草枕

都立中高一貫校・都立高校トップ校 受験指導塾「竹の会」塾長のブログ
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出題の意図・視点・常識など

2007年07月06日 12時18分46秒 | 
 次の問題は2006年千代田区立適性検査2の問題です。
「縦型信号機が使われている場所の特徴を2つあげ, 使われている理由を説明しなさい。」(問題には縦型信号機の設置場所の写真が4枚掲げられている。千代田区役所前の信号機の遠景と近接, 新潟県村上市の雪の道路の遠景, JR水道橋駅の橋桁に近接して設置されている信号機の写真など)

 さて, この問題に対して去年の合格者が始め頭をひねって考えても答えを出せなかったことを思い出す。ずいぶんと考えた後「先生, これわかりません。」と訴えてきた。
 私は「信号は何のためにあるんだ。」と返す。
 こういう問題は, いろんな答えがありそうで, こどもたちは好き勝手に思った答えを書いてくる。しかし, 「信号は何のためにあるのか」という問いはもともとなぜ信号機なんかを設置したのかとその根本を問い返すことで自然に正解が見えてくる。運転者に見えなければ信号の意味がない。運転者にとって見やすいように設置するはずだ。するとわざわざ縦に設置するのは, 縦のほうが見やすいと考えたからだ。なぜ縦のほうが見やすいと考えたのだろう。こういう思考である。あるいは, 雪国の信号機はたいへんだな。雪が積もるとその重さなんかけっこうなものだろう。こう考えるわけだ。それでもJR水道橋の縦型信号機についてはそれでも説明がつかない。橋桁が邪魔なのかな。いろいろ考えるわけだ。
 さて普段からなんでもないような日常的な問題を取り上げて, 判断させるということだ。ここではものごとの本質を問い直すということが問いをはずさないために必須の思考作法である。
 出題者は, こうした日常の事態をいかにこどもたちが本質をとらえて推理してくるかを試そうとしている。普段の指導は, 物事の本質を尋ねることをクセになるくらいに思考癖としてたたきこむことだ。さらには, こうした視点から様々な事例を用意して子どもたちに判断の練習機会を与えることだろう。
 私は過去問の分析はいくらやってもやりすぎることはないと思っている。何度も何度も出題者の意図を探り, その上で常識的な推論の流れというものを提示していかなければならないのだと思う。どのような事態も常識的な思考により「あたりまえ」の答えが必ずある。決して適性だからといって特別な答えが必要なわけではない。予め用意された客観的な模範解答があるわけでもない。求められているのは「どのように君が推論してそのような結論をとるにいたったか」という当たり前の道筋なのである。
ものごとの「そもそも」の存在根拠を尋ねることから始めて「あたりまえ」の推論で「あたりまえ」の結論を導いてほしいだけなのだ。
 出題意図の分析は, 対象にどんなものが選ばれているか,どの程度の深さと広がりをもって「問い」を構成しているか,などを検証する。その際にどのような視点が選択されているかは重要である。中学入試の理科社会なんかでもこの視点分析はかなりに重要である。様々な出題内容が1つの視点とどのようにかかわりをもって出てきているのか, ある1つの関心で照らし出されている範囲を検証する。視点全体との係わり合いの度合い(仮に意味係数とでもよぶとする)はどの程度なのか。ただの思いつきで出されたのではないということをしっかりとチェックする。
 今日は, 過去問分析の具体的方法の一端を紹介してみました。
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