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はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

シー・マスト・ダイ

2011-08-14 01:58:46 | 小説
シー・マスト・ダイ (ガガガ文庫)
クリエーター情報なし
小学館


「シー・マスト・ダイ」石川あまね

 サイコキネシス・テレパス・プレコグ……超能力者が一般的な存在になり、自衛隊には超能力部隊までできている未来の日本。港区第二十二中学校の理科室で理科実験をしていた矢口誠たちの目の前で、いきなり窓ガラスが破れ、完全武装の特殊部隊が突入してきた。
「全員動くな」突如向けられた銃口に動揺する誠たち。兵士の言葉を無視した男子の一人が逃走を試みるも、容赦なく射殺される。
 どこの所属とも知れない、目的もわからない兵士たちに軟禁された生徒たちの、命を賭けた戦いが始まった……。 

 うわー、惜しい。本当に惜しい。題材は文句なく面白いし、話自体も面白いほうだと思うのだけど、なんというか、書きこみが足りない。もっと分量を多く、各生徒たちの描写を視点を深くすれば、もっと全然面白くなったはず。
 主人公の、無能力者・矢口誠。
 ヒロインの、テレパス志水はるか。
 不良の、サイキッカー北島良平。
 出自不明の特殊部隊指揮官と予知能力者。
 この5視点しかなくて、他の生徒はほぼモブ。どんどこ殺されるし、抵抗のての字もない。せっかくの理科室なのに、手近の道具をまったく使わない。あ、正確には一度だけ使った。でもそれは、理科室じゃなくてもどこにでもあるものだった。理科室である必然性はまったくなかった。
 使えよ! 考えろよ!
 と、何度読みながらつっこんだことかしれない。
 いやまじで。もうちょっとね、工夫をしてほしかった。せっかくいい舞台が整ってるのになあ。サイキックバトルロワイアルができたんだぜ? これは編集の責任だな。ライトノベル大賞優秀賞らしいけども、そのまま出させるわけないだろうし、手が入ってるはず。それでこれはない。
 あとはまあ、超能力描写が中二的だった。レイガン(幽白)みたいな直接的能力出されると、正直萎えます。だってさー、超能力って、常人には理解できない力の働きなんだぜ? それをどうやって認識させるかがもっとも大事なところでしょ。話の肝でしょ。それをあなた……レイガンって……。北島の恋人の蔦の能力はちょっと良かったけどねえ。
 キャラクターでいうと、北島が一番良かった。ここまで憎みやすい悪人というのもなかないない。NTRフリークな僕としては、はるかとのあのシーンでほんほんさせていただきました。だって、あれ、完全に脱げてますよ? 
 オチは、うーん、まあ賛否両論だろうけど、ありだとは思った。無茶だけどそこが面白かった。色々言ったけど、おすすめです。

天冥の標 メニー・メニー・シープ

2011-08-10 20:19:18 | 小説
天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)
クリエーター情報なし
早川書房


「天冥の標 メニー・メニー・シープ」小川一水
 
 西暦2803年、植民から300年を数えた惑星・メニー・メニー・シープの臨時総督のユレイン三世は、惑星唯一の発電装置である植民船・シェパード号の支配権と、ロボット群の指揮系統を束ねていることを強みにやりたい放題の圧政を敷いていた。
 そんな中、セナーセー市の医師セアキ・カドムは、電気を操る《海の一統》の若大将・アクリラと共に、大流行を始めた未知の病原菌との戦いを始める……。

 というストーリーを聞いて、パンデミックもの好きな僕は大変興味をそそられたわけですが、病気そのものはかなり早期に解決してしまい、その後は惑星の秘密や開拓の裏側、といった、SFファン向けの話でした。いや、嫌いじゃないんですけどね……求めてた話と大分違うから……。
 キャラクター的にはシロツグみたいな印象の(あくまで印象、というか、絶対絵にするならあの人)カドムと、カドム大好きなアクリラのやり合いはかなり面白い。アクリラが女の子だったらなーと誰もが思うはず。そういう話じゃないですか? うんまあ……。
 臨時総督に箱庭のように区切られ閉ざされた植民星、実はその外側には広大な世界が広がっていて……というキーワードに興味のある人は買い。実際、出来はいいし安定いて読める良作だと思う。ただ、パンデモな話を期待している人にはお勧めしないというだけで。

僕と彼女のゲーム戦争

2011-08-05 12:10:24 | 小説
僕と彼女のゲーム戦争 (電撃文庫)
クリエーター情報なし
アスキーメディアワークス


「僕と彼女のゲーム戦争」師走トオル

 ゲーマーなら誰しもが思ったことのある夢のひとつに、「ゲームだけやって暮らしていけたら」というのがある。このお話は、その夢が現実となった世界だ。ゲームが一大産業として成立した日本。子供たちはかなり余裕のある状態で新たなゲームやゲーム機が入手でき、親の理解までも得られてしまう。そんな夢のような世界で、岸嶺健吾はかなーりレアな、ゲームの嫌いな子供だった。
 ゲームをする暇があったら、本を読みたい。もしも無制限に時間が与えられるなら、いつまでもどこまでも本の殻の中に閉じこもっていたい。そんな性格のために、コミュニケーション能力は養われず、当然友達も恋人もいたことがない。
 高校三年生、青春の最終学年になって、ようやく彼に違った展望が見え始めた。きっかけは、私立伊豆野宮学園。最近共学になったばかりの元お嬢様学校に耐えられず挫折した男子の代わりに転校しないかという話が岸嶺にだけ舞い込んだ。卒業生というだけで各企業からの引く手数多、大学入学も余裕、という私立伊豆野宮のブランドを捨ててまで転校したいというのはどんな状況なんだ? 恐れ慄きながらも、しばらくの間、受験勉強にも左右されない読書環境が得られるし、修学旅行の班決めとかやだなあと思っていた岸嶺は、転校することに決める。果たしてそこは……
 いやまあ、普通のお嬢様学校だった。物静かでおしとやかなお嬢様たちに混じって、クラスに1人か2人というごく少数の男子が細々と生活している。話しかけてくる女子もいないし、体育の授業は当然のように別。それがきついくらい。
 こっちの学校でも当然のように友達はできず、図書館通いの日々なんだろうなと思っていた岸嶺は、なんの因果か現代遊戯部に無理矢理入部させられる。声優狂いの男子顧問や、学業優秀容姿端麗品行方正な生徒会長・天道しのぶ以外には仮部員の仁井谷佐奈恵しかいない現代遊戯部の活動内容は、ゲーム。
 もっとも岸嶺と正反対にあって、しかし極度にお話の中に没入できるという特技をもっとも生かせる分野において、彼は青春最後の輝きを発することができるのか? 遅れてきたゲーマー人生、いまスタート。

 えーとですね、表紙でファミコンのコントローラー握ってるのは完全に罠です。挿絵にスペランカーとかもでてきてるし、実際に作中でプレイしてるけど、レトロゲーはそれだけ。他はギアースオブウォーとか、アンチャーテッドとかの今風なゲームのみ。レトロゲー成分を求めて買うのはよしたほうがいい。
 ゲームに没入した岸嶺の、完全になりきった情景描写が面白い……ような気もしたんだけど、ツッコミ役がいないので、延々とボケ続けるというシュールな光景になってしまった。最後のバトルには、盛り上がりもあって、可能性を感じた。でもFPSばかりだと飽きがくるだろうし、戦ってればいいというもんではないと思う。次巻はたぶん買うんだろうけど、もっと他の種類のゲームもやってほしい。ホラーとか絶対面白いと思うのだがどうか。みんなでやって楽しめる、という意味ではかなりいい線じゃないか? JGBC(ジャパン・ゲーム・バトル・チャンピオンシップ)という、公式ゲーム大会が毎週秋葉原で開かれているという設定なんだけど、そこにこだわってるかぎり、メインではやってくれないだろうなとは思う。だったら閑話休題的な感じで。
 恋愛方面は1㍉も進展なし。フラグのフの字もない。主人公の能力を考えれば、やる気になればマッハだとは思うけども、話の進行が遅めなので、しばらくはなさそう。

はたらく魔王さま!〈2〉

2011-08-03 15:19:07 | 小説
はたらく魔王さま!〈2〉 (電撃文庫)
クリエーター情報なし
アスキーメディアワークス


「はたらく魔王さま!〈2〉」和ヶ原聡司

 異世界エンテ・イスラでの人間との戦いに敗れた魔王が、現代の地球に逃げ込んだ。しかし魔力の源となるものが圧倒的に不足しているこの地で、当面の彼にできることはまっとうに働いて期を待つこと。ファーストフードチェーン店マグロナルドの正社員を目指す真奥貞夫は、持ち前のやる気と能力をいかんなく発揮し、今やバイト一年目にして時間帯責任者になるまでに成長した……。
 いや、待て。なんか違うぞ。という周りの困惑も何のその、来たるべき競合店舗との戦いに向け緊張する真奥の住まうぼろアパートの隣に、うら若き女性が引っ越してきた。一部の隙もない和服の着こなしと、時代がかった口調の彼女は鎌月鈴乃と名乗り、真奥・芦屋・漆原の男三人がシェアする謎の男所帯と密なご近所付き合いを展開する。毎日の食事の世話、ことに、出勤する真奥のお弁当を作るなど、真奥の後輩店員・千穂ちゃんの発狂までも誘う彼女の目的は如何に?

 ライトノベルのキャラのお仕事、というと、たいていが探偵だったり冒険家だったり作家だったりするが(偏見含む)、このお話の主人公は違う。元魔王にしてファーストフードのアルバイト。しかもけっこう真面目に取り組んでいる。ライバルたる元勇者の遊佐も、テレフォンアポインターとしてふつーに生活してるし、たいていの事柄は、仕事のほうが優先で後回しに置いちゃうし、まあ、職業人としてはそれで正しい態度だとは思うんですけどね……魔王……勇者……?
 ともあれ、面白いのは保障できるシリーズ。1巻で魔王の正体を知ってしまった千穂ちゃんは、いまだに魔王のことを本気で好いてくれてるし、新キャラの鈴乃も和風キャラとして存在感抜群。苦労人な芦屋、ニート街道驀進中の漆原、いまだに立ち位置を決めきれずに悩んでいる遊佐がヒロインとしてどうなのかな、というくらいで、他のキャラものきなみ立っていて面白い。
 今回はでも、千穂ちゃん回だったかな。白昼堂々の告白。ご両親の公認。鈴乃の手作り弁当に嫉妬する姿がとてもラブリーだった。働く女の子好きな僕には素敵なご褒美。

神様ゲーム

2011-07-12 16:40:04 | 小説
神様ゲーム (ミステリーランド)
クリエーター情報なし
講談社


「神様ゲーム」麻耶雄嵩

 かつて子供だったあなたと少年少女のための……といううたい文句の作品を、麻耶雄嵩に書かせるのはいかがなものか……。
 まず最初にそう思いながら読んで、読後はさらにその思いを強くした。子供向けの平易な文章に、麻耶雄嵩独特の、あのいやーな雰囲気、驚異のどんでん返し、最後の最後まで悩ませ考えさせながら「そう来るかー!?」とひっくり返るような変化球のオチがついてきて、最高だった。
 いやあ、やっぱり好きだ。麻耶雄嵩。「夏と冬の奏鳴曲」以来、愛してやまない麻耶節が、ミステリーランドという舞台を踏襲しながらもきっちり帰ってきた。

 大好きな両親と、浜田探偵団のみんな、親友の英樹に囲まれて楽しく暮らしていた小学生の芳雄の前に、突如、神様が現れた。正確には、自分を神様だと自称する同級生・鈴木君が現れた。
 驚異の上から目線で世の中を淡々と語る鈴木君は、芳雄たちが探している連続猫殺し事件の犯人をぴたりと当てた。それ以外にも、「どうにもこいつは本物だぞ」と信じざるをえないような発言を連発する鈴木君に、やがて芳雄は全幅の信頼を置くようになる。だが、それは、もうひとつの悲劇の始まりでもあって……。
 何者かに殺されてしまった○○の仇を討とうと走り回る芳雄が、最後に頼ったのは、やはり鈴木君。その万能の能力で、人に「天誅」すら与えることのできる鈴木君は、
「ぼくが天誅を下してあげるよ」
 例の淡々とした口調でそう語り……。

 挿絵の不気味さも相まって、子供が読んだらトラウマ必死。麻耶ファンなら読むべき。そうでない人でも、一度経験しておくのは悪くないと思う。親切設計とは程遠い、突き放すどんでん返しミステリーの神髄は、ここにある。

魔女

2011-06-26 13:55:41 | 小説
魔女 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋


「魔女」樋口有介

 アフロヘアーの母、テレビリポーターにして自由奔放な姉・水穂、実業家にして雇い主な恋人・美波。3人の強い女に囲まれた主人公・広也は、大学を卒業したにも関わらず定職を持たず、美波のガーデニング業を時折手伝うモラトリアムな日々を過ごしていた。未来への展望も気力もない広也は、ある日、大学時代の恋人・千秋の死を知る。
 特ダネの匂いを感じた水穂の命令で、千秋の死の真相を探る広也。次々と浮かび上がる、とても同一人物とは思えないような様々な千秋の姿に、広也は困惑する。いったい、彼が付き合っていたのは誰だったのか。死んだのは、本当に千秋だったのか……。

 ま、いつものやつです。さすがにぶれない、青春ハードボイルド職人、樋口有介。
 広也と千秋のつき合いは、たかだか3か月だけのもので、実際たったそれだけのつき合いで彼女の何がわかるという感じはするのだけど、それでもあまりにも証言者と自分の持っているイメージの食い違いがひどすぎて、そこがミステリな部分なわけです。死んだのは千秋なのか。千秋だとして、じゃあ20何年かの人生の中で、広也に見せたその一瞬の姿は、いったいどういう意味のあるものだったのか……。

「あんた、フロイトの初歩も知らないの」
「なんだよ」
「忘れるためには分析と認識が必要なの」 

 ところで、作中のこんなセリフにふと感じるものがあったのは、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」の影響がまだ残っているせいかもしれません。分析と認識、知ろうとしなければ、考えようとしなければ、忘れられないことってある。そういうことですかね。

僕は友達が少ない(5)

2011-06-13 20:40:40 | 小説
僕は友達が少ない (5) (MF文庫J)
平坂 読
メディアファクトリー


「僕は友達が少ない(5)」平坂読

 父親の隼人からの電話を受けた小鷹は、その内容に驚いた。なんでも、星奈の父親が、娘と小鷹が結婚するものと思いこんでいるらしいのだ。
 ということは、星奈もその話を聞いているのだろうか。互い身に覚えがないこととはいえど、これは気まずい……。と思ってどきどきした小鷹だが、当の星奈はそんなそぶりも見せず、いつものように小鳩を偏愛し、一緒に遊園地に遊びに行こうと複数で行けるタダ券を持ってきた。
 そんなこんなでいつものメンバーが集った遊園地編。いきなりの絶叫マシーンで全員の度肝が抜かれまくったあとは、それぞれ思い思いの形でアトラクションを楽しむ流れ。夜空と星奈は怖い乗り物苦手のくせに、互いに意地を張って絶叫マシーン連続乗車のチキンレースを展開。マリアは食べ物という食べ物を食べまくり、高度の高い乗り物に乗りまくって大笑い。小鳩は小鷹と一緒に回りながら、子供だましのヒーローショーに大人げなくつっこみ。理科は絶叫マシーンのせいで恐怖の臨海を越え、放送禁止用語を吐きまくる暴言マシーンに。幸村はなぜかひとりだけメイド服で登場、冷静な顔でなぜかお経をとなえながらマリアの付き添い担当。それぞれがそれぞれのキャラに合った残念な楽しみ方をしたあとは、食事と温泉施設での入浴タイム。そこでなんと、驚愕の展開が……。

 あー、面白かった。「カンピオーネ」「電波女と青春男」「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」に次ぐ、個人的に楽しみなライトノベルの4強。今回もきっかり楽しませてくれました。
 星奈と小鷹が結婚? という前回の引きは当然のように軽い扱いをされてた。まあこのへんはいつものことだからしょうがない。遊園地で小鳩と小鷹と3人、できちゃった結婚したヤンキー夫婦に見られたりとかで、きっかりフラグは回収してたのでいいか。夜空は全編通して、小鷹に近づきたいというか小鷹に他の女を近づけたくない気持ちが表に出てた。ただ、キャラ的にそんなに出張るキャラでもないのでいまいち印象が弱い。要所要所でぼそりと吐く本音が可愛い。ちなみに、後半一気の巻き返しが有った。あとは理科と幸村だろうか。完全にイロモノキャラで、小鷹争奪にまったく名前の挙がらなかった2人だが、今回目覚ましい活躍を見せた。とくに幸村、まさかまさかの設定が炸裂して、個人的にも好感度アップ。夜空、星奈に勝るとも劣らない存在感を見せつけてくれた。

電波女と青春男(6)

2011-05-22 00:49:13 | 小説
電波女と青春男〈6〉 (電撃文庫)
クリエーター情報なし
アスキーメディアワークス


「電波女と青春男(6)」入間人間

 青春女になると決意表明し、こそこそ学園祭に乗り込んだエリオ。学園祭の午前中、にわ君を独り占めする権利を得た前川さん。にわ君と学園祭を回り、カップルイベントに参加したリューシさん。そんな3人に囲まれて青春真っ盛りなにわ君。女々さんとお婆ちゃんとヤシロと○○と○○と○○○と○っ○○、ついでに多摩湖さんと黄鶏くんも特別出演したりして、本当に賑やかで先の読めない楽しい巻だった。
 伏せ字の部分はネタバレになるからいえないけど、シリーズ通して読んでいて、6巻までに挫折しそうな人がもしいたら、この巻だけは読んでほしいと思う。忘れかけていた伏線が、一気に、それも最高の形で噴出するから。これは見なきゃ損。
 ハーレムがらみでは、リューシさんは相変わらず可愛いけども、前巻から引き続き、前川さんがずずいと前に出てきた印象。まあ、絶対報われないポジションだけどね。
 子犬キャラのエリオは、けっこう成長した。後半のあのシチュエーションであんな行動がとれるとは。にわ君じゃないけど、保護欲がうずいて目頭が熱くなった。
 次巻が気になるな。是非、学園祭の打ち上げシーンを読みたいのだが。

変態王子と笑わない猫(2)

2011-05-19 23:32:48 | 小説
変態王子と笑わない猫。2 (MF文庫J)
クリエーター情報なし
メディアファクトリー


「変態王子と笑わない猫(2)」さがら総

「ふふん」顔の小豆梓の表紙を見て、「おお、今回は小豆梓回か。誰得だよ、俺得だな!」などと大変楽しみに読んでみたら、まさかまさかの鋼鉄さんこと筒隠つくし回。いやあ、別に嫌いなキャラじゃないんですけど、しかし1巻の様子から、ここまで驚愕の寄せがあるとは想像できなかった。
 んで、話の内容はというと、筒隠家の土蔵に封印されている笑わない猫像の本尊(?)がいろんな人の願いを無理矢理叶えまくった結果、突如として家無き子となった横寺が筒隠家に居候することとなり、月子の全裸を拝み、つくしを性的に喘がせ、遠く南国にいた小豆梓を呼び寄せて手錠で拘束し、と、書いてるうちになんだかわけわかんなくなってきたけど、すべて事実なのが恐ろしい。さすが横寺、変態王子の名に偽りなし。
 そんな全力のラッキースケベ展開をよそに描かれるのは、月子・つくし姉妹の理想と現実と不安。時として無駄にいい男な横寺がそれらをばっさばさと薙ぎ払う後半には胸がすく思いだった。
 個人的希望としては、もう少し台風の被害を大きく長くしてほしかったかな。限定空間での生活って楽しいからね。
 小豆梓好きとしては今回はかなり残念だったけど、あとがきで、次は「小豆梓の逆襲」ありと書いてあったのでまあ良し。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない(7)

2011-05-17 11:12:12 | 小説
俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈7〉 (電撃文庫)
クリエーター情報なし
アスキー・メディアワークス


「俺の妹がこんなに可愛いわけがない(7)」伏見つかさ

 いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ、面白い!
 個人的に今一番楽しみにしているシリーズの最新巻。アニメも好調だけど、こっちはさらにその上をいく絶好調だね!
 アマモデルからプロモデルになり、海外へ行くよう事務所の社長から説得されている桐乃を、なんとか波風立てないように日本にとどまらせるために「彼氏のふりをする」ことになった京介。ほんとの妹ものエロゲーみたいなシチュエーションに舞い上がった京介と、最大限恥ずかしがっている桐乃のやり取りが良かった。最後はもちろん桐乃が怒っちゃってぐだぐだだったけど、シスコンブラコン(なんだよね?)同士だけに、ほほえましいとしかいいようがないものだった。
 沙織、黒猫も交えてのコミケに交わる創作活動や売り子をする話も良かった。桐乃の人生相談からなんやかやでもう一年以上たったのだなあと感傷に浸ってしまった。沙織や黒猫との関係の深まり。京介の堕落……。
 そう、いまや京介は「そっち側」の人間になってしまった。「オタク趣味に理解のある人間」どころか、コスプレという新たな分野の気持ちよさに目覚めたことで、完全に彼岸に渡ってしまった。面白いからいいけど。ラブリー天使あやせたん宅でのそれも、まあこれはこれで……。
 そんな京介にマイってしまっている黒猫は今回もひたすら可愛いい。京介に見せるための、普段のゴスロリではない「白猫」姿や、時折見せる密やかなスキンシップに、愛とエロさを感じた。ラストの展開は、事前にネットに情報が流出していたのでそこまで驚きはしなかったものの、ちょっと感動的なものがあった。
 麻奈美さんは……1シーンだけの登場でした。しかもモブ同然の。本当にご愁傷様です。