草枕

都立中高一貫校・都立高校トップ校 受験指導塾「竹の会」塾長のブログ
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勉強しない症候群のこと  都下の公立中高一貫校(8)

2009年12月07日 09時09分33秒 | 
●勉強しない症候群

 都立高の凋落は, 生徒供給源である公立中の質の低下と無縁ではない。学校群制度が始まると同時に都立は奈落の底へ足を踏み出した。その影響は静かに足もとから崩れるようにやってきた。ほぼ同時期から始まった本格的な少子化の波は私立の危機感を募らせた。早くから私立はその対策に東奔西走したといっていい。親方日の丸の公立中の動きは鈍かった。次第に私立中高一貫校に小学の優秀な児童がそれも一斉に流れ込み始めた。教育に関心の高い親たちをこぞって中学受験へと駆り立てた。私立は学費が高い。必然, 経済的に恵まれた子どもたちが大手塾に小4からの3年間高額な費用を払って通い, 東大の進学実績の高い名門私立や国立をめざす。その勢いは止まらない。四谷大塚, 日能研が全盛時代であった。私立が軒並み東大合格実績を競った。都立は傍観するしかなかった。それどころかかつての名門都立の凋落は目を覆うものがあった。足もとから崩れ落ちる都立の栄光にようやく都教委は動き始めた。大手塾では, 四谷大塚, 日能研に代わる新興勢力であるサピックス, 早稲アカなどが急伸してくる。
 さて, このころ, 公立中は「ゆとり教育」が謳歌され, 通知表は相対評価から絶対評価へと変わる。学校群制度が都立のほとんどを地の底に這わせたころ, 公立中の質の低下は確実に静かに侵攻していた。そういえば学校群制度の時代は学校が荒れた。暴力事件が後を絶たなかった。
 学校群制度の末期くらいからであったろうか。私はそれまでにない公立中の生徒の質の低下を感じるようになった。塾を訪ねてくる子はたいていが学習不振児であった。質の低下は塾での指導をこれまでになく困難にした。およそ勉強というものに関心のない子たちが親に連れられて塾にきた。そうしたことが続いたある時期から, 私は公立中の生徒の募集を止めた。あまりにもの質の悪さに私自身がもう限界にきていたのかもしれない。小学生の算数からできない子たちが公立中にはうようよいた。私の関心は熱心な小学生を指導することに移った。不熱心な中学生はもういいとスッパリ切って清々した。今では少ないが熱心な中学生がほんの少しだけいる。たいていは小学生からいた子たちだ。
 
 勉強しない症候群は昨今の公立中の生徒の罹る病である。部活命で勉強はほとんどしないという子は昔からいた。親は「うちの子は部活があるので・・・」と部活優先を公言したものだった。ゲームやテレビに興じて勉強しないと嘆く親もいた。特に何をしているというわけではないのだが, とにかく何もしない一環として「勉強もしない」という子が増えてきた。部活やゲームはまだ何かに依存するだけましで, 何もしない症候群の増殖は不気味であった。
 なぜかれらは「何もしない」のか。
 1  低学力
 2  学習意欲の欠如
 3  基本的な生活習慣の訓練(しつけ)の欠如
 4  人間関係の未成熟
 5  依存という病
 6  親からのDV, ネグレクト
 7  貧困
 考えられる原因をあげてみた。
 よく中学で分数のできない子に出会った。割合をまるで理解しない子は多かった。小学生の学力さえも持ち合わせていない子がよくいた。
 学習意欲の欠如した子もよくいた。こちらは小学生から見ることができる。集中して勉強するということがおよそできなかった。レジュメはその日限りで捨てられ, 途中までやったレジュメはいつも廃棄の運命にあった。およそ家庭学習というものはなかった。宿題などは出すだけ無駄であった。そしてそういう子たちは, 敬語が使えない, あいさつができない, 靴を脱ぎ捨てる, ととにかく基本的な生活習慣のかけらもなかった。
 人間関係の未成熟がもたらすトラブルが頻繁に発生した。勉強よりも人間関係で神経をすり減らす子が増えた。同じ学校の子がいない塾を探したり, 知ってる子がきただけで塾に来なくなったりとあまりにも繊細な神経に翻弄される子に少なからず出会った。親たちが子に気を遣いおろおろした。
 子どもたちは, 不安で自信を失い, 何かにすがらなければ, 安定が保てない。「もの」に依存する。「動物」に依存する。「部活」に依存する。何かに依存する。ひとつ間違えば非行と表裏の不安定な心の状態が何かに依存することで「つないだ」。不安でつながりを求める子どもたちの不安定な心が「勉強しない症候群」の正体であったとしたら・・・・。

●都立立川国際中等教育学校
 設立母体となるのは, 都立北多摩高等学校である。立川市内では, 立川高校に次ぐ進学校である。多摩地区初の中高一貫校となる。名称に「国際」がつくのは, 都立国際高校に例がある。「国際社会で活躍するリーダーの育成」を目標に掲げる。入学枠には海外帰国子女・在京外国人生徒枠として30名がある。一般枠は男女各65名である。国際の名を冠する通り, 英語に力を入れている。開校初年の倍率は平均14.5倍で, 女子は17.4倍にも達した。今年は開校2年目になります。

 後記
  冬期の申込みもほぼ申込みが終わりました。ありがとうございました。
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