむかしの畝様とうちの旦那様にそっくり・・」
「猫絵師勝太郎」
深川佐賀町の長寿庵の長助の家の飼い猫が6匹の子を産み、畝源三郎の家、旅籠「かわせみ」、八丁堀吟味方同心神林通之進の家、麻生宗太郎の家、畝家の妻千絵の実家「江差屋」に 貰われた。七福神の顔を猫で描く絵師浅田勝太郎が登場、身の上を聞くるい。大晦日の午後、文吾兵衛がやってきて 勝太郎が旅に出たと知らせる。勝太郎は西に向かって旅立ったのかと思い るいはさりげなく大川の下流の空に目をやった。
「梨の花の咲く頃」
江戸の元日は、諸大名の総登城で始まる。直参旗本や御家人等 武家は終日多忙だが 町民は寝正月のようなもの、ひっそりと過ごす。「かわせみ」には 2日から7日までに、以前女中奉公していた者達等が 夫婦連れや子供連れで年始の挨拶にやってくる。毎年、るいや女中頭お吉、老番頭嘉助等が楽しみにしている。正月気分の中、源三郎、長助が 「かわせみ」にやってきて 座頭の幸ノ市・幸吉が殺されたことを 東吾に話す。早速 探索開始、真相解明に乗り出す。幕府は目の不自由な者を保護する制度として 検校、勾当、座頭を設けていたが、結構貯め込んでいる者も多かった。植辰の辰五郎、元植辰で働いていた友三、通いの奉公人おとみ、以前「かわせみ」の女中だった行徳のお梅の従姉妹おせん、下手人は?、「あの二人、やっと本当のお正月がきますね」と並んで見送ったお吉が嬉しそうにいい、るいもうなずいて大川の上の空を眺めた。