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はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

なれる!SE(4)

2011-09-24 13:45:51 | 小説
なれる!SE 4 誰でもできる?プロジェクト管理 (電撃文庫 な)
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「なれる!SE(4)」夏海公司

 業平案件も順調に推移している夏の日。とある出版社の本社移転プロジェクトに参画することになった立華と工兵。スルガシステム的には一部ルーターの移設作業を請け負うだけの簡単な仕事だったはずなのだが、業者間の意思疎通のとれなさと出版社側の適当さのせいで、会議は大荒れ。しまいにはプロジェクトマネージャーが逃亡してしまう。
 となると、黙っていないのは社長・六本木。経験もないのにいきなりプロジェクトマネージャーを任されることになった工兵の、苦難の日々が始まる……。

 おお……面白くなってる。スルガシステムのブラックぶりにもめげず、前を見て懸命に戦おうとする工兵の成長ぶりが、物語に熱を与えているのがわかる。これは熱い。
 実際、こんな大役を突如任されたら、たいがい投げ出すか腐るかすると思うのだけど、どっちもしないのがすげえと思った。もちろん、大小無数のハードルがあって、何度も何度もつまずいてくじけそうになるのだけど、周囲の人たちの励ましや助力を得て、一歩一歩前進していく。それができるのが偉い。他人の言葉を聞けるって大事。
 しかし意外だったのは橋本さん。いつの間に工兵と飲み友達になってたんだ。しかもあの発言……デレ始めているのか……?
 いままでまったく不透明なままだった立華の抱える事情の一端が見えたりと、イベントの多い4巻だった。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない(9)

2011-09-17 15:23:49 | 小説
俺の妹がこんなに可愛いわけがない 9 (電撃文庫 ふ 8-14)
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「俺の妹がこんなに可愛いわけがない(9)」伏見つかさ

 黒猫と付き合ったけどフラれたり、その黒猫が行方も告げずに転校したり、でも桐乃の助けもあって、なんとかかんとか変な別れにはならずに済んだり、おかげで桐乃の存在の大きさを思い知らされたり。最近立て続けに起こった重要なエピソードの陰の、各キャラ視点の思惑を描いた短編集。
「あたしの姉が電波で乙女で聖なる天使」
 五香家次女・日向視点における、京介がらみの黒猫のデレデレぶりが明らかに。
 京介に気に入られようとファッション雑誌をこっそり買ってきたり、高坂瑠璃なんてノートに書いて悦に浸ってみたり、という他では見られないすさまじいデレの数々!
 はもちろん良いのだけど、それよりなにより、めっけものは日向でしょう。瑠璃姉大好きで、瑠璃姉をいじることにいきがいを見出しているこの女の子の一人称でのつっこみが面白すぎる。いいキャラ出てきたねえ。
「真夜中のガールズトーク」
 とある温泉地での決闘(?)後、足腰立たなくなった黒猫をおぶって旅館まで送り届けた京介と桐乃。けっきょくその晩はその宿に泊まることになった2人。部屋割りで、黒猫と一緒になった桐乃はともかく、黒猫両親+日向と同室になった京介はさぞや針のムシロを堪能してるだろうと思いきや、天然人たらしの術であっさりと打ち解け、黒猫父と一緒に温泉に行ったりしちゃっているらしい。
 その報告をしにきたハイテンションな日向と「またやりやがった」的なリアクションをとる黒猫・桐乃コンビの温度差が良かった。すっかり京介ファンになった日向がまたしても切れ味鋭い発言を連発していた。本当にこの娘はいいキャラだな。ぜひレギュラー化してほしいものだ。
「俺の妹はこんなに可愛い」
 ああ、タイトルが形骸化してるなーと思ったお話。もう「俺の妹が世界で一番可愛い」とかでいいよ。
 瀬菜ちゃん大好きな赤城兄が、瀬菜との、ちょっと表には出せないような犯罪そのもののコミュニケーションをどや顔して京介に語る……という、ままあるシチュエーション。だが、うちの妹が世界一だと言い放った赤城に対して、京介が大激怒。そのまま、どっちも譲らぬ妹自慢が始まって……!
 この人たちは病気です。早くお医者を紹介してあげましょう。
 いや本当、ここまでもひどいひどいとは思ってたけど、さらに悪化してるじゃん! やばいって!
「カメレオンドーター」
 最近出番のなかった沙織の子供の頃のお話。豪放磊落な姉・香織によって例のマンションに連れ込まれ、香織のオタク友達と遊ぶようになり……でも、いきなり香織がいなくなってしまったことによってコミュニティが崩壊してしまった、という例のやつ。沙織の原型や、強くなり続ける沙織の現在の姿が良かった。でも出番は少ない。しょうがないね。 
「突撃、乙女ロード!」
 最近仲の良い桐乃と瀬菜が、2人で乙女ロードへ行った。のっけからハイテンションで盛り上がり続ける瀬菜にドン引きな桐乃がふとした拍子に放った不用意な一言によって、互いの兄のシスコン自慢が始まった……。
 まあ要は、京介と赤城の裏チャンネルってこと。けっこうこの人たちも重症だね。とくに瀬菜……うん……いいからもう結婚しちゃえよ……。
「過ちのダークエンジェル」
 いつの間にか「人生の目標」というほどまでに尊敬している麻奈美からの電話で、黒猫と京介が別れたことを知ったあやせ。これはもしかして自分のせいでは? と持ち前の思い込みの激しさを全開に盛り上がる彼女は……。あれ? なんでこんなにデレてるの……?
 というようなお話。いや本当、いつのまにどうしてこうなったのか、皆目見当がつかない。「もうお前にセクハラはしない」というような主旨の(どんなだ)京介の発言に動揺したあやせの内心の葛藤が面白い。もっとセクハラしてほしかったというのだろうか。まあこっちはニヤニヤできればそれでいいんですが。
 あ、一応、メインは京介が加奈子の一日マネージャーするっていうお話です。
 ……麻奈美? そんな人いたっけなあ……。
「妹のウエディングドレス」
 スカートの裾を破られて涙目な桐乃を、スーツ姿にキメた京介が、幼女の裸の描かれた痛三輪車(?)に乗って大爆走する話……大体本当だから怖い。

 今回はどの話も良かった。京介視点でないせいか、違う角度からの笑いが生まれていて、それが本当に面白かった。あと、何度もいうけど、日向はレギュラー化の方向でお願いします。

カンピオーネ(10)槍の戦神

2011-09-13 10:31:33 | 小説
カンピオーネ! 10 槍の戦神 (カンピオーネ! シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)
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「カンピオーネ(10)槍の戦神」丈月城

 宿敵であったアテナを討たれ、神祖・グィネヴィアとランスロットへの敵愾心を募らせる護堂は、ランスロットや、この世の果てに現れるという鋼の神の情報を集めるために、エリカ、リリアナ、祐里のハーレムメンバーと共にイギリスへ渡った。
 一方、黒王子アレクも、単身世界を飛び回りながら、やはり鋼の神の情報を収集していた。戦闘よりもフットワークの軽さと権謀術数を得意とする彼は、じわじわと真綿で首を絞めるようにグィネヴィアたちを追い詰める。
 アレクに対抗するためには、不完全な状態のランスロットと聖杯だけではまだ足りない。不足部分を補うためのグィネヴィアらの一手とは……?

 三者の思惑入り乱れる第10巻は、説明シーンが多かったのが難点だった。
 各陣営入り乱れての乱戦も、いまいち盛り上がりに欠けた。総力戦ではなく、いつものハイテンションで熱気に満ち満ちた戦闘シーンではなかったことが原因だと思う。
 変な方向に覚醒した護堂は、迷いがなくすっきりしていて、でもそれが嫌だった。戦闘においても、女の子たちとの距離の取り方においても、そういった行為においても、迷ってこその護堂なのだ。その迷いを断ち切っていく様がかっこいいのであって、最初から解決されててはなんの面白味もない。今回の覚醒はイレギュラーなので、今後はないだろうと思うけどね。

魔法科高校の劣等生〈1〉入学編(上) (電撃文庫)

2011-09-10 22:33:19 | 小説
魔法科高校の劣等生〈1〉入学編(上) (電撃文庫)
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「魔法科高校の劣等生〈1〉入学編(上) (電撃文庫)」佐島勤

 魔法が現認され、なおかつ技術体系として認められた日本。国立魔法大学付属第一高校には、優秀な一科と補欠の二科があった。極端な実力主義の魔法分野において、その区分けは絶対だった。一科は二科を視野にもおかず、二科は一科への嫉妬や恨みを募らせる一方だった。
 とある春、第一高校に2人の兄妹が入学した。兄の司波達也は、二科所属の劣等生。妹の深雪は、一科所属で新入生総代を務める優等生。特殊な生い立ちから、自分の感情にまでも冷静で、極端に達観した達也と、そんな達也を意中の男性として想っているブラコンの深雪の姿は、学内でも異端な存在として注目を浴びた。もちろん、いい意味での注目ではない。二科のことを良く思わない一科生が2人を引き裂こうとして、無用な騒動が発生した。
「一般的な計測値における」魔法の能力に関しては落ちこぼれだが、体術と、魔法のある分野において極めて優れている達也は、その騒動をあっさりと解決し、結果、風紀委員に任命されることになった。学内での魔法使用管制など、憎まれ役になりやすい風紀委員に初めて誕生した二科生として、彼は再び学内中の注目を浴びることとなる……。

 WEB発ラノベということで、川原礫が解説役。最近のWEB発作家は活きが良いね。
 しかしまあ、この作品自体は極めてありがち。マニアックな設定の作りこみを、味と見るかは人によると思うが、個人的には説明シーンがあまりにも冗長に感じられた。面倒すぎて、説明シーンを僕は半分も読んでいない。この手の作品だったら読まなくてもわかる。
 主人公が劣等生、というのは半分嘘で、半分本当。先にも言ったように、一般的な計測をするならおちこぼれというだけの話。実際にはチートな体術との合わせ技もあって、ものすごい強い。看板に偽りあり、とまではいかないが、のっけから主人公無双のバトルシーンを見せつけられて、正直困惑した。もっと知略を尽くした戦いなのかと思っていた。もちろん、頭使ってないわけじゃないけどさ。
 ヒロインは妹なのかな。のべつまくなしなブラコンぶりが売りなんだけど、時折「え、ここで食いついてこないの?」という場面があったので、もうちょっと様子を見たい。
 その他のキャラは、けっこういい味出てた。腹黒女(?)の生徒会長の七草真由美や、同級生の剣術家・エリカが良かったかな。
 いろいろ不満はあるけど、面白いのはたしか。3000万PVも伊達ではない。主人公無双のウィッチクラフトものとして、今後も継続して買っていきたい。

ノーブルチルドレンの残酷

2011-09-06 20:14:34 | 小説
ノーブルチルドレンの残酷 (メディアワークス文庫)
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「ノーブルチルドレンの残酷」綾崎隼

 舞原家と千桜家、地元で知らぬもののない名家は、ともに昔から敵対し続け、時には血を流すこともあった。だから互いの家に所属する者は互いを憎悪し続けた。
 ひょんなことから部室争いをすることになった舞原家の吐季と千桜家の緑葉は、因縁ある一族の血の濃い者同士。何事にもやる気がなく夢もない叶季と、精神科の医者になるという確固たる夢のある緑葉。まったくもって正反対の性格だが、一般人の気持ちがわからないという共通点がある。
 そんな2人が、やむなく遭遇する謎また謎の日々は、一体どういう変化をもたらすのか……?
 
 いきなり人間関係が変わることはないだろうとのんびり構えていたら、突如緑葉がデレてびっくりした。とある事件がきっかけで叶季に恋した彼女は、正々堂々で傲岸不遜な性格そのままに、真正面から叶季に告白した。フラれたとみるや、いつか自分に惚れさせ、そして自分がいなければだめなところまで依存させ、フッてみせると宣言。突然の展開についていけない叶季との対比が面白くて、思わず笑ってしまった。
 謎解き部分はたいしたことないので、過剰な期待は禁物。楽しむべきは、2人のやり取りかな。徐々に緑葉に惹かれていく叶季と、最初からマックスな緑葉。しかし互いの家の関係上、このまままっすぐ発展するとは思えない。その切なさがよかった。

丘ルトロジック(2)江西陀梔のアウラ

2011-09-04 23:38:42 | 小説
丘ルトロジック2江西陀梔のアウラ (角川スニーカー文庫)
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角川書店(角川グループパブリッシング)


「丘ルトロジック(2)江西陀梔のアウラ」耳目口司

 丘研、というフレーズに、自分の大好きな風景鑑賞の匂いを嗅ぎ取った咲丘は、勢い込んで入部するものの、そこは「代表」こと沈丁花桜率いる変人の集まりで、活動内容はオカルト研究だった。
 紆余曲折の末、丘研に落ち着いた咲丘。とあるデパートで、トイレの個室に空きがないことで大弱り。しかたなく女子トイレに入ったものの、事が済んで個室を出たところを、ばっちり女性に目撃されてしまう。人生最大のピンチ。しかしその女性は幼馴染の香澄で……まあやっぱりピンチには違いないのだった。
 香澄はギターを担いだロックな少女で、将来の夢はロックミュージシャン。音楽活動以外の活動は一切したくない。学校も労働も嫌。住むところもないのでお前の部屋に泊めろ。掃除も洗濯も食事の用意もしない。全部任せた。というわがままが服を着て歩いているようなやつで、挙句の果てに、歓楽街「オアシス」で相次ぐ「ドッペルゲンガー」目撃事件の目撃者でもあって……。
 
 お、2巻出てたのか。
 代表の行動理念があんまり好きじゃないので、そこだけが気になっていたのだけど、やっぱり今回も気に入りませんでした。決め台詞も決まってないと思う。
 プロットの練れてなさも変わらず。いきあたりばったりすぎる。編集なんとかしろ。
 まあしかし、そこ以外は面白いんだよね。濃いキャラ達の会話や日常の行動がツボで、読んでいて非常に楽しい。新キャラの香澄も、デレてから急速にかわいくなった。僕らの江西陀嬢は相変わらずの切れ味。清宮はもうちょっと押してもいいかな?
 続きは出たら買うけど、構成の部分を設計し直したほうがいいと思った。

箱庭図書館

2011-09-03 11:12:47 | 小説
箱庭図書館
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集英社


「箱庭図書館」乙一

 オツイチ小説再生工場から生まれた一冊。文善寺町を舞台にした6作の短編集。
 なのでまあ、ネタ自体はそれほど面白くない。書き方が乙一っぽいというだけで、完全なる乙一作品を期待すると怪我をする。
「青春絶縁体」と「ホワイト・ステップ」だけは面白かった。
 前者は友達のいない寂しい先輩後輩が、2人しか部員のいない文芸部で、人前では絶対出せないけど、お互いにだけは出せる罵詈雑言の限りを尽くして絆を深めていくという筋。話の後、デレた雨季子先輩を想像するとかなり盛り上がった。作品の出来は関係ないか。
 後者は、久方ぶりに雪の降った文善寺町。雪の上に刻まれた足跡や車の轍などが、もうひとつの並行した文善寺町に伝わっていて、そこでとある男女が知り合って……。といういかにも乙一っぽい題材。雪が消えると会えなくなる切なさが良かった。オチと解決方法が綺麗。
 この2作のためだけにハードカバーを買うのはちょっと……とは思うけどね。

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん(I)記憶の形成は作為

2011-08-30 10:31:29 | 小説
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん『i』―記憶の形成は作為 (電撃文庫)
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「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん(I)記憶の形成は作為」入間人間

 監禁事件後の、恋日先生との入院生活を綴った「うそが階段を登るとき」
 退院後の、みーくんへのいじめといじめを首謀するトーエとの日々「ともだち計画」
 監禁事件以前の、にもーととの狩りの記録「蟻と妹の自転車籠」
 監禁事件後に、再び監禁されたみーくんと監禁したまーちゃんの話「HappyChild」
 監禁事件なんてなかったIFの世界「壊れていない正しさのある世界なら」
 の5編が収録された短編集。
 

「蟻と妹の自転車籠」
「HappyChild」
にもーとの話とまーちゃんの話はいまいち。「えっ」とも「おっ」とも思わなかった。というかまあ、キャラの好みの問題だとは思うのだけど、僕はまーちゃん好きじゃない。にもーとは好きだけど、今回は普通だった。まーちゃんはエキセントリックにすぎた。
「うそが階段を登るとき」
 恋日先生が若い! というのがなんか良かった。行動自体はあんまり変わらないような気もするのだけど、いってることが若い。きちんと悩んでる。悩みすぎてぐだぐだになって医師辞めてしまった本編とは違う感じ。作中に出てくるヤマナさんてのは、たぶんリゾートホテルで出てきたあの人のお姉さんかしら?
「ともだち計画」
 トーエに関しては、作中何度か名前が出てきていたような気がするのだが、印象が弱くて覚えていなかった。Wikiによると、「電波女と青春男」に出てくるらしい。まあなんつーか、それはそれとしてかわいいです。やることも割にソフトだし(比較的ね)、この娘と一緒に成長していけたら、みーくんももうちょっとマシになっていたのではないのか。無理か?
「壊れていない正しさのある世界なら」
 あっれー? ゆゆ出て来ないじゃん、責任者出せよ、と思ってたら出てきた。本打ち登場。しかも壊れていないみーくんとラブでコメなので、喜ぶ人はめっちゃ喜ぶと思う。僕は喜んだ。なんか同人くさい気もするけども。 

ファンダ・メンダ・マウス

2011-08-22 10:53:53 | 小説
ファンダ・メンダ・マウス (このライトノベルがすごい!文庫)
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「ファンダ・メンダ・マウス」大間九郎

 ちょっと未来の横浜で、防衛システムヴォルグ2000と共に倉庫管理人を務めるマウス。いつもぐだぐだとだらしのない生活を送る彼のもとに、ひとりの少女・まことが現れた。かつてマウスが姉のことで一方ならぬ世話になった男・佐治道太郎の娘と名乗る彼女によると、道太郎は他界し、彼女は現在トラブルに巻き込まれている。そうと聞いては黙ってられない。ネズミにそっくりな男・マウスの戦いが始まった。

 おお、まさかのハードボイルド。
 まことがいきなり求婚してきたり、マウスを溺愛する姉の愛し方が激しすぎて死にそうだったり、高校時代からの親友の満ちゃんが男のくせにマウスに迫ってきたり、あげくはヴォルグ2000がマシンのくせに……となんだか全方位全種類ラブ包囲網を敷かれたりしつつも、きっかりハードボイルドしてるのがすごいと思った。ヴォルグ2000がかわいく見えたのもすごい。まじで。
 まことに迫るトラブルのネタ自体はたいしたことないんだけど、でも動機や背景がこの世界観にすごく合っていて良かった。どことなくTRPGの「TOKYON◎VA」を思い出した。関係ないけど。
 まあでも一番は、マウスのかっこよさ。ネズミに似ているってくらいだからあんまりハンサムではないんだけど、独特の韻を踏んだ一人称の中で荒れ狂う暴力と、時折見せる鋭い分析力、なんの駆け引きもない純粋な漢気が素晴らしかった。そんなマウスに女性(一部例外)たちが惚れるのはとても納得。昨今のハーレムラノベなんぞぶっとばす、モテへの説得力だった。
 作者、これが初めての小説という話だが、それについては驚かなかった。こういう型に嵌らない勢いのある作品は、技術や常識とは乖離したところにあって、それが最高のスパイスになるものだから。
 うん、面白かった。最高でした。

僕たちは監視されている

2011-08-19 23:23:14 | 小説
僕たちは監視されている (このライトノベルがすごい!文庫)
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「僕たちは監視されている」里田和登

 IPI症候群(クローラ)と呼ばれる患者たちの、他人の秘密を探ることを生きがいとするという変態的な症状を治療、というか緩和するために、IPI配信者(コンテンツ)と呼ばれる己の日常の姿を動画配信する少女たちのお話。
 主人公である小日向祭は、自宅及び公道での日常を配信するコンテンツで、瞬間91位に入ったことがあるくらいの微妙な順位。
 そんな祭の、一葉とのやり合いが楽しそうなどたばたした生活は、ご近所に14位のテラノ・ユイガが引っ越してきたことで急展開を迎える。
 裸、猥褻が関わるエリアを除く全映像を配信する、というレベル4のヘビー配信者である彼女は、校内での映像を普通に垂れ流すことになる。そうなると、もちろん周囲の人間はたまったものではない。コンテンツ配信自体は公共活動なので、学校側から指導するのは無理で……。
 種々雑多なトラブルがテラノ・ユイガを襲い、祭は否が応でもその騒ぎに巻き込まれていくことになるのだが……。

 うわあ……微妙……。
 発想はいい。発想はいいと思う。それぞれに秘密を抱えた2人のやりとりや、コンテンツ配信とかクローラの設定も、独特で興味深い。
 ただ、地の文章が気持ち悪い、というのがかなりの痛手。オリジナルな表現をしよう、という意気込みがあるのはいいのだけど、それがくどく、センスがない。
 キャラクターが痛い。とくに祭、一葉が一緒に行動した時の悪ノリがひどすぎてついていけない。オープニングで2人が新米警官をいたぶるシーンなど、一方通行すぎて見ていられなかった。祭自身の「向こう見ず」な性格も、ちょっと向こう見ずすぎてただのバカにしか見えず、好きになれなかった。
 うーん……この人の作品はもう読まないかな。趣味に合わない。