草枕

都立中高一貫校・都立高校トップ校 受験指導塾「竹の会」塾長のブログ
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原発地元をカネで籠絡した国

2011年05月17日 19時59分38秒 | 
 敦賀半島の原子炉群がもし爆発すればそれで日本は一瞬で終わるであろう。わかっているだけで9本もの活断層があるとされる若狭地方には、関西電力の11基の原子炉がある。ほかに日本原子力発電が2基、さらに現在日本最大級の原発2基が増設中である。そしてさらにこの地方には日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」、廃炉中の新型転換炉「ふげん」がある。今年4月の統一地方選では若狭原発立地自治体はいずれも無風選挙で原発が争点となることはなかった。3.11の直後だというのにである。
 原発立地自治体には多額のいわゆる原発交付金が支払われる。田中角栄が作った電源3法交付金といわれるものだ。74年から09年の35年間で福井県だけで3245億円が地元自治体に支払われている。
 敦賀市426億3491万円 /美浜町184億7281万円 /若狭町85億3472万円 /小浜市58億9098万円/おおい町360億4418万円/高浜町259億7839万円
 こうした交付金のほかに、固定資産税、核燃料税(県税)の収入を加えると歳入の4割が原発収入となる。たとえば、美浜町の一般会計予算は74億円ほどでその4割強にあたる33億円が原発収入である。交付金は着工から運転開始までの間に立地自治体にもっとも流れ込む。固定資産税は原価償却により次第に減る。こうして立地自治体は増設を期待し積極的に電力会社に働きかける。
 原発は絶対安全と言いながら、原発を造れば地元にカネが支払われるというのは、原発が絶対安全ではないという前提があるからであろう。安全でないからカネが支払われるのであり、地元も国も最初からその点に齟齬はない。原発建設は原発関係の雇用も生み出してきた。市や町・村全体が原発依存した中で、たとえば、敦賀市長選では73.5%もの市民が原発運転継続容認という世論を形成している。
 今度の福島の事故でも十分わかったはずである。一端事故が起きればただに立地地元だけのことではなく、福島一県がいやその近隣の県までもが甚大な被害を被るということを。原発立地という重大案件については、地元の意思だけで決められるべきことではなく、事故の影響が及ぶすべての人たちの賛成が必要な問題であるということである。原発の可否を問う地元民の投票はナンセンスである。カネに籠絡された人々にすでに冷静な判断はない。この狭い日本のあちこちの寒村の人たちをカネで籠絡して原発を造れるだけ造り、まだまだ増設計画が目白押しというのであるからこの国の人間の強欲さにあきれてものが言えない。すでにここ何年かは電気が余り、原発増設の必要もなかったのに増設を重ねるのであるから。
 ※2009年の経産省の交付金
   泊原発 3基(北海道電力)北海道泊村5億8220万円
   東通原発 1基(東北電力)青森県東通村 10億301万円
   女川原発 3基(東北電力) 宮城県女川町5億8559万円
   女川原発 3基(東北電力) 宮城県石巻市2億3437万円
   福島第1原発 4基(東京電力)福島県大熊町15億2483万円
   福島第1原発 2基(東京電力)福島県双葉町18億5041万円
   福島第2原発 2基(東京電力)福島県樽葉町8億1461万円
   福島第2原発 2基(東京電力)福島県富岡町9億1476万円
   東海第2原発 運転終了 茨城県東海村6億8358万円
   柏崎刈羽原発 7基(東京電力)新潟県柏崎市21億4012万円
   柏崎刈羽原発 3基(東京電力)新潟県刈羽村9億8476万円
   浜岡原発 3基(中部電力)静岡県御前崎市12億819万円
   志賀原発 2基(北陸電力)石川県志賀町5億2013万円
   島根原発 2基(中国電力) 島根県松江市57億3048万円
   伊方原発 3基(四国電力) 愛媛県伊方町11億2923万円
   玄海原発 4基(九州電力) 佐賀県玄海町14億7094万円
   川内原発 2基(九州電力) 鹿児島県薩摩川内市11億2658万円
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