巨娘(2) (アフタヌーンKC) | |
クリエーター情報なし | |
講談社 |
「巨娘(2)」木村紺
呑むときや食べるときに、他の美味しそうな画像を見ると食欲が増したり、そうでもない料理が美味しく感じたりすることがあるだろう。それが僕にとっては吉田健一の「酒・肴・酒」だったり、久住昌之の「孤独のグルメ」だったりする。今回挙げる「巨娘」も、その中のひとつだ。
話は単純。サイズも器も桁違いなジョーさん(女)が、世の埒外な人々に力ずくの鉄槌を下すお話だ。
だけど、僕にとって大事なのは、そんなことよりも呑み食いのシーンだ。木村紺の描く食事シーンは美味しそうだ。絵が綺麗でもリアルでもないけど、そのシーンまでのもっていきかたやシチュエーションが「たまらない」ので、非常においしそうに見える。
今回は、ジョーさんがタケルと一緒にいったシガーバーでの飲み食いのシーンや、サチと恋敵との料理対決が美味しそうだった。シガーバーでは葉巻を吸い、ウイスキー(?)を飲むだけだった。料理対決では、創作日本料理と本格フレンチが鎬を削った。どちらも本当に旨そうだった。
僕は漫画や小説を片手に晩酌をすることが多いが、この本はかなりのヘビーローテーションでそのお供になる。僕は何度も何時間も、この本と一緒に旅に出た。それは舌に優しく、まろやかな旅だった。味わい深く、幸せな旅だった。人生には、美味しい料理もまずい料理もあるけれど、この魔法のスパイスがあれば、その中の何割かは至上の美味に変わるはずだ。そういったことが可能な本だった。いつまでも、どこまでも、僕はその快楽の中に浸っていた。
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