はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

少女探偵金田はじめの事件簿

2007-09-05 18:44:53 | マンガ
「なんだってんだ!? バラバラ死体の断片が……どちらも下半身!! これは……」
 猟奇的な殺人事件に遭遇し、動揺を隠せない警察の現場検証に、カランコロンと高下駄の音が割り込んだ。
「捜査の撹乱を狙ったものかさもなくば……」
 衆目の視線を一身に浴び、少女は堂々と告げた。
「もともとこういう人間か……だ!!」

「少女探偵金田はじめの事件簿」あさりよしとお

 気の抜けるようなイントロと共に現れたのは、フケだらけの頭に高下駄の女子高生。金田一耕介ならぬ金田某を祖父に抱く鵺高校推理研究会部長・はじめ。警察のお偉方を実兄に持つ相方・アサミとコンビを組んでの捜査の実施を趣味としている彼女は、類稀なる想像力と並の推理力、部活動故のフットワークの軽さでたびたび世間を騒がせてきた(「下校時間だから帰る」とか言い出す)。
 冒頭の下半身バラバラ殺人事件以降、鵺高校には怪事件が頻発。はじめの奮闘もむなしく生徒の過半数が殺される緊急事態。警察も学校側も満足な手を打てず、むしろ「ベテラン少年探偵」小林正太郎や、「すけべ椅子探偵」エロキュール・ポルノといったキワモノ達まで乱入しててんやわんやの大騒ぎ。
「てめえらふさけんじゃねえ! こんなんじゃ推理もクソもねえちくしょう!!」
 推理物の主人公にあるまじき暴言まで飛び出す伝説のトンデモ漫画は、宇宙人やロボットまで登場させてさすがの放埓ぶり。ノックスの十戒もヴァン・ダインの二十則も、およそ業界の常識と思われるものはことごとく通じない。
 先入観を捨て、肩の力を抜いて読めばそれなりに楽しめる。しかしところどろこに作者のミステリ愛を感じるようなフレーズが散りばめられているのが違和感で、どうにも落ち着かないでいたら、あとがきの「出口をふさがれて迷走しまくった」という文章を読んで腑に落ちた。書きたいものが書けない苦悩と折り合いの板挟みが6年間の中断に繋がったのだ。

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