1285話)広霊県苑西庄村(2)

1994年3月に初めて苑西庄村を訪れたときのことを思いだすと、なぜか薄汚れたヒツジのイメージが浮かんできます。毛のうえからでも痩せているのがわかったくらいです。

一軒のあばら家にはいりました。あけすけにいうのは失礼ですけど、1995年の長雨でこの家はつぶれてしまいましたので、こう呼んでも差し支えないでしょう。

老夫婦と5歳くらいの男の子が夕食を摂っていました。若夫婦は出稼ぎにいっているとのこと。食卓のようなものはなく、オンドルのうえにホーローの洗面器がおかれ、なかにとろとろの粥がはいっていました。おかずは唐がらし味噌とつけものだけ。

家具はなく綿のはみだしたせんべいフトンがオンドルの片すみにおかれていました。土間には政府からの救済食糧だというトウモロコシのはいった麻袋と水ガメがありました。

私はビデオカメラを回そうとして、同行していた県の幹部に制止されました。外国人がくるだけでも問題なのに、撮影なんてとんでもない、というのです。

すると、祁学峰副書記が、間髪をいれずに、問題になったら自分が責任をとる、といったのです。その一言で私の撮影は許されることになりました。

これがのちに緑色地球網絡大同事務所が設置され、彼が初代の所長に就任する契機になったのですけれども、今回はそれに深入りせずに先を急ぎます。
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