「俺の妹がこんなに可愛いわけがない(9)」伏見つかさ
黒猫と付き合ったけどフラれたり、その黒猫が行方も告げずに転校したり、でも桐乃の助けもあって、なんとかかんとか変な別れにはならずに済んだり、おかげで桐乃の存在の大きさを思い知らされたり。最近立て続けに起こった重要なエピソードの陰の、各キャラ視点の思惑を描いた短編集。
「あたしの姉が電波で乙女で聖なる天使」
五香家次女・日向視点における、京介がらみの黒猫のデレデレぶりが明らかに。
京介に気に入られようとファッション雑誌をこっそり買ってきたり、高坂瑠璃なんてノートに書いて悦に浸ってみたり、という他では見られないすさまじいデレの数々!
はもちろん良いのだけど、それよりなにより、めっけものは日向でしょう。瑠璃姉大好きで、瑠璃姉をいじることにいきがいを見出しているこの女の子の一人称でのつっこみが面白すぎる。いいキャラ出てきたねえ。
「真夜中のガールズトーク」
とある温泉地での決闘(?)後、足腰立たなくなった黒猫をおぶって旅館まで送り届けた京介と桐乃。けっきょくその晩はその宿に泊まることになった2人。部屋割りで、黒猫と一緒になった桐乃はともかく、黒猫両親+日向と同室になった京介はさぞや針のムシロを堪能してるだろうと思いきや、天然人たらしの術であっさりと打ち解け、黒猫父と一緒に温泉に行ったりしちゃっているらしい。
その報告をしにきたハイテンションな日向と「またやりやがった」的なリアクションをとる黒猫・桐乃コンビの温度差が良かった。すっかり京介ファンになった日向がまたしても切れ味鋭い発言を連発していた。本当にこの娘はいいキャラだな。ぜひレギュラー化してほしいものだ。
「俺の妹はこんなに可愛い」
ああ、タイトルが形骸化してるなーと思ったお話。もう「俺の妹が世界で一番可愛い」とかでいいよ。
瀬菜ちゃん大好きな赤城兄が、瀬菜との、ちょっと表には出せないような犯罪そのもののコミュニケーションをどや顔して京介に語る……という、ままあるシチュエーション。だが、うちの妹が世界一だと言い放った赤城に対して、京介が大激怒。そのまま、どっちも譲らぬ妹自慢が始まって……!
この人たちは病気です。早くお医者を紹介してあげましょう。
いや本当、ここまでもひどいひどいとは思ってたけど、さらに悪化してるじゃん! やばいって!
「カメレオンドーター」
最近出番のなかった沙織の子供の頃のお話。豪放磊落な姉・香織によって例のマンションに連れ込まれ、香織のオタク友達と遊ぶようになり……でも、いきなり香織がいなくなってしまったことによってコミュニティが崩壊してしまった、という例のやつ。沙織の原型や、強くなり続ける沙織の現在の姿が良かった。でも出番は少ない。しょうがないね。
「突撃、乙女ロード!」
最近仲の良い桐乃と瀬菜が、2人で乙女ロードへ行った。のっけからハイテンションで盛り上がり続ける瀬菜にドン引きな桐乃がふとした拍子に放った不用意な一言によって、互いの兄のシスコン自慢が始まった……。
まあ要は、京介と赤城の裏チャンネルってこと。けっこうこの人たちも重症だね。とくに瀬菜……うん……いいからもう結婚しちゃえよ……。
「過ちのダークエンジェル」
いつの間にか「人生の目標」というほどまでに尊敬している麻奈美からの電話で、黒猫と京介が別れたことを知ったあやせ。これはもしかして自分のせいでは? と持ち前の思い込みの激しさを全開に盛り上がる彼女は……。あれ? なんでこんなにデレてるの……?
というようなお話。いや本当、いつのまにどうしてこうなったのか、皆目見当がつかない。「もうお前にセクハラはしない」というような主旨の(どんなだ)京介の発言に動揺したあやせの内心の葛藤が面白い。もっとセクハラしてほしかったというのだろうか。まあこっちはニヤニヤできればそれでいいんですが。
あ、一応、メインは京介が加奈子の一日マネージャーするっていうお話です。
……麻奈美? そんな人いたっけなあ……。
「妹のウエディングドレス」
スカートの裾を破られて涙目な桐乃を、スーツ姿にキメた京介が、幼女の裸の描かれた痛三輪車(?)に乗って大爆走する話……大体本当だから怖い。
今回はどの話も良かった。京介視点でないせいか、違う角度からの笑いが生まれていて、それが本当に面白かった。あと、何度もいうけど、日向はレギュラー化の方向でお願いします。