ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

WBC世界Sフライ級TM 徳山昌守vsジェリー・ペニャロサ

2001年09月24日 | 国内試合(世界タイトル)
徳山昌守が、1位のジェリー・ペニャロサを小差の判定で下し、3度目の
防衛に成功した。ここ数年、日本のジム所属選手たちにとって鬼門だったV3、
そして最強挑戦者を迎える指名試合。飯田、辰吉、戸高、畑山らがV3の関門を
突破できず、また指名試合では畑山(スーパー・フェザー級、ライト級共に)、
戸高、星野が涙を飲んだ。

ボクシング界のランキングの付け方はかなりいい加減な部分もあるのだが、
それでもやはり1位と言えば相当強い選手であることは間違いない。
実際、ペニャロサは強かったし、徳山はいつものペースが掴めず苦戦した。
しかし苦しみながらも強敵を退けた事実は、文句なく賞賛に値する。

今回の試合の中で、徳山は何度も諦めようと思った瞬間があったという。
確かにペニャロサの硬いディフェンスの前に思うようにパンチを当てられず、
逆に常に前進するペニャロサの攻撃にピンチにさらされる事も度々あった。

この日の徳山には大振りが目立った。これは前回のKO防衛で攻撃力に自信を
つけたことが裏目に出ているというよりは、思うようにパンチが当たらない
焦りから来るものだったように思う。

また、序盤に予想外の打ち合いを挑んだのは、ペニャロサを攪乱するためだろう。
本来は距離を取り、アウトボクシングするのが徳山の持ち味であるが、ペニャロサ
得意の打ち合いでも、クリーンヒットは奪えなかったとは言え完全に打ち負けた
というほどではなかった。最初から距離を取っていたら、もしかしたらペニャロサ
は調子づいてどんどん前に出てきたかもしれない。徳山は、まず相手のペースを
乱すことから始めたのだ。

中盤以降のアウトボクシングが効を奏したのも、この前半の攻撃があったからこそ
なのかもしれない。またペニャロサが両目を切り、さらに頭部をカットして出血
したことも徳山にとってはラッキーだった。9ラウンドに失速した徳山がピンチに
さらされた時も、ペニャロサの出血がひどくなったことで試合が一時中断され、
徳山は体力を回復させることが出来たのである。

その後は攻めるペニャロサ、守る徳山という図式が最終ラウンドまで続いた。
終盤もっと攻めておけばもう少しポイント差がついたとは思うが、結果的には
2~3ポイント差でジャッジ3者ともが徳山の勝ちとしていたわけだから、
まずは徳山の試合運びは間違っていなかったと言える。

とにかく、苦しみながらも頭と体をフルに使い、徳山は最大の難関と言われた
ペニャロサ戦をクリアしてみせた。初防衛の名護戦ではテクニックを、前王者
との再戦となったV2戦では攻撃力を、そして今回のV3戦で徳山はベルトに
対する執念を我々に見せてくれた。何度も諦めそうになりながら、観客の声援と
豊富な練習量に支えられ、必死でチャンピオンの座を守り切ったのだ。

4度目の防衛戦の相手には、長い間世界挑戦を待たされてきた東洋太平洋王者、
柳光和博が有力視されている。柳光もまた、徳山と同じくクレバーなテクニシャン
であり、最近になって攻撃力をつけてきているのも両者の共通点だ。
互いにペースを掴めないまま凡戦に終始する可能性もあるが、上手く噛み合えば
緊張感のあるハイレベルな技術戦が見られるであろう。非常に楽しみだ。