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たけじいの気まぐれブログ

記憶力減退爺さんの日記風備忘雑記録&フォト

葉室麟著 「あおなり道場始末」

2025年03月11日 08時01分15秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「あおなり道場始末」(双葉社)を読み終えた。
本書は、九州豊後の架空の小藩、坪内藩の城下町の剣術道場のひとつ、青鳴(あおなり)道場の権平(ごんべい)、千草、勘六、三兄弟の絆を心温く描いた長編時代小説だった。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
 (一)~(二十四)

▢主な登場人物
 青鳴権平(あおなりごんべい神妙活殺流、青鳴道場主、20歳)・千草(17歳)・勘六(12歳、竹丸)、
 青鳴一兵衛(あおなりいちひょうえ)、
 柿崎源五郎(新当流、柿崎道場主)、尾藤一心(無念流、尾藤道場主)・由梨、
 熊谷鉄太郎(雲弘流、熊谷道場主)、戸川源之亟(心影流、戸川道場主)、
 和田三右衛門(柳生流、和田道場主
 羽賀弥十郎(坪内藩剣術指南役)、稲富兵部(藩主側用人
 坪内信貞(坪内藩藩主)、お江与の方(藩主の正室)・松丸(新之助信春)、
 お初の方(藩主の側室)・竹丸(勘六)、
闇姫(小篠の方、藩主の側室

▢あらすじ等
 青鳴道場主だった父親青鳴一兵衛が、酔って神社の石段で足を滑らせ亡くなったとされる
 不名誉な死に方をしてから1年が経ったが、その跡を継いだ長男権平は、昼行燈のような性格で
 「あおなり先生」等と呼ばれ、妹千草は、兄に勝る剣術の腕前で、男装を好む美貌の持ち主、
 荒稽古をしてのけ、「鬼姫」と呼ばれ、弟勘六は神童の誉が高い秀才で「天神小僧」と
 呼ばれていたものの、次々と門人が去り、ついに誰もいなくなり、道場は、存続危機に陥る。

  「兄上、いったいどうなさるおつもりですか・・・」
  「父の仇を捜すために、道場破りをいたす」
 父一兵衛の死には、不審な点があり、城下の五つの流派の道場主達が関わっているのでは
 ないかという疑念を持つ三兄弟。

 父の仇を探すという大儀名分を持って、城下の道場ひとつひとつに、「道場破り」を仕掛け、
 看板料を稼ぎながら、生計を立てる策に打って出るのだが・・・、

 果たして、父一兵衛は、誰に殺されたのか、ミステリー仕立て、
 本作のキーワードは、「神妙活殺(しんみょうかっさつ)」の技、
 藩のお世継ぎ抗争が根に有るストーリーではあるが、終始、権平、千草、勘六、
 三兄弟の兄弟愛が描かれており、青少年向けの小説の如く、痛快、爽やかな仕立ての
 作品になっている。

  千草が急に元気を取り戻して、
  「それから、わたし、江戸に着いたらお願いがございます」
  「なんだ、また、道場破りをするのか」
  「いいえ、道場の看板ですが、仮名で「あおなり道場」と書いたら
  どうかと思うのです。・・・・」

 

コメント (2)

藤原緋沙子著 「寒梅」

2025年03月08日 16時39分52秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「寒梅」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第17弾の作品で、「第一話 寒梅」「第二話 海なり」の、連作短編2篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせに雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろうが、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七(とうしち等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 寒梅」
▢主な登場人物
 小野田平蔵、桑名五郎、
 加島屋宗兵衛(加島恒元)、利助、若松屋、
 多七・おみか、
 深井輝馬(楽翁の側近)、
 水野幸忠(秋山藩藩主
 神代縫之助、米山哲之助、梶井軍兵衛(町奉行
 水野義明(秋山藩江戸家老)、長井大輔、
 戸田采女(秋山藩国家老)、お真佐(秋山藩前藩主の側室)・松之助、島木虎之助(蔵奉行
 菊田兵庫(目付)・奈緒、玄斎(奥医師)、

▢あらすじ等
 「消息を絶った密偵を捜してほしい」――縁切寺慶光寺の御用宿「橘屋」の用心棒・塙十四郎は、
 楽翁(元筆頭家老松平定信)から密命を受け、元定信の密偵だった小野田平蔵と共に、
 越後に潜入するが、その前に現れたのは、藩政改革が引き金となって欲望渦巻くお家騒動、
 二分された藩の実態、貧困に喘ぐ民百姓の姿だった。
 楽翁が放った密偵桑名五郎は、すでに殺害されており、十四郎、平蔵も、その渦中に
 巻き込まれていく。
 切羽詰まって、放置出来ない立場の十四郎は、藩政を正すために「秘策」に出る。

 終盤、藩主幸忠の大芝居が傑作、
 目付菊田兵庫の娘奈緒との出会い、交情、別れの場面が痛々しい。
   十四郎は、掴んでいた奈緒の肩から手を離した。
   「名残惜しいが帰らねなりませぬ。世話になった」、「・・・・・」、
   奈緒は口を堅く結んで十四郎を見詰めた。
   その双眸から、熱い涙が零れ落ちる。

 
「第二話 海なり」
▢主な登場人物
 深井輝馬、
 伊原太一郎(勘定人)・千代、田中運八郎(郷手代)、市田金之助(代官)、
 多助・おとめ、おふね、宇野助、
 島小八郎・富、
 与田駒之助(勘定人)・美里・仙太郎、
 粂蔵・おくら、
 宗俊、久坂久三、斎太郎、
 与次郎・おつぎ、

▢あらすじ等
 越後秋山藩の事件が落着し、藩主幸忠の使者と小野田平蔵は、それぞれ、老中、楽翁、江戸家老
 水野義明へ、事の次第報告のため、江戸に向かって馬を走らせ、
 十四郎も、1日でも早くお登勢のもとに帰りたい思っているところに、楽翁の側近深井輝馬が
 走り着き、「柏崎に回れ」という、楽翁から新たな密命が伝えられる。

 当時、「柏崎」は、白河藩の飛び領地で、陣屋を置いて管理していたが、領内で金品強奪事件が
 多発、十四郎、輝馬に、事件解決に力を貸すようにとの命だったが・・・。
   ずっとその繰り返しだが、そのたびに海が泣いているように聞こえるのだ。
   ・・・・海なり・・・・、
   これが海なりなのだと、十四郎は感慨深く見詰めていたが、ふと美里の横顔を見た。
   美里は悲しげな顔でじっと海を見詰めていた。
   この人は、今何を考えて見詰めているのだろうか・・・。
   美しい横顔だと思った。
   ・・・・憂いの中に女の決意が窺える。
   お登勢が待っているそれも同じではないか・・・・。
   その姿は、潔いし、愛おしい・・・。


(つづく)


葉室麟著 「蝶のゆくへ」

2025年03月04日 20時53分13秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「蝶のゆくへ」(集英社)を読み終えた。
本書は、旧仙台藩士星喜三郎の三女として生まれた星りょう(後の相馬黒光)を主人公にして、自分らしく生きたいと願い、新しい生き方を希求した、明治時代の女性達の、希望と挫折、喜びと葛藤を、感動的に描いた長編歴史小説だった。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
 第一章 アンビシャスガール
 第二章 煉獄(れんごく)の恋
 第三章 かの花今は
 第四章 オフェリアの歌
 第五章 われにたためる翼あり
 第六章 恋に朽ちなむ
 第七章 愛のごとく

▢主な登場人物
 星りょう(相馬りょう、相馬黒光)・相馬愛蔵・俊子・安雄・千香・襄二、
 斎藤冬子、石川梅代、町田辰子、尾花梅代、小平小雪、
 巌本善治・賤子(若松賤子)・清子・荘民(まさひと)・民子、
 北村透谷(北村門太郎)・美那子、
 島崎藤村(島崎春樹)、佐藤輔子(すけこ)、鹿討(ししうち)豊太郎、
 諏訪より子(芸者小蝶)
 国木田独歩・信子(佐々城信子)・浦子、
 佐々城本支・豊寿(美穂)・愛子・義江、
 武井勘三郎・
 有島武郎、武者小路実篤、
 勝海舟・民子・小鹿・四郎・夢・孝子・逸子・八重・義徴・たえ、
 増田糸・小西かね・香川とよ
 梶玖磨(勝海舟の三男)・梶クララ(クララ・ホイットニー)
 星野天知、島貫兵太夫、
 片倉奈緒、沖津美紗子、佐藤稠松(加藤重松)、
 三宅花圃(田辺花圃)、半井桃水、
 樋口一葉、斎藤緑雨、
 津田梅子、
 瀬沼恪三郎・瀬沼夏葉(山田郁子)・ニコライ・アントレーエフ・文代子(ふよこ)
 荻原守衛(荻原碌山)、高村光太郎、

▢あらすじ等
 その利発さから「アンビシャスガール」と呼ばれた星りょうは、自分らしく生きたい、
 何事かをなしたいと願い、明治28年(1895年)に、東京の明治女学校へ入学する。

 女子教育向上を掲げる校長の巌本善治から「蝶として飛び立つあなた方を見守るのがわたしの
 役目」と語りかけられ、夢と希望を胸に、学び舎に飛び込むが・・・。

 明治女学校の生徒、斎藤冬子と教師、北村透谷の間に生まれた悲恋とは?。
 夫・国木田独歩のもとから逃げたりょうの従妹・佐々城信子が辿った道のりは?、
 義父の勝海舟との間に男女の関係を越えた深い愛と信頼を交わした英語教師の
 クララ・ホイットニーとの出会い。
 校長・巌本善治の妻であり、病を抱えながらも翻訳家、作家として活躍した若松賤子とは?、
 賤子に憧れ、その病床へ見舞いに訪れた樋口一葉との出会いと別れ。
 明治女学校を卒業したりょう、相馬愛蔵との結婚への迷いを吹っ切るが・・・。
 信州穂高での養蚕業で心身困憊し、再び上京、パン屋を開業、
 そこは、美術家や文学者出入りのサロンとなり、
 多くの人達との出会いと離別死別と向き合いながら生き、りょうは、昭和30年、78歳で
 生涯を終える。





葉室麟著 「孤篷のひと」

2025年03月02日 09時53分30秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「孤篷(こほう)のひと」(角川書店)を読み終えた。
本書は、戦国乱世の世、おのれの茶を貫くために天下人に抗い、切腹に追い込まれた「千利休」、「古田織部」とは異なり、「泰平の茶」を目指し生き抜いた、希代の大茶人「小堀遠州」を、あたたかくも感動的に描いた長編時代小説だった。
「小堀遠州」の名前だけは、若い頃からなんとなく知っていたが、これほどの大人物であったかと、目から鱗が落ちるようだった。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
「白炭(しろずみ)」、「肩衝(かたつき)」、「投頭巾(なげずきん)」、「此世」、「雨雲」、
「夢」、
「泪(なみだ)」、「埋火(うずみび)」、「桜ちるの文」、「忘筌(ぼうせん)」

▢主な登場人物
 小堀遠州(幼名=作介、政一、小堀遠江守)・栄、
 小堀新介正次・村瀬佐助、
 中沼左京・香、

 賢庭(けんてい)、
 千利休(せんのりきゅう)、古田織部(ふるたおりべ)・琴、山上宗二、
 松屋久重(奈良の豪商)、沢庵(禅僧)、金森宗和、
 後水尾天皇・和子、お与津御寮人、八条宮智仁親王、

 金地院崇伝、南光坊天海、
 本阿弥光悦・妙秀
 後藤堂高虎、細川三斎(細川忠興)、
 徳川家康、徳川秀忠、徳川家光、
 鈴木左馬之助、
 豊臣秀吉、豊臣秀頼、石田治部三成、加藤清正、豊臣秀長、豊臣秀保、豊臣秀次、
 伊達政宗・伊達輝宗・義姫・小次郎、
 近衛信尋(このえのぶひろ)、三宅亡羊(ぼうよう

▢あらすじ等
 戦国乱世を生き抜き、徳川の天下となった後も、幕府の要職に就き、官僚として功績を上げ、
 三代将軍徳川家光に献茶をする茶人しての名声を得た小堀遠州。石田三成、伊達政宗、
 藤堂高虎等々の戦国に生きた者達の権謀術数と渡り合いながら、
 為すべきもの全て為すことに全霊を傾け、「人の心というものは、必ず届くものだ」を真骨頂に、
 「泰平の茶」を目指した小堀遠州の生き様を描いた作品だ。
 なかでも、「白炭」「投頭巾」「泪」、等々、茶道具にまつわる物語を語りながら、
 「人の心というものは、必ず届くものだ」、「茶の湯の心」、「ひとの生きる道」を、
 説くくだりは、著者の思い入れが感じられる。
 とくに、最終章「
忘筌」の一節、
  臨終が迫った遠州は、妻栄、義弟中沼左京、家臣村瀬佐助に、
  八条宮のことから江戸詰めの頃までの話を語り終え、微笑する。
  「わたしは、多くのひとに出会って学び、自ら茶を全うにすることが出来た。
  これ以上の喜びはあるまい。いまとなってみれば、何の悔いもない。
  茶を点てたいと思う相手があってこそ茶なのじゃ」

  永訣の言葉に、栄は「よくぞなさいました」。佐助は、涙を堪える。
  「わたしは、川を進む一艘の篷舟(とまぶね)であったと思う。さほど目立ちもせず、
  きらびやかでもないが、慎み深いさまはわたしの性にあっていた。
  されど、孤舟(こしゅう)ではなかったぞ・・・」

  「ひとはひとりでは生きられぬ」
  正保四年二月六日に、遠州は逝去、享年六十九歳だった。
  遠州の辞世は、
    きのふといひけふとくらしてなすこともなき身のゆめのさむるあけぼの
  遠州の遺骸は、京の大徳寺の孤篷庵に葬られた。
 表題「孤篷のひと」とは何ぞや?と思わせる本書だったが、巻末の一節で、
 その深い意味合い等を納得させられる。




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藤原緋沙子著 「花野」

2025年02月20日 11時24分07秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「花野」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第16弾の作品で、「第一話 花野」「第二話 雪の朝」の、連作短編2篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせに雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろうが、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七(とうしち等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 花野」
▢主な登場人物
 亀蔵・おしな、辰蔵(鬼辰)、
 和助・おふき
 倉島市兵衛・おたね・お菊、市之助
 権蔵・おとり、金作、
 山田甚五郎、弥次郎、桑田格之進、
 福沢宗周・伊与、
 佐倉藤十郎(同心)、喜多蔵(岡っ引き)、半次(下っぴき)、
▢あらすじ等
 慶光寺に駆け込んできたおしなを追ってやってきた亭主亀蔵が、畳職人が使いこんだ
 糸切り包丁を掴み出し、「おめえを殺して俺も死ぬ!」、

 一方で、「切られた縁を元に戻してほしい」と駆け込んできたのは、元上総国長谷村名主
 倉島市兵衛の下男和助の女房おふき、

 珍しい駆け込みに戸惑うお登勢十四郎だったが、どちらも放置出来ない二人、
 真相探索に乗り出すと、その背後には、上総国幕領を巡る事件の影がちらつき出し、
 楽翁の命を受けて、十四郎と喜多蔵が上総国へ・・・。

   楽翁は、十四郎の話を聞き終えると、ふっと笑って
   「そなたは、長谷村では、八州さまと呼ばれていたらしいな」
   からかうような目で十四郎を見た。
   「それは、なりゆきで、勝手に村人たちが・・・」
   十四郎は、内心驚きながら、しどろもどろ言い訳を始めると、

  「いいのだ。そのお蔭で一気に、なぜ長谷村の名主が島流しになのか分かったのだ」
 
「第二話 雪の朝」
▢主な登場人物
 多七・おみか、
 林蔵、伝治、
 若松屋利左衛門、丹沢与八郎、
 楽翁、深井輝馬、桑名五郎、
 古賀小一郎、梅之助、
 加島屋宗兵衛(加島恒元)、
▢あらすじ等、
 浪人丹沢与八郎に襲われていた呉服問屋加島屋宗兵衛を、通りがかった近藤金吾と千草が
 救うところから物語が始まるが、慶光寺に駆け込んできたおみかとその亭主多七の
 離縁問題探索していく内、その二人の郷里、越後国秋山藩の藩内事情が浮かび上がってくる。

 本篇の終盤には、長らく恋仲だった十四郎とお登勢が、楽翁の命により、急遽、仮祝言を上げ、
 晴れて夫婦となるが、それが、あたかも出征兵士の如くで、

  「万が一旅先で不測の事態が生じた時、いかが処置されるのでしょうか」
  「捨て置きとなる」
  楽翁はさらりと言った。
 元筆頭老中松平定信・楽翁から、厳しい命を受けて、楽翁の隠密として、越後国秋山藩に
 侵入する十四郎。

 果たして、生還出来るのであろうか。
 なんとなく、平岩弓枝著「御宿かわせみ」の、るいと神林東吾の関係を思い浮かべて
 しまったが・・・・・。


(つづく)


葉室麟著 「津軽双花」

2025年02月17日 17時47分16秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「津軽双花」(講談社)を読み終えた。
本書には、戦国時代末期から徳川江戸時代初期、著者独自の新鮮な解釈を投げかけた、「津軽双花」「鳳凰記」「孤狼なり」「鷹、翔ける」の、長編1篇、短編3篇の時代小説が収録されている。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。



「津軽双花」(表題作)
▢主な登場人物
 満天姫(まてひめ)・直秀、蔦(つた)、
 津軽信枚(つがるのぶひら)・辰姫(大舘御前)、
 福島正則・福島正之、
 南光坊天海僧正
 高台院(寧々、北政所)
 杉山源吾、
 大熊(熊千代、信枚の兄の子)
 本多正純
▢あらすじ等
 福島正則の養嗣子福島正之に嫁し、十八歳で嫡男直秀を生んだ満天姫、夫の死後、実家の下総国
 関宿藩松平康元家に戻っていたが、家康に呼び出され、津軽家、津軽信枚に再嫁を命じられる。
 信枚にはすでに正室辰姫がおり、家康の姪であり養女である満天姫と石田三成の娘である辰姫、
 共に津軽家に嫁した二人の間には、あたかも、関ヶ原の戦から十三年越し、家康と三成の因縁の
 戦いの様相があり、
 秀吉の正室、高台院(寧々)と淀君(茶々)と確執関係に相似するような女の戦いでもあった。

 さらに、信枚が家臣としている杉山源吾は、石田三成の遺児石田隼人正重成であり、
 石田家の血を残したいとの思いを持った辰姫の兄だった。
 辰姫が平蔵を生み病死。平蔵は、信枚亡き後、信義と名を改め、家督を相続。
 一方で、満天姫の実子直秀は、福島家再興を謀る者達に担ぎ出され、藩内抗争になりかねない
 事態となり、悲壮な覚悟を固め

 「母上、お別れの御挨拶に参りました」
 「直秀殿、母はあなたを誇りにいたしてこれからも生きてまいりますぞ」
 福島家再興の謀は絶たれ、満天姫は信義の母として津軽で生き、信枚に遅れること七年、
 弘前で生涯を終える。
 将軍徳川家光に「満天姫はわが祖父家康公の養女、余にとっては叔母にあたる。
 そなたたちも身内のように思えるぞ」と、認められ、津軽で、石田家の血が受け継がれる
 ことになったという物語である。


「鳳凰記」
▢主な登場人物
 茶々(淀君)、秀頼、
 寧々(高台院、北政所)、完子(さだこ)
 片桐且元
 後陽成天皇、
 清韓(せいかん)、
 阿茶局、本多正純、
▢あらすじ等
 亡き豊臣秀吉の正室で落飾し高台院と呼ばれていた寧々が、大阪城を訪れ、
 秀吉の側室ながら御台様と呼ばれている茶々に対面、徳川家康に対する対応について
 諫言するのだが・・・。

 豊臣家を率いる淀君は、立ちふさがる徳川家康という強大な敵に対して、
 一族存亡を懸ける覚悟を。日一日、家康の命を削っていく戦略に。

 方広寺大仏殿の鐘の銘文に家康の諱(いなみ)を刻ませ・・、
 片桐且元が大阪城を出て、戦いの火ぶたが切って落とされ、・・・、
 秀頼が立ち上がり、「母上、どうやら豊臣の最期は父上の名に恥じぬものになりそうで
 ございます」

 「皆、頼みますぞ」
 あたかも鳳凰が天高く飛び去るのを見るがのように男たちは見送った。


「孤狼なり」
▢主な登場人物
 石田三成、大谷吉継、安国寺恵瓊(あんこくじえけい
 徳川家康、小早川秀秋(金吾中納言)、毛利輝元
▢あらすじ等
 関ヶ原の戦で、敗軍の将となり、京の六条河原で処刑されることになった毛利家の軍師
 安国寺恵瓊は獄舎の中で、石田三成に「関ヶ原の戦は、自分だけでなく、徳川も毛利も負けた。
 勝った者などいない戦いだった」と語られ、床に突っ伏した。
 「貴様は何ということを・・・」

 中国の「三国志」時代の策、「駆虎呑狼(くこどんろう)」(豹に虎をけしかけ、虎の穴が
 留守になったところを狼に襲わせる)を用いようとした三成、
 恵瓊の策はどうして破れたのか?

 「わたしは恵瓊殿の策に操られり一匹狼」だったが、孤狼には、孤狼の戦い方があったと
 いうことだ」

 三成は、遊行上人の読経をも断り、恵瓊、行長と共に、従容として死に向かった。


「鷹、翔ける」
▢主な登場人物
 斎藤内蔵助利三(さいとうくらのすけとしみつ)、
 土岐成頼(ときしげより)、斎藤妙椿(さいとうみょうちん
 松波庄五郎、斎藤道三、
 明智光秀、織田信長、羽柴秀吉、
▢あらすじ等
 天正十年(1582年)六月一日夜半、丹波亀山城を出発した明智光秀の軍勢一万三千、
 その先鋒を務める斎藤内蔵助を主人公にした物語である。

 内蔵助は、美濃の国主土岐氏に仕えた守護代、美濃斎藤家を祖先に持つ武将、
 下剋上により、美濃は、道三に乗っ取られ、さらに、織田信長に奪われ、その積年の恨みを
 抱きながら、光秀に仕え、その恨みを晴らす時がついにやってきた。
 光秀と内蔵助、土岐家の家紋「水色桔梗」を掲げ、本能寺へ、まっしぐら。

 「本能寺の変」の数日前、光秀が京の愛宕山参詣の際に詠んだ句、
 「ときは今、あめが下しる 五月哉」(土岐氏の光秀が天下を取る)
 内蔵助については、「言経卿記(ときつねきょうき)」に、
 「日向守斎藤内蔵助、今度謀叛随一也」(明智光秀の家臣である斎藤内蔵助こそ、
 「本能寺の変」を起こした随一の者である)

 との記述が有るのだそうだ。
 内蔵助は、生涯最後に、美濃斎藤の名を轟かせた人物だったということになる。


 

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葉室麟著 「天翔ける」

2025年02月12日 13時16分53秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「天翔ける(あまかける)」(角川書店)を読み終えた。
本書は、江戸幕府と明治新政府の双方で要職を務めた唯一の人物、第十六代福井藩主・松平春嶽を描いた葉室麟の長編時代小説だった。明治維新の影で、近代日本の礎を築いた英雄、雄飛達が続々登場、正直、春嶽の存在すらも、無知だった人間、「へー!、そうだったのか」、目から鱗・・・、である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
 (一)~(二十七)

▢主な登場人物
 松平春嶽(しゅんがく)・勇姫(いさひめ
 中根靭負(ゆきえ、雪江)、横井小楠(しょうなん)、三岡八郎、橋本左内、
 井伊掃部頭直弼、
 徳川斉昭、徳川慶喜、徳川家茂、
 永井玄蕃頭尚志、
 三条実美(さねとみ)、岩倉具視(ともみ
 島津斉彬、島津久光、西郷吉之助(隆盛)、大久保一蔵(利通)、
 山内豊信(容堂)、松平容保、
 勝小吉(海舟)、坂本龍馬、中岡慎太郎
 孝明天皇、明治天皇、

▢あらすじ等
 ペリー来航、徳川幕府の弱体化などで激動する幕末に、新たな体制を構築しようとした、
 徳川家一門の福井藩主の松平春嶽が主人公の長編時代小説である。

 春嶽らが目指したのは、西洋から進んだ技術を取り入れながらも、日本伝統の道徳も守る国。
 春嶽は、軍師として迎えた横井小楠から、政治家が倫理に基づいて民のために働く民主主義と、
 心法(倫理)に根ざして行う経済活動が、新体制の根本だと説かれ、高い理想に向かって
 積極的に打って出るが、私利私欲に走る公家や武士によって、次々と頓挫。

 開国派と攘夷派の抗争が激化する中で、二者択一ではなく、どの派も納得できる第三の道を
 模索、諸外国から開国を迫られる中、内戦を回避し、挙国一致の体制を作ろうとしたのだが。
 同じ志を持った橋本左内を、安政の大獄で失い、坂本龍馬も消され、横井小楠まで刺殺され、
 西郷隆盛は志を捨てないまま世を去り・・・・・、
 松平春嶽は、明治23年、東京、小石川関口町邸で、63歳で逝去、
 辞世の和歌が残されているという。
   なき数によしやいるとも天翔り(あまかけり)御代(みよ)を守らむ皇国(すめくに)のため

 本書の随所で目に止まった四字熟語。
 「百折不撓」「挙藩上洛」「疎宕爽快」「春風駘蕩」「御家安泰」「乾坤一擲」「破約攘夷」
 「大政奉還」「王政復古」「廃藩置県」「思慮遠望」


 


藤原緋沙子著 「鳴き砂」

2025年01月29日 22時26分39秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「鳴き砂」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第15弾の作品で、「第一話 遠い春」「第二話 菜の花」「第三話 鳴き砂」の、連作短編3篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせに雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろうが、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七(とうしち等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 遠い春」
▢主な登場人物
 柏屋佐兵衛・おつや、宇助、
 古賀小一郎、梅之助、大内彦左衛門
 七之助、
 おたき、詫間清司郎、お鈴、
▢あらすじ等
 木綿問屋「柏屋」の女将おつやが橘屋に駆け込んできて、主の佐兵衛に、女がいると
 言い張るが、実際は、怪しい女おたきに、強請られていることが分かり・・・、
 さらに、小料理屋「花房」の女中お鈴が殺害され、佐兵衛が下手人として捕らえられ・・・、

 本作より登場の七之助と十四郎、藤七、等が事件の真相を探索、
  「斬れ!、斬って俺の怨念を買え。お前がこの世を去るまで怨み続けてやる」
  「俺は斬らぬ」
  十四郎は静かに言った。
  「お前は罪を償わなければならぬ。ただ、ひとつだけ言っておくぞ」
  十四郎は、すさんだ詫間の横顔に、楽翁の言葉を告げた。

「第二話 菜の花」
▢主な登場人物
 万吉(万太郎)、雅吉、与助、太七、
 おつる、勝次、
 宇吉・おかじ
 三国屋利兵衛、九鬼、留次、

 玄蔵、大関甚内、
 千草、大内彦左衛門、
 三国屋利兵衛、
▢あらすじ等、
 「万吉だれの子悪人の子、おとっつぁんは島送り、おっかさんは江戸払い、
 寺のぼんさんに拾われて・・・」、

 お登勢は、浅草寺に捨てられていた万吉を引き取って育て、橘屋の小僧として、
 塾にも通わせていたのだが・・・・、

 その万吉が何者かに狙われており・・・、何故?
 一方で、慶光寺で修行中のおつるが重病、元の亭主勝次に会いたがっており、
 本来、規則違反のところ、万寿院の情から、お登勢、十四郎、藤七、七之助が、
 勝次の行方を探索開始、
 宇吉とは?、三国屋利兵衛とは?

 事件を追っていくと、万吉の出自に繋がっていき・・・、
 果たして・・・、

  「おいらは、この江戸から離れねえ。おとっつぁんの子だ。橘屋からどこにもいかねえー」
  きっぱりと万吉は言ったのである。

  「万吉・・・・」
  お登勢が目頭を押さえた。

「第三話 鳴き砂」
▢主な登場人物
 市岡圭之助・美佐、
 金谷甲之進、信濃修理、井戸金兵衛、阿久津欣弥、桑島伝九郎、
 近江屋惣兵衛、
 七之助、玄蔵
▢あらすじ等
 産み月が近い市岡美佐という武家の妻女が慶光寺に駆け込んできた。美佐は夫圭之助に
 女ができたので離縁したいと訴えるが、美佐の言動には不審有り、
 十四郎、藤七、七之助が、探索、次第に、美佐が駆け込みに至った哀しい真相が明らかに
 なり・・、
  「私は国を出奔する時にも、この鳴き砂があれば踏ん張れると思っていたのだ」
  美佐は両掌で、鳴き砂の入った袋をしっかりと包んだ。その手の上に涙が落ちる。
  「お前の腹の子は、私の子だ」
  その言葉に、美佐の双眸から涙があふれ出た。

「解説」 縄田一男


(隅田川御用帳」ゆかりの地図


藤野千夜著 「じい散歩」

2025年01月25日 09時35分27秒 | 読書記

図書館に、昨年の春、予約していた、藤野千夜著 「じい散歩」(双葉文庫)が、ようやく順番が回ってきて、先日借り、読み終えた。
数年前まで、読書の習慣等、まるで無かった爺さん、著者の著作を読むのも、もちろん初めてのこと、ブログ・カテゴリー「散歩・ウオーキング」に、「君の名は?花に訊ねつ爺散歩」「君の名は?鳥に訊ねつ爺散歩」等書き込んでいることもあって、新聞の書籍広告欄の「じい散歩」に、ビビッと来て、読んでみたくなったものだった。


裏表紙の内容紹介転載
夫婦合わせて、もうすぐ180歳、中年となった3人の息子達は、全員独身。
明石家の主である新平は、散歩が趣味の健啖家で、女性とのコミュニケーションが大好き、
妻は、そんな夫の浮気をしつっこく疑っている。
長男は高校中退後、ずっと引きこもり。
次男は恋人が男性の自称、長女。
三男はグラビアアイドル撮影会を主催しては赤字で、親に無心ばかり。
皆いろいろあるけど、「家族」の日々は続いてゆく。
そんな一家の日常をユーモラスに、温かな眼差しで綴った物語。


■目次
 第一話 秘密の部屋
 第二話 秘密の女
 第三話 秘密の訪問
 第四話 秘密の調査
 第五話 秘密の話
 第六話 秘密の思い出(一)
 第七話 秘密の思い出(二)
 第八話 秘密の思い出(三)
 第九話 秘密の交際
 第十話 秘密の旅路
 エピローグ 秘密の通信
 解説 木内昇

■主な登場人物
 明石新平・英子・孝史・建二・雄三、
 高木、
 ひい姉さん、すみれ姉さん・さなえ(高木さなえ)、
 さとえ、定吉、しげる、はるえ、
 冨子、清美、

主人公の明石新平とその家族、妻英子、長男孝史、次男建二、三男雄三、かなり極端なキャラクターで描かれているが、我が身、我が家、あるいは、親戚や知人友人の家族に照らしてみると、部分的には、結構、似たり寄ったりのところもあるような気がして、笑いが込み上げてきたり、微笑ましく感じられたり、納得したりもしてしまう物語である。
そして、「エピローグ」では、まるで、テレビドラマの最後の場面の挨拶のごとくで終わらせており、なんとなく、続編が有りそうな含みも見える。
  そして、新平は、くるりとこちらを向いた。
  「この本をお読みのみなさん、こんな家族は、嫌だとお思いでしょう?、
  でも、この家族は、実在します。
  都内のある昭和の建売住宅で、今日も老いた私が、老いた妻の世話を焼いています。
  いざとなったら、息子たちがちゃんとするだろうなんて、そんな甘い期待は、
  もう、かけらもありません。

  いずれ、私に介護が必要になったら、さっさと全財産を処分して、
  施設に入ろうと決めています。
  もし、それで息子たちが困るなら、困ればいい。
  でも、今はまだ、この家で妻の面倒をみなくちゃいけません。
  そこまでが、私の人生の仕事、と覚悟しています。

  私、明石新平は、九十四、妻英子は、九十三になりました・・・・」


藤野千夜(ふじのちや
プロフィール

           1962年、福岡県生まれ。千葉大学教育学部卒。
           1995年、「午後の時間割」で、第14回海燕新人文学賞、
           1998年、「おしゃべり怪談」で、第20回野間文芸新人賞、
           2000年、「夏の約束」で、第122回芥川賞を受賞。
           その他、著書に、「ルート225」「中等部超能力戦争」
           「D菩薩峠漫研夏合宿」「編集ども集まれ!」「じい散歩」
           「団地のふたり」等がある。

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藤原緋沙子著 「日の名残り」

2025年01月20日 09時48分16秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「日の名残り」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第14弾の作品で、「第一話 日の名残り」「第二話 再会」「第三話 爪紅(つまべに)」の、連作短編3篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせに雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろうが、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七(とうしち等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 日の名残り」
▢主な登場人物
 大黒屋卯兵衛・おきく(紀久)、儀兵衛(番頭)、おふゆ(女中)、
 長谷長左衛門・伊津・圭之助、
 政五郎・おつね、唯七(ただしち)・太一、
 東堂幽斎、
 松波孫一郎、
▢あらすじ等
 薬種問屋大黒屋の女将おきくが、離縁を望んで橘屋に駆け込んできた。おきくは、没落した
 御家人長谷長左衛門の娘紀久で、実父が負った借金のため、一家の犠牲になって、5年前に
 大黒屋卯兵衛に嫁いだのだったが、・・・。
 十四郎、藤七が、大黒屋の内情、真相を探索していくと、卯兵衛の裏の顔が浮かび上がり・・、
   十四郎は、紀久の後ろ姿を見ながら言った。
   「圭之助殿は、唯七が考案した紀久月の菊の株を裏庭で育てていたそうだ。
   いつか妹に手渡してやらねばとな」
   お登勢は小さく頷いた。
   紀久はこの先、花が咲くたびに唯七を思い出すだろう。だがお登勢は思う。
   悲しみや感傷に浸るだけでなく、いつかそれを乗りこえて新しい道に踏み出してほしいと、

「第二話 再会」
▢主な登場人物
 浅次郎、おみつ、おいと、
 六兵衛(銀六)・お秀、
 惣兵衛(乙輪屋隠居)、
 万蔵、治左衛門、
▢あらすじ等
 かって、橘屋が間に立って離縁したおみつが、元の亭主浅次郎に金を渡してほしいと言って
 きた。
 博打の借金を抱え、娘おいとと貧苦に耐えながら暮らしている浅次郎を助けたい思いを受け、
 お登勢、十四郎、藤七は、駆け込み事案でも無いのに、動き始める。
 親子の情愛がじっくり書き込まれており、人情に重きを置いた作品になっている。
   「お登勢殿」
   十四郎は、小さな声で叫び、五間ほど横手にある石灯籠に顔を向けた。
   そこには朝次郎が身を隠すようにしておみつとおいとを見つめていた。
   お登勢は頷いて苦笑した。
   春よ来い。
   お登勢は十四郎に笑みを返した。

「第三話 爪紅」
▢主な登場人物
 菊屋与茂七(よもしち)・おその・お才()、重蔵(番頭)、おきわ(女中
 清之助、大和屋、
 日野屋与左衛門、松吉
 楽翁(元筆頭老中松平定信
 近藤金五・千草・浪江、
 柳庵、
▢あらすじ等
 金吾、十四郎が、鼻の下を伸ばしたおそのは、紅白粉(べにおしろい)で有名な「菊屋」の
 若女将だったが、柳庵が万寿院、お登勢に紹介した小間物屋清之助は、元「菊屋」の手代、
 橘屋に駆け込んできた与茂七は、「菊屋」に婿入りした若旦那だった。????。

 十四郎、藤七が、その背後を探索。与茂七は、油問屋日野屋の厄介者で、持参金五百両目当ての
 菊屋と思惑が一致し、無理やり、おそのの婿にさせられたものの、命まで狙われていることが
 判明。

 そこには、悪辣非道な真実が・・・、
  「お嬢様、私はお帰りを待っています。何年でもお待ちしています。あの菊屋でお待ちして
  います」、「ありがとう、清さん」、おそのは震える声で答えると、引かれながら降りしきる
  雪の中に消えていった。

 菊屋の事件が片付いた後に、十四郎は、楽翁に呼びつけられ、
  「お前を白河藩お抱えの剣術指南役と致す」
  十四郎は目を丸くする。
  「お登勢・・・」、抱きしめたい気持ちを抑えて、十四郎はお登勢の白く細い手を両手で強く
  握りしめた。
隅田川御用帳シリーズ、14弾目にして、十四郎とお登勢の関係が急展開、
続編が楽しみになってきた。


「あとがき」・・・藤原緋沙子


「解説」・・・・・細谷正光
藤原緋沙子著「隅田川御用帳シリーズ」全体像として、鴨長明著「方丈記」の書き出しの一節
  「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、
  かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」
が、当てはまるのではないかと、記述されている。