草枕

都立中高一貫校・都立高校トップ校 受験指導塾「竹の会」塾長のブログ
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抽象化とは何か

2014年05月16日 22時18分58秒 | 
 具体的にものごとを考える段階から抽象的な思考の段階へと思考世界を広げること、多くの小学生にとってはやがては乗り越えねばならない大きな壁といえようか。
 抽象的な思考というのは、端的には、記号操作といってよかろうか。計算は実は小学生が最初に直面する抽象的世界である。そこでは数字という記号を操作することが求められる。抽象というのは、もともと何の意味もない記号に後から何らかの意味を付与し、その意味を前提として記号を操ることであると言っていい。この抽象性は数学になるとかなり明確にその記号操作であることの意味がはっきりとしてくる。高等数学になるとそれはもう純粋に記号言語の世界である。予め与えられた記号に数学特有の意味が付与されて、その意味の約束のもとに記号言語を操作する。数学こそ抽象的思考の典型ではないか。
 子どもたちは「割合」という記号、意味付与である「約束」を理解するのに挫折する。それは抽象的なものに対する抵抗である。抽象化は大人への飛躍をもたらす。具体的なものから離れられない子どもはどこまでも幼いままである。
 抽象的思考への移行は、子どもを大人へと導く。不幸にして抽象的移行へ失敗した子たちにわたしは捧げる言葉もない。
 具体的なものは抽象化して、抽象的なものに置き換えて考える。これが思考ということである。
 子どもたちに抽象化、抽象的思考ということを組み込む、これがわたしの、竹の会の仕事である。
 現代文読解の苦手な子というのは、要するに幼いのである。具体的世界の枠から出られない、ただそれだけのことである。
 ここで記号化、記号言語による思考というものに意識を切り替えることができるかである。
 現代文読解に必要な抽象化というどういうことなのか。現代文を考える抽象語をまず習得することです。たとえば、民主主義という語は記号です。この記号に付与された意味をまず覚えることです。くり返します。現代文は記号言語による思考にすぎません。
 ところでたとえば歴史を学ぶとき、歴史が苦手だなどという生徒はこの抽象化ができていません。知識はまず抽象化する。それは記号で置き換えることです。記号は意味が付与されて操作可能となります。
 抽象化というのは、具体的なものを捨象して、共通語、共通記号を見つけることである。
 歴史を勉強すること、理科を勉強すること、これが「できない」、苦手というのは、抽象化をしないからです。
 抽象化、つまり共通語を見つけるという過程を経ないからです。
 勉強の達人になるには、知識を抽象化し、つまり共通語を見つけていくということです。
 暗記するというのは、思考停止することです。暗記しようとするからいけないのです。暗記しようとした瞬間、思考停止するからです。
 抽象思考というのは、この暗記という思考停止状態を共通語を見つけるという作用をすることで活性化するものです。
 暗記の対象をそのまま暗記しようとしてはいけない。
 共通語を発見することに精神を傾けるのです。
 英語はどうですか。言語は記号です。そう、もともと記号です。記号の意味は覚えるしかないのです。文法は記号を整理したものです。抽象的世界そのものではないですか。
 勉強する、最初の目標、それは抽象的世界への飛躍です。
 
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