草枕

都立中高一貫校・都立高校トップ校 受験指導塾「竹の会」塾長のブログ
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良問を探す

2007年09月29日 10時56分27秒 | 
 ここのところ過去問から良問を探すことに腐心している。とはいっても高校入試の過去問ではない。中学入試の過去問からである。高校入試の過去問は高校のランクによってその難易ははっきりしている。久我山などの中堅レベルは相応した難しさがある。さらに海城レベルになると進学校独特の問題風景である。これはこれでそれほどのことはない。しかし, これが慶応となると少しく趣が異なる。難易度はかなりに高い。出題者のマニアックな問い口も顕著である。いずれにしてもどこを受験するかによって受験する側の生徒に相応の資質が要請されるだけのことである。指導に別段支障はない。
 中学入試となると話しは別である。受験する側の子どもたちの能力が発展途上ということだ。磨けば光る子もいる。また, 問題レベルも必ずしも中学の難易度に比例しているわけではない。芝中レベルでも難しい問題がある。慶応だからといってやたら難しいわけではない。少なくとも中堅以上の学校では問題がよく工夫されているものが多い。私が良問を探すというのは, なんでもかんでも問題ならいいというわけではないからだ。1あたりの本質を突く良問がある。私は中学入試の算数はつまるところ「1を使いこなす」ということだと思う。あるいは算数の極意は「比の妙味」にあるのではないかと思う。そうした私の算数についての観念から私は良問の可否を判断している。
 私は小学生の思考力を調べるとき, 試金石となる問題にこだわる。だからいろいろな学校の過去問集を買ってきては問題を探索する。これはなかなかのいい問題だというのに出会うとなにやら大変な収穫があったように喜ぶ。
 次の問題は平成19年度の成城学園の問題である。
「100gの食塩水Aに100gの食塩水Bを加えてできる食塩水をCとします。食塩水Cに300gの食塩水Dを加えたところ, 濃度は4%になりました。食塩水Cに含まれる食塩の量と食塩水Dに含まれる食塩の量が等しく, 食塩水Bに含まれる食塩の量と食塩水Dに含まれる食塩の量の比が2 : 5であるとき,
(1) 食塩水Dに含まれる食塩の量を求めなさい。
(2) 食塩水Cの濃度を求めなさい。
(3)食塩水Aの濃度を求めなさい。」

 これはいい問題です。小問は(1)から順に, 問題解法の過程を示している。問題は, 1あたりの理解をしていれば, なんなく解ける。1あたりの本質を問う良問です。もともと成城学園は1あたりにこだわりがあり, 過去なかなかいい問題が作られている。芝中とならんで良問の宝庫だ。
 成城学園平成19年の5番について。
「ある売店では, 空き缶6本と新しいジュース1本を取りかえてくれます。
(1)缶ジュース400本買うと, 全部で缶ジュースが何本飲めるか求めなさい。また, そのとき取り替えられずに残った空き缶は何本ですか。
(2) 缶ジュースを1000本飲むには, 最低何本かえばよいですか。」

 面白い問題です。しかし,これは既に慶応普通平成8年で似たような問題が作られています。
 慶応普通平成8年4番。
「ある写真店では, とり終わったフィルムを3本現像に持っていくと, 新しいフィルムが1本無料でもらえます。
(1) 初めにフィルムを15本買うと, 最低で何本分の写真がとれることになりますか。
(2) 初めに何本かのフィルムを買ったら, フィルム50本分の写真がとれることがわかりました。初めに買ったフィルムの本数を求めなさい。」

 慶応のこの問題は, 思考の錯覚を問うなかなかの良問でした。だから, 私もレジュメ化していました。その意味で成城学園の出題者が, その良問性に目をつけてリメイクしたのにはそれなりの理由がありました。良問は1回限りで使用済みにするにはもったない。
 私が良問を私の目で探すのは, 本質的にいい問題が, 子どもたちに本質的な思考の過程を経験させながら, 思考の作法を身につけてほしいからです。意味のない難問や思いつきでしか解けない問題は必要ありません。
 私の仕事机の脇にはいつしか過去問集が山積みになっていました。書店でも過去問を斜め読みします。いい問題を作っている学校があればと探します。
 過去問を見る目は, 厳しく鋭くです。
 子供たちには, 最近は「1を使いこなす」ことを徹底させています。とにかく1とおけ。その上で1の変化を徹底して追わせる。同じ1でも, 元の大きさが異なれば, もはやお互いの交流つまりは計算はできません。最初の1あるいは大きな1に合わせて, 次の1を変化させるという思考にはなかなかついてこれない子が多いのです。1あたりとは, つまるところ1を操る技術です。
 「比の妙味」について。
 算数はつまるところ比をいかに使うかに尽きます。
 次の問題は, 平成16年慶応藤沢5番からです。
「ビーカーA,Bに濃度の異なる食塩水がそれぞれ200g, 300g入っている。もし, AとBの食塩水を全部あわせてよくかきまぜたならば, 濃度は元のAの2.5倍になる。
(1) ビーカーA,Bの食塩水の濃度の比は何対何ですか。
(2) ビーカーA,Bの食塩水からそれぞれ同じ重さの食塩水を取り出して, AからのものはBに, BからのものはAに入れてよくかき混ぜるという作業を考える。次のア, イのようにするためには,ビーカーA,Bからそれぞれ何gずつの食塩水を取り出して入れかえればよいですか。
ア ビーカーA,Bの食塩水にふくまれ食塩の重さが等しくなる。
イ ビーカーA,Bの食塩水の濃度が等しくなる。」

 難問です。(1)については, 天秤算でもいけそうです。
 しかし, いい問題です。何がいいかと言えば, 比を実にうまく利用させるべく作問されているからです。
 AとBを全部まぜると濃度が元の2.5倍になるといっていますが, 実はこの問題には「仕込み」があります。
 混ぜ合わせた食塩水の重さもAの2.5倍になるように仕掛けられています。
(200+300)÷200=2.5(倍)とするための仕込みです。
これで濃度が2.5倍かつ食塩水も2.5倍ということで, Aの食塩水の重さと濃度をそれぞれ1とすれば, 混ぜ合わせた食塩水に含まれる食塩の重さは, 2.5×2.5=6.25倍とわかります。
Aには1×1=1の食塩の重さがありましたから これで比がわかります。実はこの問題のメインは(2)にありました。(2)では, 1あたりの比の変化を考えることによって正解に導く手順が求められています。算数の極意はこの問題に示されています。詳細な解説は省略しますが, 過去問から良問を探すということの意味の具体的な詳細を知ってもらうために, 長々と問題の引用をしてしまいました。
 高校入試の過去問指導について。
 国学院久我山レベルの数学・英語・国語について。
 概ね中堅私立の入試は平均6割が合格ラインです。中大付属になると7割強ですが, 問題は平易です。慶応などは未公表ですが, 問題の難しさも踏まえて7割ラインかなと思います。日大桜丘クラスだと実質4割くらいではないかと推測されます。久我山クラスになると問題はそれなり難しく特に英語は都立の比ではありません。最近は都立でも独自校は難度が高くなっています。最近の都立英語は, 総じて英作文の重視が特徴です。もちろん私立の英語は長文読解です。「意味をとる」こと, 「何について述べ゛ているのか」を的確に読み取る必要があります。英文解釈の訓練が必須です。その上で入試文法を効率よくマスターすることです。竹の会の英語指導は豊富な大学入試指導の経験を踏まえた高度の英語指導を実現しています。テキストは長年にわたり改良された入試に特化した最高の出来栄えです。得意の英文解釈指導は英語5文型の理論による解釈を徹底しています。いずれにしても竹の会の指導は 「過去問指導法」につきると思います。中堅私立から難関校まで過去問を駆使した指導で確実に不動の実力をつけることでしょう。
 近頃は, 過去問を読んでばかりいます。それにいつも何やらの文庫本を持ち歩いています。バスの中でも電車の中でも文庫本に読みふけっています。公立中高一貫校の問題は, ほぼ毎日分析しています。10月は子どもたちに与えられるだけの過去問を課すつもりです。とにかく10月は過去問の洪水を計画しています。来年の激戦を考えると, 竹の会には宿題はないとされても困るかなと思っています。もちろん強制はしません。各人がどの程度熱意があるかの問題です。是非ともあこがれの中学に入りたいと願う子どもの熱意がどう出るかだけだと思っていますから。家庭で全くやらないというのであれば, その子の熱意もそこまでのものというだけのことです。
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