065)乱開発

 昨年夏、植物を求めて太行山中を歩きまわりました。そこで気になったのが乱開発です。山区は平地が少なく無霜期も短いため、農業条件はよくありません。そこへやってきたのが最近の経済膨張。「中華全国総工事現場」で、鉄もセメントも足りません。ふつうは見向きもされない零細鉱山でも採算に乗ります。浙江省、江蘇省など南の資本と、地元の市や県の幹部(本人よりもその家族)が結んで開発にあたるよう。
 そのポリシーは稼げるときに稼げ! ワイルド・キャピタリズムそのものです。安全や環境への配慮なんて、どこ吹く風。なかにはサーチライトの光で、ナイター営業のところも。
 私たちの緑化プロジェクトの横にも鉄鉱石の中間処理場ができました。露天のちっちゃな施設で、河の水で鉱石を洗い、まっ茶色に汚濁した水をそのまま河に戻します。鉱石の分別や洗浄には水が不可欠のよう。有毒物が含まれないか、ほんとに心配です。
 この河はすぐ下流で唐河に合流し、太行山脈を抜けて、河北省の西大洋ダムに注ぎます。このダムは保定市の重要な水源ですが、南水北調の石家荘-北京間の工事完成を待って、07年から北京の水源になる予定。オリンピック乗り切りの秘策です。
 貧しい地域の経済にとって、いまは千載一遇のチャンス。でも、ひとたび問題が発生すれば、その及ぶ範囲はあまりに広く、長期の深刻なものになります。
  (2005年2月15日号)
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