1295話)苑西庄村再訪(2)

テレビの取材場所としてこの村を選んだのは、ふつうの農民とのつきあいが濃厚だったことがあります。私もずいぶんな回数、農家にホームステイさせてもらいました。まだ若かったからできた、ともいえるでしょうね。

多くの村はたいてい村の党支部の幹部をつうじてのつきあいで、長い年月のあいだに交替している可能性が高いんです。村を離れてしまっている人も少なくありません。こういうところに行っても、知り合いに会えるとはかぎりません。

苑西庄村にはいると、たちまち顔見知りにであいました。人口150人ほどの小さな村でしたから、ほぼ全員の人と知り合っていたわけです。でも、歳をとってる、おたがいに。なにせ15年ぶりですからね。

最初にきいたのは井戸のことです。まだ水はでているそうです。よかったあ!

井戸への道をたどると、つぎつぎ人にであいますが、ぼんやりとは私のことを覚えてくれているようです。いっしょにきた人たちが「ガオジェン(高見)だよ」というと、すぐに思いだしてくれます。

「高見さんだとわかると、みな笑顔になりますね」とディレクターが感心してくれました。

井戸の周囲に植えたマツも大きく育っていました。さらにその周囲のアンズもよく育っています。でも、ことしは開花したあとの寒波で、幼果が凍って落ちてしまいました。それはこの村にかぎらず、この一帯の農村に共通したことです。

こんなふうに書くと、この村を訪れることを周到に考えて決めたようにみえますが、そうではありません。脱力して、なにも考えないようにしていると、ポカンとそのような考えが浮かびあがってきます。
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